486 / 519
486.弟のユキミから見た俺。家の中が暗いと話す弟。今日は休みのはずのお父さんとお母さんが姿を現さない。損害賠償とは?
しおりを挟む
カガネが洗面所から出てこない。
「遅くないか?」
手を洗うだけではないのか?
「兄ちゃん。女の人の洗面所と風呂とトイレは長いのが基本。」
と弟。
「洗面所の使い方が分からないなら教えに。」
俺が踵を返そうとすると、弟に両肩を掴まれた。
「兄ちゃん、洗面所を開けて見に行くのはなしだよ。
多分、化粧直しの時間だから。」
と弟。
「化粧直しなど必要か?」
カガネは、マスクとサングラスを外さないと思う。
帽子は家に入る前に脱いでいるが。
「化粧する人には、化粧直しの時間が必要だと考えておこうよ。」
と弟。
カガネの皮膚の状態で、化粧が出来るのか?
俺が考え込んでいるのを見て。
弟は、そういうところが兄ちゃんらしいと笑う。
「兄ちゃんが友達を連れて帰ってきて、ちょうど良かった。」
と弟。
「ちょうど良かったのなら良かったが。」
「今、家の中が暗いから、明るい話題がありがたいよ。」
と弟。
「お父さんお母さんは?
今日は休みだと思ったんだが、二人ともいないのか?」
俺と話しているのは、弟だけだ。
お父さんもお母さんも姿を現さない。
「二人とも休みだよ。」
と弟。
「家に、いないのか?」
弟は、俺が家の中に入ってからずっと俺を見ている。
久しぶりに会った兄から目をそらさず、住んでいる家の中には目を向けないのは、視線の動きからして不自然ではないか?
「二人とも家にいる。でも、家では顔を合わせないようにしている。」
と弟。
「喧嘩しているのか?」
弟は、目線を落とした。
「喧嘩なら、本当に良かったんだけど。」
と弟。
言い淀んでいるのは、言い辛いからか?
弟は、俺にも親にも物怖じしない性格だった。
大人になって変わったのか?
それとも。
俺がいきなりカガネを連れてきても物怖じしない弟が、言い辛くなるようなことが、家の中で起きているのか?
弟を見る限り、弟は弟自身だ。
「俺が帰ってこない間に何があった?」
「兄ちゃんが帰ってくることは、全く予想していなかったよ。
俺も、多分、お父さんもお母さんも。」
と弟。
「今日は、実家に帰る気になったから帰ってきた。」
「誰かから何かを聞いて帰ってきたわけではないんだ?」
と弟。
「元気かどうか、顔を見に行こうと思い立ったからだが。」
「思い立った瞬間に行動に移してうまくいくところが、兄ちゃんだよ。」
と弟。
弟がおかしそうに懐かしそうにしているのは、安心感からか?
「ユキミには、俺がそういう風に見えていたか。」
「兄ちゃんが失敗しているところを俺は見たことがない。」
と弟。
「俺は、やりたいことの下調べを欠かさなかった。」
「兄ちゃんの人生が行き当たりばったりではなく、計画的な人生だったと、今初めて知ったよ。」
と弟。
「行き当たりばったりに見られていたことに俺は驚いているが。」
「突拍子もないことを言い出して、突然やり始めて成功していたイメージが兄ちゃんにはあるよ。」
と弟。
「下調べも下準備も済ませた上で、実行に移すから、始める前には、成功の目処がついていた。」
「全然、そんな風に見えなかった。」
と弟。
「弟に何を考えているか分からないと思われていたとは。」
過程も思惑も説明したことがない上に、俺の思考にそって考えたことがない弟には、俺が分からなくて当然か。
家族にいちいち説明すると、俺の成功への難易度が上がるだけだったと今でも思うから、説明をしなかったことは不正解ではない。
「俺だけではなく、お父さんお母さんからも、そう見えていたと思うよ。」
と弟。
弟の話は弟視点として受け止めておく。
話を切り上げて、本題に入るか。
「家の中が暗くなっている原因は分かっているか?」
「うん。発端は、仕事の関係で、お父さんが美容整形手術を勧められたことだよ。」
と弟。
「お父さんの顔で直す必要があるところなど、一つも思い当たらないが。」
記憶にある父は、家族として困るような顔ではなかったと思う。
「俺もお父さんもお母さんも、お父さんの顔に直すところなんてどこにもないと思っていたよ。」
と弟。
今でも、と弟は俺を見ながら付け足した。
「お父さんの顔に目にとまるような特徴は見当たらない。
俺はそう思ってきたが、そうではないと考える人が、お父さんの仕事の関係者にいたのか。」
「うん。兄ちゃんもこの件は変だと思うよね?」
と弟。
「容姿が気に入らないから顔を修正しろと言われる相手がお父さん、というのはおかしくないか。」
「だよね。成人済みの息子が二人もいる取引先の既婚者中年男性の顔の造形に文句をつける意味が、俺も分からないよ。」
と弟。
「仕事の関係というのは、お父さんが担当する取引先か?」
「うん。取引先。」
と弟。
「お父さんの顔にメスを入れたくてたまらない取引先との取引。
それは、お父さんに必要だったか?」
お父さんが直接拒絶できなかったのなら、お父さんへの不条理な要求を拒否するのは、お父さんの勤務先でもいい。
「美容整形手術を受けないと突っぱねていたときに。
損害賠償を求める裁判を起こされたんだよ。
会社をクビになる寸前までいっているんだ。お父さんは。」
と弟。
「美容整形手術を受けるなら、裁判はしないでおいてやる、と脅されたのか?」
「お父さんが美容整形手術を受ける場合。
お父さんが担当者として勤務する限りは、お父さんの勤務先に継続的な取引を約束する、という話になっていたって。」
と弟。
「担当者のお父さんの預かり知らぬところで、会社同士で話がまとまっていた、か。」
「うん。お父さんが美容整形手術を受けたら、お父さんは会社に損害を与えることにはならないから、訴えを取り下げる準備はある、と言われたんだって。」
と弟。
俺は、目を見開いた。
「お父さんに損害賠償の訴えを起こすと言っていたのは、お父さんの勤務先か。」
「遅くないか?」
手を洗うだけではないのか?
「兄ちゃん。女の人の洗面所と風呂とトイレは長いのが基本。」
と弟。
「洗面所の使い方が分からないなら教えに。」
俺が踵を返そうとすると、弟に両肩を掴まれた。
「兄ちゃん、洗面所を開けて見に行くのはなしだよ。
多分、化粧直しの時間だから。」
と弟。
「化粧直しなど必要か?」
カガネは、マスクとサングラスを外さないと思う。
帽子は家に入る前に脱いでいるが。
「化粧する人には、化粧直しの時間が必要だと考えておこうよ。」
と弟。
カガネの皮膚の状態で、化粧が出来るのか?
俺が考え込んでいるのを見て。
弟は、そういうところが兄ちゃんらしいと笑う。
「兄ちゃんが友達を連れて帰ってきて、ちょうど良かった。」
と弟。
「ちょうど良かったのなら良かったが。」
「今、家の中が暗いから、明るい話題がありがたいよ。」
と弟。
「お父さんお母さんは?
今日は休みだと思ったんだが、二人ともいないのか?」
俺と話しているのは、弟だけだ。
お父さんもお母さんも姿を現さない。
「二人とも休みだよ。」
と弟。
「家に、いないのか?」
弟は、俺が家の中に入ってからずっと俺を見ている。
久しぶりに会った兄から目をそらさず、住んでいる家の中には目を向けないのは、視線の動きからして不自然ではないか?
「二人とも家にいる。でも、家では顔を合わせないようにしている。」
と弟。
「喧嘩しているのか?」
弟は、目線を落とした。
「喧嘩なら、本当に良かったんだけど。」
と弟。
言い淀んでいるのは、言い辛いからか?
弟は、俺にも親にも物怖じしない性格だった。
大人になって変わったのか?
それとも。
俺がいきなりカガネを連れてきても物怖じしない弟が、言い辛くなるようなことが、家の中で起きているのか?
弟を見る限り、弟は弟自身だ。
「俺が帰ってこない間に何があった?」
「兄ちゃんが帰ってくることは、全く予想していなかったよ。
俺も、多分、お父さんもお母さんも。」
と弟。
「今日は、実家に帰る気になったから帰ってきた。」
「誰かから何かを聞いて帰ってきたわけではないんだ?」
と弟。
「元気かどうか、顔を見に行こうと思い立ったからだが。」
「思い立った瞬間に行動に移してうまくいくところが、兄ちゃんだよ。」
と弟。
弟がおかしそうに懐かしそうにしているのは、安心感からか?
「ユキミには、俺がそういう風に見えていたか。」
「兄ちゃんが失敗しているところを俺は見たことがない。」
と弟。
「俺は、やりたいことの下調べを欠かさなかった。」
「兄ちゃんの人生が行き当たりばったりではなく、計画的な人生だったと、今初めて知ったよ。」
と弟。
「行き当たりばったりに見られていたことに俺は驚いているが。」
「突拍子もないことを言い出して、突然やり始めて成功していたイメージが兄ちゃんにはあるよ。」
と弟。
「下調べも下準備も済ませた上で、実行に移すから、始める前には、成功の目処がついていた。」
「全然、そんな風に見えなかった。」
と弟。
「弟に何を考えているか分からないと思われていたとは。」
過程も思惑も説明したことがない上に、俺の思考にそって考えたことがない弟には、俺が分からなくて当然か。
家族にいちいち説明すると、俺の成功への難易度が上がるだけだったと今でも思うから、説明をしなかったことは不正解ではない。
「俺だけではなく、お父さんお母さんからも、そう見えていたと思うよ。」
と弟。
弟の話は弟視点として受け止めておく。
話を切り上げて、本題に入るか。
「家の中が暗くなっている原因は分かっているか?」
「うん。発端は、仕事の関係で、お父さんが美容整形手術を勧められたことだよ。」
と弟。
「お父さんの顔で直す必要があるところなど、一つも思い当たらないが。」
記憶にある父は、家族として困るような顔ではなかったと思う。
「俺もお父さんもお母さんも、お父さんの顔に直すところなんてどこにもないと思っていたよ。」
と弟。
今でも、と弟は俺を見ながら付け足した。
「お父さんの顔に目にとまるような特徴は見当たらない。
俺はそう思ってきたが、そうではないと考える人が、お父さんの仕事の関係者にいたのか。」
「うん。兄ちゃんもこの件は変だと思うよね?」
と弟。
「容姿が気に入らないから顔を修正しろと言われる相手がお父さん、というのはおかしくないか。」
「だよね。成人済みの息子が二人もいる取引先の既婚者中年男性の顔の造形に文句をつける意味が、俺も分からないよ。」
と弟。
「仕事の関係というのは、お父さんが担当する取引先か?」
「うん。取引先。」
と弟。
「お父さんの顔にメスを入れたくてたまらない取引先との取引。
それは、お父さんに必要だったか?」
お父さんが直接拒絶できなかったのなら、お父さんへの不条理な要求を拒否するのは、お父さんの勤務先でもいい。
「美容整形手術を受けないと突っぱねていたときに。
損害賠償を求める裁判を起こされたんだよ。
会社をクビになる寸前までいっているんだ。お父さんは。」
と弟。
「美容整形手術を受けるなら、裁判はしないでおいてやる、と脅されたのか?」
「お父さんが美容整形手術を受ける場合。
お父さんが担当者として勤務する限りは、お父さんの勤務先に継続的な取引を約束する、という話になっていたって。」
と弟。
「担当者のお父さんの預かり知らぬところで、会社同士で話がまとまっていた、か。」
「うん。お父さんが美容整形手術を受けたら、お父さんは会社に損害を与えることにはならないから、訴えを取り下げる準備はある、と言われたんだって。」
と弟。
俺は、目を見開いた。
「お父さんに損害賠償の訴えを起こすと言っていたのは、お父さんの勤務先か。」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
美人生徒会長は、俺の料理の虜です!~二人きりで過ごす美味しい時間~
root-M
青春
高校一年生の三ツ瀬豪は、入学早々ぼっちになってしまい、昼休みは空き教室で一人寂しく弁当を食べる日々を過ごしていた。
そんなある日、豪の前に目を見張るほどの美人生徒が現れる。彼女は、生徒会長の巴あきら。豪のぼっちを察したあきらは、「一緒に昼食を食べよう」と豪を生徒会室へ誘う。
すると、あきらは豪の手作り弁当に強い興味を示し、卵焼きを食べたことで豪の料理にハマってしまう。一方の豪も、自分の料理を絶賛してもらえたことが嬉しくて仕方ない。
それから二人は、毎日生徒会室でお昼ご飯を食べながら、互いのことを語り合い、ゆっくり親交を深めていく。家庭の味に飢えているあきらは、豪の作るおかずを実に幸せそうに食べてくれるのだった。
やがて、あきらの要求はどんどん過激(?)になっていく。「わたしにもお弁当を作って欲しい」「お弁当以外の料理も食べてみたい」「ゴウくんのおうちに行ってもいい?」
美人生徒会長の頼み、断れるわけがない!
でも、この生徒会、なにかちょっとおかしいような……。
※時代設定は2018年頃。お米も卵も今よりずっと安価です。
※他のサイトにも投稿しています。
イラスト:siroma様
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる