俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮

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第二十一章 刻々と迫る

第275話 チュートリアル:お嫁にもらう

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 初めてのおつかい。初めてのお遊戯会。初めてのお留守番。人間誰もが何もかもを初めて体験するだろう。その例に漏れずお留守番から家事やら一人暮らしやら、俺も"初めて"の時は緊張したものだ。

「……」

「……」

 初めてダンジョンに入った時も緊張したし、初めてボスと対峙――アンブレイカブルと対峙した時も緊張した。

 そして初めてのキスももちろん緊張したし、初めてのえっちも緊張した。

 俺の人生、年齢相応の緊張の場を潜ってきたし、ルーラー絡みの年齢不相応の緊張も経験した。あ、ルーラーに関しては年齢関係無いか。

「……」

「……」

 そんな緊張できんのたまが縮こまってる俺だけど、瀬那パパの物言わぬ視線が今まで一番緊張させるのは何故なのか。

「……ズズ」

 談笑用のソファに座り、瀬那ママに粗茶と出されたお茶は既に湯気が無くなり始めている。細目の横に泣きほくろがあるエロさを感じる瀬那ママ。俺もお茶を飲みたい。

 光で反射したメガネの奥。そこをジッと真顔で見て数分。

 まさに見合いをしていると思われるだろう。でもそんな時間を過ごした俺たち。しびれを切らしたのは彼女だった。

「もうパパ! パパが萌《もえ》の事呼んでって言ったのに何でずっと黙ってるの!! この空気イヤなんですケド!!」

 頬をぷっくりと膨らませた瀬那が一と通り、今日この場を設けたのは他でもない瀬那パパの招集だった。

 プンプンしてる瀬那。このプンプンはイヤな空気でプンプンしているだけじゃなく、俺を家に呼びだした理由が分からないのもあると思う。実際に何で俺が呼ばれたのか分からないし……。

 普通に考えたら愛娘に彼氏ができたとなればどんな野郎か気になる所だろう。たぶんこの場合もそうだけど、テレビデビューどころかネットのおもちゃと化した俺に、これ以上何を曝け出せと言うのか……。

 そう考えていると。

「――花房くん」

「はい!」

「未来の話をしよう」

「未来の……話……ですか……?」

 反射したメガネをクイと上げ、唐突にフューチャーの話題を切り出された。

 まさかの切り出しで俺と瀬那は頭の上に?。瀬那ママはお茶を飲んでいる。

「僕が働き盛りの頃は大学生になったり、一足先にサラリーマンなんて普通の選択肢だった。しかし今のご時世は多様性が含み、時世に合わさった攻略者なんて職が誕生してしまった」

 そっと湯呑を手に取りお茶を飲むパパ。

「……別に攻略者はダメだなんて言わないさ。現に瀬那を学園に通わせてるしね」

「……」

「テレビやネットニュースで報じない日は無い大型サークル情報。酸いも甘いもあるが、その大手の一つに瀬那がお呼びがかかってると聞けば、親として嬉しい限りだ。そうだろう?」

「ええ、まぁ。はい。そうかと……」

 反射して見えなかったパパの優しい目。少しばかり細くなる眼を見ると、本当に嬉しいんだと思う。

 そしてこの話を聞いた俺は、とある話の線を予想した。

「攻略者黎明期と言われる今、その大手に入れば少しは安泰するだろうと安易だが考える。だろう?」

「そ、そうですね……」

 そして俺の予想は。

「ところで瀬那から聞いたんだが――」

「――」

「――フリーで稼ぐって……?」

 普通に当たった。

 予想もクソもない。サラリーマンのくだりから何となく察してた俺エライ。つかパパの突き刺すような視線が痛い(泣き)

「……何が言いたいのパパ」

 俺と同じ様に察したのか、不機嫌を通り越して聞いたことの無い声質で質問した瀬那。

「言っただろ瀬那。これは未来の話だ」

「未来の話ってのは分かる。でも穏やかな話かたじゃないよね」

「穏やかな話に成るかどうかは、花房くん次第だ瀬那」

「ちょっとやめてよ責めた言い方! 穏やかな話から遠ざけてるじゃん!!」

 冷静に淡々と話すパパに、段々とヒートアップしていく瀬那。

 まあまあと瀬那の肩を摩って宥めるも、本人は怒りをパパに向けている。

 俺のために怒ってるのは凄く嬉しいけど、俺のために親子喧嘩はして欲しくない。親子喧嘩は範馬家だけでお腹いっぱいだ。

「ほら瀬那。怒らないで」

「今怒らないといつ怒るのよ! いくらパパでも何も悪くない萌のこと責めるの許せないだけ!」

「瀬~那」

「だいたいみんなで楽しくお夕飯食べるって聞いたから連れて来たのに、これじゃ萌が可哀そうだよ!!」

「まぁまぁ」

 感情が溢れ出たせいか、少しだけ涙目になっている。俺ってこんなに想われてるんだって心に染みる思いだ。そんな瀬那を見るパパは静観。ママに至っては急須を傾け湯呑にお茶を入れている。平常運転なのだろうか……。

「落ち着いて瀬那」

「っみゅ!?」

 両頬を寄せて瀬那を変顔させる。くちびるがタコみたいで可愛い。

「瀬那が俺の事大事なの改めて知った。ありがとう。でもさパパは俺に質問してるんだ。だから俺が真摯に向き合わないと」

「ううぅ~」

「OK?」

「おっけい~」

 無事了解を得られてよかった。顔から手を離してパパに視線を向ける。

「ふぅ……」

 実は瀬那のタコ口を俺のバキュームマウスで塞ぎたかったけど、流石に両親の目の前では自重した。そんな事したら間違いなくパパは激怒して俺を殺しに来るだろう。

「瀬那のお父さん」

「うむ」

 腕を組んで相槌。

「いや、お義父さん!」

「うむ……ん? お義父さん……?」

「まあ!」

 パパ、ここで動揺。

 ママ、ここで口元を押さえる。

「お義父さんが憂いている未来……。つまるところ、それは俺と瀬那の将来の話に成りますよね」

「そうだ。ちなみに君のお義父さんではない」

「瀬那の進路は安泰なのに対し、大手の腕を振り切ってフリーでやって行く俺に疑念を抱いてるんですよねお義父さん!!」

「私はお義父さんではない!!」

 俺の所業。それは大手の会社から引く手あまたなところをすべて振り切ってフリーターしまーす(笑)と文面にするとマジでヤバいなコイツな俺。そりゃ娘の彼氏がそんな感じなら当然心配するのが親だろう。

「確かに無謀に見えるでしょう。若造が人生舐めてるなと思っていると思いますお義父さん!!」

「お義父さんではない!」

「なぜ僕がフリーになる必要があるか! それが知りたいんですねお義父さん!!」

「だからお義父さんではない!!」

 椅子から立ち上がる俺。机を叩いて立ち上がるパパ。

 無理やり感あるお義父さん連呼。俺は今、勢いに乗らなければならない。

「フリーでの活動! それは様々なサークルに協力と言う名のおじゃまをして経験値を稼ぎ、将来は自分のサークルを持ちたいからですお義父さん!!」

「サークルを立ち上げるだと!? それとお義父さんじゃない!!」

 そう。超激アマな人生設計だけど、将来は自分のサークルを持ちたいと思っている。そりゃ俺だって生涯フリーのままってのはダメってわかる。そもそもが色々と秘匿しなければならないからフリー一択だけど、目指すは俺に都合のいいサークル設立だ。

 それともう一つ、俺には目標と言うか、夢がある。

 それは――

「そしてサークルを立ち上げた暁には!! 瀬那を嫁に貰うつもりですッ!!!!」

 ――ドガアアアアアン!! (俺の背景が噴火した音)

「なにいいいいいいいい!?!?!?」

 ――バリンッ!!(パパのメガネが割れる音)

「「きゃああああああああ♡♡♡♡」」

 ――キュルルン♡(瀬那とママの心がときめく音)

 こうして俺は、自分でも思うほど強引すぎる会話のドッジボールで通常罠『立ちはだかる強敵』をクリア。

「「「「いただきます」」」」

 朝比奈家のお夕飯を共にするのだった。

 デンデデン♪

『チュートリアル:彼女のパパを笑顔にしよう』

『チュートリアルクリア』

『クリア報酬:速+』

 一応チュートリアルはクリアしたけど、俺の回答で笑顔になったのか、ただママの飯が美味いから笑顔になったのか、どっちかわからん。


 ~萌の家にて~

「おい聞いたかリャンリャン。萌くんの奴、将来おっぱい大きな彼女と結婚するらしいぞ」

「アイヤー☆ 知ってたけど朗報だネ☆」

「こりゃ祝盃あげるか!!」

「好☆ 特別なお酒はあるかイ☆」

「当ったりまえよ!!」

「「かんぱ~~い!!」」

 翌日、帰宅した萌が散らかったリビングを見て激怒した。
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