四人の令嬢と公爵と

オゾン層

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婚約

歳の差

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 __本日最も騒がしかったであろう夕食も過ぎ去り、姉妹達はそれぞれの自室へと戻ることになった。





 当然のように現れ、部屋へと案内してくれたメイド二人に礼を述べ、オリビアは部屋の扉を閉める。
 しかし、先ほどの衝撃が拭えないオリビアは部屋に戻った後も頭を抱えていた。





 夕食でオリビアが思い切って年齢を聞いた時、公爵達は嫌な顔せず答えてくれた。

 しかし、返ってきた答えはあまりにも信じられない結果であったのだ。



「まさか、皆様を迎えていたなんて」


 オリビアには十分衝撃を与える事実であった。



 見た目は若く見える公爵達が答えた数字は、人間で言う老人の年齢を遥かに上回る数であった。

 自分の婚約者であるラゼイヤとクロエの婚約者であるゴトリルに関しては二人共余裕で3桁超えており、そして末っ子のディトでさえ……

「僕?79だよ?来年で80歳になるんだ~♪」

 なんて能天気に答えてきたので、オリビアは開いた口が塞がらなかった。

 公爵達が此処まで長寿だとは思っていなかったからだ。



「でも……種族は違いますものね。此方ではきっと普通なんだわ」


 オリビアはそう自分に言い聞かせようとしたが、あまりに自分達の常識からかけ離れすぎていて納得できなかった。


「……公爵様方の前であんな」


 不意に、オリビアはダイニングで絶叫してしまったことを思い出し、遅れて来た羞恥心に襲われる。

 今まで叫んだことなど無いに等しかった彼女は、その衝撃をよりにもよって公爵達との夕食で叫びという形で表してしまった。

 勿論、オリビアだけではない。
 ルーナも、エレノアも、クロエも、皆悲鳴をあげていた。あのエレノアも叫んだのだ。それほどのことなのである。

 しかし、その悲鳴を聞いた公爵達はバルフレを除いて怒るどころか笑っていた。ゴトリルに関してはテーブルを叩いて大笑いしていた。そのせいで木製のテーブルに割れ目が入り、それをラゼイヤが叱っていたのも先ほどのことである。

 年齢を聞かれた挙句叫ばれて良い思いなどしないはずなのだが、何故公爵達はそれを笑いのけられたのか。
 自分であったら嫌な気分になるだろうに。



 だが、笑って許してくれた公爵に……ラゼイヤに、オリビアは徐々に、惹かれていた。


「出会って間もない方なのに……」


 オリビア自身も信じられなかった。
 まさか自分のような人間が『恋』に目覚めそうになっているのだから。





 ロズワートとの婚約婚約候補として選ばれた時、オリビアはそれを『恋』と認識することはなかった。

 ただ婚約者として正式に選ばれた際、良き妻としてロズワートを、国を支えなければという使命感しかなかった。

 元々恋なんて類には一切興味など無く、ロズワートに婚約破棄を言い渡された時も別れを告げられたことより妹達も破棄されたことの方が辛かった。

 だが、今はどうだろう。

 隣国の化物公爵……その長男のことが頭から離れないではないか。

 姿が人間と違うやら、その先を考えると寿命的にも大丈夫なのやら、そもそもこの婚約が成立するのかしないのかやらと、考えなければならないことは山ほどあるはずなのに。


「どうしてしまったの……?」


 浮き上がるような、初めての感覚にオリビアは眠気も覚めて延々と苦悶していた。





「…………」

「…………」

「……聞いた?」

「聞いたわ」

「これは脈アリかしら」

「長男様にも春が来たのかしら」



 オリビアの部屋がある扉の前。

 専属のメイドであるルクレとライラはオリビアの独り言を肴に胸をときめかせていた。
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