俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮

文字の大きさ
216 / 288
第十八章 VS傀儡君主

第216話 チュートリアル:ジャンケン小僧

しおりを挟む
「俺がぶっ殺す!! 文句無いよなぁ!!」

 燃えるような赤い頭髪と同じく、熱く叫んだ人は灼焔君主フレイムルーラークリムゾンフリードさん。飲んでいたお酒のグラスを叩き割りそうな程に強くテーブルに置き、さも当然のことの様にしゃしゃり出た。

「黙れ赤いの。貴様はおとなしくして居ればいい。今回は私が行く」

 カウンター席から少し後ろを向いてフリードさんにそう言った藍嵐君主タイフーンルーラーネクロスさん。お気に入りの青いカクテルを側に置き、淡々とそう言った。

「お前こそおとなしくしてろよ青いの! ロシアかラシア知らねぇが凍った湖に行ってたろうが!! 順番的に俺なんだよ!!」

「順番などない。バイカル湖に開いたゲートは昔訪れた『氷結界の里』だった。里の事情を知る私が向かうのは当然だろう」

「なに得意ぶってんだロン毛野郎……! 俺は戦いたくてうずうずしてんだよ!! 何ならお前が相手してくれんのか? ああ?」

「私はいつでも構わないが?」

 冷静なイケメンフェイスにキチガイイケメンフェイス。両者のメンチビームがバチバチと爆ぜてるけど、他のルーラーたちはどうだろうか。

 赤と青。相いれない犬猿の仲なのは今までのやり取りで知ってるけど、こうも馬が合わないのはどうなんだろう……。

「私は争いを好まないから……」

「ぼ、ぼくも……」

 俺の視線を感じ何が言いたいか察したヴェーラさんとガスタくんはすぐさま答えた。

「……」

 相変わらず端のテーブルで静かにくつろいでいるバルムンクさん。首を横に振ったから争いを好まない系だった。

 ここはBAR『黄金の風』

 店内BGMはワザップに騙されたパッショーネ最強の男が裁判沙汰にまでしそうな物、ではなく、どこか子供らしさを残した大人な感じのピアノBGMだ。あくまで俺の感想な。

 傀儡君主マリオネットルーラーカルーディが人類に対し牙を剥き結構時間が経った。去年の夏に起きた泡沫事件以上の物量でモンスターが押し寄せているけど、事が事だけにルーラーの俺は慎重を期しなければならない。

 瀬那や大吾、進太郎とダーク=ノワールの事が心配だけど、みんななら大丈夫だと信じてここにいる所存だ。

 ……いや、嘘つきました。めっちゃ心配です。家で待機してるリャンリャン曰く、人間が木人に変えられているとの報告。脳が勝手にマリオネットと変換してくれたけど、木人と聞いて鉄拳とジャッキーチェンの少林寺木人拳を思い出したのはここだけの話。

 ……ふざけてないよ? ホントに心配してるんだよ。瀬那も戦えるとは言えネガソニック・〇ィーンエイジ・ウォーヘッドと同じ十代ティーンの女の子。心配ないさとライオンに言われても心配なのは変わらない。

「カルーディより先にお前を焼いてやろうかあ? あん?」

「喋るなフリード。お前が口を開くと部屋の温度が上がる」

「ほぉ。ここに来て俺が熱い存在だと認めたか。興ざめだな」

「……別に褒めた訳では。これだからおつむが弱い奴は」

「誰がバカだこら!?」

 ここで彼が動く。

「いい加減にしろお前ら。同胞殺しは白鎧が禁止しただろ? 親善試合ならまだしも、それに抵触するなら今から帰れ」

「……ふむ」

「ッチ」

 アロハシャツを着た人間体のエルドラドが二人を止めた。

 先ほどから何故二人が言い争っているのか。それは簡単だ。

「二人ともウルアーラの仇討に燃えるのは構わんが、カルーディを倒すのは俺。それとティアーウロングだと口酸っぱく言っただろうがぁ」

 そう。今は亡きアトランティカの姫――ウルアーラさんの敵討ちを誰がするか揉めていた。

 嫉妬に狂っていなかった時に世話になったと言っていたネクロスさんもだけど、激しい文言で誤解を生むフリードさんも人一倍情に熱いのは俺も知っている。

 二人が言い争う程ウルアーラさんは大事な仲間だったんだと、彼女の魔力を受け継いだ俺は少しだけ泣きそうになった。

「お二人には悪いですけど、これだけは俺も譲れません」

「……」

 静かに俺に視線を向けるネクロスさん。

「助けるために戦った。でもウルアーラさんは自分を顧みず、進んで俺に後を託したんです。……今でもウルアーラを貫いた感触が忘れられない。ホント、悔いても悔やみきれないですよ」

「……」スー

 俺の言葉を聞いたフリードさんは鼻からため息を付いた。

 文字通り、ウルアーラさんの意志は俺の中に魔力として今も息づいている。胸にそれを感じる度に、彼女の綺麗な笑顔が俺の脳裏に浮かんで止まない。

 だからこそ、裏で糸を引いていたカルーディの事が許せないし、この事態を引き起こしたのもあってより一層憎しみが増すばかりだ。

「――ンク」

 いつもの様に酒を飲んでいるエルドラド。

 ――――お前は俺が斃す。必ずな。

 俺の隣でそう宣言した。静かに淡々と話したけど、明確な殺意と泣き出したい悲しみを俺はあの時エルドラドに感じた。

 彼はウルアーラさんのことをあまり語らないけど、もしかしたら正気の彼女とは幾ばくかの物語があったのかも知れない。

 そんな事を考えていると。

「――よーし分かった! お前ら二人にチャンスを与えてやろう」

「……は?」

 急にやる気になったエルドラドに俺とネクロスさんは疑問視。フリードさんはチャンスと聞きニヤケが止まらないでいた。

「いいか? この世界に古から伝わる公正な心理戦――"じゃんけん"と言うものがある」

「「じゃんけん?」」

(マジかコイツ……)

「力のグー。知恵のチョキ。勇気のパー。この三つで構成され、それぞれに弱点がありそれぞれに美点がある。グーはチョキに勝ち、チョキはパーに勝ち、パーはグーに勝つと言った感じだ」

 なんかハイラルのトライフォースみたいな説明しだしたぞ。

「なるほど……心理戦とはそういった……」

「互いにどれを出すかを予想して勝ちに行くのか。いいねぇ」

「なんだよお前らぁ。急に男の顔になっちゃってさぁ」

 意気投合する三人。

「あらあら。見物ねぇ」

「し、心理戦って僕苦手だなぁ……」

「……」

 なんか外野が盛り上がってるけどこれただのじゃんけんだからな?

「グーチョキパー……グーチョキパー……」

 一人でブツブツと手を動かして確認するネクロスさん。

「俺はパーを出すがグーの気分だしチョキって選択もある!」

 なんか拳に炎を纏わせて今か今かと息巻いてるフリードさん。

「おっほ♡ 俺の勝ち筋が見える見える~」

 組んだ両手を裏返して隙間覗いてるけどそれ自分のさじ加減だからな。信用もクソもねぇぞ。

「よーしお前ら、じゃーんけーんぽい!! の合図で出すぞ~」

「いいだろう」

「いいぜ」

 クワッドを組む俺たち。やる気に満ち溢れている三人とは違い、俺は終始真顔だ。

「おっと! 譲歩してチャンス与えたんだ、俺が勝ったらいたずらに付き合ってもらうぞ~」

 アホがなんか言ってる。

「よーしいくゾ~!」

 じゃーん――

 けーん――

 瞬間、俺の自慢の動体視力が見た。

「「「――ッ!!!」」」

 軽く握った俺の手に対し、エルドラド、ネクロスさん、フリードさんの三人は目にも止まらぬ速さでグーチョキパーと手を動かし互いにけん制し合っていた。

 そして。

 ――ぽん!!

「……ふむ」

 ネクロスさん。グー。

「へぇ」

 フリードさん。パー。

「なるほどなるほど」

 エルドラドと俺、互いにチョキ。

 勝敗付かず。

「あらあら」

「は、迫真……!」

「……」

 外野。興奮。

「この場合は引き分けだ。もう一回やるぞー」

 二人は無言で承諾。

 俺は真顔で拳を作る。

 じゃーん――

 けーん――

「「「ッッッ~~~!!!」」」

 再び高速で形を変える三者の手。

 不敵に頬笑み、ニヤつきが止まらず、サングラスに四人の手が映りこんだ。

 そして。

 ――ぽん!!

「「「「――」」」」

 俺とエルドラド。パー。

 赤青コンビ。グー。

「「俺の勝ち」」(本田〇佑風)

 勝者の余裕。

「クッソおおおおおおおお!!」

「バカな……」

 敗者は汚泥を啜る。


「って事があったけど、負けたらどうしたんだよ」

「難癖付けて反故にする算段だったさ」

 この男、信用度ゼロすぎる。

 目の前の世界は赤、青、白のストライプ調の背景。

 そして視界の端にメッセージ画面が。

 ダンジョン名『傀儡師パペッティア哭悲サドネス

『チュートリアル:ダンジョンに潜ろう』

『チュートリアルクリア』

『クリア報酬:力+』

 この奥に、奴がいる。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨
ファンタジー
普通の高校生として生きていく。その為の手段は問わない。

陰キャの俺が学園のアイドルがびしょびしょに濡れているのを見てしまった件

暁ノ鳥
キャラ文芸
陰キャの俺は見てしまった。雨の日、校舎裏で制服を濡らし恍惚とする学園アイドルの姿を。「見ちゃったのね」――その日から俺は彼女の“秘密の共犯者”に!? 特殊な性癖を持つ彼女の無茶な「実験」に振り回され、身も心も支配される日々の始まり。二人の禁断の関係の行方は?。二人の禁断の関係が今、始まる!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...