俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮

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第二十一章 刻々と迫る

第273話 チュートリアル:痛み分け

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「――刹利クシャトリヤ。それはティアーウロングさまがご存知の通り、本能のルーラーたちの暴走を止めるための……抑止力の一つです」

 ゆっくりと語るサイ。言葉と同時に中央にて浮かび上がる映像。

(え、そんな感じで映像見れんの!?)

 と、内心驚きつつも映像を見る。

「ある君主ルーラーは人を殺め、ある君主は心を殺め、ある君主は軌跡を殺める。私たち理性のルーラーとは違い、本能《かれらは》その名の如く、本能のままに欲を満たす生き物です」

 燃える街。

 光になって消滅する大陸。

 何者かの影。

「理性的に存在を謳歌していうるあるじですが、忘れてはなりません。我らが主も、彼等と同じくルーラー。衝動に駆られるのを押さえているのです」

 映像には、眼がひん剝き嫉妬に駆られる彼女の影が。

「好き勝手暴れる。それがまかり通る本能たちですが、その本能にも抑止力的存在が居ます」

 回転する三角形。それがくっついて一つの三角形になった。これトライフォースじゃんと思ったのはここだけの話。

「一柱は『異世界の異なる王』」

 玉座に座る影。

「一柱は『真《まこと》なる竜』

 竜人を彷彿とさせる影。

「そして此度、地球に先兵が入り込んだ一柱『刹利クシャトリヤ

 玉座に座る謎の影。それを守る様にクシャトリヤ オーガの姿。

「この三竦みが互いを監視し合い、カルーディ含む本能のルーラーたちの過度な暴走を抑止している存在たちです」

「……?」

 ふ~ん。とアホ面で映像を流し見していたその時、ふと疑問に思った。

 スルメイカを兜の口部に溶かしているエルドラドを見る。

「あのさエルドラド」

「なにー」

「カルーディにクシャトリヤ以外の存在を聞いていたけどさ、知らん体で抑止力的存在――トライフォースの事聞いてたじゃん。あれブラフだったん?」

「まぁ一応な。あいつも死に体で隠すことは無かったにしろ、そのトライフォース? がどこでどう盗み聞きしてるか分からんからな」

「地獄耳の可能性?」

「だから一応って言ったろー」

 そう言ってむしゃむしゃスルメを食べるエルドラド。

 確かに。いくら瀕死のカルーディが相手だからと言って、奴のダンジョンに他の先兵が覗きに来ている可能性は少ないけど考慮しなきゃな感じか。

「よろしいでしょうか」

「あ、ごめん話の腰折って」

「では」

 仕切り直して。

「――クシャトリヤ。彼らの特徴は何と言っても圧倒的なまでの戦闘力です。そして彼奴らは三竦みの中で随一の軍事力を誇ります」

 映像には影が立ち並ぶモンスターの軍団。

「侵攻した世界を破界し、原生生物が築き上げた戦争技術を吸収、発展し、次の侵攻への糧とします」

 大砲、弓、剣、銃。様々な武器を使うモンスター。

「当然彼奴らにも仕える主――ルーラーが居ます。無論行動指針をはルーラーの意志で間違いないのですが、世界を破界するのが目的ではないと我々は考えます」

「……?」

 じゃあ何だってばよ……。破界した世界の技術をパクッてまた違うところに侵攻だろ。侵攻→吸収→侵攻→吸収みたいな感じ。それが目的じゃないなら……。

「おそらくですが、クシャトリヤは打破を目論んでいます。三竦みの二つの存在を」

「!」

 ……ふたを開けてみれば何てことない。

 行きつく先の目的。それは三竦みの決壊。

 次郎系ラーメン以上に体に悪そうな本能マシマシの奴ららしい考えだわ。まぁ見方を変えれば三国志の呉みたいに仲間同士の潰し合いでこっちからすればラッキーではあるけど、それがラッキーならこんな空気にはなってないわな。

「以上がクシャトリヤに関する概要ですが、何か質問はありますか」

 そっと手を挙げる俺。どうぞ、とサイが合図する。

「クシャトリヤに関しては側だけ分かったけどさ、映像があるって事はクシャトリヤにだけじゃなくてその三竦みと戦闘した経験があるって事だよな。そもそも何でクシャトリヤ以外は抽象的なネーミングなのよ」

 『異世界の異なる王』とか『真《まこと》なる竜』とか、クシャトリヤのついでに紹介されてもこっちも気になる。

 当然の俺の疑問。だと言うのに、説明役のサイが黙って考えている。

 それを認識した時、ネクロスさんが口を開いた。

 横目で俺を見る。

「私は異なる王たちと戦闘をした」

「ネクロスさんが?」

「そして私は完膚なきまでに打ちのめされた」

「ッ!?」

 淡々と話すネクロスさん。

「奴の家臣《ヴァッサル》にだ」

(ッッ~~!!?? ネクロスさんが負けた!?)

 ダンジョン――『氷結界の里』にて地形を変える程の攻撃力を放ったネクロスさん。そのネクロスさんがルーラーならまだしもそのヴァッサルに完膚なきまでに打ちのめされたと本人の口から聞けば、誰でも驚いてしまう。

「あーおじさんも王たちと闘ったけどさ、ありゃ強いなんて言葉じゃ言い表せんわなぁ」

 キムチを食べながらエルドラドは言った。

「俺は真の竜たちと殺り合ったぜ!!」

「ふ、フリードさんが!?」

 炎の髪を揺らしながらフリードさんは口を開いた。

「俺のヴァッサル一人とクソのヴァッサル一体が消滅した痛み分けだった……!」

「ッ!?」

 フリードさんのヴァッサルと相打ちになる結果……。一人仲間が消滅したと言うのに、フリードさんも後ろに仕えているシュバリエさんもどこか勝気だ。

 俺には無理してる風に見えるけど……。

「……もういいだろう」

 嫌な空気になりつつあったこの場に白鎧が口を開いた。

「ティアーウロング。抽象的に表現してしまうのは悲しみを思い出すからだと受け取って欲しい。我々は傷を負った者なのだ」

 ――白鎧の言葉に続き、サイが本来の目的である国連の協力者としてどう動くのか、の意見交換が始まった。


 週末の土曜日。

「……うーむ。待ち合わせには少し早いか」

 デンデデン♪

『チュートリアル:待ち合わせ場所に行こう』

『チュートリアルクリア』

『クリア報酬:速+』

 学園前駅の待ち合わせスポットである時計台。半袖長ズボンというまだ暑さが残っているスタイルで俺は待ち人を待っていた。

(リア充だらけ……)

 ホワイト・ディビジョンで話し合った結果、こちらとしては国連の動きに合わせる方針を取る事になった。

 戦火になるのは当事者である地球であり、当然地球人が対応する事になる。理性おれたちが深く介入するとややこしい事態が更にややこしくなる。

 まぁクシャトリヤに対し、純血派の母さんたちの動きも今のところハッキリしてないから動きようも無いのが本音だけども。

 早くママの回答が欲しいとエルドラドが愚痴っていた。

 と、そんな事は置いとくとして。

(妙に緊張する……)

 俺は今、浮足立っている。

 それもそうだろう。

「おまたせー! 萌はやーい!」

「瀬那こそ少し早いご到着で」

「そりゃ大好きな彼ピと会いたいから~」

 そう言って腕を組んでくる瀬那。

「じゃあ行こっか!」

「ウス……」

 腕に押しつけられた弾力のあるおっぱい。

 いつもなら「んほる」所だけども……。

「実家にシュッパーツ!!」

 瀬那の実家に行くという事実に、緊張感半端ねぇ……。
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