悪役令嬢がヒロインからのハラスメントにビンタをぶちかますまで。

倉桐ぱきぽ

文字の大きさ
22 / 24
番外&後日談

SS 悪役一家のある日の晩餐

しおりを挟む
 その日、私は、久しぶりに実家へ戻った。
 家族で夕飯を食べるのも、久しぶりのこと。
 テーブルに並ぶのは、私の好物ばかり。しかもどれもが、三ツ星レストラン並みに美味しかった。

 ……まあ、それも当然。

 うちのシェフは、超有名レストランの前総料理長。それを父が、札束の山の力で引き抜いてきたのだ。
 以前、家族でそのレストランを訪れた時、『毎日でも食べたい』と、私がうっかり言ってしまったからだった。

 私は父が年をとってからできた娘で、甘やかされて育った。幼くして母を亡くすと、甘々になった。そして、魔法学校の寮に入って、めったに家に帰らなくなってからは、ゲロ甘になってしまった。
 それは、年の離れた二人の兄も同じだった。

 私はとにかく、超過保護に甘やかされて育った。望めば何でも手に入り、わがまま放題、やりたい放題。嘘をついたって、何をやったって、叱られることはなかった。

 そりゃあ、悪役令嬢になるわ。ヒロインだって殺そうとするわ……。
 
 思わず、ため息がこぼれてしまった。それに、二人の兄がすぐに反応した。

「どうした、ロベリーちゃん。何かあったのか?」
「まさか、学校でいじめられたのか?」
「何⁉ 誰だ、そいつは⁉」
「うちのかわいいロベリーちゃんをいじめるとは、許せん!」

 二人の兄がヒートアップしたところで。
 ドスンと、テーブルを叩いたのは、父だった。

「ロベリーちゃんをいじめるとは、一体、どこの馬の骨だ! このワシが成敗してくれる!」

 今すぐに、悪代官も組長も黒幕も、どんな悪役をもこなせそうな強面。普通にしていても、どすの利いた低い声。
 私の第一印象は、間違ってなかった。悪役令嬢の父は、本当に悪役伯爵だったのだ。

「僕は、手足の爪を一枚ずつ✕✕してやる!」
「だったら、僕は✕✕に✕✕んで、海に✕✕めてやる!」
「このバカ息子どもがぁあああ!」
「父上⁉」
「生ぬるいわぁあああ! お前たちは生ぬるすぎて、もはや、冷水! ワシは、そいつを生きながらにして、全身の✕✕を✕✕で、手足の✕✕を一本ずつ✕✕ってやり、最後は、両足に✕✕を✕✕けて、海に✕✕めてやるわぁあああ!!!」

 わーはっはっと、高笑いする父に、

「さすがは父上!」

 二人の兄も同意した。

 こうやって、日々、悪行の数々と悪の名言をすり込まれ、極悪英才教育のもと、悪役令嬢は作られたわけだ。
 私はナイフとフォークを置いてから、静かに呼びかけた。

「お父様。もし、そんなことをなさったら、大事なアレを切り刻んでしまいますわよ」

 ギロリとにらみつければ、父の手からカラーンとナイフが落ちた。

 父も昔はあくどいこともしたらしい。それも、母と出会ってからは、すっかり改心したというけど。でも未だに、昔のクセは抜けきらないようだ。その度、今では私が母に変わって、にらみをきかせているのである。こっちだって大好きな家族を、犯罪者にするわけにはいかない。
 
「お兄様たちも覚悟なさってください。使い物にならなくなるまで、ボッコボコにして、細切れにして、最後は燃やしてやりますわ」

 二人の兄も立て続けに、カラカラっと、ナイフとフォークを落とす。

「ロ、ロベリーちゃん……」

 食堂は静まり返り、父も兄もしゅんと肩を落としていた。
 父も兄も、根っからの悪人ではないと思っている。身内びいきかもしれないけど。私に関わることにだけ、見境がつかなくなるだけで。

「お父様とお兄様には、何度も言ってますわよね? 法を犯すようなこと、犯罪者になるような真似はしないで下さいって!」
「じょじょ冗談だよ。ロベリーちゃん。冗談に決まっているじゃないか! な? な? お前たち」
「そそ、そうだよ」
「も、もちろんだ」

 兄たちも次々とうなずく。

「明日も社会に貢献するぞ。ノブレス・オブリージュ!」
「ノブレス・オブリージュ!」
「ノブレス・オブリージュ!」

 父と兄は、拳を天に突き上げ、コール・アンド・レスポンスを繰り返す。

 ……なんだか、やばい団体っぽい。でも、まぁ、一家で犯罪者になるよりマシか。

 叫び続ける父と兄を放置して、私はシェフにデザートをお願いした。


しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

そんな世界なら滅んでしまえ

キマイラ
恋愛
魔王を倒す勇者パーティーの聖女に選ばれた私は前世の記憶を取り戻した。貞操観念の厳しいこの世界でパーティーの全員と交合せよだなんてありえないことを言われてしまったが絶対お断りである。私が役目をほうきしたくらいで滅ぶ世界なら滅んでしまえばよいのでは? そんなわけで私は魔王に庇護を求めるべく魔界へと旅立った。

悪役令嬢、魔法使いになる

Na20
恋愛
前世で病弱だった私は死んだ。 私は死ぬ間際に願った。 もしも生まれ変われるのなら、健康で丈夫な身体がほしいと。それに魔法が使えたらいいのにと。 そしてその願いは叶えられた。 小説に登場する悪役令嬢として。 本来婚約者になる王子などこれっぽっちも興味はない。せっかく手に入れた二度目の人生。私は好きなように生きるのだ。 私、魔法使いになります! ※ご都合主義、設定ゆるいです ※小説家になろう様にも掲載しています

王子の婚約者の決定が、候補者によるジャンケンの結果であることを王子は知らない

mios
恋愛
第一王子の婚約者は、コリーナ・ザガン伯爵令嬢に決定した。彼女は目にうっすらと涙を浮かべていたが、皆嬉し涙だと思っていた。 だが、他の候補者だったご令嬢は知っている。誰もなりたがらなかった婚約者の地位を候補者達は、厳正なるジャンケンで決めたことを。二連勝の後の五連敗で、彼女はなりたくもない王子の婚約者に決定してしまった。

笑わない妻を娶りました

mios
恋愛
伯爵家嫡男であるスタン・タイロンは、伯爵家を継ぐ際に妻を娶ることにした。 同じ伯爵位で、友人であるオリバー・クレンズの従姉妹で笑わないことから氷の女神とも呼ばれているミスティア・ドゥーラ嬢。 彼女は美しく、スタンは一目惚れをし、トントン拍子に婚約・結婚することになったのだが。

婚約者は一途なので

mios
恋愛
婚約者と私を別れさせる為にある子爵令嬢が現れた。婚約者は公爵家嫡男。私は伯爵令嬢。学園卒業後すぐに婚姻する予定の伯爵令嬢は、焦った女性達から、公爵夫人の座をかけて狙われることになる。

あの気持ち悪い贈り物は貴方でしたの?

mios
恋愛
私は今見知らぬ男性に謝られている。 貴方の愛には、答えられないと。 ええと、貴方のことを存じ上げないのですが、初めましてですよね?

ヒロインの味方のモブ令嬢は、ヒロインを見捨てる

mios
恋愛
ヒロインの味方をずっとしておりました。前世の推しであり、やっと出会えたのですから。でもね、ちょっとゲームと雰囲気が違います。 どうやらヒロインに利用されていただけのようです。婚約者?熨斗つけてお渡ししますわ。 金の切れ目は縁の切れ目。私、鞍替え致します。 ヒロインの味方のモブ令嬢が、ヒロインにいいように利用されて、悪役令嬢に助けを求めたら、幸せが待っていた話。

前世の記憶を思い出したら、なんだか冷静になってあれだけ愛していた婚約者がどうでもよくなりました

下菊みこと
恋愛
シュゼットは自分なりの幸せを見つける。 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...