23 / 32
23
しおりを挟む
23
にわかに玄関の方が騒がしくなる。呆然とするだけだった侯爵家の面々の前に慌てた様子で現れたのは侍従長であった。
「なんだなんだ、騒がしいぞ!どいつもこいつも朝っぱらから……!」
「し、失礼致しました、侯爵。ですが、ただならぬ様子の王家からの使いが……。」
「まぁ、きっとギルバート様からのお使いだわ!私に会いに来て下さるのかしら?もーっ、きっと私に会いたかったのね?ギルバート様なら、別に使いを出さなくてもいつでもいらして下さって良いのに~!!ねぇ?お父様?お母様?」
「はは、そうだな~、ギルバート殿下もお前の魅力に堕ちたのか?マメに連絡を下さって……。」
「あ、あの、侯爵閣下……。」
くだらない事を話しながらダラダラ歩く侯爵一家に苦言をていそうと恐る恐る口を開いた侍従長だったが、階下からバタバタと聞こえて来た足音に、「あぁ……」と情けない声を出すことしか出来ない。
彼の表現はみるみる絶望に染まって行った。
「何を勝手に上がり込んでいる!?わたしは許可した覚えはないぞ!王家の使いとはいえ、流石にそれは「彼らを拘束しろ。」……は?」
先頭にいた兵士の声によって、あっという間に彼らの身体の自由は奪われた。
勿論彼らも精一杯暴れ、講義の声を上げるが、そんなものが聞き入れられるわけが無かった。
「な……なにをするの!?私は公爵夫人よ!無礼な……その手を離しなさい!!」
「あんた達ごときがこの私に触れることが許されるとでも思ってるの!?私は未来の王妃なのよ!!!」
「度重なる無礼……許されることだと思っているのか!?!?」
3人を拘束し、床に転がすと、先程司令を出していた兵士が持っていた紙を広げた。
「スチュアート侯爵、侯爵夫人、侯爵令嬢。こちらはあなた方を拘束し、王城に連れてくるようにという国王陛下からの指令書だ。――見えるな?陛下から、あなた方への手加減は一切不要とのご命令が出ている。」
「……は?ふざけ――――!ぐ……っ……。」
「これより一時の間、私の言葉は陛下のものと思え。そして、あなた方のわたしへの言動は、陛下へのものと見なす。――これは、陛下よりの勅命である。」
抗議の声を荒らげたクラリスを彼が一瞥すると、後ろにいた彼の部下と見られる一人が彼女を床に押さえつけた。彼等が静かになったことを確認すると、彼は再び口を開いた。
後に残されたのは、青い顔で拘束されたまま床にへたりこんだ3人だった。
にわかに玄関の方が騒がしくなる。呆然とするだけだった侯爵家の面々の前に慌てた様子で現れたのは侍従長であった。
「なんだなんだ、騒がしいぞ!どいつもこいつも朝っぱらから……!」
「し、失礼致しました、侯爵。ですが、ただならぬ様子の王家からの使いが……。」
「まぁ、きっとギルバート様からのお使いだわ!私に会いに来て下さるのかしら?もーっ、きっと私に会いたかったのね?ギルバート様なら、別に使いを出さなくてもいつでもいらして下さって良いのに~!!ねぇ?お父様?お母様?」
「はは、そうだな~、ギルバート殿下もお前の魅力に堕ちたのか?マメに連絡を下さって……。」
「あ、あの、侯爵閣下……。」
くだらない事を話しながらダラダラ歩く侯爵一家に苦言をていそうと恐る恐る口を開いた侍従長だったが、階下からバタバタと聞こえて来た足音に、「あぁ……」と情けない声を出すことしか出来ない。
彼の表現はみるみる絶望に染まって行った。
「何を勝手に上がり込んでいる!?わたしは許可した覚えはないぞ!王家の使いとはいえ、流石にそれは「彼らを拘束しろ。」……は?」
先頭にいた兵士の声によって、あっという間に彼らの身体の自由は奪われた。
勿論彼らも精一杯暴れ、講義の声を上げるが、そんなものが聞き入れられるわけが無かった。
「な……なにをするの!?私は公爵夫人よ!無礼な……その手を離しなさい!!」
「あんた達ごときがこの私に触れることが許されるとでも思ってるの!?私は未来の王妃なのよ!!!」
「度重なる無礼……許されることだと思っているのか!?!?」
3人を拘束し、床に転がすと、先程司令を出していた兵士が持っていた紙を広げた。
「スチュアート侯爵、侯爵夫人、侯爵令嬢。こちらはあなた方を拘束し、王城に連れてくるようにという国王陛下からの指令書だ。――見えるな?陛下から、あなた方への手加減は一切不要とのご命令が出ている。」
「……は?ふざけ――――!ぐ……っ……。」
「これより一時の間、私の言葉は陛下のものと思え。そして、あなた方のわたしへの言動は、陛下へのものと見なす。――これは、陛下よりの勅命である。」
抗議の声を荒らげたクラリスを彼が一瞥すると、後ろにいた彼の部下と見られる一人が彼女を床に押さえつけた。彼等が静かになったことを確認すると、彼は再び口を開いた。
後に残されたのは、青い顔で拘束されたまま床にへたりこんだ3人だった。
95
あなたにおすすめの小説
婚約者は私より親友を選ぶようです。親友の身代わりに精霊王の生贄になった私は幸せになり、国は滅ぶようです。
亜綺羅もも
恋愛
ルビア・エクスレーンには親友のレイ・フォルグスがいた。
彼女は精霊王と呼ばれる者の生贄に選ばれる。
その話を聞いたルビアは、婚約者であるラース・ボルタージュ王子に相談を持ち掛けた。
生贄の事に関してはどうしようもないと答えるラース。
だがそれから一月ほど経った頃のこと。
突然ラースに呼び出されるルビア。
なんとラースは、レイを妃にすることを決断し、ルビアに婚約破棄を言い渡す。
ルビアはレイの身代わりに、精霊王の生贄とされてしまう。
ルビアは精霊王であるイクス・ストウィックのもとへと行き、彼のもとで死ぬことを覚悟する。
だがそんな覚悟に意味はなく、イクスとの幸せな日々が待っていたのであった。
そして精霊たちの怒りを買ったラースたちの運命は……
婚約破棄された令嬢のささやかな幸福
香木陽灯
恋愛
田舎の伯爵令嬢アリシア・ローデンには婚約者がいた。
しかし婚約者とアリシアの妹が不貞を働き、子を身ごもったのだという。
「結婚は家同士の繋がり。二人が結ばれるなら私は身を引きましょう。どうぞお幸せに」
婚約破棄されたアリシアは潔く身を引くことにした。
婚約破棄という烙印が押された以上、もう結婚は出来ない。
ならば一人で生きていくだけ。
アリシアは王都の外れにある小さな家を買い、そこで暮らし始める。
「あぁ、最高……ここなら一人で自由に暮らせるわ!」
初めての一人暮らしを満喫するアリシア。
趣味だった刺繍で生計が立てられるようになった頃……。
「アリシア、頼むから戻って来てくれ! 俺と結婚してくれ……!」
何故か元婚約者がやってきて頭を下げたのだ。
しかし丁重にお断りした翌日、
「お姉様、お願いだから戻ってきてください! あいつの相手はお姉様じゃなきゃ無理です……!」
妹までもがやってくる始末。
しかしアリシアは微笑んで首を横に振るばかり。
「私はもう結婚する気も家に戻る気もありませんの。どうぞお幸せに」
家族や婚約者は知らないことだったが、実はアリシアは幸せな生活を送っていたのだった。
元婚約者様へ――あなたは泣き叫んでいるようですが、私はとても幸せです。
有賀冬馬
恋愛
侯爵令嬢の私は、婚約者である騎士アラン様との結婚を夢見ていた。
けれど彼は、「平凡な令嬢は団長の妻にふさわしくない」と、私を捨ててより高位の令嬢を選ぶ。
絶望に暮れた私が、旅の道中で出会ったのは、国中から恐れられる魔導王様だった。
「君は決して平凡なんかじゃない」
誰も知らない優しい笑顔で、私を大切に扱ってくれる彼。やがて私たちは夫婦になり、数年後。
政争で窮地に陥ったアラン様が、助けを求めて城にやってくる。
玉座の横で微笑む私を見て愕然とする彼に、魔導王様は冷たく一言。
「我が妃を泣かせた罪、覚悟はあるな」
――ああ、アラン様。あなたに捨てられたおかげで、私はこんなに幸せになりました。心から、どうぞお幸せに。
【完結】愛しい人、妹が好きなら私は身を引きます。
王冠
恋愛
幼馴染のリュダールと八年前に婚約したティアラ。
友達の延長線だと思っていたけど、それは恋に変化した。
仲睦まじく過ごし、未来を描いて日々幸せに暮らしていた矢先、リュダールと妹のアリーシャの密会現場を発見してしまい…。
書きながらなので、亀更新です。
どうにか完結に持って行きたい。
ゆるふわ設定につき、我慢がならない場合はそっとページをお閉じ下さい。
【完結】大好きな婚約者の運命の“赤い糸”の相手は、どうやら私ではないみたいです
Rohdea
恋愛
子爵令嬢のフランシスカには、10歳の時から婚約している大好きな婚約者のマーカスがいる。
マーカスは公爵家の令息で、子爵令嬢の自分とは何もかも釣り合っていなかったけれど、
とある理由により結ばれた婚約だった。
それでもマーカスは優しい人で婚約者として仲良く過ごして来た。
だけど、最近のフランシスカは不安を抱えていた。
その原因はマーカスが会長を務める生徒会に新たに加わった、元平民の男爵令嬢。
彼女の存在がフランシスカの胸をざわつかせていた。
そんなある日、酷いめまいを起こし倒れたフランシスカ。
目覚めた時、自分の前世とこの世界の事を思い出す。
──ここは乙女ゲームの世界で、大好きな婚約者は攻略対象者だった……
そして、それとは別にフランシスカは何故かこの時から、ゲームの設定にもあった、
運命で結ばれる男女の中で繋がっているという“赤い糸”が見えるようになっていた。
しかし、フランシスカとマーカスの赤い糸は……
復縁は絶対に受け入れません ~婚約破棄された有能令嬢は、幸せな日々を満喫しています~
水空 葵
恋愛
伯爵令嬢のクラリスは、婚約者のネイサンを支えるため、幼い頃から血の滲むような努力を重ねてきた。社交はもちろん、本来ならしなくても良い執務の補佐まで。
ネイサンは跡継ぎとして期待されているが、そこには必ずと言っていいほどクラリスの尽力があった。
しかし、クラリスはネイサンから婚約破棄を告げられてしまう。
彼の隣には妹エリノアが寄り添っていて、潔く離縁した方が良いと思える状況だった。
「俺は真実の愛を見つけた。だから邪魔しないで欲しい」
「分かりました。二度と貴方には関わりません」
何もかもを諦めて自由になったクラリスは、その時間を満喫することにする。
そんな中、彼女を見つめる者が居て――
◇5/2 HOTランキング1位になりました。お読みいただきありがとうございます。
※他サイトでも連載しています
妹と王子殿下は両想いのようなので、私は身を引かせてもらいます。
木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるラナシアは、第三王子との婚約を喜んでいた。
民を重んじるというラナシアの考えに彼は同調しており、良き夫婦になれると彼女は考えていたのだ。
しかしその期待は、呆気なく裏切られることになった。
第三王子は心の中では民を見下しており、ラナシアの妹と結託して侯爵家を手に入れようとしていたのである。
婚約者の本性を知ったラナシアは、二人の計画を止めるべく行動を開始した。
そこで彼女は、公爵と平民との間にできた妾の子の公爵令息ジオルトと出会う。
その出自故に第三王子と対立している彼は、ラナシアに協力を申し出てきた。
半ば強引なその申し出をラナシアが受け入れたことで、二人は協力関係となる。
二人は王家や公爵家、侯爵家の協力を取り付けながら、着々と準備を進めた。
その結果、妹と第三王子が計画を実行するよりも前に、ラナシアとジオルトの作戦が始まったのだった。
なんでも思い通りにしないと気が済まない妹から逃げ出したい
木崎優
恋愛
「君には大変申し訳なく思っている」
私の婚約者はそう言って、心苦しそうに顔を歪めた。「私が悪いの」と言いながら瞳を潤ませている、私の妹アニエスの肩を抱きながら。
アニエスはいつだって私の前に立ちはだかった。
これまで何ひとつとして、私の思い通りになったことはない。すべてアニエスが決めて、両親はアニエスが言うことならと頷いた。
だからきっと、この婚約者の入れ替えも両親は快諾するのだろう。アニエスが決めたのなら間違いないからと。
もういい加減、妹から離れたい。
そう思った私は、魔術師の弟子ノエルに結婚を前提としたお付き合いを申し込んだ。互いに利のある契約として。
だけど弟子だと思ってたその人は実は魔術師で、しかも私を好きだったらしい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる