俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮

文字の大きさ
94 / 288
第十章 対抗戦 予選

第94話 チュートリアル:流行らせコラ!

しおりを挟む
 暗く薄暗い廊下。天井灯が点滅する音だけが小さく鳴り、ほか一切の音がしない。

 そんな暗闇の中、不意に、目の錯覚を疑う程の二つの光が見える。

 光の形と位置的に眼だと分るが、問題はそこではない。

 上下逆さまで、まるで人が這った位置に眼があるからだ。

 その光が揺れながら、段々と近づいて来る。

 窓から射す薄い光に照らされたのは、右腕、そして左腕。移動する度に双方の手の平が垣間見える。
 そして鋼鉄の仮面。逆向きで現れる不気味なソレは、徐々に姿を現し、人が裏返る四つ足で現れた。

 ついにこのバケモノが、君を襲う!!

「んな訳ねーだろおええええ!?」

 このブリッジ状態で移動するのはかれこれ十数分だ。このお化け屋敷でブリッジしながら襲ってくるバケモンがいたら小便撒き散らしてビビるだろうと思い、今し方。

 結果、ビビり散らかした野郎二人と女生徒一人を退場させた。

「うわあああああ!!」

「来るな来るなあああ!!」

「嫌あああああああ!!」

 今でも鮮明に思い出せる恐怖の絶叫と断末魔。これがまた楽しい楽しい。仕掛け人って客を驚かせて快感を覚え、金までもらってるんだから気持ちよすぎだろ。

「ああ~~たまらねえぜ!」

 これが三人で盛り合った糞土方の気持ちかぁ。東京の学園都市で会える奴なら最高や。
 わしは183*183*17や。ビビり散らかして小便漏らしたいやつ、至急、メールくれや。

「おっと、変態おやぢの魂がついつい乗り移ってしまった……」

 もっとも、糞土方の生存は疑問視されるが……。

「ふぅ」

 脚の力だけでブリッジから立ち上がる。長時間ブリッジに加え、ブリッジしながら走るのは中々いい筋肉の負担だ。正直日課のトレーニングに取り入れようと思ったけど、外でそれすると普通に通報されそうだから止めておこう。

「……ん?」

 そんな事を思っていると、窓の外に人の気配。しめしめと手を擦り80年代のアニメみたいな感じで近くの出口を通って外に移動。

 角から様子を伺うと、三人いた。と言うか、二人が一人を囲っている。これは……。

 聞き耳を立ててみよう。

「――って事だ戸島ぁ! 退場してもらうぜ!」

「♰何!?♰」

「そこ抑えろ!!」

 戸島もといダーク=ノワールが屈強な男子二人に取り押さえられる。

「♰何すんだおま……! 放せコラ!♰」

「〆るぞオラア!」

「♰クラスは違えど仲間じゃないのか!! や~めろお前ら!!♰」

「抵抗しても無駄だぁあ!!」

 どういう事か知らないけど、結託していたクラスが裏切り行為を選択したようだ。

 それにしてもだ。痛い服装で誤魔化してるがけどダーク=ノワールが華奢だからスキルで攻撃せず、二人でがんじがらめのもみくちゃ体術で拘束するとか……。
 裏切った二人はラグビー部かってくらい屈強な体してるのに、人一人抑えられないなんて……。戸島が意外と力があるからか?

「♰あ゛あもう! お前らに! 貴様ら二人なんかに負けるわけねえだろ貴様らあ! 流行らせコラ! 放せ! 放せえええ!!♰」

 ガチのマジで必死に抵抗しキャラを戻したダーク=ノワールだが、元仲間だからか身体能力だけで振り切ろうとしている。裏切られてるのに優しいなぁと俺が思ったその時!

「ッ!!」

 向こうの茂みから男子生徒が一人現れ、組んず解れつ絡み合う塊の中に飛び込んだ。

「なんだお前」(素)

 もう一人の刺客にさすがのダーク=ノワールも素を口にしたようだ。

「おとなしくしろ!!」

「コラドケ!!」

 必死のパッチで抵抗しなんとか抗えたダーク=ノワールだが、まさかの追加参戦でどうしようもなくなり、痛い服を脱がされそうになっている。

 裏切られた戸島は可哀そうだけど、この三人は何がしたいのかもう分からない。

 しかし、転機は訪れた。

「三人に勝てるわけないだろ!!」

 その言葉がトリガーになった様に、戸島の体から可視化した力が噴出した。

 そして――

「♰馬鹿野郎お前俺は勝つぞお前!!♰」(天下無双)

 膨れ上がった魔力の塊が膨張し同時に破裂。屈強な三人を吹き飛ばし、彼は服装を整えた。

「あっぶねえ!? 危うく脱がされて乱暴されるところだった……!」

「っく! 一筋縄ではいかないか!!」

 キャラがブレブレ過ぎて見ていて面白いけど、裏切り者の三人はダメージを抱えながらも立ち上がり、各々の得物をチラつかせてダーク=ノワールに迫る。

「♰ン゛ン! 残念だが貴様らの凶刃は我には届かん!!♰」

「何オウ!! やっちまえ!!」

 男子三人が一斉に襲いかかった!

「♰フン! 魔法発動マジックエフェクト! アルテミット・スレイ!!♰」

 背後に展開された三つの薄紫の魔法陣から、矢の形をした光が出現。矢先が戸惑う男子を捉えると、勢いよく発射され接触。

「「「ぐああああああ」」」

 光を撒き散らしながら吹き飛ばされコンクリートの壁に激突。バリアが割れ、三人は言葉を発する事無く退場した。

「わーお……」

 一切躊躇ない攻撃だ。敵なら容赦はしない性格らしいな、戸島くんは。

「♰フン、他愛無い。我に挑むには十年早かったようだな……♰」

 手の包帯を整えながらバーチャルファイターのア○ラみたいなセリフ言ってるよあいつ……。しかもいちいち整え方が中二病ぽくてなんか昔の俺を思い出すんだが? 普通に痛い思い出だ。

「♰こう回る、こう回って――」

「……」

 なんかカッコいい決めポーズを試してるっぽいな。もちろん痛いんだけど、試してると分る俺も十分に痛いのは、実に痛い事だろう。ダジャレじゃないぞ?

「♰こうか、それとも――ん?♰」

 あ、覗いてるのバレた。とりあえず姿を現わそう。

「……イユアっセキヤっサ(見つかってしまった)」

「!? その言葉は……! リソオテマミダチネセミっサデンミンマ(人の気配が消えていった原因は)」

 ダーク=ノワールが半歩近づいて来た。

「トヤネア……(おまえか……)」

「トエガ……(俺だ……)」

 まさかのアルベド語習得済みで草しか生えない。しかも俺並に話せそうだ。めっちゃ痛いのは変わりないが……。

「♰……どこから見ていたかは知らないが、見苦しい物を見せてしまったようだ♰」

「いやアルベド語で話さんのかい!?」

 俺も思わずアルベド語を忘れてツッコんでしまった。まぁまだ考えながら言わないといけないし、普通に話そうかな。

「♰花房 萌。貴様は我らの怨敵にして最大の壁。ならば、この我が貴様を屠り、勝利の凱旋を飾ろうではないか!!♰」

 そう言ったダーク=ノワール。背後に次々と魔法陣が展開され、今か今かと発動を待っている。

「ッ!」

 魔法使いと魔術師の違いや、魔法陣と魔術陣の違いは今は置いておくけど(実は教えられたことしか知らない)、一度の展開で十個以上の魔法陣は億を稼いでる攻略者しか聞いたことない。

 つまり、少なくとも視界いっぱい十個以上展開しているダーク=ノワールは、それ以上のポテンシャルを秘めているに他ならない。

「♰覚悟はいいか、ジャック・オー!!♰」

 どうやらふざけながら倒せる相手じゃないらしい。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨
ファンタジー
普通の高校生として生きていく。その為の手段は問わない。

陰キャの俺が学園のアイドルがびしょびしょに濡れているのを見てしまった件

暁ノ鳥
キャラ文芸
陰キャの俺は見てしまった。雨の日、校舎裏で制服を濡らし恍惚とする学園アイドルの姿を。「見ちゃったのね」――その日から俺は彼女の“秘密の共犯者”に!? 特殊な性癖を持つ彼女の無茶な「実験」に振り回され、身も心も支配される日々の始まり。二人の禁断の関係の行方は?。二人の禁断の関係が今、始まる!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...