お望み通り、別れて差し上げます!

珊瑚

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神妙な表情と共に入室してきたのはヘリオスであった。先程までとは打って変わった態度に、ファルコは身を引き締める。彼がこの態度の時は対応の失敗が許されないような緊張感があった。
普段、公式の場でしか敬称を付けない程仲の良いファルコとヘリオス。だが、ヘリオスがあえて線引きをして見せた事で、これから交わされる話の重大さを肌で感じさせてくる。視察で何か問題が起こったのだろうか?
だが、もしそうだとしたら、フェリアが気付かないはずが無い。フェリアは優秀だ。
身内びいきを抜きにしたってファルコは彼女の目には絶大な信頼を置いていた。
彼女が気付かない程に入り込んだ問題が起こってしまっているのだろうか?
ファルコの頭の中に、嫌な考えばかりがぐるぐると浮かんでは消える。

「先程の視察での話だ。フェリア嬢には聞かせたくない話だった故、報告が遅くなったが許して欲しい。」

悪い予感が当たってしまった。一体どこに問題が起こったのが。自分の運営のどこからほころびが出てしまったのか。ヘリオスが次に発する言葉を、固唾をのんで待つ。だが、ファルコの予想に反して、ヘリオスはふっと表情をやわらげた。

「君は上手くやっている。領地の運営はとても上手くいっているよ。だが私が伝えたかったのは、そこではない。」

では一体、何の話なのだろうか。妹に開かれたくない事とは一体何なのか。まさか先程心配していた通り、フェリアを手に入れようとしているのでは……。

「フェリアに関わることだ。これを彼女の耳に入れるべきかどうかは貴方に判断してもらいたい。」

やっぱり予想通りだ。求婚か?縁談か?それとも何か不都合が……………………

「彼女の元婚約者であるブレイズ伯爵令息の浮気相手であるセライナ子爵令嬢についての話だ。」

一気に頭が冷える。耳に入れたくもない名前。妹を傷付けた相手。解決したはずの件に関わる名前がどうして今、ここで、このタイミングで出てくるのが。

「私は、彼女の妊娠が虚偽ではないかとうたがっている。」
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