お嬢様は地味活中につき恋愛はご遠慮します

4. お父様からは逃げられたけど…

「社長…」

2人の前に現れたのは会社の社長…そう、私の父だった。

何故こんな時間にお父様が会社にいるのかしら？

「島岡くん…女性の手を握るのは自分の彼女だけにした方が良いよ」

気のせいかしら…お父様が怒りのオーラを放っている感じがするわ。

「はっ…申し訳ない藤堂さん。勝手に手を触ってしまって…」

いえいえ、私は別に何とも思っていませんよ。

外国にいた時はハグとかもされていましたし…。

お父様には秘密ですが…。

お父様は私に過保護すぎますから気にしないで下さい。

私が誘拐されすぎたのと、その後海外の全寮制の学校に10年ほど行っていたので、日本に帰ってきてからお父様の束縛&過保護がスゴイのです。

あまりの過保護ぶりに窒息しそうだったので、お母様に相談して最近独り暮らしを始めたのですが…。

お父様の束縛は逃れられないみたいですね。

「島岡さん、私は何ともありませんので気にしないで下さい。社長もご心配無用ですので…」

私は島岡さんから見えないように笑顔でお父様を威嚇してみた。

お父様の後ろにいる秘書の高科　涼(たかしな　りょう)さんが声を堪えて笑っているのが見えた。

普段無表情なのにお父様が追い詰められるといつも嬉しそうですよね。

お父様はいったいどういう基準で秘書を選んだのかしら？

確かに会社の女子社員の間では涼やかな目元にメガネをして知的だとか、低音ボイスが素敵なんて言われてメガネ王子という愛称で人気があるみたいですけど…。

あ、これも秘密の掲示板情報ですが…。

お父様…まさか、顔で選んでいませんよね？

「藤堂さん、もう遅いから自宅まで送って行こう。高科、車を正面にまわして来てくれ」

「…は、はい、かしこまりました」

お父様に言われて高科さんは足早に部屋から出ていった。

高科さん…笑い堪えられてなかったわよ…。

「社長、ご厚意はありがたく思いますが、車で送って頂く程の距離ではありませんので…ここで失礼させていただきます」

「え…しかしだね…」

お父様は私にキッパリ断られてショックみたい。

私は荷物をまとめて出ていこうとした。

「藤堂さん、僕も駅まで歩きだから途中まで送って行くよ。それでは社長失礼します」

これで島岡さんを断るとややこしくなりそうだから私は途中まで一緒に帰る事にした。

私は歩きながら島岡さんに何と言うかを考えていた。

「すいません、島岡さんを巻き込んだみたいで…」

私が社長の娘だとは知らないからあそこまで社長が私をかまうのを不思議に思っただろうな。

「いや、僕こそ興奮して勝手に手を握ったりして申し訳ない…。社長が言ったことは正しいよ。僕が藤堂さんを巻き込んだんだよ…本当…申し訳ないね」

あ～あ、島岡さん落ち込んでしまったみたいね。

お父様、今度家に帰ったら注意しないと！

でも、おかしいとは思っていないみたいね、良かった。

「それにしても…藤堂さんがこの近くに住んでいるなんて知らなかったよ。家賃高いでしょ…」

しまった～！

私としたことが忘れていましたわ～、会社の周辺は土地が高いことで有名な地域でした。

何て言ってごまかそうかしら…。