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第一部
スー=スレイプニル(幼女エルフ:4)
しおりを挟む「野郎ども! ハリティ張り手を開催するぞ!」
「「「おおおーーーーっ!!!」」」
フリイが吠えた。他の3人の門番達はそれに応え、拳を高く振り上げた。
「・・・おおー・・・?」
ハテナマーク付きで、スーも少しだけ拳を上げた。
■■■■■■
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スー=スレイプニル(幼女エルフ:4)
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1年に一度。もしくは「緊急を要する」と判断された時に、ハリティ張り手は4人の門番達によって、勝手に開催されてきた。それは彼らによるハリティ達への警告だった。
ハリティは大切な子どもを育てる神聖な職と見なされている。だがどうしても、その中にも傲慢な態度の者や、幼児の心や体を傷つけるような女輩もいた。そんな、どうしようもないハリティを、彼らは「びたーん!」と、はたくのだ。容赦なく。物理的に。
それがハリティ張り手だ。正確にはビンタだったが、ゴロが良いので「ハリティ張り手」と呼称された。何十年か前に、タクローが育児室の中を覗いたのがきっかけでそれは始まった。
その当時、先代より門番職を引き継いだタクローは、晴れて柵の中に入れるようになっていた。幼女センサーに導かれた彼は、育児室の様子が見える格子窓へとたどり着いた。タクローは、そのままそこへ毎日、足を運ぶようになった。
ある日、ウキウキしてどこかへ向かうタクローを見かけたフリイは、何か面白いものでもあるのかな? と付いて行った。そのまま彼女も育児室から目が離せなくなった。ほどなくして、4人全員が、足繁くそこに通うようになった。
4人共、幼い頃に柵の中から追い出された経験がある。「力や魔力が強すぎて」サクノソトで門番になることが決まった。彼らは、先代の東西南北の門番に預けられて、みっちりとしごかれてきた。
そこでの生活は「最悪」ではなかったが、大なり小なり、みんな何かしら、心に穴のようなものを抱えていた。もらえた愛が足りていなかった。
育児室の窓越しに見る幼子達は、可愛かった。その幸せそうな笑顔は、心の穴を埋めてくれた。年齢別に0~7歳まで8教室あったので、それぞれの門番達は、それぞれが気に入った年代の子を、見守るようになった。
この時期に(タクロー以外の)門番達も、程度の差こそあれ、幼女好きになった。育児室に通い詰め、完全に仕事をしなくなった。育児施設周辺へ出禁になった。
異議を申し立てた彼らだったが、アデリンを筆頭とする「口の立つタイプのハリティ達」に、言い負かされた。彼らは口げんかが弱かった。専門用語と共に、理路整然と何かを述べられると、言葉に詰まった。門番になりたての、その頃の彼らは、4人で団結して対抗する程、仲が良くもなかった。
4人いっせいに、出禁になったことで、ようやく彼らは連携を取り始めた。ミドウは、育児施設から離れた場所で、年若いハリティを呼び止めては懐柔して、情報を入手できるようにした。ミドウの集めた情報は、タクローが、データとしてまとめるようになった。
最初は「お気に入りの子達が、元気に育っているのを確認できるだけでも、良しとしよう・・・」などと、大人ぶっていた4人だったが「子どもが不当に扱われている」と感じる情報が増えてくると、怒りを蓄積していった。
「まぁ~った、アデリンのババァが、子どもを頭ごなしに叱りつけたか・・・」
タクローのまとめたデータを見ながら、フリイがそう呟いた。
「今回で、もう通算29回目ですぞ」
数値データをタクローが補足する。
「こっちからは、なんとも出来ないのが歯がゆいわねぇ・・・」
オネイロは悔しそうに、左耳のピアスをいじりながら、右手親指の爪を噛んだ。
「なんとかできないもんかねぇ・・・」
頭の後ろで手を組みながら、視線を上げてミドウは思案した。
いつしか門番達は、夕食を共にするようになり、各々の小屋を毎日順番に回りながら、酒の入った頭で、愚痴を言い合ったり、対策案を考えるようになっていた。子どもに入れ込みすぎているきらいはあったが、真剣になんとかしたいと思っていたのは事実だ。
「かあーーーーっ! 子どもを叱りつけたアデリンを、叱りつけてぇ! こう・・・ビターーーン! と、ビンタとかで!」
「フリイちゃん、それ、いいかも♪ このままじゃ、埒があかないし~・・・」
「・・・さすがに暴力は良くないと、思うでゴザルが・・・」
「・・・いや。タクロー、ここは世界樹の真下だぜ? ビンタしてケガさせても、すぐにそいつを治しちまえる! 3秒ルールだ! 3秒以内に治せばセーフだろ!?」
「いいねぇ、それ! あたいは賛成だ!」
「あたしもオッケーよ♪」
「3秒以内ならセーフ・・・で、ゴザルかなぁ?」
珍しくタクローが常識人側に回ったが、他の3人を止めることはできなかった。結局「子どもを全員、攫ってきたり、気にくわないハリティを全員半殺しにするよりはマシだろう」という結論に至った。彼らは脳筋なのだ。
やることが決まった門番4人は、さっそく計画を練っていった。
ーーーーーー
世界樹の下にはもちろん、世界樹の葉がたくさん落ちている。その「世界樹の葉」には、たちどころに傷を癒やす効果があった。ただし、その効き目は「枝から離れて24時間以内」に限られた。
地面に落ちている葉から、経過時間を判別するのは、ヒヨコのオス、メスを見分けるよりも難しかった。その為、古来より、傷を治す必要がある場合は、世界樹へ登り、葉を直接、採ってくるのが習わしだった。
太い幹をダイレクトに登っていったのでは、時間がかかるので、長い年月をかけて、世界樹の回りにはグルリと螺旋階段が作られた。もちろんその作業は(スレイプニル入場許可証を付けさせられた)サクノソトの住民がやった。10000段の階段が作られて、葉に届くようにはなったが、そこからでも未だ、世界樹の頂は、見えなかった。
ーーーーーー
門番達は今、オネイロの小屋で、クジ引き箱を4人で囲っていた。
「誰が、何引いても、うらみっこなしだぜ?」
「おうともよ! これは俺達、全員からの一撃だ!」
「滾るわぁ~♪」
「や、やはり、せ、拙者もでゴザルか・・・」
それぞれが各々の思惑を持ちつつも、順番にクジを引いていく。まだ各々、手は開かずにクジを握りしめ、全員が引き終えるのを待つ。
「おし。・・・みんな引いたな? ・・・じゃあ、せーのでいくぞ」
「おう!」
「「「「せーの!」」」」
「いやったわ~♪」
ビンタをする係、を引いたオネイロが歓喜した。
「これも、重要な役か・・・」
ハリティを固定する係、を引いたミドウがそう呟く。
「かーっ! 薬役か~・・・」
薬を飲ませる係、になったフリイはちょっと不服な声を出した。「うらみっこなし」と言ったのはフリイ自身だったのだが。
「ふぅ・・・拙者はこれでいいでゴザル」
世界樹の葉を取りに行く係、になったタクローは、むしろほっとした。
「ハリティ張り手」をするにあたり、彼らはこんな風に手順を決めていた。
① 一人が、世界樹の葉を採ってきて煎じる。
② 一人が、対象のハリティを後ろから羽交い締めにして動けなくする。
③ 一人が、「びたーーーん!」とビンタをかます。
④ 一人が、煎じた世界樹の青汁を、即座に飲ませて回復させる。
彼らはクジを引いて、それぞれの役割を決めたのだ。タクローが世界樹の葉を採ってきて煎じる。ミドウが対象のハリティを後ろから羽交い締めにする。オネイロがビンタをかます。それをフリイが回復して逃げる。初めてのハリティ張り手は、そういう手はずになった。
「んで。今回の対象は誰にする?」
「「「アデリン!」」」
フリイが聞くと、全員から同じ答えが返ってきた。彼女はニヤッと口元を歪めた。
「おっしゃ! いっちょやるか!」
「「「おおおおおお!」」」
・・・
・・・
・・・。
「な、なんですか、あなた達、ちょ、ちょっと、おやめなさい!」
覆面を付けたミドウが、アデリンを後ろから羽交い締めにした。
「ちょっと、だ、誰か! 誰かー!!!」
覆面を付けたフリイが、薬を取り出せたことを知らせる為、オネイロにOKサインを送った。彼らは何も声を発さずに、粛々と行動した。
「誰かーーーー!!!! ひぃぃぃいいいい!」
「どっせーーーーーい!!!」
ー びたーーーーーん!!! ー
いつもと違う野太い声を放った覆面オネイロが「びたーーーーーん!!!」とビンタをかました。
アデリンの三角メガネが吹き飛ぶ! だが彼女は「メガネメガネ」とは言わなかった。恐怖と痛みのせいで、彼女は、すでに気を失っていた・・・。
(おっと、ごめんよ)
フリイはそう小声でつぶやくと、アデリンの鼻をつまみ、世界樹の青汁を、口から流し込んだ。(ゴクリ・・・)薬が飲み込まれたことを確認したフリイは、またOKサインを出した。
その瞬間、彼ら3人は違う方向に、脱兎のごとく全速力で逃げた!!! それぞれの担当する門の方角へ向かって。
・・・
・・・
・・・。
「ふ~・・・やれやれ・・・。あれじゃあ、せっかく覆面をつけさせたのにバレバレねぇ~・・・」
ハリティ副頭のスザンヌは、頬に手を当てながら、ニコニコと笑ってそう言った。
「どうなさるおつもりでしゅか? お母上?」
スザンヌの娘で、ハリティ見習いのロザンヌは舌っ足らずに尋ねた。
「調整・・・するわ・・・」
未だニコニコしているスザンヌの眼の奥は、笑ってなかった。
ロザンヌは寒気を感じ、お漏らしに耐えた。(エルフ年齢で)11歳にして、ロザンヌはもうすぐハリティに昇格できそうなくらい、しっかり者で、がんばり家だったが、年齢以上に幼いところも多々あった。見た目は7~8歳に見えたし、まだおねしょは治っていなかった。
ーーーーーー
彼らの「ハリティ張り手」は、実はある程度まで、ハリティ副頭のスザンヌによって誘導されていた。
スザンヌは旧体制の「頭ごなしに子ども達にルールを押しつけようとする」古参のハリティを排除して「子ども達が自分たちで新しいルールを作っていける環境」を作りたかった。
スザンヌは年若い、柔軟な考えのハリティ達を仲間に取り込んでいき、少しずつ新しい常識を浸透させようとした。だが、高い地位にいて、声のでかいタイプのハリティがいつも邪魔になった。また、そういうハリティに限って、子どもを頭ごなしに叱りつけたりするのだ。
ハリティ頭のメリエムにそれを上伸したところで、彼女こそが古参派のトップなので意味が無い。古参のハリティ達は長老にも取り入っていたので、長老に言ってもメリエム派の味方をするだろう。
頭を悩ませていたスザンヌのところへ朗報が飛び込んだ。
ーーーーーー
「スザンヌ様。4バカ門番達が、育児室の情報を集め始めました」
カトリーヌが慇懃に膝を着いて報告した。
「そう。それはいいことね~」
スザンヌは両手を合わせてニコニコと楽しそうにしている。
「い、いいことですか・・・」
「うん。いいことよ~。これで次に進めるわ~。声をかけられたのは、誰?」
「セリーヌ、ジャクリーヌ、コリーヌです」
「あの3人ね・・・お仕事はひたむきにしてくれるんだけど・・・大方、あのミドウって子に声をかけられて、のぼせちゃった感じかな?」
「ご明察のとおりです。して、いかがいたしましょう?」
「それはねぇ・・・ゴニョゴニョゴニョ・・・」
スザンヌは、カトリーヌの耳元で作戦を告げると、ニッコリと笑った。カトリーヌは、スザンヌの「現場を見ていたかのような推理」と「今後の展開への布石」と「ニッコリ笑ったその笑顔」の3点セットに、畏怖した。
「この人の味方側で良かった・・・」
クソマジメで、主君の為なら死をも厭わない覚悟のカトリーヌだったが、この時ばかりは心からそう思った。
ーーーーーー
ハリティ副頭のスザンヌは、門番達が育児施設周辺への立ち入りを禁じられて以来、ずっと彼らの様子をカトリーヌに探らせていた。
彼らには門番をまかせられる程の力がある。おまけに大の子ども好きと来ている。門番達のその力を、古参ハリティの排除に利用できないか? スザンヌはそう考えていた。
政治的な思惑を別にすれば「子どもを見ながら、子どもみたいな顔でホワホワしていた」彼らがスザンヌは嫌いではなかった。だが、使えるなら使う。自分の目的の為に使えるものは何でも。スザンヌはそうして、若くして副頭までのし上がったのだ。
かくしてスザンヌの謀略によって「古参ハリティ達の悪い噂」が、わざと門番達に流されるようになった。セリーヌ、ジャクリーヌ、コリーヌは二重スパイ状態になり、ミドウから得た情報をスザンヌへ報告するようになり、スザンヌの指示の元、ミドウを誘導した。
スザンヌの思惑どおり、門番達は強行手段に出ることを決めた。・・・が、予想外に彼らは「3秒ルール」とか何とか言って「ビンタしてすぐに治す」方法を選んだ。そのぶっとんだアイデアを聞いたときは、スザンヌは「ぶふーーっ!」と本気で吹き出した。
(3秒ルールって笑。・・・別に半殺しにしてくれて、よかったのに)
スザンヌはニコニコしながら、そう思った。
スザンヌが一番困ったのは、彼らが「正々堂々と」ビンタをしようとしたことだ。正体を隠すでなく、真っ正面からそれを行うと言うのだ。それでは一度だけで終わってしまい、今後の抑止力にはならない。せめて覆面でもしてくれていれば、長老側に圧力をかけて「調整」できるのに。そう思った彼女は、珍しく、もどかしさで身もだえた。
セリーヌ、ジャクリーヌ、コリーヌがいくらミドウに正体を隠すように誘導しようとしても、のれんに腕押しだった。この時ばかりは、ミドウの「正しくあろうとする心」は、スザンヌにとって邪魔でしかなかった。
スザンヌは世界樹の階段を登りながら考えをめぐらせた。いつも彼女は煮詰まると世界樹を登って下りてくる。それだけで不思議と考えがまとまるのだ。
彼女は発想を転換して、娘のロザンヌをタクローの元へけしかけることにした。
ーーーーーー
(変人だって、聞いてるから、怖いなぁ・・・でも母上の為にも、がんばるでしゅ!)
「あ、あの~。タクローしゃん。お話がありましゅ・・・」
「!!!(舌っ足らず幼女キターーー!)な、な、な、なんでござろう?」
突如として、自分の家にやってきた幼女に、タクローは緊張して、挙動不審。自らも舌が回らなくなった状態で、かろうじてそう答えた。
幼女は舌っ足らずで緊張した顔で。それでも頑張っている。その可愛い三つ編みちゃんは、彼のストライクゾーン、ど真ん中だった。
「タクローしゃんに、お願いがありましゅ」
「いいですとも!!!」
「へ? まだ、お願い、言ってましぇんよ?」
「幼女のお願いなら、拙者、なんでも叶えてみせますぞ!」
「へ?」
「幼女のお願いなら、拙者、なんでも叶えてみせますぞ!」
同じセリフを2回聞いた気がしたが、ロザンヌはちょっとキュンときた。
・・・
・・・
・・・。
ミドウの小屋で他の門番達、3人の前で、タクローは立ち上がり、声を張り上げた。
「拙者たちは、ハリティを一回、張り手しただけで、よいでゴザルか? それで幼女達を守ったと言えるでゴザルか?」
「「「・・・」」」
「違うでござろう!!! 正々堂々としてなくて、いいでゴザル! そんなことよりも大切なことがあるでゴザル!! それは何度も何度も何度だって、幼女達を助けてあげることでゴザル! そこにこそ、意義があるのでござろうが!! それ以外は、なりふりかまわずで、いいでゴザル!! その為に正体を隠す必要があるのであれば、何を恥じることがあるでゴザルか!!!」
「「「・・・」」」
タクローの大演説が終わり、辺りは静寂に包まれた。他の3人とも返す言葉もなかった。
「お、おぅ」
「わ、わかったわ」
「タクロー。お前の言うとおりだ・・・」
それぞれがポツリポツリと、肯定の言葉を延べ、ハリティ張り手は覆面を付けて行われることになった。スザンヌは、ロザンヌからそれを聞いて、どう「調整」していこうか? と、さっそくニコニコと、思案を始めた。
ーーーーーー
「あ、タクローしゃん!!!」
ロザンヌは顔を赤くしながら、タクローに駆け寄った。
「今日はどんなお願いでゴザルか?」
「へ? 今日は、お願いとか、ないでしゅよ? ちょっとお話がしたくて・・・」
「今日は、拙者とお話するのが、お仕事でゴザルかー。えらいでゴザルよ、ロザンヌ殿」
「ちがうの! 今日はお仕事じゃないのでしゅ!!!」
「そうでゴザルか~。まあじゃあ、そういうことで、いいでゴザルよ」
「もうっ!! ホントなのに!」
ロザンヌはプンプン怒りながら去って行った。
ロザンヌは、お願いを快く引き受けてくれた上、セリーヌ、ジャクリーヌ、コリーヌの3人がかりで解決できなかった問題を解決してくれたタクローに、好意を抱き始めていた。長い間タクローが生きてきて、初めて幼女に好意を抱かれた瞬間だった。
だが、タクローはそのフラグを見事に一瞬でへし折った。彼はやっぱり残念な奴だった。
ーーーーーー
一度目のハリティ張り手が終わった後、ハリティ副頭のスザンヌは、長老と会合した。そこで彼女は長老自身の不祥事を知っていることをちらつかせた。その上で覆面達の正体を追求しないように要求した。
徒党を組み、問題を起こすことが多くなっていた門番達に脅威を感じだしていた長老は「彼らのガス抜きにもなるかもしれない」と理由を見つけて、ハリティ張り手を黙認することにした。もちろん自身の不祥事を暴かれて失脚するのを防ぐ為でもある。
スザンヌは長老好みの女エルフを彼の世話係に付けて、さらに長老に取り入っていった。メリエム派が、長老に「門番4人が犯人である」と何度、告げても長老は「確証が持てぬうちは、裁けぬのう」と、とぼけるようになった。
スザンヌはさらに「ハリティ張り手を受けたハリティには正義の鉄槌が下った」のだという雰囲気も作っていった。実際に古参の口うるさいハリティがビンタされたのを見た、年若いハリティ達は胸がすく思いがしていたし、多くがスザンヌ派になっていった。
そうして彼らの「ハリティ張り手」は続いてきたのだった。
ーーーーーー
「野郎ども! ハリティ張り手を開催するぞ!」
「「「おおおーーーーっ!!!」」」
フリイが吠えた。他の3人の門番達はそれに応え、拳を高く振り上げた。
「・・・おおー・・・?」
ハテナマーク付きで、スーも少しだけ拳を上げた。
しばらく、スーの面倒を見るのに夢中になって、ハリティ張り手をしていなかった彼らの元に「ミリアムがゲンコツで子どもを躾けだした」とリークがあった。もちろんスザンヌからの誘導だったが、彼らは知るよしもない。
そうして久々のハリティ張り手が開催されることになった。好奇心旺盛なスーは、良くわからないそれを、とりあえず一度、傍観することに決めた。
「おっりゃーーーーーーっ!!!」
覆面オネイロに羽交い締めされたミリアムの頬を、今回のビンタ担当になった覆面フリイが「びたーーーーーん!」と打った。
すかさず覆面タクローが、ミリアムに薬を飲ませる。世界樹を煎じる&スーを背負う担当になったミドウは、それを見て全力で逃げた。さすがにその頃には、一直線で、自分の家をめざすことはなくなっていた。
・・・
・・・
・・・。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・ふぅ。・・・どうだったスー? スカッとしたか?」
「いきなり、暴力は、良くない、気がした。ミドにぃ」
「そ、そっか」
「うん。せめて張り手の前に、手紙、送るべき」
「えっと、これから、張り手をします。みたいな?」
「ううん。直してほしい、こと書いて、守られなかったら、張り手をします、って」
「なるほど・・・一回、猶予をあげるわけだ」
「うん。その方がまだ、マシだと、思う」
「でも、俺らみんな、文字とかほとんど書けないんだよ・・・」
「じゃあ、最初は、ボクが手紙、書く。その間に、みんなに、文字も教える」
「ははっ、スーは凄いな。ほんと、毎日、成長してく。じゃあ、それでいくか」
「ありがとミドにぃ」
「おうよ!」
こうして、スーの一声で、ハリティ張り手は、幕を閉じることになった。他の門番達にも異論はなかったし、スーのたどたどしくも真剣な手紙を受け取ったハリティは、ある意味ビンタよりも打ちのめされた。
副頭のスザンヌは、すでに頭に成り代わらんとするところまで勢力を拡大していた。その頃には古参の排除も、あらかた終わっていたのだ。
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