俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮

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第六章 法術のススメ

第45話 チュートリアル:不安

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「♪~」

「アッハハハ! 何それウケる~!」

 都内にあるカラオケ店。

 萌と大吾のチームメイト、朝比奈 瀬那が友人のギャルたちと遊んでいた。
 瀬那を合わせて五人。夏日のギャルらしい露出あるコーデ。女子だけという事もあり、いや、どこに居ても変わらないが、脚をソファーに乗せ下着があらわにもなっている。

 昼前に集まりそのまま昼食。インスタで有名な店を巡り十五時頃にカラオケ店へと入った。一周して全員が歌い、後は歌いたい人が歌う。机の上の注文したポテトやらを摘まみながら最近のトレンドを談笑している。

 連絡は取っていたが久しぶりに会う本土の友達。萌たちとも笑い合えるが、こちらの友達はまた別の空気があり瀬那は羽を伸ばせることができた。

「って言うかさー。瀬那ってはじめくんとチームなんだよね?」

「羨ましいー」

「……え、なんて?」

 萌くん――

 羨ましい――

 瀬那は一瞬、友達が何を言っているのか分からなかった。チームの話はするかもしれないと思っていたが、萌の事をくん付けしあまつさえ羨ましいなんて言葉、予想すらしていなかったからだ。

「やっぱり普段から頼りになる感じなの?」

「身体めっちゃ鍛えてるってマジ?」

「カッコいいよね~。一緒の学校に居た頃はただのオタクだと思ったのに、いやー人って変わるもんだわ~」

 怒涛の質問攻め。質問される度に首を動かし、瀬那は混乱した。期待を向けられた視線。刹那的に出した言葉が――

「ま、まぁ……チームのリーダー、だし……」

 だんだん細くなっていく声に、キャーと黄色い声をあげるギャルたち。姦《かしま》しく同意の意見が飛び交う。

「ちょ、ちょっと待ってよ! なんでみんなもえの事そんな風に思ってるの?」

「あーもえだってーー!」

「瀬那っち焦ってるぅうー! 可愛いー!」

「焦ってない!!」

 瀬那は思った。こういったノリは後からもずっと擦り続けられると。

「瀬那知らないの? 萌くんって結構有名なんだよ?」

「こりゃ近くにいすぎて逆に知らなかったパターンですわ」

「これ見てみー」

 そう言ってスマホの動画を見せられる。

 動画の内容は泡沫事件の始まり。ビーチで巻き起こる阿鼻叫喚が映し出され、カメラ陣にもモンスターが襲い掛かるその時、その人物は颯爽と現れモンスターを蹴散らした。

《あんたら何やってんの! さっさと逃げなって!》

 右手にオーラ剣。左手に武器と化したモンスターを握った萌だった。必死さもあるが余裕のある落ち着いた表情。滲む汗が白のシャツを張り付かせ、布越しでも分かる鍛えこまれた肉体が目を引く。

 逃げるカメラだがそのレンズに映すのは果敢に戦う萌。次々にモンスターを薙ぎ倒していく様は雄々しく、そして勇猛に見え、瀬那も内心カッコいいと思う程だ。

「それとさ! 泡沫事件攻略に関わった学生って瀬那っちのチームってマジ?」

「え!? ええーとぉー、違うよ~」

「ふーん。ふ~ん」

 泡沫事件に関わった学生は世間には公表されていない。情報統制の一環だが、ネットやテレビに映る萌の姿を見て、きっとそうなんだと曖昧な紐づけをされるのは仕方のない事だった。

 情報統制により瀬那は肯定を許されずこれもまた曖昧な答えを出したが、ギャルたちには嘘だとバレている。

「うかうかしてられないよ~瀬那ぁ~」

「な、なに……?」

「争・奪・戦!」

「争……奪戦?」

 瀬那は嫌な予感がした。いや、話の流れで心の何処かで察する。

「もうすぐ新学期。夏休みの間に広まった活躍とカッコいい萌くん。学園の女子たちは放っておかないでしょ!」

「私なら魅惑のボディで誘惑とかするかなー」

「残念! おっぱいが無かった!」

「なんだとこの野郎ーー!」

 じゃれつくギャル友達から視線を外し瀬那は俯いた。

 思い浮かぶのは萌の笑顔。秘めていた想いに、チクリと表現し難い刺激が胸を刺した。


 時間が進んで夏休みも終わり、朝。

 ルームメイトが先に登校し、ナチュラルメイクと髪の毛を整えてから寮をでた。

 日差しが強いまだまだ夏日。今日は午前だけの学び舎。制服を少しはだけさせたいつものスタイルで登校する。

(少しだけ髪整えたけど、気づいてくれるかな)

 だが彼は気づいてくれないと瀬那は知っている。自称陰キャゲーマーだからだ。
 だが。もし。と、気づいてくれる可能性を捨てきれない。

「おはようー」

「元気してた?」

 学校に近づくにつれ学生の気配も段々と増えていく。瀬那はいつもの光景に戻ったのだと内心安堵した。

「おはようございまーす!」

「おう。おはよう」

 竹刀を手に持つ学園の先生に、周りと同じくあいさつした。談笑グループが出来上がっている学生に囲まれ校舎に入る。そのまま何事もなくクラスの階へ着き、そのままクラスの扉を開けた。

「みんなおはよう!」

「おはようございます朝比奈さん」

 近場の何人かは挨拶を返してくれた。しかし、自分の席に、いや、チームの席に人だかりができていた。自分のクラスメイトだけではなく、他組の生徒もいる様だ。

「――この腕が漢の勲章なんだよ。そう、彼女を助けた代償さ……!」

「おぉおおお!!」

 日焼けした肌、腕にはギプスの大吾が演技がましく得意げに謳っていた。守秘義務はどうしたんだと内心瀬那はツッコんだが、もはや周知の事実だと踏んで話しているのだろう。

「元気そうじゃん。流石は蕾の彼氏!」

「お瀬那さん! その節はどうも~!」

 人だかりが瀬那の存在に気が付くとそそくさと割れ、瀬那は自分の席に腰かけた。

もえはまだ来てないんだ……)

 隣の席が空いているのを、少しだけ寂しく思えた。

「なんと我がチームが誇る紅一点! お瀬那さんはモンスターをちぎっては投げちぎっては投げ――」

 大吾の大雑把な演技が笑いを呼び、クラスに笑顔が咲いた。

 朝から笑わせてくると思っていると、窓をコンコンとノックする音が響いた。周囲の誰もが窓に顔を向けると――

「うお!?」

「――! ――!!」

 ガラス窓に顔と体を引っ付かせた萌が必死の形相で訴えている。開けてくれと訴えている。

 息で曇る程の密着。瀬那は急いで窓を開け、右手だけでぶら下がっていた萌が教室に入ってきた。

「ふぅ、助かった瀬那」

「ここ五階だよね!?」

「猛烈に嫌な予感がして逃げてきた……」

 いやな顔をして窓から顔を出す萌。同時に瀬那も下を見ると、悲鳴のような黄色の歓声が響いた。

――「争・奪・戦!」

 瀬那の脳裏に浮かんだのは友達が言っていた言葉。直感で分かったしまった。下にいるのは萌を狙う女子たちだと。

「♪~! モテる男は違うねぇ」

「ちゃかすな! 俺は命の危機から脱したところだぞ!?」

 クラスメイトに挨拶をしながら自分の席に座る萌。少しソワソワしているが、いつもと変わらない様子だ。

 しかし瀬那の胸騒ぎは治まらない。ギャル友が言っていた争奪戦。今は訳の分からない事を言っている萌だが、これを機に恋愛するかもしれないと、自分の手が届かない所に行ってしまうのではないかと。

 思わずにはいられない。

 胸の痛みで下唇を噛む。

「朝から疲れる……。あれ? 瀬那――」

 条件反射で彼の瞳を見た。

「髪切った? 微粒子レベルの変化で普通分からんて」

「――ぁ」

 笑った顔がすぐ大吾に向けられ、男同士のノリに混ざる萌。

 瀬那の口元が緩む。

 先ほどの胸の痛みはもう無い。

 この秘めた想いを伝えるのはまだ自信がない。だが、ほんの少し、少しだけ、大胆になれる自信はついた瀬那だった。


 二学期が始まる。希望と期待を胸に。

 そして悪意の凶剣が振るわれる始まりでもあった。
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