俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮

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第七章 二学期

第49話 チュートリアル:今日も雨が降る

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「あー確か歯磨き粉ももうすぐ無くなるなぁ」

 授業が終わり放課後。

 まだまだ残暑があるがもうすぐ九月も終わり。今来てる近所のスーパーも季節の品物が変わり始めるころだろう。

 リャンリャンが来てからは買い物や家事は分担、または当番制にしている。近頃は俺が買い物当番で、主婦や主夫みたく普通に買い物している。

「詰め替え用っと」

 俺の生活を支えてくれるのは親の援助。っつうか、親のクレカだ。二人とも海外を飛び回り忙しくしている。
 小さい頃から二人とも家を空ける頻度が多く、小さいながらも家事ができた俺は何にも苦には思わなかった。

「……ポテチはコンソメだな、うん」

 放任主義と言われればそれまでだが、別に両親から愛されなかった訳じゃない。と思う。
 運動会とか、誕生日とか、クリスマスとか。リクレイ○ーに属してるどっかのジョナ○ンと同じでいつも参観や祝ってくれる訳じゃなかったけど、注がれる愛は確かに感じていた。

 少なくとも「クリスマスプレゼントだろ!!」 とはなっていない。

「――円になります。七番精算機でご精算ください」

「あ、はい」

 そしてその両親だが、近々日本に帰って来れるらしく、俺がちゃんとした生活を送れているかチェックしにくる……。
 まぁ両親と同じく久しぶりに会えるから普通に嬉しい訳だが、ここにきてどうしたものかと悩みが出てくる。

『チュートリアル:買い物しよう』

『チュートリアルクリア』

『クリア報酬:技+』

「晩飯はギョウザと天津飯にしてもらおう」

 それは我が家の料理長兼、細目イケメン兼、黄龍仙兼、亮《りゃん》のAIな我が家臣、リャンリャンの存在だ。

 一応大吾と瀬那には遠い親戚となっているが、そんな事実は一切無い。

「……」

 さて、帰路の道中だがどうしたものかと考えがまとまらない。今にして思えば遠い親戚設定は今みたく、親が絡めばこういう事態に陥ると少し考えればわかった……。

 いや、わかっていた。あの仙人はわかっていてあえて追言しなかった可能性もある。あの中国人(?)は楽しい事が何より大好きだ。俺の慌てふためく様を見て内心ほくそ笑んでるに違いない。

 それと忘れてはいけないリャンリャンの服事件。

 総額二十万越えの装いを勝手にクレカを使用し我が物顔で購入した事件だ。おかけでスマホ越しに普通に怒られた。何とか必要経費と豪語して乗り切ったが、ぶり返されると憂鬱でしかない……。

「なんか思い出すとムカムカしてきた」

 なにがムカつくってあの細目イケメンに装いが似合いすぎているからだ。完全にカンフー映画の強者感だからな。正直値段以上の存在感だ。

 そう思いながらマンションのエレベーターを降りて部屋に向かう。いつも通り静かなマンションの廊下。部屋の前に着くとカードキーを押しつけて解錠させた。

「……?」

 玄関に入ると、普段家では聞かない音が聞こえてきた。

 大人の雰囲気を漂わせる金管楽器のディープな音に、ゆっくりとした音調。

「「――ああ~♪」

 靴を脱いで廊下に立つ。

「「長崎は~♪」」

 エコバックを握りしめ廊下を歩く。

「「今日も~♪」」

 リビングに続く廊下のドアノブを捻った。

「「雨ーだあった~~♪」」

「何やってんだお前らああ!?」

 俺の目に飛び込んできたのは肩を組んで演歌を熱唱している男が二人。リャンリャンとアーマーを脱いでいるエルドラドだ。

「あ、おかえり大哥~♪」

「ただいま……ってちょい待て! 何でカラオケ!? 何でエルドラドがここに居んだよ!? それにうわ、酒くさ!?」

 状況が意味不明過ぎてツッコミが追いつかない。確実に言える事は、二人は酒が入っている。

 そう思っていると、グラサンかけてるエルドラドが白い歯を見せて笑顔を向けてきた。

「おじゃましてるよはじめくん。いやー遊びにきたらリャンリャンと意気投合しちゃってね、つい酒が弾んでカラオケ大会始まっちゃったよ~」

「俺の疑問に答えてくれてありがとう!! じゃあっとっとと帰れキンピカ! カラオケは近所に迷惑だろうが!」

 家主としてはエルドラドの存在より、ご近所さんに迷惑が掛からない様にするのが優先事項だろう。そもそもカラオケとか論外だ。って言うかあのカラオケセットは誰のだ。

「アイヤー、結構前に大哥に内緒で買った物だヨ☆ もちろんお父様のカードで買った☆ 送料無料☆」

「!?」

 この股間ツルツルロボ……!! 反省するどころか増して買ってやがる!? 安西先生じゃないが、まるで成長してない……。俺の顔に青筋の怒りマークが入るのは仕方のない事だ。

「まぁまぁ萌くん。帰ってきたばかりだし、これ飲んで一息ついたらどう?」

 ヒョコっと視界に入ってきたエルドラド。その手に持つのは液体が入った我が家の透明なグラスだ。喉の渇きを潤すため、手渡されそれを口に含んだ。

 そして吹いた。

「ブーーーッ!? おまっ、コレ酒なんじゃ――」

「ダッハッハッハッハ」

「アッイッヤッアッアッ」

 指をさして腹を抱えるエルドラド。

 壁に寄りかかり笑うリャンリャン。

 俺の心持は穏やかではない。すでに護ると言われた勇次郎なみに俺はキレている。顔じゅうが怒りマークでいっぱいだろう。

「この酔っ払いどもがああああ!! ふざけんなああああ!!」

 俺は怒りに任せ二人に飛びついた。



 夜九時頃。

 冷静さを取り戻した俺は、家事等を済まし、新作のポケ○ンを遊んでいる。

「お、ミラ○ドンが元気になった」

 リャンリャンは自室で瞑想。エルドラドは酒を飲みながら隣で俺のプレイを見ている。

「おい、もう帰れよ。どうせ俺にアンブレイカブルの記憶が舞い戻ったとかの様子を見に来たんだろうが、見ての通り何もない。今はポケ○ンで忙しいんだよ」

 この金髪のおっさん、まるで帰る気配が無い。敵意は無いから居させてはいるが、一応慣れ親しむ間柄じゃないから早く帰ってほしい。

「そう目くじら立てるなって。そんなんだから――」

 抵抗するポケ○ンがモンス○ーボールから出てきた。

「捕まえられないんだよ」

「……」

 逃したソレを見て、なんかエルドラドの意見が正しいように思えてきた。ゲットするためには冷静さと集中。これがいる。

「……」

「……ンク」

 しばらく無言でプレイし数分経った頃、エルドラドがおもむろに口を開いた。

「この世界はいい世界だな」

「……なんだよ突然」

 横目でエルドラドを見る。ゲーム画面を反射したグラサンが目に映り、表情が伺えない。

「天気による災害や、裕福の差、いろんな問題があるってのは他の世界と一緒だが、何よりここは娯楽が充実している」

 ふしぎなアメを拾った。

「食い物はうまいし、テーマパークまである。人々の顔も笑顔で溢れていた。少なくとも俺の世界よりかは、な」

 赤い瞳が俺を見てきたので、普通に目をそらした。

「……なんだよ、何が言いたいんだ」

 ポケ○ンにライドしてエルドラドに投げかける。

「このままだと……滅ぶぞ。この世界」

 その言葉に俺の心臓が一回だけ強く脈打つ。持っているプロコンの操作を止め、画面を見ながらこう返した。

「それはお前らが滅ぼすからだろ」

 彼はこう答えた。

「違う」

 と。

 じゃあ何だと。災害で滅ぶ。ダンジョンで滅ぶ。悪意によって滅ぶ。俺が質問するより前に、エルドラドはソファから立ち上がった。

「記憶が馴染んでくれば嫌でも知る事になる。せいぜいアンブレイカブルに祈っとけ」

「おい! 焦らすな話せよ!」

「アディオ~ス」

 金色の空間に入ってエルドラドはこの場を後にした。

「……去り際に気になる事言いやがって」

 滅ぶ。この世界は滅ぶと言われた。それが何故だと今は分からない。教えてくれそうも無いし、すべてはアンブレイカブルの記憶に頼るしかない。

「あれ、エルドラドは帰ったのかイ☆」

 瞑想を終えたリャンリャンがリビングに来た。モヤモヤした気持ちがリャンリャンのイケメン顔で塗り替えられる。モヤモヤからイライラに。

「おい仙人。ちょっとそこ座れや」

「えーお説教ぅ? カラオケでも歌って忘れちゃいなヨ☆」

 とりあえず俺も一曲歌ってから説教だ。



 翌日。

 今日は祝日の金曜日。三連休最高。

 時間は午前十時ごろ。

 今日は珍しく本土の東京に来ている。まぁ学園都市も東京だが。

 ゲーマーな俺が休日にゲームしないのは正直苦しい。ゲームしたい。ポケ○ンしたい。
 でもしょうがない。大吾と瀬那、チーム二人が誘ってきたのだからしょうがない。

「数分遅刻だわ」

 俺は急いで駅のホームから改札に早歩きした。

 待ち合わせ場所の駅前。既に待ち人たちはたむろしていた。

「遅いぞーもえー」

 瀬那の声が大きく響いて来た。

 俺を待っていたのは瀬那と大吾、それに大吾の彼女である花田さん。

 そして見覚えのあるギャル集団が居た。

 総勢七人の陽キャ。俺はさらに帰りたくなった。
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