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3. 島岡さんとチョコレート
しおりを挟む「はあ~、やっと終わりましたわ…」
森本さんに押し付けられたお仕事を全て終了すると時間は20時になってしまっていました。
「大変…早く帰宅しないと」
私はパソコンの電源を切って帰宅の準備を始めた時に誰かが部屋に入って来たのが分かりました。
「あれ?珍しいですね、こんな時間まで藤堂さんが残っているなんて…。あっ、また誰かに仕事を押し付けられのですか?」
そこに現れたのは営業部のリーダーの島岡賢人(しまおか けんと)さんだった。
さっき、またって言いましたね。
この人ボーとしているようで良く人の事を見ているんですよね。
「森本さんが今日は予定があるからと変わりに作成をお願いされまして…」
島岡さんは私の近くまでやって来てカバンの中をゴソゴソとし始めた。
「これいつも頑張っている藤堂さんにご褒美です。…と言っても営業先の人からもらったんですが…僕は甘いのが苦手だから良かったら食べて下さい」
そう言って私の手に小さな箱を乗せた。
何だろう?
今開けた方が良いですよね?
「ありがとうございます。ここで開けても良いですか?」
「はい、どうぞ。僕も中身が何か分かる方が相手に話せますので助かりますね」
小さな箱を開けると、小さなハートの形をしたチョコレートが入っていた。
しかも…。
「これは私がもらっては駄目な物ですね…。お返しします」
小さなハートの形をしたチョコレートの隣に長方形のピンク色のチョコレートもあり、その上にホワイトチョコレートでメッセージが書かれていた。
"大好きです"
これを島岡さんに渡したのは営業先の女性ですね。
箱の蓋を閉じて島岡さんに返そうとしたが、島岡さんは…。
「これ…このまま返したら失礼だよね?」
え?このまま食べずに相手に返すのですか?
それは駄目だと思います。
泣いてしまいますよ。
「これは島岡さんが食べてからお相手の女性に返事をするべきだと思います」
島岡さんは頭を指でぐしゃぐしゃとして困った顔をしていた。
「僕はそんな態度をとったつもりはないんだけどな…。お得意様なのに…」
確かに、仕事先で悪い噂をたてられても困りますよね。
島岡さんは優しいから知らないうちに好意を持たれたのかもしれません。
「では、彼女がいると断れば良いのではありませんか?タイプではないと断られるよりは良いと思います…」
島岡さんは目を開いて頷いていた。
その手があった~と顔に書いてありますよ。
島岡さんは185センチでスラッとした細マッチョ。
お顔立ちもモデルのように整った人なので彼女がいないとは思わないでしょう。
そういう話をしたことがないので私は知りませんけど…。
社内でも女性社員から良いパパになりそう!と言われて結婚したい男性社員No.1になってましたよ。
あ、これは女性社員だけに回される秘密の掲示板に載っていました。
「そっか…そうですね。ありがとう藤堂さん」
島岡さんは私の手を握りブンブンと上下に振った。
いや…恥ずかしいので手を離して下さい。
それよりも、私は早く帰りたいのですが…。
「ゴホッ…こんな時間に何をしているのかな?」
そこに現れたのは…。
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