俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮

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第十八章 VS傀儡君主

第206話 チュートリアル:すごく、おっきいです……

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「ハアアアア!!」

 如意棒を巧みに使いモンスターを蹴散らす少女――朝比奈瀬那。

(絶対に通さない!!)

 卵のモンスターだろうと手足あべこべのモンスターだろうと、一切の躊躇なく蹴散らし、無双する瀬那。招来した帝江と何羅魚の活躍も一塩あり、裏手の通路を含むたった一つの入り口を完璧に守っていた。

 最初に異変に気づいたのは、戦う攻略者ではなく、戦う免許持ちでもなく、カフェで身を固めていた避難者のギャルズだった。

「な、なんか卵たち集まって来てない……?」

「うん。集まってる」

「嫌な予感……」

 ハンプティダンプティ――ではなくグリーンエッグ。

 カフェから見える通路や横の通路からもモンスター達がのそのそと歩いて来る光景は既に見慣れたもの。しかし、先ほどからグリーンエッグの数が増す一方で、明らかに瀬那をターゲットに捉えていた。

「なんかいっぱい来たぁ!?」

「フー!!」

「ワンッ!!」

 目まぐるしく戦う攻略者や、流石の瀬那も異常に気付く。

「狙いはあの子だわ!!」

「――キビキビ倒して数減らしていくぞ!!」

「あたりめぇよ!!」

 グリーンエッグたちの進行と共に別区画の攻略者たちも追うように参戦。

 より一層に敵味方が入り乱れたカフェ街となる。

 血と汗が流れる現場。その光景を楽しむ者が居た。

「ふ~ん、けっこう頑張るねぇ♪」

 カルーディである。

 上空からの俯瞰視点。まるでゲームを楽しむ様に顎を指で摘まんで関心を口にする。

「まぁ使徒たちはしょせん先兵だし、一体一体弱いのは仕方ない。でも数で来られるとしんどいよねぇ♪」

 杖をカフェ街に向けると、攻略者を襲っている渋谷中のモンスターたちが一斉に翻し進軍。押せ押せ状態であっという間に通路がモンスターで埋め尽くされた。

「――上から来るぞ!! 気を付けろ!!」

 唐突のコン〇ット越前。しかして建物の屋上や窓からも突き破って襲ってくるのは事実。

「倒しても倒しても!!」

「キリがない!!」

 圧倒的な物量。

「クッソおおおおおお!!」

「気合いだ気合い!!」

 体が動く限り戦い抜く。

「ッハ!!」

「――」

 大きくジャンプし落ちてくるグリーンエッグを如意棒で倒した瀬那。

(通路や入り口に人の気配なし!!)

 空中で先を確認し、スタッと着地。

 ――キュピーン☆

 瀬那の目が光る。

「仙雲鎮低神珍鉄《せんうんちんていじんちんてつ》!!」

 体を捻り――

「――如意金箍棒!!」

 ――おもむろに如意棒を天高く投げた。

 風を切り眩しい太陽に向かう如意棒を追うように顔を上げて見上げる攻略者たち。

 それは等しくカルーディも天を見上げて追った。

 誰もが太陽の光に目を細めるも、地面に陰りを作っていた分厚い雲が音も無く穿かれたように一部だけ晴れた。

 キラリと光る。それは誰しも如意棒だと分かった。

 その様子を半分口を開け見たいたカルーディ。

 ――落ちてくる。

 ハッキリ見えたその姿。

 しかし、

 先端が見える。棒が見える。それらはすべて、大きく見えた。

 雲から姿を現わしたのは、あまりにも巨大すぎる如意棒だった。

「「「ええええええええええええ!?!?!?」」」

 攻略者、一般人、そしてカルーディ。目撃した全員が声を押さえられず驚愕。

 そして。

 ――ッッッドド――ッ!!!!

 赤い先端が群がるモンスターを圧し潰し、重力に従いそのまま転倒。

 ――ッドゴ――ッ!!

 通路に沿ってモンスターを圧し潰す如意棒。あまりの重量に地震でも起きたのかと地面が揺らいだ。

 役目を終えた巨大如意棒はその身を縮めて元通りの大きさに。自動で瀬那の手元に戻って来た。

「如意金箍棒仙重撃!! 大成功!!」

 モンスターの存在が消え、砕かれたコンクリートだけが残った。

 飛び跳ねて喜ぶ瀬那を他所に、あまりにも衝撃的な光景を目の当たりにした攻略者たちは呆然。しかし圧し潰されていないグリーンエッグ軍団はなお健在。待ってはくれない。

 一瞬、誰もが油断していた。

 カフェの屋上から飛び降りたグリーンエッグに気付いたのは守られていたギャルズ。

 瀬那も気づくも眼前に迫っていた。

「――」

 そして。

 ――ッボフ!!

 爆発。

 煙が容赦なく瀬那を覆った。

「「「瀬那あああああああああ!!!」」」

 叫ばれる悲鳴。

 間に合わなかったと悔やむ攻略者たちの想い。

「――あっは♪」

 そして歓喜の笑顔。

 攻略者、免許持ち、避難者、帝江に何羅魚。誰しもが現状最大戦力の陥落に陰りを思わせた。

 間違いであってほしい。しかし無情にも風により煙が晴れていく。

 誰もが脳裏に想像したままの姿。木製のマリオネットに変えられた瀬那の姿。

「――ほえ?」

 ――ではなかった。

 時が止まる。

 その光景を見ていた誰しもが時を止めた。

 何故傀儡に変化していないのか。何故彼女はそのままの姿なのか。そして瀬那自身、何故自分が無事なのか。理解できない。

 しかし一人だけ、目を細め、その光景と結果を睨んでいた存在が一人。

(……♪)

 この騒動を嗾《けしか》けた張本人――カルーディ。

(ボクのボムは大抵の存在をマリオネットにできるけど、それを無効化する程の力をその身に宿しているんだね……♪)

 グリーンエッグの爆発に伴う煙は、カルーディが思惑するように普通の生物ならばほぼ間違いなくなく傀儡に変化させることが可能。しかしこと君主や家臣といった存在はあまりにも存在が強大すぎる故に効力が発揮できない。
 例外としては、変化させる範疇に収まらない力・要因があると言ったところ。

「なんか大丈夫だから倒し続けるぞー!!」

「フー!!」

「んぱ!!」

 瀬那がマリオネットに変化しなかったのは、彼女の身に宿る大きい胸――ではなく、仙女に片脚をツッコませた膨大な仙気だった。

 これは彼女のずば抜けた才能が成した以外にも、心血を注いだ師――リャンリャンと、文字通り精《き》を注ぎ込んだ番の萌による要因も大きい。

「なんか知らんが大丈夫だ!! 行くぞ!!」

「レッツパーリー!!」

「まだまだ暴れたりねぇよなあ!!」

 士気が上がる攻略者たち。

「無事だったあああ!!」

「瀬那あああああ!!」

「よがっだよおおおお!!」

 避難者とギャルズも声を荒げた。

 瀬那の無事により、奮起がより一層に活気づく。

 そんな中。

「あっは♪ いいねいいねぇ!! たまに居るんだよねぇイレギュラーってのは♪」

 下賤な眼が瀬那を見下した。

「ますます欲しくなったよぉ♪ ここは作戦を変えて――――」

 ――――ッバス!!

 カルーディの言葉が続くことは無かった。

 突如遥か遠距離からの攻撃により、カルーディの頭蓋が破壊されたからだ。

「――命中。待機します」

 国連員が行った大型スナイパーライフルによる射撃。それが見事に命中。

 ――――ガラカラ

 力なく地面に落ち激突したカルーディの傀儡。

 その傀儡の口は、笑っていた。
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