《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか

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第9章 オレはケレメイン大公国の大公妃殿下です。

699.カズラくんのデート前に、オレ、クロード、カズラくんで祝言の総括をします。『ぼくは、ヒサツグとクロードとぼくが一緒の未来のためにね。』

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クロードと見つめ合っていたら。

ふいに。

「執務室の出入り口でいつまでやっているの?」
とカズラくんの冷静な声が聞こえてきた。

「おはようございます、ヒサツグ様。

カズラ様をお連れしています。」
と愛こんにゃく家と、愛こんにゃく家のポケットでプルプルするこんにゃく。

「おはよう。」

こんにゃくから瑞々しさを感じるような気がする。

愛こんにゃく家とこんにゃくの夫婦は順調なようだなー。

「おはよう、カズラくん。今日はこれからデートだよな?」

オレがいる空間には、愛が充満していると思う。

一部屋に愛し愛されている人が四人。

「そうだよ。ぼくはこれからデート。」
とカズラくん。

お洒落なカズラくんは、今日はラフめな装いをしている。

ピクニックデートかなー?

「デート前に打ち合わせだけしておこうと執務室に来たのに。

なかなか二人が席につかないから、しびれを切らしたところだよ。」
とカズラくん。

カズラくんは、オレとクロードの意図を汲んで声をかけるのを待ってくれていたんだな。

さすが、カズラくん。

「そっか。お待たせ。今、クロードがオレを席に連れていってくれるから、オレが席についたら、打ち合わせよう。」

「状況は分かったから、早くして。

ぼく、デートには遅刻しない主義だから。」
とカズラくん。

「おう。」

カズラくんは、待ち合わせでは待つ側の人なのかな?

カズラくんは、じとっとした目でオレを見た。

「ヒサツグ、本当に分かっている?

どちらかが遅刻したら一緒にデートする時間が減るんだよ。

ぼくが遅刻したら、ヒサツグとクロードにはペナルティを課すからね。」
とカズラくん。

カズラくんは、手には、いつの間にかハリセンが握られている。

「カズラくんからのペナルティは、なしにしたい。

クロード、席へ急げ。」

カズラくんがハリセンを使う気になる前に、用事を済ませてしまおう。

「ヒサツグの思うままに。」
とクロード。

クロードは、丁寧にオレを席におろし、自身はさっと席につく。

「カズラ、入れ。」
とクロード。

執務室に入ってきたカズラくんに椅子を用意するオレの秘書。

「座るよ。」
とカズラくん。

一言断ってからカズラくん用の椅子に腰をおろすカズラくん。

クロードとオレの秘書は、それぞれの執務机横に待機。

「揃ったな。打ち合わせを始めるぞ。」

オレ達は、カズラくんがデートに行くまでの間、昨日の総括をした。

「総じて悪くなかったよ。

これまで、ケレメイン大公国の運営における課題だとぼく達が認識していた問題を表に出せたのは大きな成果だから。

ぼく達の人手の足りなさが表面化した点は、難点だったね。

少数精鋭と言えば響きはいいけれど。

問題発言をした人達は、本来の役職であれば、ヒサツグが直接対処する相手じゃない。」
とカズラくん。

「あの者達の直属の上司を引っ張り出すためには、あの者達でなければならなかった。」
とクロード。

「クロード、ヒサツグ。

いいから聞きなよ。」
とカズラくん。

カズラくんは、ハリセンを振って、オレとクロードの視線を集める。

「相手に合わせて対応できる人が、ヒサツグの下にはいなかった。

だから、ヒサツグは、大公妃でありながら自分で格下に対応しなくてはならなかった。

という表沙汰にならなかったヒサツグの事情が、祝言ではヒサツグ派以外に露呈した。

これは問題だよね?

ヒサツグは、付け込まれる隙を自ら披露したんだよ?」
とカズラくん。

カズラくんの指摘は、外れていないから。

祝言を成功の枠に入れて浮かれていたオレには耳が痛い。

祝言当日ではなく、翌日に指摘してくれたのは、カズラくんの見せる情けなんだと思う。

「オレには、オレの下について、オレの目的にそうように仕事をする部下という存在がなー。」

サーバル王国のシガラキノ王女殿下を大公妃に派の派閥は、日本でいうところの歴史ある大会社の社長。

オレは会社を興して二年程の社長という立ち位置。

大会社から歓迎されていないことが明らかな、いつ潰れてもおかしくないオレの会社に入社する決断をする人は、色々とクセがあったりして一筋縄ではいかない人が少なくなかった。

人格と仕事をする能力のどちらにも問題がない人物だけをオレは死守するようにしてきた。

四面楚歌な大公妃の部下という仕事を続ける人がいる、という状況を作り出す必要がオレにはあったから。

オレの状況を知っているカズラくんは、甘えるな、危機感を持て、とオレに発破をかけている。

安寧が、ひっくり返るのは、いつだって突然だと、オレ達は知っている。

オレ達が望む日々を送るために、手を抜いてはダメなところに気休めはいらない。

カズラくんの指摘は終わらない。

「本来の役職でいえば、ヒサツグは派閥のトップとの話し合いにだけ出ていればいいんだからね。

それが出来なかったのは、ヒサツグの下につく人がいなかったから。」
とカズラくん。

ぐうの音も出ないオレ。

「オレの下について働く人の人材育成を進めないとな。」

派閥のトップには、無条件でトップに従う人達がいた。

今のオレには、まあ、いない。

秘書や執事は、オレの補佐であって、部下とはまた立ち位置が違う。

祝言の部屋にいて、出入り口のロープ越しに両派閥のトップと会っていたオレは。

オレと両派閥のトップの間にある差を、ひしひしと感じていた。

「ヒサツグが、今日から注意することを今言っておくよ。」
とカズラくん。

「言ってくれ、カズラくん。」

オレは、心して聞くぞ。

「ヒサツグに言われたことを言われた通りにするだけの部下が増えないように目を配ること。

言われたことしかしない部下は使いどころが限定されるからね。

今のヒサツグに、使いどころが限定される部下を抱える余裕はないよ。」
とカズラくん。

全くもって、その通り。

人材募集中であっても、あいつ働かないんだけど、とオレに言われるような部下なら、オレからお断りしたい。

「お前ならできるとオレが仕事を任せられる部下の育成をしないとだよな。

祝言で派閥を二つ吸収したヒサツグ派は、全部をまとめるのに難儀しそうだよな。」

「派閥を解散させるよりも、トップを通じて派閥ごと支配を強める方が扱いやすいからね。」
とカズラくん。

「組織が急に大きくなると、全部にオレが指示するという今の体制では仕事が回らないよな。」

オレも日本では、会社勤めの社会人をしてきたからな。

自分が働いていた会社だけでなく、他所の会社の悲喜こもごもも聞いている。

二つ以上の会社が合わせて一つになった場合の悲喜こもごもも。

「ヒサツグ、カズラ。

私達は、祝言で明らかになったヒサツグの部下の育成に手が回っていないことを利用しようとする者が現れていないうちに、手を打つことにする。

ヒサツグの部下の件の方針は、これでいい。」
とクロード。

「一日でも早く、そうだね、今日から取り掛かるといいよ。

ヒサツグの部下を自称したり、ヒサツグに擦り寄ってきて勝手したり、仕事しないような問題人物が湧き出すのに、時間はかからないから。」
とカズラくん。

カズラくんからは、実感のこもったアドバイスがきたな。

「クロード、カズラくん。
人材育成の話を進める前に、昨日までの人材育成の状況についての認識を共有してほしい。

いいかな?」

「聞くよ。どうぞ。」
とカズラくん。

「昨日までのオレを取り巻く状況について。

オレの下について働くために教育されたい人の数がそもそも少なかった。」

「知っているよ。」
とカズラくん。

「結果、オレは、オレの代わりを任せられる部下を育てないまま、祝言に臨んだ。

昨日までの状況で、オレの下という目立つポジションに立たせた場合。

オレの下についた新人はどうなるかだけどな。」

「やる気がある場合は一人前になる前に潰されそうになる。

育ってきたと思ったら対立陣営取り込まれそうになる。

人目につくポジションにつかせて育てることは困難だったね。」
とカズラくん。

「だから、祝言でオレの代わりに誰かに話をさせるという案は最初からオレにはなかった。」

「ヒサツグではない誰かに任せた場合。

裏切ったり先走って失敗する可能性が高かった。」
とクロード。

悲しいことにな。

クロードの言うことなすことには頷けても、オレが言うことを聞きたくない人は少なくなかった。

ありていに言うと、ケレメイン大公妃であるオレには人望が無く、利権も持っていないのが原因だ。

オレに従うメリットがないから従わないという人も一定数いた。

「昨日の祝言では、二つの派閥の長を私達の前に立たせ、正面に立った二人が自ら服従の意を示すという目的は果たしている。」
とクロード。

総括のシメ時だな。

「新しい課題への対応は、今この部屋にいないメンバーにも周知してから始めることにしよう。」

「それがいいね。今日は確認に留めよう。」
とカズラくん。

オレは、立ち上がった。

「クロード、カズラくん。
祝言は成功した。

思い返してみても、オレは祝言をやって良かったと思う。

クロードもカズラくんも、ありがとう。」

オレが、お礼を言うと。

「ぼくは、ぼくの希望する未来のために動いたんだよ。

ぼくが希望する未来は、ヒサツグとクロードが一緒にいることだからね。」
とカズラくん。
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