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第406話「声は言った。お前は我の主にはふさわしくないと」
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「売ったその指輪、お前こそ、持つのにふさわしいかもしれんな」
ボトヴィッドは言い、にやりと笑った。
「ふむ、俺がこの指輪を手に入れた経緯を教えよう」
「お願いします」
「ああ、この指輪はな。約40年前、俺がフォルミーカの迷宮から持ち帰った指輪なんだよ」
「え? ボトヴィッドさんが迷宮から持ち帰ったんですか?」
「ああ、そうさ! ひと通り話すから、聞いてくれるか。質問は後だ」
「はい!」
「……約40年前、俺がまだ30代半ば、現役の冒険者だった頃だ。俺はクランを率いて、迷宮の深層を探索していた」
「………………」
「リオネル、お前も知ってるだろうが、フォルミーカの迷宮は、とんでもなく広くて深い。迷宮が元は滅びた巨大な古代地下都市で、地下300階層まであるとも言われる。人間が踏破したのは地下150階層までだがな」
「………………」
「俺とクランのメンバーは、その少し手前の地下140階層を探索していた。その時、俺の心へ不思議な声が聞こえ、その声が俺へ命じたんだ」
「………………」
「我の下へ来い……とな」
「………………」
「俺は索敵も得意だったから、魔力感知を張り巡らせていたが、周囲には敵の気配はなく、最初は、心の内なる声だと思った。しかし、すぐ違うと分かった」
「………………」
「リオネル、お前も分かっているだろうが、心の内なる声はもうひとりの自分。つまり自分自身だ」
「………………」
「だが、心へ聞こえたその声はいかにも高圧的で、俺へ一方的に命令するように告げたんだ」
「………………」
「言っておくが……俺は人から命令されるのが大嫌いでな。だからクランもリーダーを務めていたんだよ」
「………………」
「でも、俺はその声に逆らえなかった。吸い寄せられるように、クランメンバーを連れ、そのフロアの、とある部屋へ入った」
「………………」
「感情がなく無機質で得体の知れない声だった。でも、一応警戒はして行った」
「………………」
「何せ、フォルミーカの地下140階層だ。出現する敵も桁違いに強い。ちょっとでも油断すれば、すぐあの世行きだ」
「………………」
「幸い、部屋の入り口へ到着するまで、敵は出現しなかった。いや、全く現れなかった。とても変な感じだった」
「………………」
「その部屋へ入ると、奇妙な形の台座があり、台座の上には、古ぼけた小さな宝箱が置いてあった」
「………………」
「調べてみたが、宝箱には呪い、罠はなかったから、解錠するだけだった。俺はメンバーのシーフへ解錠を命じた」
「………………」
「約1時間ほどかかったが……何とか解錠し、宝箱は開いたんだ」
ボトヴィッドは、ここまで話すと「ふう」と息を吐いたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
リオネルは、言われた通り黙って話を聞いている。
微笑んだボトヴィッドは、話を続ける。
「呪いや罠はなかったが、苦労して時間をかけて開けたから、皆、期待して宝箱の中身を注目した」
「………………」
「開いた宝箱の中身といえば、多くはないが、結構な数の宝石が入っていた」
「………………」
「いつもなら、お宝は地上へ持ち帰り、分配するが、不思議な事に俺は手を伸ばし、迷わずひとつの指輪を取った」
「………………」
「リオネル、お前が今、解呪した鉄と真鍮で出来た指輪だ」
「………………」
「後の宝石は、全てメンバーへ与える。俺がそう言ったら文句は一切出なかった。何せ見た目が地味な指輪だからな」
「………………」
「しかし、俺は大が付く満足だった。魔法使いの勘が言っていたんだ。こいつは世界の至宝、とんでもない逸品だと」
「………………」
「大喜びした俺はその場で指輪を装着しようとした。こういう魔法指輪は、所有者の指のサイズに合わせて変化するからな」
「………………」
「しかし、指輪は頑なにサイズを変えない。何度も試みたが……ダメだった」
「………………」
「俺は仕方なく指輪を装着せず、所持したまま探索を続けた。そして、地上へ戻った」
「………………」
「地上でメンバーへお宝を分配し、自宅へ戻った俺は再度、指輪の装着を試みた。意地になり、徹夜で挑んだが……やはりダメだった」
「………………」
「打ちのめされ、失意に満ちた俺へ、あの声がまた聞こえて来た」
「………………」
「声は言った。お前は我の主にはふさわしくないと」
「………………」
「そして更に言った。ふさわしい者が現れるまで、番となり、我を守れと……声の正体は、何と、この指輪……インテリジェンスリングだったんだ」
補足しよう。
インテリジェンスリングは、インテリジェンスソード同様、
自我と知性を持った指輪である。
「………………」
「そして、指輪は何と! 自らおぞましい邪気をまとった呪いの指輪となった」
「………………」
「この呪いを解いた者こそが、我の主にふさわしいと言ってな」
「………………」
「俺はすぐ解呪に挑戦した。解呪は得意だから、楽勝だと思った」
「………………」
「でも、何度やってもダメだった」
「………………」
「ちくしょう! そう思ったよ」
「………………」
「家族の居ない俺は、冒険者を引退後、ためた金で魔道具店をやりたいと考えていた」
「………………」
「この件は、ちょうど良い頃合いだ。予定していた年齢より早いが、潮時かなと」
「………………」
「そう考えた俺は、冒険者を引退。念願だったこの魔道具店クピディタースを開き、指輪の番をして生きて来た」
「………………」
「指輪にはきっぱり言われたが……意地になって、その後も、何度も何度も、数えきれないくらい……指輪の呪いを解こうともしていた。そういう経緯さ。くくくく」
ボトヴィッドは、そういうと、シニカルに笑ったのである。
ボトヴィッドは言い、にやりと笑った。
「ふむ、俺がこの指輪を手に入れた経緯を教えよう」
「お願いします」
「ああ、この指輪はな。約40年前、俺がフォルミーカの迷宮から持ち帰った指輪なんだよ」
「え? ボトヴィッドさんが迷宮から持ち帰ったんですか?」
「ああ、そうさ! ひと通り話すから、聞いてくれるか。質問は後だ」
「はい!」
「……約40年前、俺がまだ30代半ば、現役の冒険者だった頃だ。俺はクランを率いて、迷宮の深層を探索していた」
「………………」
「リオネル、お前も知ってるだろうが、フォルミーカの迷宮は、とんでもなく広くて深い。迷宮が元は滅びた巨大な古代地下都市で、地下300階層まであるとも言われる。人間が踏破したのは地下150階層までだがな」
「………………」
「俺とクランのメンバーは、その少し手前の地下140階層を探索していた。その時、俺の心へ不思議な声が聞こえ、その声が俺へ命じたんだ」
「………………」
「我の下へ来い……とな」
「………………」
「俺は索敵も得意だったから、魔力感知を張り巡らせていたが、周囲には敵の気配はなく、最初は、心の内なる声だと思った。しかし、すぐ違うと分かった」
「………………」
「リオネル、お前も分かっているだろうが、心の内なる声はもうひとりの自分。つまり自分自身だ」
「………………」
「だが、心へ聞こえたその声はいかにも高圧的で、俺へ一方的に命令するように告げたんだ」
「………………」
「言っておくが……俺は人から命令されるのが大嫌いでな。だからクランもリーダーを務めていたんだよ」
「………………」
「でも、俺はその声に逆らえなかった。吸い寄せられるように、クランメンバーを連れ、そのフロアの、とある部屋へ入った」
「………………」
「感情がなく無機質で得体の知れない声だった。でも、一応警戒はして行った」
「………………」
「何せ、フォルミーカの地下140階層だ。出現する敵も桁違いに強い。ちょっとでも油断すれば、すぐあの世行きだ」
「………………」
「幸い、部屋の入り口へ到着するまで、敵は出現しなかった。いや、全く現れなかった。とても変な感じだった」
「………………」
「その部屋へ入ると、奇妙な形の台座があり、台座の上には、古ぼけた小さな宝箱が置いてあった」
「………………」
「調べてみたが、宝箱には呪い、罠はなかったから、解錠するだけだった。俺はメンバーのシーフへ解錠を命じた」
「………………」
「約1時間ほどかかったが……何とか解錠し、宝箱は開いたんだ」
ボトヴィッドは、ここまで話すと「ふう」と息を吐いたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
リオネルは、言われた通り黙って話を聞いている。
微笑んだボトヴィッドは、話を続ける。
「呪いや罠はなかったが、苦労して時間をかけて開けたから、皆、期待して宝箱の中身を注目した」
「………………」
「開いた宝箱の中身といえば、多くはないが、結構な数の宝石が入っていた」
「………………」
「いつもなら、お宝は地上へ持ち帰り、分配するが、不思議な事に俺は手を伸ばし、迷わずひとつの指輪を取った」
「………………」
「リオネル、お前が今、解呪した鉄と真鍮で出来た指輪だ」
「………………」
「後の宝石は、全てメンバーへ与える。俺がそう言ったら文句は一切出なかった。何せ見た目が地味な指輪だからな」
「………………」
「しかし、俺は大が付く満足だった。魔法使いの勘が言っていたんだ。こいつは世界の至宝、とんでもない逸品だと」
「………………」
「大喜びした俺はその場で指輪を装着しようとした。こういう魔法指輪は、所有者の指のサイズに合わせて変化するからな」
「………………」
「しかし、指輪は頑なにサイズを変えない。何度も試みたが……ダメだった」
「………………」
「俺は仕方なく指輪を装着せず、所持したまま探索を続けた。そして、地上へ戻った」
「………………」
「地上でメンバーへお宝を分配し、自宅へ戻った俺は再度、指輪の装着を試みた。意地になり、徹夜で挑んだが……やはりダメだった」
「………………」
「打ちのめされ、失意に満ちた俺へ、あの声がまた聞こえて来た」
「………………」
「声は言った。お前は我の主にはふさわしくないと」
「………………」
「そして更に言った。ふさわしい者が現れるまで、番となり、我を守れと……声の正体は、何と、この指輪……インテリジェンスリングだったんだ」
補足しよう。
インテリジェンスリングは、インテリジェンスソード同様、
自我と知性を持った指輪である。
「………………」
「そして、指輪は何と! 自らおぞましい邪気をまとった呪いの指輪となった」
「………………」
「この呪いを解いた者こそが、我の主にふさわしいと言ってな」
「………………」
「俺はすぐ解呪に挑戦した。解呪は得意だから、楽勝だと思った」
「………………」
「でも、何度やってもダメだった」
「………………」
「ちくしょう! そう思ったよ」
「………………」
「家族の居ない俺は、冒険者を引退後、ためた金で魔道具店をやりたいと考えていた」
「………………」
「この件は、ちょうど良い頃合いだ。予定していた年齢より早いが、潮時かなと」
「………………」
「そう考えた俺は、冒険者を引退。念願だったこの魔道具店クピディタースを開き、指輪の番をして生きて来た」
「………………」
「指輪にはきっぱり言われたが……意地になって、その後も、何度も何度も、数えきれないくらい……指輪の呪いを解こうともしていた。そういう経緯さ。くくくく」
ボトヴィッドは、そういうと、シニカルに笑ったのである。
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