俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮

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第十八章 VS傀儡君主

第215話 チュートリアル:ワイルドカード

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 悪戦苦闘、もしくは一方的に虐殺された地域に流星の如くそれらは現れた。

 藍嵐を巻き起こし、業火の焔柱を滾らせ、霧の刃が迸る。

 それだけではない。

 銀の鎧に青い線。右手に盾、左手に剣を持つ物語から出てきた勇者。

 赤いマントに赤い鎧。先端の長い兜が特徴で、焔を纏う腕には一振りのソードが。

 その者達は『君主ルーラー』と呼ばれ、配下は『家臣ヴァッサル』と呼ばれた。

 人類の敵である。

 その者達を見た人々は混乱した。何故敵であるはずのルーラーが、ヴァッサルが、人類に牙を剥いた傀儡の使徒と相手取っているのか、と。

 わからない。

 わからないが、一つだけ確かな事があった。

 それは。

「不流亜々!!」

「ギイ●●●●!?」

 明確な敵意を使徒に向けている事実だ。

「ッ々――!!」

「――ッギ!?」

 人形の集合体で形成された体の腹部に、鋼鉄の拳が深々と突き刺さる。

 ――ッドガ!!

 補装されたコンクリートの道。ギガンテスドールは押しつけられる様に激突し、コンクリートを大きく砕いてバウンドした。

 体積では圧倒しているのに対し、握りこんだ小さな拳が何故こうも芯に響くのか。顔面の頬を砕かれたギガンテスドールは考える余裕が無かった。

 バウンドしたドールの脚を掴み、黄龍仙は後ろを向き力任せに地面に叩きつけた。

 砕かれるコンクリート。

 ひび割れるマッシブな集合体の体。

 コンクリートの破片と欠けた人形の破片が黄龍仙の機械肌を撫でた。

 攻撃はまだ続く。

 握ったままの脚を力任せに放り投げ、ギガンテスドールは宙に投げ出された。

「機仙――」

 重力により自然落下する。

「――連弾拳!!」

 ――光るツインアイ。

 ――ッド!!

 一発、腹部に一撃。

 二発、右胸に一撃。

 三発四発、下腹部と胸の顔面に一撃。

 そして。

「破々々々々々々々々!!!!」

 次の瞬間には目で追えない程の拳の連打。

 一撃一撃が重く、そして正確に芯に響かせる。腕の付け根がいくつも枝分かれした風に見え、敵を打ち砕かせる鋼鉄の拳そのもの自体が視認できないほど。

 あまりにも強く重い連打により、球の関節が密集した胴体であるギガンテスドールの体がみるみる内に砕き、削ぎ、圧し潰し、破壊された。

 しかしここで動くのがギガンテスドール。腕に装備された鎌で攻撃を繰り出そうとする凶暴性を見せる。

 ドガドガと体を壊されながらその首を刈り取らんとした。

 ――ッザシュ!!

「――ギイイイイイイ!!!!」

 歓喜に震える砕かれた赤い顔。右腕諸共奴の首が飛ぶ。

 しかしその光景は、一手先を夢見たギガンテスドールの妄想に過ぎない。

 実際は振りかざした鎌は放つ連弾拳の一発により容易く粉砕。砕かれた鎌の刃は吹き飛びビルの壁に突き刺さる始末。

「雄々々々々々々々々!!」

 鋼鉄の拳の連打。

「ギイイィ●●!!」

 重撃音が止まらない。

「ギ●●ガア!?」

 鋼鉄の拳は止まらない。

「ガアイイイイイイ!?!?」

 脚が捥げようが、腕が潰れようが、胸を砕かれようが、ギガンテスドールの意志では止める事は叶わなかった。

 しかしここでギガンテスドールに好機が。

「ッ破!!」

 ――ッガイン!!

 猛禽類に似た足がコンクリートを砕くほどのアッパー攻撃。空間が揺らぎ辺りのビルのガラスは高層を覗き余波ですべて割れた。

 黄龍仙はガラス片のシャワーを浴びる。

 空高く撃ち上げられたギガンテスドール。自身では抜け出せなかった鋼鉄の拳による連打。歪んだ赤い顔を地上の黄龍仙に向けると――

「――ギハハ●●ハハ!!」

 好機と笑いながら腹部を折りたたみ、首部分に覗く砲身が音を立ててチャージされた。

 そして。

 ――ッドバ!!

 勢いよく発射された赤く光る弾丸。

「――」

 それは黄龍仙に着弾すると大きな爆発が発生。まわりのビルどころか数百メートルを優に飲み込んだ。

 大爆風を味方に付け一気の後退するギガンテスドール。徐々に速度を落とし半壊したビルに着地。

「ニヒイィィ!!」

 文字通り最大の攻撃に飲まれた鋼鉄のアレは一溜まりもないと踏み、砕かれた頬を吊り上げ不適切な笑みを浮かべるドール。

 しかし事はそう思い通りに行かないもの。

 その笑みが枯れた笑みになるのは――

 ――ッブワ!!

 煙の中から突進してきた黄龍仙を見たからだ。

「不流亜々々々々!!」

「――ッブ!?」

 大爆発を受けたとは思えない速攻。瞬く間に懐に入られ、某元祖スーパーロボットである鉄の城の敵である暗黒大将軍。その将軍にブチ込む拳の様に、赤い顔のギガンテスドールに対しを喰らわせた黄龍仙。

 方やコンクリートを砕きながらビルの中へと吹き飛び、方や隙を見逃さないと追う。

 連なるビルの中で重撃音が響き、それに対抗する様に破裂音、黒板に爪を立てた様な呻き声が響き、左右上下に繰り広げられる攻防にネオンライトが光る吊るされた無数の看板がユラユラと揺れた。

 ドカンと一発余波で窓ガラスがバリバリと割れると、天井を割ってビルの屋上から二体の化物が姿を現わした。

「不流亜々々々々!!」

「ギヒ●●●●イイ!!」

 一切の傷すら付いていない鎧武者。

 片腕と片脚を残し狂気の笑みを浮かべる破壊者。

 明らかに優劣の差が見受けられ、互いに勢いよく空中へ飛び出した。

「――」

 球の集合体であるギガンテスドールの体がもぞもぞと蠢いた。

「――キヒィハアアアア!!」

 マッシブな体は外骨格なのか、笑みを浮かべる赤い顔が胸から飛び出すと、これまた非常にマッシブな小さな体が顔に付いてた。

 奥の手を思わせるその姿。

 しかし鋼の武人は容赦ない。

「噴ッ!!」

 襲ってくるダンプティに対し両手を合わせた拳を脳天に叩きこむ。

「――ッカ!?!?」

 まともに受けた。

 ――ドガガガガガ!!

 そのままビルに叩きこまれると屋上から一階までノンストップで打ち付けられた。

「キェエエエエエエエ!!!!」

 このままじゃ終われないと全身を使って跳躍したダンプティ。黄龍仙に迫る。

「――」

 音の壁を突き破る程のダンプティの小さな拳。

 それを空中で回転しくらりと避けた。

「機仙拳朱雀ノ型――」

 握る拳。

「朱王!!」

 紅い雀の羽が纏う。

「羅烈拳!!」

『機仙拳朱雀ノ型
       朱王
        羅烈拳』

「ギイハアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?!?!?」

 太陽に向けて溶ける様に消える様。その様子を朱雀の羽が揺らぎながら見ていた。

 時を同じくしてビーチ。

「ニルヴァーナ・インパクトオオオオオオオオ!!!!」

 進太郎の一撃がドールを粉砕。

「これが絆の力だ!!」

「やったああああああああああ!!」

「♰フ……♰」

 池袋で勝利宣言。

「いい戦いだった!」

 パリでは大剣が地面に突き刺った状態で勝利。

 そしてアメリア・ニューヨーク。

「これからが本番だろうね……」

 木馬を下し静かにゲートを睨む。

 そして劣勢に立たれた国の巨大モンスターが消滅。

「やれやれ……」

 勇者は一段落だと剣を仕舞い。

「足りんな」

 炎の剣士は物足りなさを口にした。

 三体の家臣はゲートに跳躍し、握りこんだ物をゲートに投げ込んだ。

 すると大きく開いたゲートは収縮する様に小さくなり、一粒の光となって消えた。

 同時に黄金のゲートが家臣たちを包み、彼らをその場から消した。

 そして君主たちの介入によりほぼ全世界のゲートが閉じられていた。

 しかし、ゲートが閉じていない国があった。

 アメリカ・ニューヨーク。

 深夜帯の夜空に蛍光色のゲート。

 そこからズズズと緑色の脚が覗き、人間型の胴体で形成された両翼を持つ巨大モンスターが現れた。

 キメラドールを破ったエッジは地上に降りる死天使を見た。

『傀儡君主ヘブンズカルーディ』

 死天使出現と共にゲートから無数の糸も出現。それは束となりニューヨークの空を覆い、果ては他州をも覆い尽くす勢いだ。

 あまりにも異質な天使。あまりにも異質な光景。

「ちょっとヤバイかもね……!!」

 エッジは背中に流れる汗を感じた。

「いやぁボクのおもちゃ相手によく頑張ったと誉めてあげるよ! この世界の人間はタフだね!!」

 突如として、死天使であるカルーディから大声が発せられた。

「本当はもっと遊びたかったけど、理性たちの邪魔が入ったし早々にこの世界を壊しちゃおうと思う! 悪いね♪」

 誰もが本能的に分かった。

 あの無数に伸びた糸には絶対に触れてはならないと。

 大気圏を越え宇宙で観測していた衛星が捉えたのは、ニューヨークの空から地球を覆い尽くさんとする無数の糸の集合体。じわじわと地球を侵食していった。

 誰もが絶望する中、不意にカルーディは横を向いた。

「おい。そこに居るんだろ」

 カルーディの言葉にひょっこりとビルの屋上から顔を出したのは彼。

「おっと、別に隠れてた訳じゃないからなぁ」

 黄金の甲冑を着た男。黄金君主エルドラド。

「今更何しに来たんだい? もう理性の敗北は決定した。また出直すと良いよ♪」

 もう争う必要はない。何故ならば既に勝敗は決したのだから。

「あちゃ~また負けっちゃったかぁ。やっぱ本能おまえらは強いなぁ」

 兜の後頭部を掻くエルドラド。

「どこの誰に負け続けたか知らないけど、さっさと退散した方がいいよ? あ、これボクからのアドバイスね♪」

 地球の人間には到底理解できない会話。しかし、この世界が壊されるという実感は確かにあった。

「それとさ、に使った無理やりダンジョンに封じ込めるアレ、ボクには出力不足で意味が無いからヨロシク♪ アハ! これもアドバイスね♪」

「――」

 エルドラドは無言を貫いた。

 それは何故か。

 本能で暴れるカルーディに後れを取ったから。

 違う。

 この世界の人間、曳いてはこの世界が壊されるから。

 違う。

 ――仲間を侮辱され在り方を凌辱され、自分の事の様に怒りが噴出しそうになったからだ。

「――あのさ、悪いんだけどぉ」

「?」

 ――ッス

「アレってさ、理性おれらの切り札の一つなんだわ」

「――え?」

 胸に感触。

幻霊君主ファントムルーラー――――)

 瞬間、世界を覆い尽くさんとする束の糸が巻き戻る様に地球上から消えた。
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