127 / 288
第十二章 有りし世界
第127話 チュートリアル:陽があり陰があり
しおりを挟む
――クリスマス。
ジョ○ョ七部では「死後、最低でも2度以上の奇跡を起こした人物」とされる、かの聖人が降誕した日。
もっとも、聖書にはかの者の降誕の記述は無いとされ、後世の人々が教典を広く広めるために設定したとも考えられている。
熱心な教徒は素晴らしい日だと家族と共に祝い、感謝する。
しかし、こと無信教の多い我々日本人は熱心な教徒と同じく祝い、親愛する者にプレゼントを贈り、家族や恋人、友人と過ごしそれにあやかる。
今日は二十四日のイブ。
休日ともあって繁華街には多くの人が往来。寒空の下、カップルが同じポケットの中に手を繋いで温め合い、同じく手をつなぐ親子が白い息を吐いて笑顔で歩く。
独り身の者、サンタ服を着てケーキを売る者。皆等しく、東京では珍しい粉雪を被っていた。
「――ほぉー」
待ち合わせ場所で有名な名所。誰かと待ち合わせをしている数人の中に、妙に逆立った髪型をした人物が手のひらに息を吹きかけて寒さを和らいでいた。
「おまたせ、優星」
「いや、俺も今来た所だ」
不動 優星――チームファイブドラゴンのリーダーであり、同じ攻略者でサークルのメンバーである今し方歩いて来た十六夜 アキラの恋人である。
二人は腕を絡ませ繋いだ手を優星のポケットに締まった。
同じ様に手をつないで歩くカップルがチラホラ。その中の一つだと特別視されない二人。
「ッハハ、ゲームでインチキを疑うのは黒鵜らしいな」
「荷解きも終わって無いのに二人はずっとゲームしてそれよ? しかも惹句はずっと高級豆のコーヒー飲んでるし……。少しは真面目な流美を見習ってほしいわ」
歩きながら談笑する。
「……少し元気取り戻した?」
「え?」
「ほら、最近悩みがあるみたいにずっと暗かったから……」
「……そうか。俺は暗かったか。……心配かけたな」
「うん……」
心配そうに見つめてくるアキラに対し、優星は申し訳なさと気遣いをされた有難みを顔に出す。
何んとなく事情を察しているアキラは、暗い顔をしている優星を助けたかったが、時間が解決するものだと見守る事しかなく歯がゆい気持ちだった。
しかし今日の優星は明るく、どこか吹っ切れた顔を見せた。肌を重ねた自分だけではなく、サークルメンバー全員が優星を気にかけた結果だった。
「でぇ? 今日はイブで特別な日だけどぉ、今年のプレゼントは何かなー」
通行人に邪魔にならない所で立ち止まった二人。小さく舌を出しいたずら顔で優星に問いただしたアキラ。
「ッ」
優星の視線がそっぽを向く。
アキラは知っていた。
この仕草は恥ずかしがっている仕草だと。
そしておもむろに胸ポケットをまさぐる赤面の優星。
取り出したのは、小さな箱だった。
「ちょちょッ!? え、今あ!? え!! まだ心の準備がッッ!?」
あからさまに戸惑うアキラ。赤面し、その小さな箱に揺れる瞳が一点集中。今まさに、彼女の人生最大の分岐点が――
「――俺と住まないか! 同棲しよう!!」
「よろしくお願いします――え」
頭を下げたアキラだったが、開けられた小さな箱には思っていた物と明らかに形状が違う物があった。
鍵だった。
「……」
「……」
方や期待を込めた視線。
方や嬉しくも落胆を孕ませる視線。
両者何も言わぬが、それはそれとして深く溜息をついたアキラ。
「はぁ……。優星、あなたってホント誠意があると言うか……」
「絆がある……」
「……わかった。一緒に住もっか」
「アキラ――」
はにかむアキラに、優星は抱き着いた。
そして、その光景を遠くで見ていた者がいた。
「リア充死ね」
ヤマトサークル所属。西田 信彦。登場。
「こんな日に虚しい事言わんでくださいよー。それって負け犬の遠吠えー。ただでさえ寒いのに独り身だって思い知らされて更に寒くなってんスから」
「言うなミッチー! 俺たちには掲示板のみんなが居るだろ!」
サンタ姿の西田メンバー。隣にはトナカイ姿の三井が。
ここはヤマトサークルが抱える公式グッズ販売店。
入団試験が厳しく人手不足なヤマトサークル。地域貢献も兼ねた格安オリジナルケーキを販売。その販売員に二人があてがわれた。
嫉妬の怒りを纏う西田サンタ。余りにも近寄りがたい空気に客足は遠のくばかり。
(グヌヌ! 部屋でぬくぬくネットのみんなと一緒にクリスマスを楽しむ予定だったのにッ!!)
全盛期と比べると今では下火になっている動画サイト。このクリスマスの次期にランキングに上がるのはクリスマス動画だ。しかもそれは悲しきかな。クリスマスの日が報われないアニメの切り抜き。
流れる新しいコメントを拝見し、共に孤独なクリスマスを過ごしていると感じる事が、西田の涙を止めていた。
しかしそれは人手不足により叶わぬ悲しき夢。
故に西田メンバーが怒りを覚えるのは仕方のない事なのだ。
「金と知名度はあるのに何でモテないんスかねーノブさん」
「俺が聞きてぇよ……!」
キレるサンタに足を組んでやる気なしのトナカイ。
「財布は暖かいのに隣は寂しいんスね~。何でなんスか?」
「お前俺の事バカにしすぎだろ」
西田 信彦はモテない。
この男。攻略者として成功した部類であり知名度も高く顔も悪くなく、金銭も同年代にしてはかなり持っている方だ。しかしモテない。故に、西田は大人のお店で文字通り階段を上がる始末。
(俺にはきっと、運命の人が待ってるんだ)
そう思う事で、一人マスをかいて生きている。
「はぁ……。ブロンドの髪にチャーミングな瞳。程よい大きさの胸にケツがデカい女は居ないのかなぁ……」
「虎杖と東堂もそこまで求めて無いッスよ……」
「俺のこと全肯定してくれて甘えさせてくれる、バブみを感じさせてくれる二次元のママみたいな人は居ないのかなぁ……」
「……こりゃダメだ」
下を向いて溜息を吐く西田と夕暮れを仰いだ三井。
その目の前を通り過ぎるカップルが居た。
「――でさー、パパとママが私より進太郎を心配したんだよ? 酷くない? 娘として物申したいわけよ!」
「まこと姉ちゃんって昔からおてんば娘だったからかな。今も昔も、俺が大きくなろうとおじさんたちの目にはひよっこに見えるんだって」
「小さい頃は私の後ろによく着いて来たこと。体弱かったのに、今じゃこんなに大きくなって……」
「ぎゅ、牛乳死ぬほど飲んだから……」
進太郎の肩をバシバシと叩く姉貴分。見る人が見れば、自分より大きくなった弟に感傷を感じる姉と言ったところか。
しかし、実際は血の繋がりのない男女。特徴的な眉をハノ字にする彼とは反対に、目を細くして笑う彼女。
手を絡め合う二人はこの場に遜色ないまごう事なきカップルだった。
「……うーむ」
「な、なに?」
まことが進太郎を睨む。それは疑いの視線だ。
「なんか表情が硬い」
「い、いや? そんなこと、無い」
「……まさか緊張してる?」
「ッ!?」
「あ! 当たり? やっぱ緊張してんだー!」
図星だと表情に表した進太郎だが、笑顔の彼女に苦し紛れの反論した。
「は、初めてのクリスマスだし! その、恋人としての……! そりゃまぁ、緊張するって言うか……」
そう言った進太郎。握る手に汗がじんわりと滲み出るのであった。
それを感じ取りながらも頬を染める進太郎を見るまこと。あの小さかった弟分がここまで大きくなり、あまつさえ恋人として隣にいる。
彼女は口を緩ましてこう言った。
「かわいいとこあんじゃん……」
「ぅ」
「まぁ知ってたけどね! アハハ!」
「――ッ。からかうところはホント変わらないなぁ」
姉弟の様に笑い合う二人。
その二人が繁華街の人混みへ消えていく中、同じ通りの最端で無言のカップルが慣れた歩幅で歩いていた。
「……」
「……ッ……」
同じ赤色のマフラーをした美男美女のカップル。二人ともモデルをしていてもおかしくない顔とスタイル。
その二人がこの賑わいの影になりたいと、息を殺して歩いている。
少し広い裏路地にて立ち止まる彼氏。それに気づき立ち止まる彼女。
「……その、今週は女の子の週だろ。蕾の身体が一番……。俺のわがままに付き合う事ないって」
「……」
「俺そういうの詳しく無いけどさ、更に辛くなるかもだし、大事にしたいて思って――」
大吾の言葉が止まる。
不意に接吻をされたからだ。
「――ん」
濡れた瞳。
濡れた唇。
「今日は大吾くんのわがままじゃない。私のわがままなの」
「つぼみ……」
「だから、ね……」
「――――」
二人は歩を進める。
そして場所は繁華街へ戻り、カラオケ店。
「広 が る プ ラ ズ マ ウ! ウ! ウルフのーマークあ! ――」
花房 萌。渾身の歌唱。
これにはJ9たちも親指を下にする称賛。
「キャーカッコイイ!!」
「なんてすーごいハニハニ!♪」
悲しきかな。烈風散華。
「だいじょーぶよ! 私は最強ー♪」
「イエーイ!」
最強なウタ。
昼食を取り、アミューズメント施設を回り、カラオケで二人きり。頻りに歌いさて夜も更けてきたところで待望のプレゼント交換。
「わぁあああ!! これディオールじゃん!! いいのコレ!!」
「もちろん。正直俺ってセンス無いからさ、瀬那の好きな色を基準に店員さんに選んでもらったけど正解な様で」
「ヤバイめっちゃ嬉しい!! 萌だぁい好き!! チュ!」
(んほおおおおお!!)
頬にキスされた萌。心の中でアへ顔する。
「おお! マフラーか! 質感と手触りが良い……」
「古いマフラーしか持ってないって言ってたし、ちょうどいいかなぁて」
「ありがとう瀬那! これで南極まで行ける!!」
「アハハ! 大げさだってー」
カラオケ店から出る二人。
萌の首にはプレゼントのマフラーが。腕を絡ませ歩く二人。
このままイルミネーションでも見に行こうとした萌だが、不意に瀬那が寄りかかる。
「どしたの。行きたい所ある?」
「……うん」
考える萌。まだ時間には余裕があると思い、どこに行きたいんだと瀬那に聞いた。
そして顔を赤らめた瀬那はこう言った。
「萌の部屋……」
「……そっか」
萌の鼓動が早くなる。
ジョ○ョ七部では「死後、最低でも2度以上の奇跡を起こした人物」とされる、かの聖人が降誕した日。
もっとも、聖書にはかの者の降誕の記述は無いとされ、後世の人々が教典を広く広めるために設定したとも考えられている。
熱心な教徒は素晴らしい日だと家族と共に祝い、感謝する。
しかし、こと無信教の多い我々日本人は熱心な教徒と同じく祝い、親愛する者にプレゼントを贈り、家族や恋人、友人と過ごしそれにあやかる。
今日は二十四日のイブ。
休日ともあって繁華街には多くの人が往来。寒空の下、カップルが同じポケットの中に手を繋いで温め合い、同じく手をつなぐ親子が白い息を吐いて笑顔で歩く。
独り身の者、サンタ服を着てケーキを売る者。皆等しく、東京では珍しい粉雪を被っていた。
「――ほぉー」
待ち合わせ場所で有名な名所。誰かと待ち合わせをしている数人の中に、妙に逆立った髪型をした人物が手のひらに息を吹きかけて寒さを和らいでいた。
「おまたせ、優星」
「いや、俺も今来た所だ」
不動 優星――チームファイブドラゴンのリーダーであり、同じ攻略者でサークルのメンバーである今し方歩いて来た十六夜 アキラの恋人である。
二人は腕を絡ませ繋いだ手を優星のポケットに締まった。
同じ様に手をつないで歩くカップルがチラホラ。その中の一つだと特別視されない二人。
「ッハハ、ゲームでインチキを疑うのは黒鵜らしいな」
「荷解きも終わって無いのに二人はずっとゲームしてそれよ? しかも惹句はずっと高級豆のコーヒー飲んでるし……。少しは真面目な流美を見習ってほしいわ」
歩きながら談笑する。
「……少し元気取り戻した?」
「え?」
「ほら、最近悩みがあるみたいにずっと暗かったから……」
「……そうか。俺は暗かったか。……心配かけたな」
「うん……」
心配そうに見つめてくるアキラに対し、優星は申し訳なさと気遣いをされた有難みを顔に出す。
何んとなく事情を察しているアキラは、暗い顔をしている優星を助けたかったが、時間が解決するものだと見守る事しかなく歯がゆい気持ちだった。
しかし今日の優星は明るく、どこか吹っ切れた顔を見せた。肌を重ねた自分だけではなく、サークルメンバー全員が優星を気にかけた結果だった。
「でぇ? 今日はイブで特別な日だけどぉ、今年のプレゼントは何かなー」
通行人に邪魔にならない所で立ち止まった二人。小さく舌を出しいたずら顔で優星に問いただしたアキラ。
「ッ」
優星の視線がそっぽを向く。
アキラは知っていた。
この仕草は恥ずかしがっている仕草だと。
そしておもむろに胸ポケットをまさぐる赤面の優星。
取り出したのは、小さな箱だった。
「ちょちょッ!? え、今あ!? え!! まだ心の準備がッッ!?」
あからさまに戸惑うアキラ。赤面し、その小さな箱に揺れる瞳が一点集中。今まさに、彼女の人生最大の分岐点が――
「――俺と住まないか! 同棲しよう!!」
「よろしくお願いします――え」
頭を下げたアキラだったが、開けられた小さな箱には思っていた物と明らかに形状が違う物があった。
鍵だった。
「……」
「……」
方や期待を込めた視線。
方や嬉しくも落胆を孕ませる視線。
両者何も言わぬが、それはそれとして深く溜息をついたアキラ。
「はぁ……。優星、あなたってホント誠意があると言うか……」
「絆がある……」
「……わかった。一緒に住もっか」
「アキラ――」
はにかむアキラに、優星は抱き着いた。
そして、その光景を遠くで見ていた者がいた。
「リア充死ね」
ヤマトサークル所属。西田 信彦。登場。
「こんな日に虚しい事言わんでくださいよー。それって負け犬の遠吠えー。ただでさえ寒いのに独り身だって思い知らされて更に寒くなってんスから」
「言うなミッチー! 俺たちには掲示板のみんなが居るだろ!」
サンタ姿の西田メンバー。隣にはトナカイ姿の三井が。
ここはヤマトサークルが抱える公式グッズ販売店。
入団試験が厳しく人手不足なヤマトサークル。地域貢献も兼ねた格安オリジナルケーキを販売。その販売員に二人があてがわれた。
嫉妬の怒りを纏う西田サンタ。余りにも近寄りがたい空気に客足は遠のくばかり。
(グヌヌ! 部屋でぬくぬくネットのみんなと一緒にクリスマスを楽しむ予定だったのにッ!!)
全盛期と比べると今では下火になっている動画サイト。このクリスマスの次期にランキングに上がるのはクリスマス動画だ。しかもそれは悲しきかな。クリスマスの日が報われないアニメの切り抜き。
流れる新しいコメントを拝見し、共に孤独なクリスマスを過ごしていると感じる事が、西田の涙を止めていた。
しかしそれは人手不足により叶わぬ悲しき夢。
故に西田メンバーが怒りを覚えるのは仕方のない事なのだ。
「金と知名度はあるのに何でモテないんスかねーノブさん」
「俺が聞きてぇよ……!」
キレるサンタに足を組んでやる気なしのトナカイ。
「財布は暖かいのに隣は寂しいんスね~。何でなんスか?」
「お前俺の事バカにしすぎだろ」
西田 信彦はモテない。
この男。攻略者として成功した部類であり知名度も高く顔も悪くなく、金銭も同年代にしてはかなり持っている方だ。しかしモテない。故に、西田は大人のお店で文字通り階段を上がる始末。
(俺にはきっと、運命の人が待ってるんだ)
そう思う事で、一人マスをかいて生きている。
「はぁ……。ブロンドの髪にチャーミングな瞳。程よい大きさの胸にケツがデカい女は居ないのかなぁ……」
「虎杖と東堂もそこまで求めて無いッスよ……」
「俺のこと全肯定してくれて甘えさせてくれる、バブみを感じさせてくれる二次元のママみたいな人は居ないのかなぁ……」
「……こりゃダメだ」
下を向いて溜息を吐く西田と夕暮れを仰いだ三井。
その目の前を通り過ぎるカップルが居た。
「――でさー、パパとママが私より進太郎を心配したんだよ? 酷くない? 娘として物申したいわけよ!」
「まこと姉ちゃんって昔からおてんば娘だったからかな。今も昔も、俺が大きくなろうとおじさんたちの目にはひよっこに見えるんだって」
「小さい頃は私の後ろによく着いて来たこと。体弱かったのに、今じゃこんなに大きくなって……」
「ぎゅ、牛乳死ぬほど飲んだから……」
進太郎の肩をバシバシと叩く姉貴分。見る人が見れば、自分より大きくなった弟に感傷を感じる姉と言ったところか。
しかし、実際は血の繋がりのない男女。特徴的な眉をハノ字にする彼とは反対に、目を細くして笑う彼女。
手を絡め合う二人はこの場に遜色ないまごう事なきカップルだった。
「……うーむ」
「な、なに?」
まことが進太郎を睨む。それは疑いの視線だ。
「なんか表情が硬い」
「い、いや? そんなこと、無い」
「……まさか緊張してる?」
「ッ!?」
「あ! 当たり? やっぱ緊張してんだー!」
図星だと表情に表した進太郎だが、笑顔の彼女に苦し紛れの反論した。
「は、初めてのクリスマスだし! その、恋人としての……! そりゃまぁ、緊張するって言うか……」
そう言った進太郎。握る手に汗がじんわりと滲み出るのであった。
それを感じ取りながらも頬を染める進太郎を見るまこと。あの小さかった弟分がここまで大きくなり、あまつさえ恋人として隣にいる。
彼女は口を緩ましてこう言った。
「かわいいとこあんじゃん……」
「ぅ」
「まぁ知ってたけどね! アハハ!」
「――ッ。からかうところはホント変わらないなぁ」
姉弟の様に笑い合う二人。
その二人が繁華街の人混みへ消えていく中、同じ通りの最端で無言のカップルが慣れた歩幅で歩いていた。
「……」
「……ッ……」
同じ赤色のマフラーをした美男美女のカップル。二人ともモデルをしていてもおかしくない顔とスタイル。
その二人がこの賑わいの影になりたいと、息を殺して歩いている。
少し広い裏路地にて立ち止まる彼氏。それに気づき立ち止まる彼女。
「……その、今週は女の子の週だろ。蕾の身体が一番……。俺のわがままに付き合う事ないって」
「……」
「俺そういうの詳しく無いけどさ、更に辛くなるかもだし、大事にしたいて思って――」
大吾の言葉が止まる。
不意に接吻をされたからだ。
「――ん」
濡れた瞳。
濡れた唇。
「今日は大吾くんのわがままじゃない。私のわがままなの」
「つぼみ……」
「だから、ね……」
「――――」
二人は歩を進める。
そして場所は繁華街へ戻り、カラオケ店。
「広 が る プ ラ ズ マ ウ! ウ! ウルフのーマークあ! ――」
花房 萌。渾身の歌唱。
これにはJ9たちも親指を下にする称賛。
「キャーカッコイイ!!」
「なんてすーごいハニハニ!♪」
悲しきかな。烈風散華。
「だいじょーぶよ! 私は最強ー♪」
「イエーイ!」
最強なウタ。
昼食を取り、アミューズメント施設を回り、カラオケで二人きり。頻りに歌いさて夜も更けてきたところで待望のプレゼント交換。
「わぁあああ!! これディオールじゃん!! いいのコレ!!」
「もちろん。正直俺ってセンス無いからさ、瀬那の好きな色を基準に店員さんに選んでもらったけど正解な様で」
「ヤバイめっちゃ嬉しい!! 萌だぁい好き!! チュ!」
(んほおおおおお!!)
頬にキスされた萌。心の中でアへ顔する。
「おお! マフラーか! 質感と手触りが良い……」
「古いマフラーしか持ってないって言ってたし、ちょうどいいかなぁて」
「ありがとう瀬那! これで南極まで行ける!!」
「アハハ! 大げさだってー」
カラオケ店から出る二人。
萌の首にはプレゼントのマフラーが。腕を絡ませ歩く二人。
このままイルミネーションでも見に行こうとした萌だが、不意に瀬那が寄りかかる。
「どしたの。行きたい所ある?」
「……うん」
考える萌。まだ時間には余裕があると思い、どこに行きたいんだと瀬那に聞いた。
そして顔を赤らめた瀬那はこう言った。
「萌の部屋……」
「……そっか」
萌の鼓動が早くなる。
121
あなたにおすすめの小説
うちの冷蔵庫がダンジョンになった
空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞
ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。
そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
陰キャの俺が学園のアイドルがびしょびしょに濡れているのを見てしまった件
暁ノ鳥
キャラ文芸
陰キャの俺は見てしまった。雨の日、校舎裏で制服を濡らし恍惚とする学園アイドルの姿を。「見ちゃったのね」――その日から俺は彼女の“秘密の共犯者”に!? 特殊な性癖を持つ彼女の無茶な「実験」に振り回され、身も心も支配される日々の始まり。二人の禁断の関係の行方は?。二人の禁断の関係が今、始まる!
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる