次世代最強とうたわれている辺境伯家次男の目覚めは、何もないお隣の領地を治める男爵家の三男。幼馴染な関係の平凡男子な俺でした。[完結]

かざみはら まなか

文字の大きさ
5 / 32

5.ドラゴン、来たよ。お前の目覚めが俺でないなら忘れていていいよ。という幼馴染が、当たり前すぎて伝えていなかった愛の言葉を伝えてくる。

しおりを挟む
現状、俺が暴れた拍子に幼馴染の足を踏みつけようものなら、辺境伯家の次男に危害を加えたとして、この場で叩き切られてもおかしくない身分差が、俺と幼馴染にはある。

幼馴染が俺を庇ったら、叩き切られることは免れるが、その後のことを考えると庇われないようにしたい。

幼馴染によって、このまま辺境伯家に連れて行かれた挙げ句に、辺境伯家で貰い受けますから、男爵家には返しませんという手紙を送り付けられでもしたら?

その上で男爵家に正式な婚約の申し入れをされたら?

こんなはずじゃなかったのに、という言葉が頭の中でぐるぐるしている。

俺は、配偶者ではなく、気心の知れた幼馴染として生涯を終えるつもりで生きていた。

幼馴染は、何にもない男爵家の跡継ぎでもなければ、これといった強みもなく、ただそのへんで生きて死んでいくだけの俺とは違う。

次世代最強という評判通り。

辺境伯家が代替わりした後も、幼馴染がいるから安心できる。

そんな風に思わせてくれるような男が、俺に構っていていいのかよ?

「騒いだら危ないよ。」
と幼馴染。

「危ないわけあるか。うちの領地は、何もないのがウリなんだ。俺が一人騒いだところで何も起きない。」

「うちのドラゴンが、俺達を迎えに来ているんだけど。」
と幼馴染。

辺境伯家は、代々、ドラゴンと仲良し。

辺境伯家の領地をゆうゆうと飛ぶドラゴンは、強さと安心の象徴でもある。

「お前のうちのドラゴンをうちの領地に入れるなよ!」

ドラゴンは強い。

辺境伯家は人間も強いから、ドラゴン以外の動物も住んでいる。

一方、辺境伯家のお隣の男爵家の人間は、辺境伯家ほど強くないため、ドラゴンが来ると、他の動物はいっせいに逃げ出してしまう。

領地から動物がいなくなるのは、男爵家にとって死活問題。

男爵家の俺から抗議していい仕打ちだ。

「入れていないよ?ほら?」
と幼馴染。

領地の境目に築山ができた?

築山が動いたよ?

横向きに寝そべっていたドラゴンは、頭を持ち上げると、俺と幼馴染の方を向いた。

「築山かと思ったら、日向ぼっこ中のドラゴンじゃないか!」

「ドラゴンも、お前のことを分かっているから。」
と幼馴染。

築山に擬態していたのは、顔見知りのドラゴンだった。

「俺が飛びついてもよじ登ろうとしても、振り落とさない貴重なドラゴンが、築山に擬態している。」

「ドラゴンによじ登りたくなっていない?」
と幼馴染。

俺と幼馴染は、体高五メートルほどのドラゴンをよじ登る遊びに没頭していたことがある。

「今日は、登らない。」

持ち上げていた長い首を地面にぺたーんと伸ばすドラゴン。

築山に擬態していたドラゴンは、地球に昔住んでいた首長竜のような形をしている。

長い首と、小さい頭。

丸みを帯びた胴体の形は、餃子か三笠焼きに近い形をしている。

胸ビレのような形の翼。

長い尾。

俺は、初めてこのドラゴンを見たとき。

プレシオサウルスだと思いこんで、本物に会えた、と感激しながら突撃した。

プレシオサウルスのようなドラゴンは、俺を攻撃しなかった。

俺がドラゴンに突撃して攻撃されなかったのは。

餌でも敵でもなく、じゃれついてくる無害な小動物にしか見えなかったからだろうと、後日、聞かされた。

俺が突撃した日以降、このプレシオサウルス型ドラゴンが、俺を認識していることは誰にも言っていない。

何もない領地に住む男爵家の三男が、調子にのって辺境伯家のドラゴンを手懐けたなんて噂が出回ったら良くない。

辺境伯の家の戦力の一つでもあるドラゴンを操れると思われたら。

その時点で俺の人生は終わる。

「安全のために、ピクニックにドラゴンも連れてきた。」
と幼馴染。

「ピクニック中の安全は確保できていたから、さっさとドラゴンを連れて帰れ。」

「俺達は一緒に帰るんだよ?」
と幼馴染。

「何でだよ。」

「誰の安全のためにドラゴンを連れてきていると思っている?」
と幼馴染。

「俺じゃないことは確かだ。」

男爵家の三男の安全と比較しようもないくらい重要人物が、俺の目の前にいる。

「俺には護衛がいて、俺自身も戦えるよ。」
と幼馴染。

強さ自慢なら、俺もしておこう。

「俺に護衛はいないけれど、自分のところの領地だから俺には地の利がある。

あと、俺、体力には自信ありだから。」

うちの領地は、金目のものがなさすぎて物盗りも素通りするという噂がたったことがあるくらい何もない。

走り回っていたら、足腰は前世よりも丈夫になった。

「万一のことがないように、俺の警戒の範囲外には行かせないよ。」
と幼馴染。

「お前の愛情が、ドラゴンに伝わっているといいと思うよ。」

「俺が行かせないと言っているのは、ドラゴンじゃないと分かっているよね?」
と幼馴染。

「俺の安全のため、なんて、なおさら必要ないだろう。」

「精通した日、覚えている?」
と幼馴染。

「何で、最初に戻るんだよ?」

「俺は、はっきりと覚えている。」
と幼馴染。

「俺は忘れた。俺は、覚えていないからな?」

「忘れていていいよ。お前は、俺じゃないんだよね?」

「お前じゃなかったのは確かだ。」

「なら、これからも忘れていてよ。」
と幼馴染。

幼馴染は、ニコッと笑った。

「そうする。」

これ以上、幼馴染の何かを刺激してはいけない気がする。

「毎日俺に抱かれているうちに、俺といるだけで興奮するようになるよ。」
と幼馴染。

「なってたまるか!」

妄想の世界から戻ってこい!

「なってほしいんだけど。今からでも。」
と幼馴染。

一言物申してやる!

「好きだから、でも、愛しているからでもなく、抱きたいから結婚したいなんて言われて、誰がうんと言うんだよ!」

「そういえば。俺には当たり前すぎてお前に言っていなかった言葉があった。」
と幼馴染。

「何を?」

精通話からのプロポーズに続いて、まだ隠している球があるのなら、さっさと投げきってほしい。

「大好きだから、離れていたくない。愛しているから、毎日愛したい。」
と幼馴染。

「お前。」

そんな、後出しを。

「いいよね?行くよ。」
と幼馴染。

「いいわけあるか!離せ!」

ドラゴンに、幼馴染を連れて帰ってくれと思念を送ってみた。

振り向きさえしなかった。

分かっている。

ドラゴンは賢いんだ。

ドラゴンは、俺と幼馴染が遊んでいるから待ってやろうぐらいのノリで寝そべっている。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔力ゼロの無能オメガのはずが嫁ぎ先の氷狼騎士団長に執着溺愛されて逃げられません!

松原硝子
BL
これは魔法とバース性のある異世界でのおはなし――。 15歳の魔力&バース判定で、神官から「魔力のほとんどないオメガ」と言い渡されたエリス・ラムズデール。 その途端、それまで可愛がってくれた両親や兄弟から「無能」「家の恥」と罵られて使用人のように扱われ、虐げられる生活を送ることに。 そんな中、エリスが21歳を迎える年に隣国の軍事大国ベリンガム帝国のヴァンダービルト公爵家の令息とアイルズベリー王国のラムズデール家の婚姻の話が持ち上がる。 だがヴァンダービルト公爵家の令息レヴィはベリンガム帝国の軍事のトップにしてその冷酷さと恐ろしいほどの頭脳から常勝の氷の狼と恐れられる騎士団長。しかもレヴィは戦場や公的な場でも常に顔をマスクで覆っているため、「傷で顔が崩れている」「二目と見ることができないほど醜い」という恐ろしい噂の持ち主だった。 そんな恐ろしい相手に子どもを嫁がせるわけにはいかない。ラムズデール公爵夫妻は無能のオメガであるエリスを差し出すことに決める。 「自分の使い道があるなら嬉しい」と考え、婚姻を大人しく受け入れたエリスだが、ベリンガム帝国へ嫁ぐ1週間前に階段から転げ落ち、前世――23年前に大陸の大戦で命を落とした帝国の第五王子、アラン・ベリンガムとしての記憶――を取り戻す。 前世では戦いに明け暮れ、今世では虐げられて生きてきたエリスは前世の祖国で平和でのんびりした幸せな人生を手に入れることを目標にする。 だが結婚相手のレヴィには驚きの秘密があった――!? 「きみとの結婚は数年で解消する。俺には心に決めた人がいるから」 初めて顔を合わせた日にレヴィにそう言い渡されたエリスは彼の「心に決めた人」を知り、自分の正体を知られてはいけないと誓うのだが……!? 銀髪×碧眼(33歳)の超絶美形の執着騎士団長に気が強いけど鈍感なピンク髪×蜂蜜色の目(20歳)が執着されて溺愛されるお話です。

中年冒険者、年下美青年騎士に番認定されたことで全てを告白するはめになったこと

mayo
BL
王宮騎士(24)×Cランク冒険者(36) 低ランク冒険者であるカイは18年前この世界にやって来た異邦人だ。 諸々あって、現在は雑用専門冒険者として貧乏ながら穏やかな生活を送っている。 冒険者ランクがDからCにあがり、隣国の公女様が街にやってきた日、突然現れた美青年騎士に声をかけられて、攫われた。 その後、カイを〝番〟だと主張する美青年騎士のせいで今まで何をしていたのかを文官の前で語ることを強要される。 語らなければ罪に問われると言われ、カイは渋々語ることにしたのだった、生まれてから36年間の出来事を。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

【完結】異世界召喚されたのに命を狙われまくるなんて聞いてない。

u
BL
裏タイトル『執着の檻から逃げ出して、』 いつも通り大学から帰ってきてご飯を食べて眠って目が覚めたら、なぜかそこは異世界だった。どうやら俺、鵺野心翔(ヌエノミト)は、異世界召喚というものをされたらしい。 異世界召喚をしたペンドリック王国の王様から第一王子のライナスと結婚し、子をなせと言われる。男である俺に何を言い出すんだと思ったが、どうやら異世界人は子が生めるようになるらしい。 俺は拒否した。だってどう見てもライナス王子も嫌そうな顔をしているし、毎日違う女を閨に呼ぶような奴と結婚どころか仲良くなれるはずがない。そもそも俺は一夫多妻制断固反対派だ。 どうやら異世界召喚した本当の理由、陰謀に巻き込まれていることに気付かない俺は異世界に来てしまったなら学ばねばとこの世界のことを知っていく。 この世界はピラミッド型をしていて上から神界、天界、魔界、妖精界、妖界、獣人界、そして俺が召喚された元・人間界であり現・底辺界と呼ばれる7つの層に分かれた世界らしい。 召喚される理由があるから召喚されたはずなのに、なぜか俺はあらゆるところから命を狙われ始める。しまいには、召喚したはずの当人にまで。………え?なんで? 異世界召喚されたミトは護衛で常にそばにいる騎士、アルウィン・シーボルトに一目惚れのような思いを寄せるようになる。しかし彼には幼い頃からの婚約者がおり、ミトはアルウィンに命を守られながらも叶わない恋心に苦しんでいく。どうやら彼にも何か秘密があるようで……。さらに最初は嫌われていたはずのライナス第一王子から強い執着心を持たれるようになり……。 次第に次々と明らかになるこの世界における様々な秘密。そして明かされる、異世界召喚の衝撃の真実とは――――。 訳あり一途ド執着攻め×努力家一途童顔受けが様々な問題を乗り越え2人で幸せを掴むお話。 ※複数攻めですが総受けではありません。 ※複数攻めのうち確定で一人死にます。死ネタが苦手な方はご注意ください。 ※最後は必ずハッピーエンドです。 ※異世界系初挑戦です。この世界はそういうものなんだと温かい目でお読み頂けると幸いです。

転生悪役弟、元恋人の冷然騎士に激重執着されています

柚吉猫
BL
生前の記憶は彼にとって悪夢のようだった。 酷い別れ方を引きずったまま転生した先は悪役令嬢がヒロインの乙女ゲームの世界だった。 性悪聖ヒロインの弟に生まれ変わって、過去の呪縛から逃れようと必死に生きてきた。 そんな彼の前に現れた竜王の化身である騎士団長。 離れたいのに、皆に愛されている騎士様は離してくれない。 姿形が違っても、魂でお互いは繋がっている。 冷然竜王騎士団長×過去の呪縛を背負う悪役弟 今度こそ、本当の恋をしよう。

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

BLゲームのモブに転生したので壁になろうと思います

BL
前世の記憶を持ったまま異世界に転生! しかも転生先が前世で死ぬ直前に買ったBLゲームの世界で....!? モブだったので安心して壁になろうとしたのだが....? ゆっくり更新です。

目覚めたらヤバそうな男にキスされてたんですが!?

キトー
BL
傭兵として働いていたはずの青年サク。 目覚めるとなぜか廃墟のような城にいた。 そしてかたわらには、伸びっぱなしの黒髪と真っ赤な瞳をもつ男が自分の手を握りしめている。 どうして僕はこんな所に居るんだろう。 それに、どうして僕は、この男にキスをされているんだろうか…… コメディ、ほのぼの、時々シリアスのファンタジーBLです。 【執着が激しい魔王と呼ばれる男×気が弱い巻き込まれた一般人?】 反応いただけるととても喜びます! 匿名希望の方はX(元Twitter)のWaveboxやマシュマロからどうぞ(⁠^⁠^⁠)  

処理中です...