お望み通り、別れて差し上げます!

珊瑚

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沈黙を破って、リオルがやっとの思いで言えたのは、それだけだった。短い時間の中で、この状況を打開する手立てを色々と考えたのだろう。だが何も解決策など見出せる訳も無く、苦し紛れに何とか絞り出せたのがそれだけだったのだ。

「僕は、カミラが僕との子供を妊娠して、彼女と共に生きたいと思ったから、婚約破棄を申し出たのです。先程は色々なことを知って混乱しましたが、婚約破棄を申し出た時の理由に嘘はございません。」

先程から自分の信じてきたものが否定され続けている現状だ。リオルは一つ一つ、まるで自分自身にも確認を取っているように、慎重に言葉を紡ぐ。

「一体これのどこに嘘があるというのでしょう。」

自身に問い掛けても答えは見つからなかったようだ。まるで救いを求めるかのように、リオルはファルコを見上げる。彼を追い詰めているのもまた、ファルコだというのに。しかし、リオルがいくら考えても答えが出ないのは当然だった。伯爵家側が婚約破棄を申し出た際の理由が口になった原因は、リオル本人ではなく、横で話に入れず不満気な顔をしているカミラの方なのだから。

「そうか、心当たりは無いか。だが、こちらとしてもお前のその主張を手放しで信じてやることは出来ないな。なにせ、お前達は『真実の愛』とやらで結ばれた、心の通じ合った者達のようだからな。」
「は!?わ、私も…………?」

突然話の中心に戻って来させられたことで、カミラが驚いた声を上げる。
話が都合の悪い方に転がっていき、このままではせっかく略奪して手に入れたリオルをフェリアに奪われ返されてしまうのではないかと気が気でなかったカミラだが、どうやらその心配は無くなったようだと安心した矢先でのことだ。嫌な予感が彼女をおそった。

「お前の妊娠は嘘だ。違うか?」
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