俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮

文字の大きさ
234 / 288
第十八章 VS傀儡君主

第234話 傀儡師物語12

しおりを挟む
「いやぁ久しぶりだね~! 二人とも元気そうで何よりだよ~」

 応接用のソファに深く座って一座の座長とその奥方を笑顔で見た。

 ボク、おやっさん、そしてギャブレー。紅茶を淹れてくれたアメリーは涙をこぼさない様に振る舞っている。

「カルールも元気そうで……。手紙の一つくらいくれたっていいじゃない……。いったい何所で何をしていたのよ……」

「おやっさんにも同じ事言われたよ。そこは反省するけど、便りがないのは良い便りっていうじゃん」

「まぁそうだけど……」

 十年も経てば景色も変われば人も変わる。あの子供っぽさを残したバタフライは今では三児の母。水色の髪もしなやかで綺麗だ。本当に綺麗になった……。

 それに比べてチラチラと目を合わせてくるギャブレーは昔の引き締まった身体では無くて、座長仕事が忙しいのか少しだけ太っている印象。

「ふふ。アメリーはすっかり綺麗に成ったけど、逆にギャブレーは太ったね」

「し、仕事が忙しいからだ……。前座長が太ってた理由を身に染みてる途中だ……」

「苦労してるんだね」

 ぶっきらぼうに言い放ったギャブレー。確かに彼の言う通り前の座長も太っていたし、運動不足は否めないんだろうなぁ。

 って言うか、幼馴染が戻って来たとアメリーは目をキラキラさせてボクを見るけど、幸せ太りのギャブレーは早く帰れオーラを出してる。

 隣に居るのにそれを感じないアメリー。そこが彼女の良い所だけど、ボクの隣のおやっさんは各々の違った空気に戸惑っている様子だ。

 ここはおやっさんのために早く帰って――という選択肢は無く、ギャブレーの意に沿わない形で居座る事にする。

 当然だろ。こいつクズなんだから♪

「この十年とちょっと、カルールはどこで何してたの?」

 紅茶の香りを舌と香りで楽しんでいると、優しく微笑んだアメリーが質問してきた。

「いろいろあったよぉ~」

 ボクはわざとらしくうんうんと頷いて演技した。

「出てった最初はそれはもうひもじい生活でさ、食うに困るわ野盗に襲われるわで毎日が波乱万丈だった」

「そうなの……。苦労したのね」

「まぁね~」

 眉をハノ字にしたアメリー。隣のギャブレーはどこか具合が悪そうにボクを見ていた。

「マリオネット芸で路銀を稼いで街から街へ移動する生活。そんな生活をしていた時にさ、ある街で女性に出会ったんだ」

「女性?」

「うん。グレーゼルって名前だよ」

 女の話になると興味ありますと言った風。う〇こに集るハエみたいに食いついたギャブレーは相変わらずだ。

「彼女との出会いはそう、運命的だった……。オレンジ色の瞳がすっごくキュートでね、一目惚れしちゃったんだ」

「まぁ!」

 自分の事の様にアメリーがぱっと笑顔になる。

「兄のヘンテルと一緒に暮らしててさ、そこでお邪魔になって生活してた」

「……生活してた? 今はしてないって言い方だな」

「そうだね」

 キョトンとした顔でギャブレーを見たボク。気づくと隣のおやっさんが目頭を押さえていた。
 正直ネタバレ感半端ない。

「グレーゼルと愛し合ってた……。でもある日、ヘンテルとグレーゼルは帰らぬ人になった……。ボクの腕の中で逝ったよ……」

 眉をハノ字にして笑った。もちろん無理した作り笑顔を表に出し、笑い話だろと言いたげな雰囲気を出す。

「カルール……」

「……」

 アミリーは可哀そうな目でボクを見て、あのクソ野郎のギャブレーですらボクに同情の眼差しを向けている。

 効果てきめんだ。

「ううぅうカルール!! お前って苦労したんだなぁ~ズビズビ!! じゅるり!!」

「そ、そうだね……」

 効果てきめんだ。マジで鼻水汚いからどっか行って欲しい。

「っと! なんだかしんみりしちゃったけど、色んな回っていろいろ経験したボクの方はこんな感じ。それよりさぁ、二人に子供が居るんだって? しかも三人! おやっさんから聞いたよぉ~」

「そ、そうなの! みんな手がかかる子でねぇー」

 気を取り直したアメリー。

「――そうだ俺三人を呼んでくるよ。会ってみたいだろカルール」

 突然饒舌になったギャブレー。居心地悪い空間から出たいと言った風に立ち上がって呼びに行こうとした。

「おいギャブレー、俺が呼びに行くからお前は座っとけ」

「え、でも――」

「少し風にも当たりたいんだよ俺は」

 肩に手を置いて強制的に座らせたおやっさん。歳をとると涙もろくなるとか何とか言いながら部屋から出て行った。

 ここでボクは笑顔になる。

「二人の子供かぁ。きっと美男美女ぞろいなんだろなぁ」

「目に入れても痛くないくらい可愛いんだからね!」

「……そうだな」

 胸を張るアメリーに同意したギャブレー。他所に出しても恥ずかしくないと得意げな二人だ。

 そこでボクは笑顔で質問した。

「で? 長男は誰の子なんだい、アメリー」

「――え?」

 冷える空気。

 さっきまで笑顔だった二人は急に真顔になってボクを見た。

「いやいやいや! そこは気になるでしょ普通。色んな○○をあんなに嬉しそうに腰振って欲しがってたんだよ? 親ガチャじゃなくて子ガチャだね、うん」

「……何言ってるの……カルール」

 ハイライトの無い眼がボクを見る。

「男数人にギャブレーと座長……。さぞかし楽しんだだろうねえうん」

 にこやかに話すボクに対しアメリーは信じられないと言った風にボクを見ている。すると、俯いていた隣のギャブレーボクを睨んだ。

「帰ってくれカルール!! 今ので分かった。お前はそうやって嫌がらせしに来たんだろ!!」

「嫌がらせだなんてまっさかぁ~」

 テーブルを乗り越えてギャブレーがボクの胸元を掴んだ。

「俺たちは今、幸せなんだ!!」

「ふ~ん幸せなんだ」

「そうだ!! お前の薄ら笑いを見て嫌な予感がしていたんだ! 俺のカンが当たって正解だよ!!」

 そう言ってボクをソファに突き飛ばしたギャブレー。怒りをあらわにして睨む彼と、わなわなと震えるアメリーは印象的で……。

 ふぅ……。と溜息をついて乱れた服をはたいた。

「好きだった幼馴染を寝取られた男は退散しますか!」

 そう言って足を組んだ。

「なんだ! 出て行かないのか!」

「まぁまぁ最後に一言だけ聞いてよ」

「さっさと出て行け!!」

「座長を殺したのはボクだ♪」

 ――――静まり返る。

「心臓発作で死んだってのはボクが工作したでたらめさ♪ あのクソブタが更にデブになっててめちゃくちゃ気持ち悪かったよぉ♪」

「――なに言ってんだお前……」

 声を震わして動揺するギャブレー。

「あ、それとさ、二人にプレゼントがあるんだ♪」

 テーブルの上にゲートを開くと中からゴロっと転がり落ちた。

 瞬間。

「きゃあああああああああああああ!?!?」

 アメリーの悲鳴がボクの耳に心地いい。

 ゴロっと転がったの他でもない。だ♪

 そして場面は変わり、ボクはスポットライトのシャワーを浴びながらこう叫んだ。

「ハッハー! レディース&ジェントルメェェェェン!!」

 盛大な歓声がマリオネットたちにが湧かせた。

 広い広い公演場。その地には既に血が噴き出す死体でいっぱいだった。

 その中に二つぽつんと立った柱に二人が括り付けられている。

「さあ皆さんお待ちかね!! 性病マシマシど腐れガングロ○○に○○を十本一気にツッコミたいと思いまーす♪」

 ――――ワー!!

 盛大湧くマリオネットたち。

「――」

「――ぁぁ」

 なのにアメリーとギャブレーは既に精神崩壊して喋らなくなっちゃった。

「あーあ。壊れっちゃったかぁ♪」

 悲しいね♪

 古い世界やら未来の世界とルーラーとして移動し、ボクは自分の感情の赴くまま、ひたすら楽しいと感じた事を思いのままに実行し、のびのびとを満たしていった。

 だから時々立ちふさがる敵に支配欲を満たすことを邪魔されたら、ボクは辛抱が堪らなくなる。

 まさに今がそうだ。

「ほらほらほあ!!」

「っく!!」

 残像を残す程のスピードで翻弄し。

「これでも喰らえ!!」

「ッグワ!?」

 有り余るパワーで押し切る。

 散々ボクをコケにした黄金君主ゴールドルーラーエルドラド。

 余裕をかましてイキリ散らかしたおっさんが今はどうだ?

 ――ドワオ!!

「鎧も砕け♪」

「――」

「兜も砕け♪」

「――」

「防戦一方!!」

「――」

 束ねた糸で作った剣で斬り、糸を変化させハンマーで殴り、槍で脇腹を貫いた。

「あれれーどうしたのかなぁー! ボクがやる気を出した瞬間よわよわになったねぇー! あ、違うかぁ! ボクが強すぎるんだぁー♪」

 戦闘特化形態になったボク。まさかボクがここまで追い詰められたのは久しぶりだったりする。

 でもやっぱりこの形態になると、一方的に虐殺が始まるからあんまり楽しくなかったり♪

「――ッケ! 調子に乗りやがってサイコパス! 俺はまだ本気を出しちゃいないぞー」

「あれれー? 負け惜しみに聞こえるなぁー」

 ボロボロ状態でしんどいのを必死に誤魔化す奴を煽るのメッチャ楽しい!!

 これだから弱いやつをいじめるのやめらんない!!

 でもま、万が一に備えて……。

「ホイ! これなーんだ♪」

「……」

 ボクが手に出したのは胎動する力の源。それは半透明な渦巻く光だ。

 するとどうだろうか。これを見たエルドラドは黙り込んでしまった。

「……面白くない物出しやがって」

「あ、わかっちゃう? これがキミを消滅させるに値する物だってさ♪」

「それアレだろ。氷結界の里でお前がちょっかい出した本丸だろ」

「正解♪」

 人食いおじさんから抽出した物だけど、これはボクの隠し札の一つだったり。

「効力をフルで使う事は叶わなかったケド、それでもお前を消滅させるには十分だったり」

「まぁだから効果てきめんだろうな」

 瞬間、エルドラドは砂を纏って小細工を企てるけど、ボクはすかさず糸を操ってエルドラドをがんじがらめに拘束した。

「はいおわりー」

「――ックソ」

 トコトコと歩いてエルドラドの目の前に移動した。

 そして腕を引いた。

「最後の言葉なんて聞かないから♪」

「――――――」

 ボクはそのままコレをエルドラドに押し当て、彼は消滅した。

 ハズなのに。

「――ッ!!」

 これを体で受け止めたのは――

 ――幽霊の様に現れた幻霊君主ファントムルーラーだった。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨
ファンタジー
普通の高校生として生きていく。その為の手段は問わない。

陰キャの俺が学園のアイドルがびしょびしょに濡れているのを見てしまった件

暁ノ鳥
キャラ文芸
陰キャの俺は見てしまった。雨の日、校舎裏で制服を濡らし恍惚とする学園アイドルの姿を。「見ちゃったのね」――その日から俺は彼女の“秘密の共犯者”に!? 特殊な性癖を持つ彼女の無茶な「実験」に振り回され、身も心も支配される日々の始まり。二人の禁断の関係の行方は?。二人の禁断の関係が今、始まる!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...