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第一部
ポチタロウと、トリックアートなおじいさん:2
しおりを挟むかくして「ブランコで飛べるかな作戦」は開始された。
ひとまず、最もシンプルな方法から試してみることにした。すなわちスーが言っていた「手でブランコのロープを持って飛ぶ作戦」だ。スーに両手で、ロープを持ってもらい、ワフルがブランコ椅子に腰掛けた。
ー フワッ。 ー
スーがいつものように浮遊する。
遅れてワフルの体も宙に浮いた。
「ワフー♪」
「おお」
「若干、重い・・・」
スーはすぐに降下して、草原に足をつけた。両手を口に当て、ふーふー息を吹きかけている。全身が強化されているとはいえ、スーが人一人を持って運ぶのは負担が大きいようだ。長時間の航行は無理だろう・・・でも確実に「飛ぶ」ことはできた。
「とりあえず、飛べたねぇ・・・」
「おぅ、飛べたナ・・・」
「まさか、こんな、単純なことで・・・」
どうやらスーの体自体に直接干渉していなければ、僕らも風の精霊の力で、飛べてしまうようだ。僕らにとっては「コロンブスの卵」的発見だった。知ってしまえば、なんてことないことだったけど、知るまでに随分と時間がかかった><
飛べた興奮、冷めやらぬまま、僕らは、試行錯誤を続けた。
スーの腰に、ロープを巻き付けてみた。
「若干、痛い」
スーの両足に、ロープを巻き付けてみた。
「なんか、血が、止まる」
スーの体全体に、安定しそうな感じで、ロープを巻き付けてみた。
「ポチ兄ぃ・・・そういうプレイ?」
これは亀甲縛りの出来損ないみたいになって、若干、卑猥な感じを醸し出した。
「ポチタロ、ワフルも、ワフルも♪」
「ワフル、今はボクのターンだって」
わいわい
キャイキャイ♪
ゴオォォォォォォーーッ!!!
二人はふざけて、はしゃいだ。大精霊の力で身体強化された二人が、本気でじゃれ回ると、ちょっとした天変地異が巻き起こる。台風みたいな風と、大量の土砂が混じり合い、なんかカオスな感じになった。
そうこうしてる間に、ちょうどお昼くらいになったので、僕は二人をなだめて、一旦、戻ることにした。コの字型の、あの中庭(仮)へと。
(あとちょっと、まで来てるのに、どうしたもんだろう・・・)
帰り道の途中、僕は考えていた。
実際に「安定して飛べる」算段がついた今、残すは長距離飛行の方法だけだ。でも、それが思いつかないのが少し歯がゆい。そもそも僕は、ロープワークなんて知らないのだ。すぐに調べられる、ネット環境だってない。
・・・
・・・
・・・!
ネットのことを思い返して、僕はスーの天才的頭脳のことを思い出した。スーは、自分の関心が向いたことなら、それこそウィ○ペディアのように、なんでもスラスラ答えてくれる。
「スーは、縄の縛り方とかについては、調べたことないの?」
「ない。・・・興味なかったから」
「そ、そっか」
「うん」
・・・ですよねー><・・・。
まあ全部が全部、都合良く、いくわけがない。
お昼を食べて、また頑張ろう・・・。
この後、中庭(仮)に戻った僕らは、飛行ユニットの開発に成功することになる。
ーーーーーー
「おかえり、みんな」
僕とちびっこ二人組が、中庭(仮)に戻ると、サファが昼食の支度をしてくれていた。サファは、いいお嫁さんになる・・・というか、もうなってくれていたや。ありがたや。
「わふー♪ ワフル、お腹すいたゾ」
「ボクも・・・ぺこった」
「お腹減ったねぇ・・・」
僕らは三者三様に、自分の席に着こうとして、ニッコリとサファにつっこまれた。
「手は洗ってきてね?」
僕らは慌てて、脱衣室の手洗い場へ向かった。基本、穏やかなサファだけど「キレイにする」ことに関してだけは、自分なりのこだわりがある。服を汚して帰ってきても「あらあら」からの「ニコニコ」で済むが、食事前や、就寝前の手洗いやうがいは、そうはいかない。
最初期の頃、一番ズボラなスーが「えー、めんどくさい・・・」などと言ってしまい「スーちゃん、ちょっとこっちで話そっか?」とサファに連れられていってしまった。1時間ほどして帰ってきたスーは、ガクガクブルブル、涙目だった。
何があったのか? は怖いから聞いてない。
とにかくポイントポイントで綺麗にしておけば、サファの逆鱗に触れることもないので、おとなしくそれに従っている。清潔に保つのはモテる秘訣だって言うしね?
僕らが手を洗って中庭(仮)へ戻ったのと、ほぼ時を同じくして、小さなリュックをかついだリリがフワーッと帰ってきた。羽根を収納して、リュックを降ろす。
「ふーーー。よっこいちょ。」
「よっこいちょ」・・・って。リリ、今噛んだよね? 本人は「ふん、ふん、ふ~ん♪」と鼻歌まじりで、まるで気にしてない。まあ、可愛いからよしとする。
リュックを降ろしたリリは、テーブルの上にある自分の席に着こうとして、案の定、サファにつっこまれ、手を洗いに行った。
その一連の流れを見ながら、僕の心に何か、ひっかかるものがあった。
ーーーーーー
「ふーーー。・・・サファ-? 今日のご飯は何?」
「リリのは、はちみつエギー・ブレッドと、レタスとトマトとベーコンのサラダよ」
「えー、サラダァ?」
「こっちもハチミツ入れてあるよ」
「ぐぬぬ・・・ならまあ、いいわ♪・・・ハチミツ2コで、はっちみツ~♪」
「ふふふ」
和やかなムードで食事の準備が進む中、僕は心のひっかかりと格闘していた。
リュックを背負ったリリを見て、何かを感じたのは確かだ。
僕はドラ○エ6でいうところの「思い出す」を使った。
・・・
・・・
・・・。
リリは羽根があるのにリュックを背負える。
どんなカラクリになってるのか? と、不思議に思いリリに聞いてみたことがある。
「この羽根は、あってないようなものなのよ。自由に出し入れできるの」
リリはそう言って、羽根を出したり消したりしてくれた。僕には手品にしか見えなかった。そんで「妖精さんの手品ショー」とか、なんかいいな、なんて思ったりした。あと「自由に出し入れ」にちょっと憧れを感じた。
あってないもの・・・
自由に出し入れ・・・
・・・いや違う。そっちじゃない!
リュックだ。単純にリュックの方だ!
ちょうど視線の先に、リリの小さいカバンがあり、僕は思い直した。
加重を分散できるリュックを作って、ロープを結んでおく。それをスーに背負ってもらえば、いい線いくんじゃないかと思った。
「これだ!」
僕は椅子からガバッと立ち上がった。辺りを見渡すと、もうみんな、自分の皿を自分で運んできている。
「はい、勇者様の分ですよ」
ー スッ ー
サファに、お皿を差し出されて、僕は自分のお皿も取りにいかずに、考えに没頭したあげくに突然、立ち上がったことに気づいた。
ちょっと恥ずかしかった・・・。
ーーーーーー
「ごちそうさま」
「「「「ごちそうさまー」」」」
昼食をおいしくいただいた後、僕は、リリに詰め寄った。
「リリ!」
「ん? どしたの、ポチ?」
リリは、はちみつレモンを最後の一滴まで飲み干そうと、コップを逆さまむけていた。
「リリ、それちょっと見せてくれない?」
僕はリュックを指さす。
「!!!・・・こ、これはダメよ! 中には、お、乙女のたしなみが入ってるから!」
「僕が見たいのは、中身じゃなくて、カバン本体だよ」
「カバン?」
「そ。カバン。中は見ないから、ちょっと見せてくれる?」
リリは、ちょっと逡巡してから、赤い顔で言った。
「な、中身は絶対に見ないでよね!?」
「うん。見ないよ。約束する」
僕はニコッと笑ってそう言った。
赤い顔のまま、リリがカバンをこちらへ差し出してくれた。
「絶対」とか言われると中身が超気になるけど、こんな素直になられたら、見るわけにはいかない。
「ありがとね、リリ」
「・・・いいよ、ポチ・・・」
リリの頭に手を当てる。
リリはトロンとした気持ちよさそうな顔をする。
僕はエッチな気分になってしまいそうなのを抑えて、スーとワフルを呼んだ。
「スー、ワフル。ちょっと、こっち来て」
ーーーーーー
そこからはあっという間だった。ロープが通せて、重さを分散できるリュックを特注して、あっけなく安定飛行が実現した。未だに野生児に近い生活をしてて忘れてたけど、僕らは褒美とかで、結構、お金持ちだったのだ。
「楽をしたがる」スーは、その天才的頭脳で、飛行ユニットをさらに改善した。帆布をパラセーリングみたいに改造して、ブランコをぶらさげた。僕ら、飛ばせてもらう側は、そこに腰掛ける。
リュックにもロープを結び、帆布とつなげた。万一ブランコから落ちても、リュックが保険になる。帆布にスーが風を送り。浮き上がった僕らをそのままスーがロープで引っ張っていく形が最終形態になった。
スー自身への負担は「ひっぱること」だけになったので、僕ら全員が同時に飛べるようになった。
「わふふふふ~♪」
「うっわーーー」
「・・・ちょっと怖いです・・・勇者様・・・」
「ボクだけ、一人・・・」
僕はこのまま魔王城まで飛んで行きたいくらいの気分だったけど、ひっぱり担当のスーが「ボクだけ仲間はずれ」だとすねて、最初の飛行は終了した。全員で、スーを褒めて、なだめて、おだてて。そして、ひっぱりヒモの長さは極限まで短くすることになった。
なにはともあれ。
こうして僕らは魔王を倒した後になって、飛行手段を手に入れた。
余談だけど、ワフルがリュックを調べてた時に、逆さま向けちゃって、ゴロゴロゴロリと、リュックの中身が飛び出した。フタが重みに耐えられずに開いてしまったらしい。それで一騒動が起きた。
中からは、ディルドが出てきた。
それぞれ違うサイズで3種類も。
リリは、真っ赤になって、プルプルして、そんでから開き直った。
「こ、これは、ポチとのエッチのための練習用に買ったのよ! 何よ!? 悪い?」
「リ、リリ。本気なんだね・・・」
「練習って大事だしナ。いいと思うゾ。・・・中身開けちゃってごめんナ、リリ」
「それ、どこに売ってるの? ボクも練習したい」
「・・・」
リリの話を聞きながら、僕は嬉しいんだけど、複雑な気分になった。僕とエッチをする為の努力なら、とても嬉しくて。でも、僕が挿れる前に、別の異物がリリや他のみんなの中に入るのはとても嫌で。
なんて言えばいいのか? 言葉に詰まった。
・・・
・・・
・・・
「・・・ポチタロは、嫌なのカ?」
ワフルの声がした。
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