148 / 165
第十七章
148,絶望の狭間で
しおりを挟む
※
闇の中でリュウキは孤独に震えていた。
目に映る全てのものが赤くなっている。血よりも赤く、炎のように熱く眩しい。
自制が効かなかった。どんなに抑えようとしていても無駄だった。
じわじわと精神が破壊されていくのを感じた。火を噴くように心の中で叫び続ける。この絶叫は現実世界で形作られ、周囲のもの全てを燃やしていった。どんなにもがいていようとも、苦しみから解放されることはない。むしろどんどん闇の世界へ堕ちていく。
自分はもう、誠の化け物になってしまう。自我を失い、何もかも忘れ、この世の全てを燃え尽くすまで暴れ続けるのだろう。
『苦しい』
『苦しい』
『苦しい……』
どこからともなく、悲痛の声が響きわたってきた。それと同時に、ふとリュウキの脳裏に辛そうな表情を浮かべる人々の姿が浮かんだ。
彼らは皆、涙を流している。瞳は赤黒く、目の焦点が合っていなかった。老若男女問わずふらふらと右往左往し、呻き声を上げているのだ。
(なんだろう……)
頭の中に流れる光景が何なのか、リュウキは把握出来ずにいた。
『苦しい』
『苦しい……』
『苦しいんだ……』
彼らの周辺は、巨大な炎で囲まれていた。メキメキと音を立てながら、行く手を阻むかのように燃え続けている。
(……どこかで見たことのある光景だ)
だが、今のリュウキには思考を巡らせる気力がない。
(苦しいのは僕も同じだ)
リュウキにとって、その悲鳴は雑音に過ぎなかった。
──そんな折である。
ふと目の前に景色が見えた。いや、見えたのではない。
意識が戻らないまま、現実世界の今を脳内で眺めている。そんな感覚だった。
リュウキの周辺は、いつの間にか地獄と化していた。城や城壁は燃え崩れ、辺り一面に万を超える人間の死骸が転がっている。しかも──それらを貪る、動物たちの姿があった。
(動物? いや……違う)
彼らは皆、目が真っ赤に染まっている。リュウキのように、心を失った様で血を浴びながら。
(そうか。彼らも化け物になったんだね……)
そう理解したとき、リュウキの中に再び何かが響いてきた。先程とはまた違ったものだ。甲高く、走馬灯のように次々と脳裏に過っていく。
それは「悲しみ」にも聞こえるし「苦しみ」のような悲鳴にも思えた。
数千、数万、数十万、もしかすると億を超えているかもしれない。計り知れない絶望を乗せた叫び声がリュウキの中に流れ込んでくる。
正常な精神であったら、耳を塞いだのかもしれない。だが、どんなに煩わしくても、もはやリュウキには何も感じない。
全てがどうでもよかった。
だから、意識を完全に手放そうとした。化け物になるのならば、自分が自分であることも忘れてしまう。今更精神を取り戻すなんて無理だ。リュウキはそう思っていた。
その刹那である。
『リュウキ様』
悲鳴の中に、微かに優しい声が聞こえた。
無になろうとしていたリュウキは、そこでハッとする。
(……君は)
胸の鼓動が高まる。
今の今まで全てがどうでもよいと思っていたのに。
リュウキは再度、悲鳴の中に紛れる「声」を探し求めた。
(君の声が聞こえた気がした。もう一度、僕を呼んでくれないか……?)
闇の中でリュウキは孤独に震えていた。
目に映る全てのものが赤くなっている。血よりも赤く、炎のように熱く眩しい。
自制が効かなかった。どんなに抑えようとしていても無駄だった。
じわじわと精神が破壊されていくのを感じた。火を噴くように心の中で叫び続ける。この絶叫は現実世界で形作られ、周囲のもの全てを燃やしていった。どんなにもがいていようとも、苦しみから解放されることはない。むしろどんどん闇の世界へ堕ちていく。
自分はもう、誠の化け物になってしまう。自我を失い、何もかも忘れ、この世の全てを燃え尽くすまで暴れ続けるのだろう。
『苦しい』
『苦しい』
『苦しい……』
どこからともなく、悲痛の声が響きわたってきた。それと同時に、ふとリュウキの脳裏に辛そうな表情を浮かべる人々の姿が浮かんだ。
彼らは皆、涙を流している。瞳は赤黒く、目の焦点が合っていなかった。老若男女問わずふらふらと右往左往し、呻き声を上げているのだ。
(なんだろう……)
頭の中に流れる光景が何なのか、リュウキは把握出来ずにいた。
『苦しい』
『苦しい……』
『苦しいんだ……』
彼らの周辺は、巨大な炎で囲まれていた。メキメキと音を立てながら、行く手を阻むかのように燃え続けている。
(……どこかで見たことのある光景だ)
だが、今のリュウキには思考を巡らせる気力がない。
(苦しいのは僕も同じだ)
リュウキにとって、その悲鳴は雑音に過ぎなかった。
──そんな折である。
ふと目の前に景色が見えた。いや、見えたのではない。
意識が戻らないまま、現実世界の今を脳内で眺めている。そんな感覚だった。
リュウキの周辺は、いつの間にか地獄と化していた。城や城壁は燃え崩れ、辺り一面に万を超える人間の死骸が転がっている。しかも──それらを貪る、動物たちの姿があった。
(動物? いや……違う)
彼らは皆、目が真っ赤に染まっている。リュウキのように、心を失った様で血を浴びながら。
(そうか。彼らも化け物になったんだね……)
そう理解したとき、リュウキの中に再び何かが響いてきた。先程とはまた違ったものだ。甲高く、走馬灯のように次々と脳裏に過っていく。
それは「悲しみ」にも聞こえるし「苦しみ」のような悲鳴にも思えた。
数千、数万、数十万、もしかすると億を超えているかもしれない。計り知れない絶望を乗せた叫び声がリュウキの中に流れ込んでくる。
正常な精神であったら、耳を塞いだのかもしれない。だが、どんなに煩わしくても、もはやリュウキには何も感じない。
全てがどうでもよかった。
だから、意識を完全に手放そうとした。化け物になるのならば、自分が自分であることも忘れてしまう。今更精神を取り戻すなんて無理だ。リュウキはそう思っていた。
その刹那である。
『リュウキ様』
悲鳴の中に、微かに優しい声が聞こえた。
無になろうとしていたリュウキは、そこでハッとする。
(……君は)
胸の鼓動が高まる。
今の今まで全てがどうでもよいと思っていたのに。
リュウキは再度、悲鳴の中に紛れる「声」を探し求めた。
(君の声が聞こえた気がした。もう一度、僕を呼んでくれないか……?)
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる