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第十五章 信じるよ その二
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ロロゲと数メートルの距離を隔てて、向かい合うジエンド。輝久は、少し気になったことがあって、胸の女神の彫像に話し掛ける。
「もう変身してるし、いつもの台詞言わなくて良い?」
『アニマコンシャスネス・アーカイブアクセス。分析を開始します』
「無視すんなよ!!」
自分の胸に対してツッコむ輝久。その間も――。
『105……623……1560……7003……15455……29311……34588……41999……51876……66664』
赤き数字の羅列が、ジエンドのアイシールド上に現れては消えていった。そして今、輝久の視界には、怒りで歯を食い縛るロロゲが映っている。
「その余裕、すぐに消し去ってあげるからねー」
ロロゲが、自らの服の裾を持って、ジリジリと、たくし上げた。
(ええ……? な、何してんの?)
ジエンドのフルフェイスの下で、顔を赤らめかけた輝久だったが、現れた腹部の巨大な口を見て戦慄する。ぱかりと開いた鮫のような口腔内に、バチバチと今にも爆ぜそうな黒球が発生していた。
ロロゲが両方の口角を上げた。同時に、胸の女神が言葉を発する。
『対象腹部より、核エネルギーに類似する反応を感知しました』
「核ぅ!?」
輝久は叫ぶ。胸の女神は今まで、何かを誇張して言うことはなかった。ロロゲが繰り出そうとしている技は本当に、核爆弾同等の威力を秘めているということなのだろう。
輝久は呼吸を荒くしつつ、ロロゲの腹腔内の黒球を見据える。
「アレが発動する前に、何とかするしかないってことか」
「やってみなよー! 絶速のエウィテルを倒した速度でさー!」
高らかに笑うロロゲに輝久は違和感を覚えた。まるで、先の戦闘を見ていたかのようである。
「けどね! 私がコレを噛み砕く方が速い!」
ロロゲは自信に溢れていた。腹の口の乱杭歯が、ぴくりと動く。『ロロゲの歯が黒球に触れる』――それが、核爆弾のトリガーなのだと輝久は確信した。
(もし、ロロゲの技が炸裂すれば……?)
輝久はちらりと背後の仲間と、心配そうに見守るフォルテを窺う。
ジエンドは強い! 一対一なら、きっとどんな覇王にも負けない! だけど、皆は……!
仲間がロロゲの技を喰らい、蒸発するかの如く消えるイメージが脳裏に浮かんで、輝久の心臓は鼓動を速める。だが、狼狽する輝久とは裏腹に、ジエンドは平然とロロゲに左腕をかざした。
刹那、輝久は気付く。ジエンドの左腕に、いつもは無い物体が装備されていることに。
クローゼも気付いたのか、素っ頓狂な声を出す。
「あれえっ!? アタシが持ってた、勇者の盾じゃねえか!!」
改めて輝久はジエンドの左腕を見る。武芸大会の賞品であった勇者の盾が、いつの間にかジエンドの左腕にぴったりと装着されている。
ロロゲが勇者の盾を指さして、大声で笑う。
「あはははははは! そんな盾で防げる訳ねーでしょ!」
「そ、そうだよ! コレお前、煮汁とか付いてた盾じゃねーか!」
輝久も叫ぶ。ソブラの闘技場裏手に、ぞんざいに置かれていた、弱い世界の弱い防具。こんな盾で核エネルギーに類似するという覇王の攻撃を凌げる訳がない。
『受けよ。別領域より来たる偶の神力を』
それでも胸の女神は、淡々とした口調で言った。
『五次元障壁による転移反射……』
瞬間、勇者の盾が増殖する。目にも止まらぬ速さで数百、数千の盾となり、上下左右に展開。蜂の巣模様のようになり、輝久達を囲った。
瞬時に構成されたバリケードに驚く輝久。そして、いつものように自身の口が勝手に開き――。
「マキシマムライト・スペリオル・リフレク!」
初見の技の名を、何故だか叫んでしまう。
ロロゲが「ふん」と鼻を鳴らした。
「『反射』とか言ってたよねー? やってみなよー! もし仮に、跳ね返せたとして! アタシの体から生まれた力がアタシに効くもんか!」
言い終わるやロロゲの腹の口がばくんと閉じる。それと同時に目も眩む閃光。ジエンドのアイシールドでも遮光できない眩さに、輝久は瞬間、目を閉じてしまう。
(くっ!! クローゼ達は、どうなった!?)
急いで重い瞼を開いて、視界に入った光景を見て……輝久は安堵した。
仲間は皆、無事。蜂の巣のような盾のバリケードは消えていたが、周囲の状況は戦う前とまるで変化はない。
すぐに、ロロゲに向き直り、輝久は「うっ」と息を呑む。
ロロゲの全身は、焼けただれたようになっていた。服は所々が燃え裂け、髪も焦げている。
「あ……ぐ……!」
膝に手を当てて、苦しそうに唸る。明らかに、ジエンドがロロゲの技を跳ね返しようだが、輝久は叫ばずにはいられない。
「いや、効かないんじゃなかったのかよ!?」
相変わらず胸の女神は何も語ってくれなかったが、ジエンドの背後で、ユアンが呟くように言う。
「ロロゲの技は、闇魔法の一種だったと思う。それが、テルの出した盾の魔法障壁に触れた途端、属性が入れ替わった。ロロゲの弱点属性の光の魔法に変えてから、跳ね返したんだと思う」
「だから、ロロゲはダメージを受けたのか! ユアンすげえ! 流石、魔法使い!」
いつも意味不明なジエンドの技の解説をしてくれるのは、メチャクチャありがたいと輝久は心底思った。ただ、当のユアンは、ジエンドの反射技の方に感嘆していた。
「すごいのは君だよ! あんな魔法障壁、初めて見たよ!」
「確かに、テルはすげえな! 技を返すと同時に、敵の弱点に変えちまうなんて!」
「やっぱり、マキちゃんと合体した勇者様は、とっても強いのです!」
クローゼもネィムも感動して声をあげる。だが、彼女達より、驚愕している者がいた。
魔王軍四天王フォルテが、慄きに似た声で呟く。
「何という力だ……! これが『勇者』か……!」
一方、全身に大火傷を負ったロロゲは、血走った目でジエンドを睨み付ける。
「アタシの体が……! この……このクソがあああああああああああ!!」
激昂して叫ぶロロゲを見て、輝久は身構える。
(ダメージを負ってる、今がチャンスだ!)
そして、追撃すべく、輝久自身の意志でロロゲに向かおうとした。だが駆け寄ろうとした途端、輝久の足は止まる。ロロゲが閉じていた腹の口を開くと、既に黒球が発現していたからだ。
「また作ってる!? ってか、デッカ!!」
先程のが野球のボールだとしたら、今度のはボーリングの玉並の大きさだった。既にバチバチと帯電している巨大な黒球を見て、輝久は胸の女神に尋ねてみる。
「なぁ、ジエンド。アレ、どのくらいの威力か分かるか?」
『アルヴァーナを三回滅ぼして、まだ余りあるエネルギー反応です』
「き、聞かなきゃよかった……! でも、大丈夫なんだろ? さっきの反射技があれば」
『いいえ。スペリオル・リフレクで反射できる領域を超越しています』
「は? ってことは?」
ジエンドとの会話の途中だったが、ロロゲが口を三日月にして笑う。
「あはははははは! アタシ以外、全部消えちまえよ!」
「ちょ、ちょ、ちょっと待って!!」
輝久の慌てる気持ちと同調するように、ジエンドはあたふたと後退した。しかし、その狼狽振りとは裏腹に、ジエンドの胸からは落ち着き払った女神の声が響く。
『攻撃は既に完了しています』
輝久の意思とは無関係に、ジエンドが左手の指をパチンと鳴らした。
(あ……!)
その瞬間、輝久は目を見開く。ジエンドが指を鳴らすと同時に、ロロゲの腹腔内の黒球が、美しく輝く巨大な光の球に変化したからだ。
(すり替えた!? いや……元々、光の球だったのか!?)
まるで手品か奇術のようだと、輝久は思った。
勝利を確信したロロゲが、光の球に気付かず、噛み砕く。刹那、眩い光が輝久の目を強制的に閉じさせた。
輝久が視覚を取り戻すと、ロロゲは天を仰ぐように直立していた。ロロゲの全身は先程よりも凄惨。激しい爆撃を受けたように煤に塗れて、腹部の牙は殆どが朽ち果てている。ゴボッと黒い血の塊を吐き出し、ロロゲが無言で前のめりに倒れた。
「ふぅ……終わった……のか?」
とにもかくにもロロゲが倒れたことに安堵して、今の攻撃の説明をジエンドに聞こうとした輝久だったが――。
『対象の戦闘不能状態を確認しました。ホワイト・マター補給の為、変身を解除します』
「へ?」
突如、胸の女神が言うや、ジエンドの各パーツが分かたれて、幼女女神のマキへと戻る。
これまでにない急な変身解除に輝久は驚くが、マキに何か言うより先に、ぐらりと視界が歪んだ。
「うっ……」
視界がぐるぐると回っている。マキが気付いて、上目遣いに輝久を見た。
「テル。大丈夫デスカ?」
「ああ……。でも久し振りだな、この目眩……」
「連戦デ、体力の消耗が激しかっタのだと思われマス。股間を撫でまショウカ?」
「なんでだよ。そんなんで回復しねえよ。やめてくれ」
目眩のせいで激しく怒鳴れず、静かにマキに言う。言われてみれば確かに、シアプの岩場で覇王二体を倒し、そのままハデス・ゲートで此処まで急行。ロロゲと戦闘した。
(こんな長い間、ジエンドに変身して戦ったこと、なかったもんな)
「テル! 大丈夫か?」
「うん。心配ないよ」
クローゼに笑顔で答える。事実、目眩は治まってきている。だが、輝久は言い様のない不安に駆られつつ、前方を眺めた。
「畜生……畜生……! このままで済むと思うなよ……!」
ロロゲは地面にへたばりながらも、鬼女のような顔で輝久を睨んでいる。
(大丈夫なんだよな? しばらく、ジエンドに変身できそうにないけど……!)
ジエンドは、ロロゲが『戦闘不能』だと言った。心配することはないのかも知れない。しかし、ユアン達も、そしてフォルテも、未だに生きているロロゲを固唾を呑んで見詰めていた。
「もう変身してるし、いつもの台詞言わなくて良い?」
『アニマコンシャスネス・アーカイブアクセス。分析を開始します』
「無視すんなよ!!」
自分の胸に対してツッコむ輝久。その間も――。
『105……623……1560……7003……15455……29311……34588……41999……51876……66664』
赤き数字の羅列が、ジエンドのアイシールド上に現れては消えていった。そして今、輝久の視界には、怒りで歯を食い縛るロロゲが映っている。
「その余裕、すぐに消し去ってあげるからねー」
ロロゲが、自らの服の裾を持って、ジリジリと、たくし上げた。
(ええ……? な、何してんの?)
ジエンドのフルフェイスの下で、顔を赤らめかけた輝久だったが、現れた腹部の巨大な口を見て戦慄する。ぱかりと開いた鮫のような口腔内に、バチバチと今にも爆ぜそうな黒球が発生していた。
ロロゲが両方の口角を上げた。同時に、胸の女神が言葉を発する。
『対象腹部より、核エネルギーに類似する反応を感知しました』
「核ぅ!?」
輝久は叫ぶ。胸の女神は今まで、何かを誇張して言うことはなかった。ロロゲが繰り出そうとしている技は本当に、核爆弾同等の威力を秘めているということなのだろう。
輝久は呼吸を荒くしつつ、ロロゲの腹腔内の黒球を見据える。
「アレが発動する前に、何とかするしかないってことか」
「やってみなよー! 絶速のエウィテルを倒した速度でさー!」
高らかに笑うロロゲに輝久は違和感を覚えた。まるで、先の戦闘を見ていたかのようである。
「けどね! 私がコレを噛み砕く方が速い!」
ロロゲは自信に溢れていた。腹の口の乱杭歯が、ぴくりと動く。『ロロゲの歯が黒球に触れる』――それが、核爆弾のトリガーなのだと輝久は確信した。
(もし、ロロゲの技が炸裂すれば……?)
輝久はちらりと背後の仲間と、心配そうに見守るフォルテを窺う。
ジエンドは強い! 一対一なら、きっとどんな覇王にも負けない! だけど、皆は……!
仲間がロロゲの技を喰らい、蒸発するかの如く消えるイメージが脳裏に浮かんで、輝久の心臓は鼓動を速める。だが、狼狽する輝久とは裏腹に、ジエンドは平然とロロゲに左腕をかざした。
刹那、輝久は気付く。ジエンドの左腕に、いつもは無い物体が装備されていることに。
クローゼも気付いたのか、素っ頓狂な声を出す。
「あれえっ!? アタシが持ってた、勇者の盾じゃねえか!!」
改めて輝久はジエンドの左腕を見る。武芸大会の賞品であった勇者の盾が、いつの間にかジエンドの左腕にぴったりと装着されている。
ロロゲが勇者の盾を指さして、大声で笑う。
「あはははははは! そんな盾で防げる訳ねーでしょ!」
「そ、そうだよ! コレお前、煮汁とか付いてた盾じゃねーか!」
輝久も叫ぶ。ソブラの闘技場裏手に、ぞんざいに置かれていた、弱い世界の弱い防具。こんな盾で核エネルギーに類似するという覇王の攻撃を凌げる訳がない。
『受けよ。別領域より来たる偶の神力を』
それでも胸の女神は、淡々とした口調で言った。
『五次元障壁による転移反射……』
瞬間、勇者の盾が増殖する。目にも止まらぬ速さで数百、数千の盾となり、上下左右に展開。蜂の巣模様のようになり、輝久達を囲った。
瞬時に構成されたバリケードに驚く輝久。そして、いつものように自身の口が勝手に開き――。
「マキシマムライト・スペリオル・リフレク!」
初見の技の名を、何故だか叫んでしまう。
ロロゲが「ふん」と鼻を鳴らした。
「『反射』とか言ってたよねー? やってみなよー! もし仮に、跳ね返せたとして! アタシの体から生まれた力がアタシに効くもんか!」
言い終わるやロロゲの腹の口がばくんと閉じる。それと同時に目も眩む閃光。ジエンドのアイシールドでも遮光できない眩さに、輝久は瞬間、目を閉じてしまう。
(くっ!! クローゼ達は、どうなった!?)
急いで重い瞼を開いて、視界に入った光景を見て……輝久は安堵した。
仲間は皆、無事。蜂の巣のような盾のバリケードは消えていたが、周囲の状況は戦う前とまるで変化はない。
すぐに、ロロゲに向き直り、輝久は「うっ」と息を呑む。
ロロゲの全身は、焼けただれたようになっていた。服は所々が燃え裂け、髪も焦げている。
「あ……ぐ……!」
膝に手を当てて、苦しそうに唸る。明らかに、ジエンドがロロゲの技を跳ね返しようだが、輝久は叫ばずにはいられない。
「いや、効かないんじゃなかったのかよ!?」
相変わらず胸の女神は何も語ってくれなかったが、ジエンドの背後で、ユアンが呟くように言う。
「ロロゲの技は、闇魔法の一種だったと思う。それが、テルの出した盾の魔法障壁に触れた途端、属性が入れ替わった。ロロゲの弱点属性の光の魔法に変えてから、跳ね返したんだと思う」
「だから、ロロゲはダメージを受けたのか! ユアンすげえ! 流石、魔法使い!」
いつも意味不明なジエンドの技の解説をしてくれるのは、メチャクチャありがたいと輝久は心底思った。ただ、当のユアンは、ジエンドの反射技の方に感嘆していた。
「すごいのは君だよ! あんな魔法障壁、初めて見たよ!」
「確かに、テルはすげえな! 技を返すと同時に、敵の弱点に変えちまうなんて!」
「やっぱり、マキちゃんと合体した勇者様は、とっても強いのです!」
クローゼもネィムも感動して声をあげる。だが、彼女達より、驚愕している者がいた。
魔王軍四天王フォルテが、慄きに似た声で呟く。
「何という力だ……! これが『勇者』か……!」
一方、全身に大火傷を負ったロロゲは、血走った目でジエンドを睨み付ける。
「アタシの体が……! この……このクソがあああああああああああ!!」
激昂して叫ぶロロゲを見て、輝久は身構える。
(ダメージを負ってる、今がチャンスだ!)
そして、追撃すべく、輝久自身の意志でロロゲに向かおうとした。だが駆け寄ろうとした途端、輝久の足は止まる。ロロゲが閉じていた腹の口を開くと、既に黒球が発現していたからだ。
「また作ってる!? ってか、デッカ!!」
先程のが野球のボールだとしたら、今度のはボーリングの玉並の大きさだった。既にバチバチと帯電している巨大な黒球を見て、輝久は胸の女神に尋ねてみる。
「なぁ、ジエンド。アレ、どのくらいの威力か分かるか?」
『アルヴァーナを三回滅ぼして、まだ余りあるエネルギー反応です』
「き、聞かなきゃよかった……! でも、大丈夫なんだろ? さっきの反射技があれば」
『いいえ。スペリオル・リフレクで反射できる領域を超越しています』
「は? ってことは?」
ジエンドとの会話の途中だったが、ロロゲが口を三日月にして笑う。
「あはははははは! アタシ以外、全部消えちまえよ!」
「ちょ、ちょ、ちょっと待って!!」
輝久の慌てる気持ちと同調するように、ジエンドはあたふたと後退した。しかし、その狼狽振りとは裏腹に、ジエンドの胸からは落ち着き払った女神の声が響く。
『攻撃は既に完了しています』
輝久の意思とは無関係に、ジエンドが左手の指をパチンと鳴らした。
(あ……!)
その瞬間、輝久は目を見開く。ジエンドが指を鳴らすと同時に、ロロゲの腹腔内の黒球が、美しく輝く巨大な光の球に変化したからだ。
(すり替えた!? いや……元々、光の球だったのか!?)
まるで手品か奇術のようだと、輝久は思った。
勝利を確信したロロゲが、光の球に気付かず、噛み砕く。刹那、眩い光が輝久の目を強制的に閉じさせた。
輝久が視覚を取り戻すと、ロロゲは天を仰ぐように直立していた。ロロゲの全身は先程よりも凄惨。激しい爆撃を受けたように煤に塗れて、腹部の牙は殆どが朽ち果てている。ゴボッと黒い血の塊を吐き出し、ロロゲが無言で前のめりに倒れた。
「ふぅ……終わった……のか?」
とにもかくにもロロゲが倒れたことに安堵して、今の攻撃の説明をジエンドに聞こうとした輝久だったが――。
『対象の戦闘不能状態を確認しました。ホワイト・マター補給の為、変身を解除します』
「へ?」
突如、胸の女神が言うや、ジエンドの各パーツが分かたれて、幼女女神のマキへと戻る。
これまでにない急な変身解除に輝久は驚くが、マキに何か言うより先に、ぐらりと視界が歪んだ。
「うっ……」
視界がぐるぐると回っている。マキが気付いて、上目遣いに輝久を見た。
「テル。大丈夫デスカ?」
「ああ……。でも久し振りだな、この目眩……」
「連戦デ、体力の消耗が激しかっタのだと思われマス。股間を撫でまショウカ?」
「なんでだよ。そんなんで回復しねえよ。やめてくれ」
目眩のせいで激しく怒鳴れず、静かにマキに言う。言われてみれば確かに、シアプの岩場で覇王二体を倒し、そのままハデス・ゲートで此処まで急行。ロロゲと戦闘した。
(こんな長い間、ジエンドに変身して戦ったこと、なかったもんな)
「テル! 大丈夫か?」
「うん。心配ないよ」
クローゼに笑顔で答える。事実、目眩は治まってきている。だが、輝久は言い様のない不安に駆られつつ、前方を眺めた。
「畜生……畜生……! このままで済むと思うなよ……!」
ロロゲは地面にへたばりながらも、鬼女のような顔で輝久を睨んでいる。
(大丈夫なんだよな? しばらく、ジエンドに変身できそうにないけど……!)
ジエンドは、ロロゲが『戦闘不能』だと言った。心配することはないのかも知れない。しかし、ユアン達も、そしてフォルテも、未だに生きているロロゲを固唾を呑んで見詰めていた。
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出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
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楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
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