俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮

文字の大きさ
44 / 288
第六章 法術のススメ

第44話 チュートリアル:ざまぁ

しおりを挟む
 一対一タイマン二対二タッグ四対四チームと、バトル形式は複数ある。
 人気があるのはタイマン。己の力のみが頼りで掲載される動画もタイマンが多い。でも俺らがするのはタッグ。チャラ男ズVS瀬那&俺だ。

 別にタッグ戦は珍しくもないが、男性人気の瀬那が闘うからギャラリーが多い気がする。

「っへへへ」

「余裕っしょ」

 バリアを張ったチャラ男ズが下賤な笑みを浮かべている。もれなく瀬那の胸をガン見している。
 その瀬那は開始前のストレッチをしていて伸びをしていた。そりゃ揺れるわな。

 だが俺は瀬那の乳揺れなんて今はどうでもいい。なぜなら友達が、チームメンバーの処遇がこの一戦にかかっているからだ。

「ふー」

 泡沫事件の映像を見ていないのか知らないが、チャラ男ズは学生だと俺たちを舐めくさっている。ならば好都合だ。オーラを纏って遠慮なく突撃、速攻で極める……!

 そう思っていると、瀬那が目を合わせてきた。

「萌ならすぐ倒せると思うけど、一応私の新法術のお披露目だからね」

「でも負けると瀬那が――」

「負けるつもりなの……?」

「い、いや! もちろん勝さ」

 ジト目で攻めてくる瀬那。どうやら是が非でも俺に法術を披露したいらしい。

「わかったわかった。じゃあ機を見て全力で行くことにするわ」

「ん~~わかってんじゃん!」

 しょうがない。瀬那の笑顔で顔を立てて挑もう。負けるつもりは無いし。

 バトルルームを進み、指定の位置で止まる。

《READY……》

 チャラ男ズの武器は剣と手斧。それを慣れた手つきで握り顔がニヤつき、俺たちを品定めしている。

 俺はオーラ剣を出し姿勢を低くして構える。瀬那は符を指に挟んで構える。その様子を目で確認すると、瀬那も目を合わせてきて微笑んできた。余裕がある。

『チュートリアル:バトルに勝とう』

 俺は視界の端でチュートリアルを選択する。

 そして。

《FIGHT!!》

 始まった。

「いくぜいくぜ!」

「可愛がってやるよ!」

 直線ではなく横に広がる曲線で駆けてくる。共に出すぎず遅れず、一定の間隔を保っている。各個撃破か途中で合流して来るのか、どんな連携を見せてくるのか知らないが、とても息があっている。

 離れてるとは言え、あと数秒もすればエンカウントするだろう。
 だが俺たち二人は――

(動かない……?)

(ビビったか!)

 不動をに徹した。

 これは作戦。瀬那の作戦だ。刹那の時に見えたチャラ男ズの訝しげな顔。俺は内心笑った。

 それは俺も知らないからだ。瀬那がやろうとしている事が。

 じゃあ何故不安にならないのか。

招来しょうらい帝江ていこう――」

 何故信じる事ができるのか。

「招来・何羅魚からぎょ――」

 それは簡単。

「急急如律令!!」

 チームだからだ!

「――」

 二枚の符から濃い煙が勢いよく吹き出し、そいつらは現れた。

 綺麗な黄色の毛並みに丸い体型。短い六本脚に小さな四つの羽。そしてある筈の所に無い顔。

「フーー!!」

 中型犬程のデカい金魚。大き目な顔が一つなのに、体が沢山着いていて忙しなく尾ひれを動かす。

「んぱ。ワン!!」

 見間違うはずがない。こいつらは仙界で遭遇した原生生物。帝江と何羅魚だ。

「なんだ!?」

「こいつは!?」

 突然召喚された謎の生物にチャラ男ズの脚が止まる。あっけにとられた顔。それはチャラ男ズだけではなく、ギャラリー全員の口が閉まらない。

「えへへ!」

 したり顔な瀬那。満足げな相方とは違い、俺も驚いている。

 確かに、確かに何羅魚と帝江が出てきたのは驚いた。でもそれだけで俺はアホ面なんてしない。
 ではなぜ俺が驚いているのか。

「フーッッ!!」

「ワンッッ!! ワンッッ!!」

 記憶にあった愛くるしくも不気味な奴ら。方や血管と筋肉が浮き出て筋骨隆々。方や宙に浮き鋭利な牙が生え目がイッてる形相。

 間違いなく知らない。俺の知ってる奴らではない。

「よーし! 突撃ぃいいいい!!」

「フーーー!!!」

「ワン!!!」

 瀬那がアニメとかコスプレイヤーでしか見たことのない謎の可愛いレッツゴーポーズをして叫んだ。

 帝江の筋肉が躍動して走り、何羅魚の尾ひれが忙しなく動く。

「来るぞおい!」

「ッ!」

 速いくて力強い。瀬那が召喚した、いや、招来した帝江の印象だ。

 迷いのない直進。向かうはチャラ男A。猛進する帝江に、引きつる顔のチャラ男Aは剣を振りかざす。

 狂気の眼《まなこ》。おおよそ真っ当な人間が想像できない何羅魚の存在。宙を泳いでくるそれが酷く不気味で恐怖心を煽る。

 汗が滲み出るチャラ男Bは手斧を振りかざす。

 そして同時に起こる攻撃の回避。

「「!?」」

 驚愕する刹那、帝江と何羅魚はそのまま突進。チャラ男ズは腕を盾に上半身と顔を瞬間的にガードした。

 それがダメだった。

 猛スピードの突進。それは計らずも――

「ん゛ん゛ん゛ん゛ッッ~~!!??」

「オ゛オ゛オ゛オ゛ッッ~~!!??」

 男の急所に当たってしまった。

「うわぁ……」

 悲しきかな。チャラ男ズは白目をむいて悶絶している。バリアがあるとはいえ、衝撃までは吸収してくれない。実戦を忘れるなとあえてそう設計されたと言う噂。それがこんな形で顕著に出るとは……。

「フーッッ!!」

「ワンッッ!! ワンッッ!!」

 これはバトル。バリアが壊れるか時間切れ、降参の意志を見せなければ終わらない。

「イケー! イケー!」

 隣の瀬那がワンツーパンチを幾度も繰り返している。その度に招来した原生生物が執拗に突進攻撃をしている。

 倒れている二人の股間を。

「お゛お゛っほッ!? や゛め゛――」

「ん゛お゛ッ!? だッ、助げッ――」

 無慈悲にやられる行為。そこに何の希望も無い。ギャラリーにちらと目をやると、顔が青ざめドン引きしている男性陣がいた。中には自分の股間を抑えている人もいる。気持ちはわかる。

「」

「ッお゛ホ♡」

 結局、下半身のバリアが砕けた事でバトルが終わり、俺と瀬那の勝利となった。俺はマジで何もやっていないが、担架で運ばれるチャラ男ズを見て同情心が止まない。

 アディオス、チャラ男ズ。もうこれでコリてナンパはするなよ。

『チュートリアルクリア』

『クリア報酬:力+』

 こんな形でチュートリアルをクリアしたくなかったなぁ。



「ッ~~!! ッブハハハハハ! こっいっつっらっ!! ザマァ!!」

 病室。

 ベッドに起き上がった大吾が爆笑している。腕にギブスを巻いて。
 お見舞いついでに動画サイトに上がっていた昨日のバトルを大吾に見せた。みごとに大爆笑である。

「おい笑いすぎだぞ。身体に障るって」

「ッッ~~! ちょっと待てっ! ック、なんでみんなブ○リー戦のヘタレベ○ータみたいな顔してんだよっ! ッハッハッハ!!」

 確かに言われてみれば画面端に映っている男性陣と俺は、何とも言い難い表情をしている。

「あの場に居ればお前もこうなってた。アレは痛い。ぜったい」

「っふ、っふ、おいこれ見ろよ」

 笑いを堪えているが興奮を抑えきれない大吾。タブレットを指すところを見ると、何羅魚に股間をダイレクトアタックされているチャラ男の片割れだ。

「こいつなんか顔おかしくねっふ、なっんっかっこっいっつイってねっ~!!」

「……っふぐ!?」

 よく見ると表情が恍惚とし頬も赤く、目が上を向いて舌を出している。

「新たなっ! 新たな扉開いてるって!! ップ!」

「ップハ――」

 俺たちは腹を抱えて笑い、終いにはナースさんに怒られた。

 そして落ち着きを取り戻し、雑談している。

「で? 瀬那は本土に帰って実家に戻るついでにギャル仲間と遊んでると」

「夏休みも残り少ないし久しぶりに遊ぶんだと。花田さんとも会うらしい」

 今ごろ瀬那は実家に着いた頃合いか。明日明後日は例のサボり―ギャルと遊ぶ算段だろう。
 花田さんも退院し家へ帰った。いつかまた会いたいところだ。

「おい、今蕾に会いたいって思ったろ。俺の彼女だぞ」

「お前はエスパーかなんかか」

 いつもの大吾だ。時折空を見て考えてるふしがあったが大丈夫そうだ。

「俺もあと三日か四日で退院だー。寂しくなるなぁこのベッドも」

「……やっぱりギブスは取れないか」

「まだダメだなこりゃ」

 大吾の体調はすこぶる良好。今すぐにでも飛び出せる。だがギブスを巻いてる腕は泡沫事件を突破した代償。まだ数か月は取れないらしい。
 そうとう無茶やったらしく、リハビリも後に控えている。

「楽しみだったんだけどなぁクラス対抗戦」

 クラス対抗戦。ギブスをさする大吾が言った。

 二学期の十一月に予定されているクラス対抗戦。世界では既に行われている行事で、東京は十一月だが大阪の学園都市は夏休み中に一週間設け先に開催された。

 一応動画サイトでおおまかな内容は見れるが、俺はあえて見ていない。映画のネタバレは嫌い派なんでね俺。
 まぁおおよそ同じ内容が対抗戦で行われるはずだ。

「俺はこれで出れないけど、……もちろん勝つよな」

 横目で俺を見て白い歯を見せつけてくる。目を合わせると、握った拳を突き出してきた。

「バーカ」

 微笑みかけて拳を合わせる。

「やるからには勝つしかないでしょ!」

『チュートリアル:対抗戦で優秀な成績を修めよう』

 視界の端に映しながら、俺は自信満々で言いきった。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨
ファンタジー
普通の高校生として生きていく。その為の手段は問わない。

陰キャの俺が学園のアイドルがびしょびしょに濡れているのを見てしまった件

暁ノ鳥
キャラ文芸
陰キャの俺は見てしまった。雨の日、校舎裏で制服を濡らし恍惚とする学園アイドルの姿を。「見ちゃったのね」――その日から俺は彼女の“秘密の共犯者”に!? 特殊な性癖を持つ彼女の無茶な「実験」に振り回され、身も心も支配される日々の始まり。二人の禁断の関係の行方は?。二人の禁断の関係が今、始まる!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...