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Episode.02
ボクを知っている、知らない兄弟
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数ヶ月に一度、澄人は理浜大学付属総合病院で診察を受けていた。裕二とは真逆となる、希少な最低ランクアルファである彼は、抗フェロモン剤の効果と影響を長期調査するための診察を受けている。澄人が進学先にこの大学に選んだ理由の一つが、この定期検診だった。
朝一番の診察を終え、獣医学部棟へ戻る途中、付属総合病院外来棟の端で、澄人はよく知る人物を見た気がして振り返った。その人が、先日、美耶が選んだと記憶しているシャツを着た鷹也に見えたからだ。
人影はすぐ見えなくなり、場所が場所だけに、澄人は深追いをしなかった。人違いだった可能性の方が高く、見ず知らずの人物を追いかけるリスクを負いたくなかった、というのもある。
澄人が通うのは、バース性治療で国内最高権威と実績を持つ教授の診察室。ここは、通院患者の特性のため、診療内容を問わず、他の患者と遭わないように配慮されている。具体的には、通常時間外診察や、他者と遭わないよう配慮された個別待合室など、だ。
澄人の場合、発情などでフェロモン放出が不安定なオメガ患者との接触を避け、残り香の影響を受けない早朝に、診察時間を設定してもらっている。
付属総合病院外来棟の先、医学部棟の横で、澄人は馬術部先輩の上杉晃に会った。
「お、久しぶり」
「あ、お久しぶりです、先輩」
気軽に右手を振る晃に、澄人は軽い会釈を交わす。
聞くと、晃は厩舎で馬に会ってきた所だ、と答えた。
「松本くんは?」
「あ、図書館に行こうとボンヤリ歩いていたら、通り過ぎて迷っちゃって」
澄人は、知人に遭ったら使おうと決めていた言い訳を口にする。親しい鷹也と美耶と信彦に、成り行きで話した以外にはカミングアウトしていないためだ。特に、医学部の晃には、コンプレックスもあって、知られたくない気持ちが強かったからなのかもしれない。
それに実際、獣医学部棟から総合図書館へ向かったその先に、医学部棟と付属総合病院がある。
晃は、澄人に、突っ込んだことは聞かなかった。
それより、と目を輝かせて、別の質問をしてくる。
「俺、忙しくて全然知らなかったんだけど
高遠部長サマに恋人ができた、ってウワサ
あれ、ホント?」
「… あー ……」
と、澄人が視線をそらす。
「ファンのコたちとかに聞かれちゃってさ
コッチであの人と交流があるの、俺だけだし
相手は部の後輩らしいから確認してくれ、って
ツツカレまくってて」
医学部3年になり、専門課程の詰め込み講義と実習が増えて忙しい晃が、久しぶりに厩舎に足を運んだ理由を知り、澄人は少し笑いそうになった。
もったいぶって悩んだふりをしてから、答える。
「残念ながら、本当です
ほら、学生アパートが放火される事件があったじゃないですか
三ツ橋くん、そのアパートの住人で
困っていたところを、速攻で囲われたんです」
「え、一緒に住んでるの? あのタワマンに?!
三ツ橋くんって、オメガだっけ??」
ゴシップ好きの、格好の餌食じゃないか、と晃が声をあげて笑った。
澄人、美耶、鷹也の3人は、ほとんどの講義と実習を一緒に受けているため、昼食も同席となることが多い。時間が合えば、そこへ、裕二と信彦が加わる。しかも、裕二が後から合流した時は必ず、鷹也の隣に座る。
食堂に居合わせた人々が耳をそばだてて聞く2人の会話は、5人との馬の話題か、せいぜい、帰宅時間のすり合わせくらいなのだが。
その日は、実習で遅くなった裕二以外、鷹也、澄人、美耶、信彦、の4人で雑談を楽しんでいた。
いつもの6人席に集まり、鷹也の右隣に澄人、前に美耶、澄人の前に信彦が座る。鷹也の左隣は空席だった。
他学科の学生が2人、長身で目鼻立ちの整った、よく似た2人組が、何かを話しながら、食堂全体を見回している。
2人は楽しそうに会話をする鷹也と澄人らを見つけると、足早に駆け寄ってきた。
「やっぱりタカシだ
僕は翔だ」
「瞬だよ」
「ずっと探してたんだ
ココで逢えるなんて」
「背も伸びたし、声変わりしたから
わからない?」
当惑し、固まる鷹也を取り囲み、子犬がじゃれつくようにまくし立てる。
一方的に話し続ける2人を、苛立った澄人が制止した。
「どなたかはわかりませんが
彼は」
チッ、と、瞬が、派手な音を立てて舌打ちをする。翔は、鷹也に向けるものとは正反対の、蔑む目で澄人を見下した。
「また、最低ランクにつきまとわれているの?」
「はあ?」
ガタッ と大きな音を立て、澄人が勢いよくイスから立ち上がり、2人を睨みつける。
「コレだから、最低ランクは」
そう言い放って、翔と瞬は澄人を無視し、驚いて動けない鷹也の両肩を左右から抱き抱え、そのまま連れ出そうとした。
「ちょ、ちょっと」
美耶が慌てて声をかけてなだめ、信彦も席を立って翔と瞬を止める。
「なにをしている」
食堂全体の温度が、一気に下がった気がした。
その場に、食堂に居合わせた全員が、硬直する。真っ先に、血の気が失せた澄人が、全身の力が抜けたように、ペタリと、イスに座る。しかも、座り続けることができず、テーブルに突っ伏してしまった。
翔と瞬も、両腕の力が抜け、抱えていた鷹也を離し、青ざめた顔になって床に膝をつく。
2人の手が離れ、バランスを崩して倒れそうになった鷹也を、現れた裕二が抱きとめ、翔と瞬を睨みつけた。
「これは、どういうことだ?」
静かだが、怒気を含んだ裕二の声に、さらに、空気が凍りつく。
裕二の、超上位アルファの強烈な威嚇だ。
「……高遠 部 ちょ …」
絞り出すような美耶の声で、腕の中で失神した鷹也とテーブルに倒れた澄人、床に突っ伏した翔と瞬、に気づき、裕二は周囲を見回す。
食堂に残っているのは、裕二の威嚇に負けて動けなくなっている者ばかり。信彦と美耶のような一部のベータが、動けない中で、かろうじて意識を保っているような状態だった。
早い段階で逃げ出した誰かが呼んだのだろう、医学部バース性科の永浜義登准教授が、同科の医師と看護師を引き連れて、食堂に駆けつけた。
「すごいな、トップアルファは」
感嘆の声をあげ、永浜准教授は食堂の惨状を見渡してから、中症から軽症の者はその場で対応するように、とトリアージの指示を出す。配下の医師と看護師らは、指示に従って手際よく、被害者を分け、順に鎮痛剤を飲ませ、酸素吸引などの治療を行ってゆく。
食堂に居合わせた学生と職員は、合わせて28名。うち、担架で運ばれたのは、間近で威嚇を受けた澄人と鷹也、翔と瞬の4名。
准教授らの診断結果、意識不明の澄人と鷹也は1人部屋、翔と瞬は2人部屋で入院。裕二も結果次第で検査入院、となった。
大学教務課等には、永浜准教授の采配で、威嚇による事故の原因は裕二の体調不良と報告された。しかし、目撃者と被害者が多かったことに先行の噂が加わり、痴話喧嘩が原因だと、学内の誰もが信じて疑わなかった。
「メスを取り合うのはオスの本能だからねぇ」
永浜准教授は診察室で、裕二と美耶と信彦の3人を前に、楽しそうに笑った。
会話のできる当事者たちへの、治療という名目の聴取である。
裕二は今まで、抑制剤の服用経験がない。一応、緊急避難用を持ち歩いてはいるが、実際にオメガのフェロモンに反応したことがないからだ。そのため、ランク判定以降、ハーズ性科の診察を受けたこともない。だからなのか、永浜准教授らはA++ランクのアルファの能力を数値化する絶好の機会と捉えているようだった。
准教授が、知識欲を抑えきれずに目を輝かせている一方で、医局の職員たちは、皆が憧れるトップアルファのゴシップに、興味津々といった様子にも見てとれる。
その結果、事件性は全く追求されなかった。
トラブルの原因となった2人の身元も、あっさりと判明した。彼らは医学部2年の名物学生だった。
彼らは、学部内では大山兄弟と呼ばれる、双子でもないのにセットで扱いる有名人だ。兄の翔が4月頭、弟の瞬が3月末生れだったため同学年となり、本人たちも好んで双子のように、常に一緒に行動しているためだ。しかも、2人ともAmのアルファ。裕二ほどではないが人気があり、取り巻きのオメガやベータ女性の数も多い。
その取り巻きたちに誘われる度に、2人は同じ言葉で答えていた。
「僕たちには運命の番がいてね
再会する日を待っているんだ」
「それが、三っちゃん、三ツ橋くん?
彼、ベータでしょ」
全員が永浜准教授を見た。
「それには、答えられない」
医者として当然の返事に、美耶と信彦の2人が落胆する。が、裕二だけは、思い当たる節があった。
恋人の振りをしてくれと頼んだ時の、鷹也の言葉。
『ボクは「もう」、オメガでも女性でもないのに』
裕二がそのことを思い出した時、大山兄弟の担当医が現れ、永浜准教授に耳打ちをする。
准教授は、少し待っていてくれ、とだけ告げて診察室を出て行った。
残された美耶と信彦を前に、裕二が頭を下げる。
「不用意に威嚇を発してしてしまって、
すまなかった」
驚いた美耶は言葉が出ず、ただ、頭と、顔の前に出した両手を、勢いよく左右に振った。
信彦も、頬を掻いて苦笑いをする。
「いゃぁ、お前のグレアなんて、初めてだよ
トップアルファの威嚇なんて、そうそう経験できるものじゃないから、なぁ」
それから、ふざけたように、付け加えた。
「数日間、食堂を買い切って、利用者全員全額無料にして、賠償金代わりにすれば、許されるんじゃないか」
「特別メニューでもいいから、ドルチェとか、増やして欲しいわ」
美耶もやっと笑った。
朝一番の診察を終え、獣医学部棟へ戻る途中、付属総合病院外来棟の端で、澄人はよく知る人物を見た気がして振り返った。その人が、先日、美耶が選んだと記憶しているシャツを着た鷹也に見えたからだ。
人影はすぐ見えなくなり、場所が場所だけに、澄人は深追いをしなかった。人違いだった可能性の方が高く、見ず知らずの人物を追いかけるリスクを負いたくなかった、というのもある。
澄人が通うのは、バース性治療で国内最高権威と実績を持つ教授の診察室。ここは、通院患者の特性のため、診療内容を問わず、他の患者と遭わないように配慮されている。具体的には、通常時間外診察や、他者と遭わないよう配慮された個別待合室など、だ。
澄人の場合、発情などでフェロモン放出が不安定なオメガ患者との接触を避け、残り香の影響を受けない早朝に、診察時間を設定してもらっている。
付属総合病院外来棟の先、医学部棟の横で、澄人は馬術部先輩の上杉晃に会った。
「お、久しぶり」
「あ、お久しぶりです、先輩」
気軽に右手を振る晃に、澄人は軽い会釈を交わす。
聞くと、晃は厩舎で馬に会ってきた所だ、と答えた。
「松本くんは?」
「あ、図書館に行こうとボンヤリ歩いていたら、通り過ぎて迷っちゃって」
澄人は、知人に遭ったら使おうと決めていた言い訳を口にする。親しい鷹也と美耶と信彦に、成り行きで話した以外にはカミングアウトしていないためだ。特に、医学部の晃には、コンプレックスもあって、知られたくない気持ちが強かったからなのかもしれない。
それに実際、獣医学部棟から総合図書館へ向かったその先に、医学部棟と付属総合病院がある。
晃は、澄人に、突っ込んだことは聞かなかった。
それより、と目を輝かせて、別の質問をしてくる。
「俺、忙しくて全然知らなかったんだけど
高遠部長サマに恋人ができた、ってウワサ
あれ、ホント?」
「… あー ……」
と、澄人が視線をそらす。
「ファンのコたちとかに聞かれちゃってさ
コッチであの人と交流があるの、俺だけだし
相手は部の後輩らしいから確認してくれ、って
ツツカレまくってて」
医学部3年になり、専門課程の詰め込み講義と実習が増えて忙しい晃が、久しぶりに厩舎に足を運んだ理由を知り、澄人は少し笑いそうになった。
もったいぶって悩んだふりをしてから、答える。
「残念ながら、本当です
ほら、学生アパートが放火される事件があったじゃないですか
三ツ橋くん、そのアパートの住人で
困っていたところを、速攻で囲われたんです」
「え、一緒に住んでるの? あのタワマンに?!
三ツ橋くんって、オメガだっけ??」
ゴシップ好きの、格好の餌食じゃないか、と晃が声をあげて笑った。
澄人、美耶、鷹也の3人は、ほとんどの講義と実習を一緒に受けているため、昼食も同席となることが多い。時間が合えば、そこへ、裕二と信彦が加わる。しかも、裕二が後から合流した時は必ず、鷹也の隣に座る。
食堂に居合わせた人々が耳をそばだてて聞く2人の会話は、5人との馬の話題か、せいぜい、帰宅時間のすり合わせくらいなのだが。
その日は、実習で遅くなった裕二以外、鷹也、澄人、美耶、信彦、の4人で雑談を楽しんでいた。
いつもの6人席に集まり、鷹也の右隣に澄人、前に美耶、澄人の前に信彦が座る。鷹也の左隣は空席だった。
他学科の学生が2人、長身で目鼻立ちの整った、よく似た2人組が、何かを話しながら、食堂全体を見回している。
2人は楽しそうに会話をする鷹也と澄人らを見つけると、足早に駆け寄ってきた。
「やっぱりタカシだ
僕は翔だ」
「瞬だよ」
「ずっと探してたんだ
ココで逢えるなんて」
「背も伸びたし、声変わりしたから
わからない?」
当惑し、固まる鷹也を取り囲み、子犬がじゃれつくようにまくし立てる。
一方的に話し続ける2人を、苛立った澄人が制止した。
「どなたかはわかりませんが
彼は」
チッ、と、瞬が、派手な音を立てて舌打ちをする。翔は、鷹也に向けるものとは正反対の、蔑む目で澄人を見下した。
「また、最低ランクにつきまとわれているの?」
「はあ?」
ガタッ と大きな音を立て、澄人が勢いよくイスから立ち上がり、2人を睨みつける。
「コレだから、最低ランクは」
そう言い放って、翔と瞬は澄人を無視し、驚いて動けない鷹也の両肩を左右から抱き抱え、そのまま連れ出そうとした。
「ちょ、ちょっと」
美耶が慌てて声をかけてなだめ、信彦も席を立って翔と瞬を止める。
「なにをしている」
食堂全体の温度が、一気に下がった気がした。
その場に、食堂に居合わせた全員が、硬直する。真っ先に、血の気が失せた澄人が、全身の力が抜けたように、ペタリと、イスに座る。しかも、座り続けることができず、テーブルに突っ伏してしまった。
翔と瞬も、両腕の力が抜け、抱えていた鷹也を離し、青ざめた顔になって床に膝をつく。
2人の手が離れ、バランスを崩して倒れそうになった鷹也を、現れた裕二が抱きとめ、翔と瞬を睨みつけた。
「これは、どういうことだ?」
静かだが、怒気を含んだ裕二の声に、さらに、空気が凍りつく。
裕二の、超上位アルファの強烈な威嚇だ。
「……高遠 部 ちょ …」
絞り出すような美耶の声で、腕の中で失神した鷹也とテーブルに倒れた澄人、床に突っ伏した翔と瞬、に気づき、裕二は周囲を見回す。
食堂に残っているのは、裕二の威嚇に負けて動けなくなっている者ばかり。信彦と美耶のような一部のベータが、動けない中で、かろうじて意識を保っているような状態だった。
早い段階で逃げ出した誰かが呼んだのだろう、医学部バース性科の永浜義登准教授が、同科の医師と看護師を引き連れて、食堂に駆けつけた。
「すごいな、トップアルファは」
感嘆の声をあげ、永浜准教授は食堂の惨状を見渡してから、中症から軽症の者はその場で対応するように、とトリアージの指示を出す。配下の医師と看護師らは、指示に従って手際よく、被害者を分け、順に鎮痛剤を飲ませ、酸素吸引などの治療を行ってゆく。
食堂に居合わせた学生と職員は、合わせて28名。うち、担架で運ばれたのは、間近で威嚇を受けた澄人と鷹也、翔と瞬の4名。
准教授らの診断結果、意識不明の澄人と鷹也は1人部屋、翔と瞬は2人部屋で入院。裕二も結果次第で検査入院、となった。
大学教務課等には、永浜准教授の采配で、威嚇による事故の原因は裕二の体調不良と報告された。しかし、目撃者と被害者が多かったことに先行の噂が加わり、痴話喧嘩が原因だと、学内の誰もが信じて疑わなかった。
「メスを取り合うのはオスの本能だからねぇ」
永浜准教授は診察室で、裕二と美耶と信彦の3人を前に、楽しそうに笑った。
会話のできる当事者たちへの、治療という名目の聴取である。
裕二は今まで、抑制剤の服用経験がない。一応、緊急避難用を持ち歩いてはいるが、実際にオメガのフェロモンに反応したことがないからだ。そのため、ランク判定以降、ハーズ性科の診察を受けたこともない。だからなのか、永浜准教授らはA++ランクのアルファの能力を数値化する絶好の機会と捉えているようだった。
准教授が、知識欲を抑えきれずに目を輝かせている一方で、医局の職員たちは、皆が憧れるトップアルファのゴシップに、興味津々といった様子にも見てとれる。
その結果、事件性は全く追求されなかった。
トラブルの原因となった2人の身元も、あっさりと判明した。彼らは医学部2年の名物学生だった。
彼らは、学部内では大山兄弟と呼ばれる、双子でもないのにセットで扱いる有名人だ。兄の翔が4月頭、弟の瞬が3月末生れだったため同学年となり、本人たちも好んで双子のように、常に一緒に行動しているためだ。しかも、2人ともAmのアルファ。裕二ほどではないが人気があり、取り巻きのオメガやベータ女性の数も多い。
その取り巻きたちに誘われる度に、2人は同じ言葉で答えていた。
「僕たちには運命の番がいてね
再会する日を待っているんだ」
「それが、三っちゃん、三ツ橋くん?
彼、ベータでしょ」
全員が永浜准教授を見た。
「それには、答えられない」
医者として当然の返事に、美耶と信彦の2人が落胆する。が、裕二だけは、思い当たる節があった。
恋人の振りをしてくれと頼んだ時の、鷹也の言葉。
『ボクは「もう」、オメガでも女性でもないのに』
裕二がそのことを思い出した時、大山兄弟の担当医が現れ、永浜准教授に耳打ちをする。
准教授は、少し待っていてくれ、とだけ告げて診察室を出て行った。
残された美耶と信彦を前に、裕二が頭を下げる。
「不用意に威嚇を発してしてしまって、
すまなかった」
驚いた美耶は言葉が出ず、ただ、頭と、顔の前に出した両手を、勢いよく左右に振った。
信彦も、頬を掻いて苦笑いをする。
「いゃぁ、お前のグレアなんて、初めてだよ
トップアルファの威嚇なんて、そうそう経験できるものじゃないから、なぁ」
それから、ふざけたように、付け加えた。
「数日間、食堂を買い切って、利用者全員全額無料にして、賠償金代わりにすれば、許されるんじゃないか」
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