【完結】悪役令嬢はゲームに巻き込まれない為に攻略対象者の弟を連れて隣国に逃げます

kana

文字の大きさ
35 / 122

35

しおりを挟む
泣いたことに気付かれないように、顔を洗って祖父母とアランとレイのいるサロンに向かう。

大丈夫。私は落ち着いているわ。
3ヶ月前のルフランに出会う前の私に戻れる。
そう自分に何度も言い聞かせながらサロンの扉をノックする。

私の顔を見て一瞬だけアランの眉が下がった。
さすが双子ね。
生まれた時からずっと一緒にいたもの、隠し事なんてすぐにバレるわよね。
何も聞かないでいてくれるアランには感謝だわ。


お祖母様に促されて隣に座ると、アランが話し出す。


「お爺様、お祖母様、僕がアトラニア王国で見つけた生涯幸せにすると誓ったレイチェル・ビジョップ侯爵令嬢です。」

アランってば、キリリっとしてカッコイイじゃない。

「アトラニア王国、ビジョップ侯爵家が嫡女レイチェルと申します。よろしくお願いいたします。」

そう言ってレイは見事なカーテシーで挨拶をする。

「あら?アランったらレイチェルちゃんを婚約者から奪ってきたのね」

さすがお祖母様ね。
レイの名前だけで他国の王族の婚約者だと分かるなんて凄いわ。

うふふ、とアランを冷やかす様に言うお祖母様にアトラニア王国の学院であったことを話すアラン。

私も横から2人の出会いを話し出すと、レイが真っ赤になって止めようとするが、アランがレイの手を握って真剣な顔で祖父母に伝える。

「僕は初めてレイに会った時から彼女に決めていました。僕のお嫁さんになるのは彼女だけです」

レイも覚悟を決めたのか、真っ直ぐに祖父母を見て礼をする。

「わたしがウォルシュ侯爵家に嫁ぐことを許して頂けますか」

お爺様もお祖母様も顔を見合せて笑いだす。

「代々ウォルシュ侯爵家は恋愛結婚だ。アランが誰を選ぼうが反対することはないよ。しかもアランが選んだのはレイチェル嬢だ。文句一つないよ。だから2人とも安心しなさい。」

「もう将来の相手を見つけられるほど大人になったのね。アラン、レイチェルちゃんを大切にするのよ」

そうなんだよね。
我が家は貴族では珍しい恋愛結婚だとお祖母様からお爺様とのトキメキの出会いを何度も幼い頃に聞かされたわね。
それに、アランの選んだレイは王子妃教育も終わらせている完璧令嬢だし、とってもいい子で可愛いもの。反対するところがないわ。

来週にはお父様とお母様が帰ってくるから、もっと賑やかになる。

うん。大丈夫だ。私は寂しくない。

侯爵家の使用人のみんなもアランの連れてきたレイを快く受け入れてくれた。

みんなからの祝福の言葉に照れながらも嬉しそうな2人の顔が見られて私も嬉しい。

夕食もアランとレイの婚約を祝って使用人も含めた賑やかな食事会となった。



夜、レイと念願の女子会をすることになった。

レイが何を話し、何を聞きたいのか想像はつく。
たとえ親友のレイに聞かれても私の思いは教えられない。
それが思い出になる頃には『私昔はルフランのことが好きだったのよ。』と話せるようになるだろう。
それまではせっかく心に蓋をしたんだ、開けるような事はしない。
ルフランのこれから歩む道と私の選んだ道は交わる事はないのだから・・・

だからその時まではそっとしておいてね。
でないと泣いちゃうよ。


結局レイは何も聞かないでいてくれた。
それでも私たちには前世の記憶がお互いにあるから、話は尽きなかった。

前世のレイは高校生の時にご両親を事故で亡くし、引き取ってくれる親戚もおらず保険金で大学に通いながら父親と同じ弁護士を目指して、日々勉強に明け暮れていたそうだ。
そして喪女だったと・・・

レイ、そこまで話さなくてもいいんだよ。

私も家族のことを話した。

私の前世の両親は仕事ばかりで幼い頃から参観日や運動会にも来てくれないような人達だった。
もちろん将来を決める大学受験の三者面談にさえ来なかった。
お金だけは不自由する事はなかったが、愛されていると実感した事は1度もなかった。

家に一歩入ると時計の秒針の音と、家電製品の音、私の動く音しかしない寂しい家だった。
(私が死んでも両親は悲しむことすらしなかったかもしれない)

乙女ゲームを始めたのも、最初は寂しさを紛らわせる為だった。

そんな環境で育った私が転生して、ウォルシュ家に生まれ両親にも祖父母にも使用人達までもが大切にしてくれて、気にかけてくれることが最初は夢を見ているのかと思った。
だって両親も祖父母も無条件で私に愛を与えてくれるのよ。

そしてアランの存在が私を姉にしてくれた。
泣いても笑っても可愛くて可愛くて仕方がなかった。
初めて守ってあげたいと思ったの。

「私は前世の世界よりも、今の方が幸せよ。」
とレイに笑顔で言えた。

そうよね。私はもう1人じゃない。

私を愛してくれる侯爵家の家族も使用人たちだっている。

公爵家の伯父様や伯母様だっている。

『私たちこの世界に転生してよかったね。』

私とレイの言葉がかぶる。
それが可笑しくてしばらく笑いが止まらなかった。


ありがとうレイ。

こんな日に1人にしないでいてくれて・・・

さすがアランが選んで、私の親友なだけあるわね。

その日私は余計なことは何も考えずに眠りにつくことが出来た。


しおりを挟む
感想 317

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢に転生したと気付いたら、咄嗟に婚約者の記憶を失くしたフリをしてしまった。

ねーさん
恋愛
 あ、私、悪役令嬢だ。  クリスティナは婚約者であるアレクシス王子に近付くフローラを階段から落とそうとして、誤って自分が落ちてしまう。  気を失ったクリスティナの頭に前世で読んだ小説のストーリーが甦る。自分がその小説の悪役令嬢に転生したと気付いたクリスティナは、目が覚めた時「貴方は誰?」と咄嗟に記憶を失くしたフリをしてしまって──…

記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~

Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。 走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。

転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!? 容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。 「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」 ところが。 ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。 無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!? でも、よく考えたら―― 私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに) お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。 これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。 じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――! 本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。 アイデア提供者:ゆう(YuFidi) URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464

私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?

きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。 しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……

「君以外を愛する気は無い」と婚約者様が溺愛し始めたので、異世界から聖女が来ても大丈夫なようです。

海空里和
恋愛
婚約者のアシュリー第二王子にべた惚れなステラは、彼のために努力を重ね、剣も魔法もトップクラス。彼にも隠すことなく、重い恋心をぶつけてきた。 アシュリーも、そんなステラの愛を静かに受け止めていた。 しかし、この国は20年に一度聖女を召喚し、皇太子と結婚をする。アシュリーは、この国の皇太子。 「たとえ聖女様にだって、アシュリー様は渡さない!」 聖女と勝負してでも彼を渡さないと思う一方、ステラはアシュリーに切り捨てられる覚悟をしていた。そんなステラに、彼が告げたのは意外な言葉で………。 ※本編は全7話で完結します。 ※こんなお話が書いてみたくて、勢いで書き上げたので、設定が緩めです。

『お前の顔は見飽きた!』内心ガッツポーズで辺境へ

夏乃みのり
恋愛
「リーナ・フォン・アトラス! 貴様との婚約を破棄する!」 華やかな王宮の夜会で、第一王子ジュリアンに突きつけられた非情な宣告。冤罪を被せられ、冷酷な悪役令嬢として追放を言い渡されたリーナだったが、彼女の内心は……「やったーーー! これでやっとトレーニングに専念できるわ!」と歓喜に震えていた!

婚約破棄で、おひとり様になれるはずだったのに!?

パリパリかぷちーの
恋愛
主人公ルシアン・ヴァイオレットは、「悪役令嬢」として振る舞う孤独愛好家の公爵令嬢。念願だった第一王子アランとの婚約破棄を言い渡されると、内心では歓喜し、大都会の喧騒から逃れて森の奥の廃墟同然の別荘へと引きこもる。ルシアンの目的は、誰にも邪魔されない至高の静寂ライフを満喫することだった。 しかし、彼女の理想郷にはすでに先客がいた。それは、無口で無愛想だがハイスペックな謎の男、キース。実は彼は、王国の裏社会を統べる『影の英雄』と呼ばれる辺境伯であり、ルシアンの孤高の姿に心奪われた重度の隠れファンだった。

全てを捨てて消え去ろうとしたのですが…なぜか殿下に執着されています

Karamimi
恋愛
侯爵令嬢のセーラは、1人崖から海を見つめていた。大好きだった父は、2ヶ月前に事故死。愛していた婚約者、ワイアームは、公爵令嬢のレイリスに夢中。 さらにレイリスに酷い事をしたという噂まで流されたセーラは、貴族世界で完全に孤立していた。独りぼっちになってしまった彼女は、絶望の中海を見つめる。 “私さえいなくなれば、皆幸せになれる” そう強く思ったセーラは、子供の頃から大好きだった歌を口ずさみながら、海に身を投げたのだった。 一方、婚約者でもあるワイアームもまた、一人孤独な戦いをしていた。それもこれも、愛するセーラを守るため。 そんなワイアームの気持ちなど全く知らないセーラは… 龍の血を受け継いだワイアームと、海神の娘の血を受け継いだセーラの恋の物語です。 ご都合主義全開、ファンタジー要素が強め?な作品です。 よろしくお願いいたします。 ※カクヨム、小説家になろうでも同時配信しています。

処理中です...