俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮

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第十七章 傀儡の影

第189話 チュートリアル:エメ公

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 白、赤、青のストライプ。広い広いテントの模様だ。高いテントの先端でがくっきり見える程の明るさ。

『レディース&ジェントルメェェェェン!!』

 劇場の上で小粋なハットを被る男がマイクを通して放送した。

 覚悟を決めた二人に待ち受けていたのは、杖を小粋に振り回す男。

傀儡君主マリオネットルーラー カルーディ』

『警告:レイドボス出現』

「ッ!?」

 見たことの無い赤い背景のメッセージ画面。エルフェルトはそれに動揺しながら目の前の存在を見た。

(アレがルーラー……!? 普通の人にしか見えない……でも――)

「♪~」

(あいつの底から身体が震える程の悪意を感じる……!!)

 初めて遭遇した人類の敵――ルーラーズ。ネットニュースやテレビ等でその存在は知っていた。否、ヤマトサークルの長である日本最強の女、大和撫子と同様、エルフェルトもまた

 ――我々は二度も負けている。

 そのように聞かされていた。

(赤い肌ではないルーラーズ……。先祖たちが大敗してしまった宿敵とは別の固体だというのか……!!)

 エルフェルトはカルーディを睨んだ。

「そこに居るお嬢さん♪」

「ッ」

 全身を舐め回されそうな声。エルフェルトは身震いする。

「ボクはキミを見ていたよ♪ キミたちが『竜の霊廟』に入った時からずっとね♪」

 目を細くして笑うカルーディ。名指しされた彼女はさらに睨みを利かせる。

「キミの肢体はまさにビックバン!! 黄金長方形を思わせる美しさ!!」

 身体全体を使って空を仰ぐ。

「ああぁなんて美しいんだ! 傀儡のボクでも下半身の乱暴が抑えきれない!! だから――」

 ――だからキミをボクのコレクションに加える事にした。

「ッッ~~!!」

「と言っても、予期せぬ副産物だけどね♪」

 邪悪。あまりにも邪悪。蠱惑な声で囁き様に言われたエルフェルトは吐き気を感じずにはいられない。

「――おい」

 エルフェルトは気づいた。西田が自分を庇う様に前に出たのを。

「さっきから女のケツ追っかけてるただの変態にしか聞こえないぞ。このストーカーめ!!」

 ビシッとカルーディに指さす西田。

 明確な敵に対し物怖じない西田。エルフェルトは動揺した自分を恥じた。

「だが俺と同じでいい趣味をしている。ルーラーズのお前と趣味が合うのは遺憾だがな」

「キミもいい趣味してるねぇ♪ 彼女はお尻がキュートだよね♪」

「わかる。エルフェルト、あんたの安産型の尻に俺は夢中だ」

「――」

 言葉を失う。

 この男たちは何を言っているのかと、エルフェルトは訳が分からなくなった。

 しかしここで咳払い。カルーディは頬を吊り上げ笑顔になる。

「キミたちをここへ呼んだのは他でもない♪ 楽しい楽しいショータイムを贈るためさあ♪」

 くるりとその場で一回転。スポットライトが当てられ、カルーディの後ろで小さな花火が打ち上げられた。

 気を取り直した二人。カルーディの異様な仕草と演出に緊張感を覚える。

 後ろの垂れ幕が上がり、カルーディは杖を器用に回して丸い先端で二人の視線を釣る。

「まずはコレ♪」

 杖で指したのは鋼鉄の塊。

「力を緩めたらペッちゃんこ!! 二人で支えて生き延びろ!! 力比べの万力マシーン♪」

 ――ガキンガキンガキンガキン

 ゲームでいうところのバグった挙動。物を圧し潰す大きな機械が高速で駆動。

「続けて二つ目♪」

 丸で指したのは網目の細かい球体。

「盗んだバイクで走り出す! でも走るのは道路じゃなくてあの中だ! バター製造マシーン♪」

 ――ブォオオオオオオオ

 二人乗りのバイクが球体を縦横無尽に駆け回る。

「そして三つ目♪」

 白のグローブを付けた手で指したのはタコ足の様な生き物。

「うねうね触手の好物は人間の体液! ずぽずぽされたらオカシクナルぅ♡ 快楽地獄マシーン♪」

 ――ネチャァァァ

 箱の中の触手が蠢く。

「そして最後はコレ♪」

 小粋なハットが空を舞う。

 ポトリと床に落ちると、ドシンッと重い何かがハットを圧し潰した。

「ダンジョン『竜の霊廟』の奥地で密かに眠っていた緑玉りょくぎょくの竜! ごめん呼び起しちゃったテヘペロ! エメラルドドラゴン♪」

「ガアアアアアアアアアア!!」

 鼓膜が潰れそうな程の咆哮。体の芯をも震わすドラゴンの咆哮にエルフェルトは片目を開けて踏ん張るが、両耳を塞いで顔を青くする西田。

『緑玉の竜 エメラルドドラゴン』

 強靭な四肢。その鱗一つ一つが魅惑の緑――エメラルドを彷彿とさせる。この『竜の霊廟』にて残存している竜の一体である。

「ロロロロロ」

 西田とエルフェルトが対峙した雷翼竜エレキ・ワイバーンを凌ぐ大きさ。鱗よりも美しい眼が二人を睨む。

(……あれは)

 西田が見た物。それはエメラルドドラゴンの後頭部から糸が伸びているのを。糸の先はカルーディへと繋がっている。

 既視感。西田の脳裏には『氷結界の里』にて最強を欲しいがままにしていた龍――『氷結界の零龍 トリシュラ』

 "世界の時の歩みを止める"力をもつトリシュラ。その龍にも糸が繋がれてあった。

 故に合点がいく。

(エメラルドドラゴンはコイツに操られてる)

 ――パチンッ!

 軽快な音が鳴り響く。同時にエメラルドドラゴン以外のマシーンが蜃気楼の様に揺らいで消える。

「うーん」

 カルーディのフィンガースナップ。

「残念ながら殺戮マシーンは偽物でね♪ 本物はボクのディビジョンにある♪」

 心底残念そうに困り顔をするカルーディ。指が寂しいのかいつのまにか被っていたハットを指でクルクルと回す。

 殺戮マシーンは幻影だった。だが、熱い吐息に唸り声、厚みに確かな視線は本物。

(エメラルドドラゴンは……!)

(実物の様ね!)

 方や雷槍を。方や光剣を手に取り構える。

「♪~」

 西田たちの臨戦態勢にカルーディは口笛を吹いた。

「ヤル気満々だね♪ じゃあ僕を楽しませてよ♪」

 そう言い残し、ハットを被ったカルーディは空中に浮き高く高く昇っていった。

 それを皮切りに――

「――ガアアアアア!!」

 カルーディに操られているエメラルドドラゴンが二人に向けけたたましい咆哮。

(来るか!!)

(うるせええええええ!!)

 可視化した衝撃波の様な咆哮に緑色の鉱物が混じっていた。鋭利なそれは大小様々。

 細かな破片が二人を襲い、スーツを裂いて薄皮を切っていく。

「ッハ!!」

「ハア!!」

 ――ッカンッカカン!!

 大きな鉱物の破片は貰う訳にはいかないと、二人は得物使い弾き返す。

「俺は左から!!」

「私は右から!!」

 姿勢を低くした二人は同時に散開。左右から挟み込む。

 ――獲物が分れた。

 顔を向けエメラルドドラゴンが睨んだのは金髪の女。

「――」

 顎から漏れ出す緑色の炎。

(攻撃が来る!!)

 光を集めるエルフェルト。

 ――ッド!!

 大きく開けた顎から緑の熱線が発射。

 下を向いて放たれた熱線は床を削り、床に緑色の結晶を作りながらすぐさまエルフェルトに向けられた。

 ――バリバリバリバリ!!

 熱線の軌跡が緑の結晶により軌道が顕著。

「――フォトン・シールド!!」

 人一倍もある光子の盾を生成したエルフェルト。

「っく!?」

 凄まじい圧力を感じたエルフェルト。押し負けられないと踏ん張るも、緑の熱線を受けたシールドに重なる様に結晶が生まれる。

「――!?」

 脚に衝撃を感じたエメラルドドラゴン。

 眼を動かしてそれを見ると。

「もういっちょ!!」

 一回り大きな雷槍が迫っていた。

 そして。

「くらっとけ!!」

 ――ドズッ!!

「グガ――」

 感じたのは痺れ。前脚を攻撃されたエメラルドドラゴンは姿勢を崩し、熱線を吐きながらバランスを崩した。

 吐き続けていた熱線はテントを結晶の山を作る。

「大丈夫かエルフェルト!」

「ええ、助かったわ!!」

 二人は合流し、唸るエメラルドドラゴンを睨んだ。

「ふ~ん。エメラルドドラゴンにダメージを与えたか……」

 糸の上で脚を組んで座るカルーディ。

「あの時のキミだったらエメ公に苦戦すると思ったけど、ちゃんと強くなってるんだね♪」

 クスリと笑う。

「でもボクの評価は変わらない。♪」

 カルーディの眼は、西田を見ていた。
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