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そしてあと2日でリカルドが戻る予定の日。初雪が降り始めた。
「これは、積もるかもしれませんね」
侍女が心配そうに呟く。山道を雪が覆ってしまうと通行できなくなる。雪が止むまでは帰ってこられないだろう。
「お帰りが少し遅れるでしょうね」
ソニアも空を見上げながら答えた。
いつもより半月早い雪ではあるが、ソニアがきちんと準備を進めていたため城の中は落ち着いていた。もう冬の支度は出来上がっているのだ。
その時、門の外が騒がしくなった。
「どうしたのかしら?」
すると侍従が走ってきて報告する。
「奥様、傭兵軍団が門の外に集まっています。雪が降るので城内へ入れろと騒いでいます」
「そんなことはできないわ。傭兵なんて中に入れたらどんな狼藉を働かれるか」
神妙な顔で頷く侍従。
「今、城内の兵士たちを城門に集めております。戦闘も覚悟しておりますので、奥様は城の背後にある抜け穴から脱出なさってください」
「なんですって! 傭兵?」
話を聞いたコンチエッタが血相を変えて部屋に入ってきた。
「最近よく聞くのよ。アイツら、食料を食い尽くし金品を奪い、女を襲うって……城主が留守にしているのを知ってて来ているのよ」
「コンチエッタ様、抜け穴がありますから。急いでそちらからお逃げください」
「言われなくても逃げるわよ。やっぱりこんな田舎に来るんじゃなかったわ、お金が無いからタダで飲み食いさせてもらおうと思って来たってのに!」
コンチエッタは既に来た時と同じ小さなカバンを手に持っていた。そして侍従に案内させ抜け穴に走って行った。
バタバタと去っていく彼女の足音を聞きながらソニアは決意を固めていた。
「さあ、奥様もお逃げ下さい」
「いえ、私は残ります。兵士以外の侍女や使用人は全て、抜け穴へ向かわせてください。私が時間を稼ぎます」
「しかし!」
「私はリカルド様からこの城を任されているのです。逃げる訳にはいきません。さあ早く!」
ソニアの強い決意を感じ、侍従は動き出した。女たちは身支度をして抜け穴に向かい、男たちは武器になりそうな物を手に城門に集まった。
「早く開けろー! 腹減ったぞー! 酒を飲ませろー!」
傭兵たちがさらに騒ぎ始めた。ソニアは城門の上にある櫓に登り、傭兵を見下ろした。
「なんだぁ? 若いねーちゃんが出てきたぞ」
「踊りでも踊ってくれるのかぁ?」
ゲラゲラと下品に笑う傭兵たち。ソニアはすうっと息を吸い、出来るだけの大声で話した。
「私はソニア・ジラルディ。ジラルディ侯爵の名代として今あなたたちに話しかけています。あなたたちをこの城に入れることは、できません。お帰りください」
「なんだと? ふざけたこと言ってんなぁ。俺たちにかかればこんな城門、すぐに開けられるんだぜ? いいか、お前らが自ら門を開けるなら命だけは助けてやろう。だが開けないって言うなら容赦はしないぜ」
「お断りします。どうせ皆殺しにするつもりでしょう」
「クソアマめ、よく言った。お前をひん剥いて慰みものにしてやるからそこで待ってろ」
傭兵たちは声を上げて門へ突進した。大きな丸太も用意しており、ガンガンとぶつけて突破しようとしている。櫓の上から弓で攻撃を仕掛けるが、敵からもたくさんの矢を打たれ怪我人が出始める。
やがて門の形が歪みメリメリと音が鳴り出した。
(もう、ダメかもしれない……リカルド様、あなたの城を守れなくてごめんなさい……!)
「これは、積もるかもしれませんね」
侍女が心配そうに呟く。山道を雪が覆ってしまうと通行できなくなる。雪が止むまでは帰ってこられないだろう。
「お帰りが少し遅れるでしょうね」
ソニアも空を見上げながら答えた。
いつもより半月早い雪ではあるが、ソニアがきちんと準備を進めていたため城の中は落ち着いていた。もう冬の支度は出来上がっているのだ。
その時、門の外が騒がしくなった。
「どうしたのかしら?」
すると侍従が走ってきて報告する。
「奥様、傭兵軍団が門の外に集まっています。雪が降るので城内へ入れろと騒いでいます」
「そんなことはできないわ。傭兵なんて中に入れたらどんな狼藉を働かれるか」
神妙な顔で頷く侍従。
「今、城内の兵士たちを城門に集めております。戦闘も覚悟しておりますので、奥様は城の背後にある抜け穴から脱出なさってください」
「なんですって! 傭兵?」
話を聞いたコンチエッタが血相を変えて部屋に入ってきた。
「最近よく聞くのよ。アイツら、食料を食い尽くし金品を奪い、女を襲うって……城主が留守にしているのを知ってて来ているのよ」
「コンチエッタ様、抜け穴がありますから。急いでそちらからお逃げください」
「言われなくても逃げるわよ。やっぱりこんな田舎に来るんじゃなかったわ、お金が無いからタダで飲み食いさせてもらおうと思って来たってのに!」
コンチエッタは既に来た時と同じ小さなカバンを手に持っていた。そして侍従に案内させ抜け穴に走って行った。
バタバタと去っていく彼女の足音を聞きながらソニアは決意を固めていた。
「さあ、奥様もお逃げ下さい」
「いえ、私は残ります。兵士以外の侍女や使用人は全て、抜け穴へ向かわせてください。私が時間を稼ぎます」
「しかし!」
「私はリカルド様からこの城を任されているのです。逃げる訳にはいきません。さあ早く!」
ソニアの強い決意を感じ、侍従は動き出した。女たちは身支度をして抜け穴に向かい、男たちは武器になりそうな物を手に城門に集まった。
「早く開けろー! 腹減ったぞー! 酒を飲ませろー!」
傭兵たちがさらに騒ぎ始めた。ソニアは城門の上にある櫓に登り、傭兵を見下ろした。
「なんだぁ? 若いねーちゃんが出てきたぞ」
「踊りでも踊ってくれるのかぁ?」
ゲラゲラと下品に笑う傭兵たち。ソニアはすうっと息を吸い、出来るだけの大声で話した。
「私はソニア・ジラルディ。ジラルディ侯爵の名代として今あなたたちに話しかけています。あなたたちをこの城に入れることは、できません。お帰りください」
「なんだと? ふざけたこと言ってんなぁ。俺たちにかかればこんな城門、すぐに開けられるんだぜ? いいか、お前らが自ら門を開けるなら命だけは助けてやろう。だが開けないって言うなら容赦はしないぜ」
「お断りします。どうせ皆殺しにするつもりでしょう」
「クソアマめ、よく言った。お前をひん剥いて慰みものにしてやるからそこで待ってろ」
傭兵たちは声を上げて門へ突進した。大きな丸太も用意しており、ガンガンとぶつけて突破しようとしている。櫓の上から弓で攻撃を仕掛けるが、敵からもたくさんの矢を打たれ怪我人が出始める。
やがて門の形が歪みメリメリと音が鳴り出した。
(もう、ダメかもしれない……リカルド様、あなたの城を守れなくてごめんなさい……!)
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