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第52話「文句は絶対言わせないから!」
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「先ほどから、私とアンナの話を聞いていて、お分かりでしょうけど……亡き私の夫は冒険者でした」
語るエレーヌの目が遠い……
どうやら過ぎ去った記憶をたぐっているようだ。
いつもは元気良く、母の物言いを真似するアンナは……辛そうに黙っていた。
リオネルは短く言葉を戻す。
「成る程」
「改めて、私が代わりにリオネルさんへお詫びします。村長クレマンの無礼を。誠に申し訳ありませんでした」
エレーヌは深くお辞儀をし、丁寧に詫びた。
「じゃあ、アンナちゃんが言ったおじいちゃんというのは」
「はい、私エレーヌはアルエット村村長クレマンのひとり娘、アンナは孫娘なのです」
話が、だんだんと見えて来た。
しかし、ここは直接エレーヌから事情を聞いた方が良い。
そう、リオネルは判断した。
「そうだったのですね、宜しければご事情をひと通り、お聞かせください」
「はい、お話し致します。……10年前、たまたま私は王都へ遊びに行った時に、亡き夫と出会い、恋に落ちました。街中で暴漢から助けて貰ったのがきっかけでした」
「……………」
「まだ10代後半で若かった私は、少し年上で優しく、頼もしい冒険者の夫に夢中となり、そのまま村へ帰らず、王都で仕事を見つけ、暮らし始めました」
「……………」
「最初に出会った時、すぐ分かりました。……夫は本当に優しくて誠実でした。付き合い、しばらく経ってから一緒に暮らし始め、改めて実感して行きました」
「……………」
「私は心から夫を愛していました」
「……………」
「結局、出会ってから翌年に結婚し、結婚の半年後にアンナが生まれました」
「……………」
「その間、村に居る父からは再三再四、魔法鳩便で手紙がありました。すぐ夫と別れ、帰って来いと!」
「……………」
「当然ですが、こちらからも結婚を認めて欲しいと、何度も何度も、父へ手紙を送りました」
「……………」
「しかし頑固な父は、娘を奪った冒険者の夫に強い憎しみを持っており、夫を全く理解しようとはせず、結局は平行線でした」
「……………」
「やがてお金もある程度貯まった2年前、夫は冒険者を引退し、アルエット村で農民として生きる事を決意しました」
「……………」
「3人で一緒に王都を出て、私の故郷アルエット村で暮らして行くと決めたのです。その際、父へ手紙を送りましたが、やはり許しては貰えませんでした」
「……………」
「それで、夫と話し合い、強引な移住を決めました……父が認めずとも家族3人一緒に帰村すれば、なし崩しに何とかなると思ったのです」
「……………」
「しかし最後の仕事と受けた依頼で、夫は仲間をかばい、命を落としてしまいました。残された私とアンナは、深い悲しみと失意のうちに、ふたりだけアルエット村に帰って来ました」
「……………」
「帰って来た私達を父は実の娘と孫ではなく、血がつながらない一般村民の母娘として扱いました。そして父は相変わらず、冒険者への憎しみが消えませんでした」
「……………」
「以来、私とアンナは、冒険者を敵視する父とは暮らさず、村内の別の家で暮らしています」
「……………」
「そして亡き夫をしのび、時たま王都の聖堂へお参りに行きます」
「……………」
「今回、帰途で怖ろしいオークどもに襲われました。その絶体絶命の危機を助けてくれたのが、リオネルさん、貴方だった……このような経緯です」
「……お話は良く分かりました。……いろいろと大変でしたね」
「父の無作法、本当に申し訳ありません」
「いえいえ、気にしていません。それに村長からはお礼を言って頂けました」
「え? 父が? リオネルさんへお礼を?」
「はい、言い方はぶっきらぼうだったですが、娘さんとお孫さんへの愛情がこもっていたと思います」
実際クレマンの礼の言い方はひどくぞんざいであったが……
リオネルは、さりげなく「フォロー」
心の距離を縮めた3人の話は、更に盛り上がったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
アンナはますますリオネルに懐き……
終いには「リオにいちゃん」と呼ぶようになった。
リオネルの記憶がよみがえる。
そういえば、「はぶられていた」教室で、リオネルがひとり座っていたら……
魔法学校の同級生が楽しそうに大声で言っていたのが、耳へ入った事がある。
「妹って! 本当に可愛いぞお!」と。
今まで末っ子で妹、それも年の離れた可愛い妹など居なかったリオネル。
目の前のアンナを見て、実の妹のように愛おしく感じてしまう。
「ねえ、リオにいちゃん、もう少し村に居て! お願い!」
甘えるアンナは、リオネルへしばらく村に滞在して欲しいと懇願した。
……リオネルは考える。
ワレバットへは、先を急ぐ旅ではない。
父との約束通り、1か月以内に王都は出たのだ。
それに、エレーヌとアンナを襲ったオークどもが気になる。
近くに『巣』があるのなら、また他の群れが近辺に出没して、襲って来るかもしれない。
オーク討伐の依頼は既に王都で受けている。
トレーニングも兼ね、付近を探索し、オークと戦ってみよう。
「分かりました。俺、もう少しだけアルエット村でお世話になります」
リオネルのベストアンサーを聞き、喜んだのはアンナだけではなかった。
「本当! 嬉しい!」
満面の笑みを浮かべ、エレーヌは何と!
リオネルの手をぎゅっと強く握ってくれた!
アンナの母とはいえ……
若い女子と手を握るのは、リオネルにとって初体験。
もう「どっきどき」である。
「えっと、村周辺の地形を教えて貰えますか? 探索をスムーズに行う為、メモしたいんです。俺、ここいらの土地勘がないですから」
「任せて!」
「OK!」
と、そんなこんなで夜も深まった。
「リオネルさんがしばらく村に滞在する件、これからすぐに、私から村長へ伝えとくわ。文句は絶対言わせないから!」
「うん! ママとアンナが、おじいちゃんに絶対文句は言わせないから!」
エレーヌとアンナは、そう言って帰って行った。
ふたりを帰したリオネルは、さくさくと後かたずけをした。
更にエレーヌから聞いた、村周辺の地形メモを図面にして作戦を立案。
……明日に備え、寝袋へ入り、就寝したのである。
語るエレーヌの目が遠い……
どうやら過ぎ去った記憶をたぐっているようだ。
いつもは元気良く、母の物言いを真似するアンナは……辛そうに黙っていた。
リオネルは短く言葉を戻す。
「成る程」
「改めて、私が代わりにリオネルさんへお詫びします。村長クレマンの無礼を。誠に申し訳ありませんでした」
エレーヌは深くお辞儀をし、丁寧に詫びた。
「じゃあ、アンナちゃんが言ったおじいちゃんというのは」
「はい、私エレーヌはアルエット村村長クレマンのひとり娘、アンナは孫娘なのです」
話が、だんだんと見えて来た。
しかし、ここは直接エレーヌから事情を聞いた方が良い。
そう、リオネルは判断した。
「そうだったのですね、宜しければご事情をひと通り、お聞かせください」
「はい、お話し致します。……10年前、たまたま私は王都へ遊びに行った時に、亡き夫と出会い、恋に落ちました。街中で暴漢から助けて貰ったのがきっかけでした」
「……………」
「まだ10代後半で若かった私は、少し年上で優しく、頼もしい冒険者の夫に夢中となり、そのまま村へ帰らず、王都で仕事を見つけ、暮らし始めました」
「……………」
「最初に出会った時、すぐ分かりました。……夫は本当に優しくて誠実でした。付き合い、しばらく経ってから一緒に暮らし始め、改めて実感して行きました」
「……………」
「私は心から夫を愛していました」
「……………」
「結局、出会ってから翌年に結婚し、結婚の半年後にアンナが生まれました」
「……………」
「その間、村に居る父からは再三再四、魔法鳩便で手紙がありました。すぐ夫と別れ、帰って来いと!」
「……………」
「当然ですが、こちらからも結婚を認めて欲しいと、何度も何度も、父へ手紙を送りました」
「……………」
「しかし頑固な父は、娘を奪った冒険者の夫に強い憎しみを持っており、夫を全く理解しようとはせず、結局は平行線でした」
「……………」
「やがてお金もある程度貯まった2年前、夫は冒険者を引退し、アルエット村で農民として生きる事を決意しました」
「……………」
「3人で一緒に王都を出て、私の故郷アルエット村で暮らして行くと決めたのです。その際、父へ手紙を送りましたが、やはり許しては貰えませんでした」
「……………」
「それで、夫と話し合い、強引な移住を決めました……父が認めずとも家族3人一緒に帰村すれば、なし崩しに何とかなると思ったのです」
「……………」
「しかし最後の仕事と受けた依頼で、夫は仲間をかばい、命を落としてしまいました。残された私とアンナは、深い悲しみと失意のうちに、ふたりだけアルエット村に帰って来ました」
「……………」
「帰って来た私達を父は実の娘と孫ではなく、血がつながらない一般村民の母娘として扱いました。そして父は相変わらず、冒険者への憎しみが消えませんでした」
「……………」
「以来、私とアンナは、冒険者を敵視する父とは暮らさず、村内の別の家で暮らしています」
「……………」
「そして亡き夫をしのび、時たま王都の聖堂へお参りに行きます」
「……………」
「今回、帰途で怖ろしいオークどもに襲われました。その絶体絶命の危機を助けてくれたのが、リオネルさん、貴方だった……このような経緯です」
「……お話は良く分かりました。……いろいろと大変でしたね」
「父の無作法、本当に申し訳ありません」
「いえいえ、気にしていません。それに村長からはお礼を言って頂けました」
「え? 父が? リオネルさんへお礼を?」
「はい、言い方はぶっきらぼうだったですが、娘さんとお孫さんへの愛情がこもっていたと思います」
実際クレマンの礼の言い方はひどくぞんざいであったが……
リオネルは、さりげなく「フォロー」
心の距離を縮めた3人の話は、更に盛り上がったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
アンナはますますリオネルに懐き……
終いには「リオにいちゃん」と呼ぶようになった。
リオネルの記憶がよみがえる。
そういえば、「はぶられていた」教室で、リオネルがひとり座っていたら……
魔法学校の同級生が楽しそうに大声で言っていたのが、耳へ入った事がある。
「妹って! 本当に可愛いぞお!」と。
今まで末っ子で妹、それも年の離れた可愛い妹など居なかったリオネル。
目の前のアンナを見て、実の妹のように愛おしく感じてしまう。
「ねえ、リオにいちゃん、もう少し村に居て! お願い!」
甘えるアンナは、リオネルへしばらく村に滞在して欲しいと懇願した。
……リオネルは考える。
ワレバットへは、先を急ぐ旅ではない。
父との約束通り、1か月以内に王都は出たのだ。
それに、エレーヌとアンナを襲ったオークどもが気になる。
近くに『巣』があるのなら、また他の群れが近辺に出没して、襲って来るかもしれない。
オーク討伐の依頼は既に王都で受けている。
トレーニングも兼ね、付近を探索し、オークと戦ってみよう。
「分かりました。俺、もう少しだけアルエット村でお世話になります」
リオネルのベストアンサーを聞き、喜んだのはアンナだけではなかった。
「本当! 嬉しい!」
満面の笑みを浮かべ、エレーヌは何と!
リオネルの手をぎゅっと強く握ってくれた!
アンナの母とはいえ……
若い女子と手を握るのは、リオネルにとって初体験。
もう「どっきどき」である。
「えっと、村周辺の地形を教えて貰えますか? 探索をスムーズに行う為、メモしたいんです。俺、ここいらの土地勘がないですから」
「任せて!」
「OK!」
と、そんなこんなで夜も深まった。
「リオネルさんがしばらく村に滞在する件、これからすぐに、私から村長へ伝えとくわ。文句は絶対言わせないから!」
「うん! ママとアンナが、おじいちゃんに絶対文句は言わせないから!」
エレーヌとアンナは、そう言って帰って行った。
ふたりを帰したリオネルは、さくさくと後かたずけをした。
更にエレーヌから聞いた、村周辺の地形メモを図面にして作戦を立案。
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