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11 安心できる場所
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「ただいま、リュシー。アラベルが来たと聞いたけど、何もなかったかい?」
「おかえりなさい、レオン。ええ、アラベルは涙を流して再会を喜んでくれたわ。28歳になったアラベルを見た時に、私やっとこの12年という空白が実在しているって理解したの。病気なのか魔法なのかわからないけれど、私一人だけが時が止まっていたんだなって……」
だからもう、マルセルへの想いも心の宝石箱にしまっておくことに決めた。アラベルの不安の種にはなりたくない。レオンの提案を受け入れていて本当によかった。
「これからはまたお友達として会いましょうって約束したの。ねえレオン、いいでしょう?」
「もちろんかまわないよ。だけど、アンヌの同席だけは必ず守ってね」
「……アラベルを疑っているの?」
「そうではないけれど、原因がわからない以上全てのことを警戒しておく必要があるってことさ。また君が眠ってしまったら僕は……辛すぎるから」
レオンがリュシエンヌの髪を撫でる。ついこの間までリュシエンヌの胸の高さくらいだったレオン。しかし今は、見上げるリュシエンヌの首が痛くなるくらい背が高い。
「わかったわ。私も、もう二度とこんな目に遭いたくないから」
ふふっと微笑んでみせるリュシエンヌ。不意にレオンは彼女を抱きしめた。
「レ、レオン……?」
「ごめんリュシエンヌ。もう少しだけこうしていて……君がいなくなることを考えたら不安で堪らないんだ。君の温もりを感じているこの時だけ、安心できる」
(レオン……)
リュシエンヌはレオンの背中にそっと腕を回した。腕が回り切らないほど大きく逞しい背中。硬い胸に包まれると心地良く安心できることを彼女も知った。
「リュシー、ひと月後に婚約披露のパーティーを催すつもりだ。かまわないね?」
(レオンは私のためにいつも最善を尽くしてくれる。望まれて結婚するのが一番の幸せだとお母様も仰っていた。だからこそ、マルセル様との縁談も喜んでくださっていたのだし……きっと、レオンの申し出を受けることも、微笑んで頷いてくださるに違いないわ)
「ええ、レオン。よろしくお願いします」
「ありがとう、リュシー!」
すぐに最高級のドレスメイカーが呼ばれ、披露パーティーに向けてドレスの製作が始まった。
「レオン、もうたくさんドレスを買ってもらってるわ。こんなに贅沢なもの、必要ないのでは……」
「何言ってるの。君は公爵夫人になる身だよ? もちろんそのままの君でも美しいけれど、その日は圧倒的な美を見せつけたいんだ……これは僕の願望だから、どうか叶えさせて欲しい」
そこまで言うのならとリュシエンヌは了承した。子爵家出身の自分とはやはり何もかも感覚が違うのかもしれない。
「ところで今朝、アステリアの魔法大臣から返事が来たんだ」
「えっ、本当……⁉︎ 大臣様は何て仰っていたの?」
「実際に見るまでは何とも言えない、今関わっている件が終わったらそちらへ向かう、とのことだ」
「そう……まだわからないのね……」
「大丈夫だリュシー。きっと彼なら何か糸口を見つけてくれる。伊達に千年の時を生きているのではないんだから」
「えっ⁈ 千年?」
途方もない年数を耳にしてリュシエンヌは驚いてしまった。そんなに遠い昔から若いままだというの?
「どうしようレオン、私もそんなに長い時間をこのままで生きることになってしまったら……私の知っている人がみんな先に死んでしまってひとりぼっちになってしまったら……」
リュシエンヌは唇を振るわせぎゅっと両手を合わせて握り締める。そうしないと心を保っていられそうにない。
「リュシー、まだわからないことを心配してもしょうがないよ」
レオンがリュシエンヌを抱きすくめた。
「レオン……」
リュシエンヌが不安になると、彼はいつもこうして抱きしめてくれる。その度に彼女の気持ちはすうっと落ち着いていくのだった。
(でも今……レオンの胸の鼓動も速いのがわかる。もしかしたらレオンも不安に思っているのかも。でも私の心配を払拭するためにそれを見せずにいてくれる。ありがとう、すごく心強い。あなたが側にいてくれて本当に良かった……)
「おかえりなさい、レオン。ええ、アラベルは涙を流して再会を喜んでくれたわ。28歳になったアラベルを見た時に、私やっとこの12年という空白が実在しているって理解したの。病気なのか魔法なのかわからないけれど、私一人だけが時が止まっていたんだなって……」
だからもう、マルセルへの想いも心の宝石箱にしまっておくことに決めた。アラベルの不安の種にはなりたくない。レオンの提案を受け入れていて本当によかった。
「これからはまたお友達として会いましょうって約束したの。ねえレオン、いいでしょう?」
「もちろんかまわないよ。だけど、アンヌの同席だけは必ず守ってね」
「……アラベルを疑っているの?」
「そうではないけれど、原因がわからない以上全てのことを警戒しておく必要があるってことさ。また君が眠ってしまったら僕は……辛すぎるから」
レオンがリュシエンヌの髪を撫でる。ついこの間までリュシエンヌの胸の高さくらいだったレオン。しかし今は、見上げるリュシエンヌの首が痛くなるくらい背が高い。
「わかったわ。私も、もう二度とこんな目に遭いたくないから」
ふふっと微笑んでみせるリュシエンヌ。不意にレオンは彼女を抱きしめた。
「レ、レオン……?」
「ごめんリュシエンヌ。もう少しだけこうしていて……君がいなくなることを考えたら不安で堪らないんだ。君の温もりを感じているこの時だけ、安心できる」
(レオン……)
リュシエンヌはレオンの背中にそっと腕を回した。腕が回り切らないほど大きく逞しい背中。硬い胸に包まれると心地良く安心できることを彼女も知った。
「リュシー、ひと月後に婚約披露のパーティーを催すつもりだ。かまわないね?」
(レオンは私のためにいつも最善を尽くしてくれる。望まれて結婚するのが一番の幸せだとお母様も仰っていた。だからこそ、マルセル様との縁談も喜んでくださっていたのだし……きっと、レオンの申し出を受けることも、微笑んで頷いてくださるに違いないわ)
「ええ、レオン。よろしくお願いします」
「ありがとう、リュシー!」
すぐに最高級のドレスメイカーが呼ばれ、披露パーティーに向けてドレスの製作が始まった。
「レオン、もうたくさんドレスを買ってもらってるわ。こんなに贅沢なもの、必要ないのでは……」
「何言ってるの。君は公爵夫人になる身だよ? もちろんそのままの君でも美しいけれど、その日は圧倒的な美を見せつけたいんだ……これは僕の願望だから、どうか叶えさせて欲しい」
そこまで言うのならとリュシエンヌは了承した。子爵家出身の自分とはやはり何もかも感覚が違うのかもしれない。
「ところで今朝、アステリアの魔法大臣から返事が来たんだ」
「えっ、本当……⁉︎ 大臣様は何て仰っていたの?」
「実際に見るまでは何とも言えない、今関わっている件が終わったらそちらへ向かう、とのことだ」
「そう……まだわからないのね……」
「大丈夫だリュシー。きっと彼なら何か糸口を見つけてくれる。伊達に千年の時を生きているのではないんだから」
「えっ⁈ 千年?」
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「どうしようレオン、私もそんなに長い時間をこのままで生きることになってしまったら……私の知っている人がみんな先に死んでしまってひとりぼっちになってしまったら……」
リュシエンヌは唇を振るわせぎゅっと両手を合わせて握り締める。そうしないと心を保っていられそうにない。
「リュシー、まだわからないことを心配してもしょうがないよ」
レオンがリュシエンヌを抱きすくめた。
「レオン……」
リュシエンヌが不安になると、彼はいつもこうして抱きしめてくれる。その度に彼女の気持ちはすうっと落ち着いていくのだった。
(でも今……レオンの胸の鼓動も速いのがわかる。もしかしたらレオンも不安に思っているのかも。でも私の心配を払拭するためにそれを見せずにいてくれる。ありがとう、すごく心強い。あなたが側にいてくれて本当に良かった……)
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