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第一章 ギャップ萌えって、いい方向へのギャップじゃなきゃ萌えないよね。
04 今後の交遊関係を考えるとどっちの道を選ぶべきか本気で迷う件について。
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そんなわけで臨んだプレゼンは、ほとんどすべてこの三時間で作り直した力作である。この一週間、準備にかけた時間を返せ。結構うんうん言って作ってたのに。
見た瞬間、佐々マネが笑ってた。全部作り直したの?って。そうですけど何か。洗いざらい自分をさらけ出す所存ですわ!という私の開き直りが通じたのか、何だかみんなの目線が生暖かい気がするけど気にしない。鋼の精神を以て気にしない。
そもそも、何度も言うように私はおもちゃ部門に入社したのだ。ゲームなんてほとんどやったことがない。経験があるのは弟につき合ってやった格闘ゲームかカーゲームで、恋愛シュミレーションゲームなんて見たこともない。そんなものを企画なんてできませんと愚痴ってみたら、いやむしろやったことのない人の意見を聞きたいんだよと言われてなるほどと頷いてしまった単純な私。そんなわけで私にとっては未知の世界に加えて何かを創作した経験なんて美術と技術の時間しかない。技術なんて見本通りに切ったりつけたりするだけだし。ああ、あと俳句?国語のときに作った気がする。素直でいいわねって先生に笑われた。暑い日はやっぱり食べたいアイスクリーム。字余り。
何かを無から産み出すなんてどうすればいいのと迷子になっていた私に佐々マネは言った。君、行動心理学やってたんでしょ。結構周りの人観察したりしない?その辺から題材持ってくれば。
その手があったかー!と周りの人に思いを馳せながらも、昨日までは一応理性で押し止めつつキャラクター設定を組んでいた。でも、今日作り直した三時間でそんな理性が働くはずもなく、もうダダ漏れだ。いろいろダダ漏れ。これもし採用になっちゃったらモデルにした当人に謝りに行った方がいいんじゃないかなと思うくらいに。いやむしろ謝るべきはその妻か。いやいややっぱり何も気付かれない方が互いのためかもしれない。
そして考えてみたら全員既婚男性である。なんだよ私の周りそんなにいい男たくさんいるのかよもう売り切れだけどなちくしょー!
でもきっと採用にはならないに違いない。だって今日プレゼンを任されたあとの二人はネオロマをこよなく愛する女子と男子である。え?男子?うん、男子。女子ってこういうのにときめくんだーって彼女にやらせてもらってハマったって言ってた。彼女とゲームとかオタクの癖に地味にリア充だな爆発しろ。
ということで、せっかく頑張った三時間の努力の結晶、消え去る前に皆様にご披露いたしたく候。よいか?準備はよいか?決してツッコミの準備ではないぞ。
まずはヒロイン、同時にターゲットの女性像。毎日仕事を頑張って、女性活躍促進の波に乗せられそうな気配を全力で拒否りつつも逃れ切れなそうなアラサー。三十歳の誕生日に彼氏にフラれて凹んでたら、社内外からいきなりチヤホヤされるようになっちゃてどうしよう!この時点でお前痛すぎだろと鼻でせせら笑うあなたはもうUターン推奨!ブラウザバックプリーズ!
攻略対象は4人。一人目は取引先の責任者。俺様で仕事ができる、フェロモンの塊のような大人の男。彼に憧れる女性は後を立たず、来るもの拒まず去るもの追わずと噂が立つが、ヒロインには一途に愛を捧げる。え?もちろんマサトさんがモデルですよ。それが何か?
二人目は会社の後輩。年下と思えない穏やかさを持ち、冷静沈着、茶道を嗜む。でも怒らせると怖い腹黒男子。笑顔でライバルを牽制する。ヒロインのことをさりげなく気遣い、残業中にそっと差し入れをしてくれる。ちなみにこれのモデル、マサトさんの弟のざっきーね。
お次は社内SE、よれよれシャツがトレードマークの先輩社員。ゆるい性格でついついがんばりすぎてしまうヒロインの息抜きにいつも一役買ってくれる。ヒロインと仲がよくなるにつれて段々と服装が整っていき、イケメン度がアップする。これはサークルの部長だった相ちゃんこと相川という男がモデルだ。
そして最後は会社の同期。体育会系のノリで明るい笑顔が絶えない。不器用で自分の気持ちにも無自覚だが、ヒロインには大甘。ヒロインのことを茶化しながらもいつも味方になって応援してくれる。これは今日から海外旅行に行くと連絡があった幸弘がモデル。
そんなキャラクターに囲まれて、恋も仕事も諦めないまま上手く行っちゃうハッピーエンド、ハーレムありの御都合主義上等!もちろんR18指定でしょ。それ以外ないでしょ。
ねえその憐憫の目やめてくれる。泣きたくなるから。分かってるの私分かってるのよ。ここで冷静になったら負けだって。ここで賢者モードになったらきっともう立っていられない。
こんなんばれたらマジで殺されそう。ざっきーに。結構ブラコンなんだよねあの人。俺はともかく兄さんモデルにしたの?とかっていい笑顔で黒いオーラ纏いそう。でもマサトさんは困りながら苦笑してきっとこう言うんだろう、仕方ねぇなぁって。いやん萌え!それに頭ポンとかついたら私きっと萌えすぎて立ってられない。そんな幸せなオマケないけどね!そんな女子に勘違いさせるような振る舞いは進んでしないマサトさんなのである。そこもまたイイ。
そんな現実逃避のような妄想を繰り広げている内にプレゼンも質疑応答もすべて終わり、さながら全力を出し切ったランナーのような気分でやれやれと会議室を出ようとしたとき、佐々マネの声に我に返った。
「じゃ、吉田さんの案を中心にして揉んでいこう」
ーーえ?
やばいこれ何フラグ?終わった。なんかよくわかんないけど終わった。とりあえずざっきーに殴られに行った方がいいかな。それとも幸弘に笑われに行った方がいいかな。きっとあいつなら腹を抱えて大ウケするに違いない。さらに相ちゃんの妻、えみりんに鼻先で笑われたら、きっともう怖いものはない。そうだ、ざっきーに笑顔で殴られるのはその後でもいい。
脳内でさらなる現実逃避を繰り広げている私をそっちのけで、会議は終わったのだった。
見た瞬間、佐々マネが笑ってた。全部作り直したの?って。そうですけど何か。洗いざらい自分をさらけ出す所存ですわ!という私の開き直りが通じたのか、何だかみんなの目線が生暖かい気がするけど気にしない。鋼の精神を以て気にしない。
そもそも、何度も言うように私はおもちゃ部門に入社したのだ。ゲームなんてほとんどやったことがない。経験があるのは弟につき合ってやった格闘ゲームかカーゲームで、恋愛シュミレーションゲームなんて見たこともない。そんなものを企画なんてできませんと愚痴ってみたら、いやむしろやったことのない人の意見を聞きたいんだよと言われてなるほどと頷いてしまった単純な私。そんなわけで私にとっては未知の世界に加えて何かを創作した経験なんて美術と技術の時間しかない。技術なんて見本通りに切ったりつけたりするだけだし。ああ、あと俳句?国語のときに作った気がする。素直でいいわねって先生に笑われた。暑い日はやっぱり食べたいアイスクリーム。字余り。
何かを無から産み出すなんてどうすればいいのと迷子になっていた私に佐々マネは言った。君、行動心理学やってたんでしょ。結構周りの人観察したりしない?その辺から題材持ってくれば。
その手があったかー!と周りの人に思いを馳せながらも、昨日までは一応理性で押し止めつつキャラクター設定を組んでいた。でも、今日作り直した三時間でそんな理性が働くはずもなく、もうダダ漏れだ。いろいろダダ漏れ。これもし採用になっちゃったらモデルにした当人に謝りに行った方がいいんじゃないかなと思うくらいに。いやむしろ謝るべきはその妻か。いやいややっぱり何も気付かれない方が互いのためかもしれない。
そして考えてみたら全員既婚男性である。なんだよ私の周りそんなにいい男たくさんいるのかよもう売り切れだけどなちくしょー!
でもきっと採用にはならないに違いない。だって今日プレゼンを任されたあとの二人はネオロマをこよなく愛する女子と男子である。え?男子?うん、男子。女子ってこういうのにときめくんだーって彼女にやらせてもらってハマったって言ってた。彼女とゲームとかオタクの癖に地味にリア充だな爆発しろ。
ということで、せっかく頑張った三時間の努力の結晶、消え去る前に皆様にご披露いたしたく候。よいか?準備はよいか?決してツッコミの準備ではないぞ。
まずはヒロイン、同時にターゲットの女性像。毎日仕事を頑張って、女性活躍促進の波に乗せられそうな気配を全力で拒否りつつも逃れ切れなそうなアラサー。三十歳の誕生日に彼氏にフラれて凹んでたら、社内外からいきなりチヤホヤされるようになっちゃてどうしよう!この時点でお前痛すぎだろと鼻でせせら笑うあなたはもうUターン推奨!ブラウザバックプリーズ!
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二人目は会社の後輩。年下と思えない穏やかさを持ち、冷静沈着、茶道を嗜む。でも怒らせると怖い腹黒男子。笑顔でライバルを牽制する。ヒロインのことをさりげなく気遣い、残業中にそっと差し入れをしてくれる。ちなみにこれのモデル、マサトさんの弟のざっきーね。
お次は社内SE、よれよれシャツがトレードマークの先輩社員。ゆるい性格でついついがんばりすぎてしまうヒロインの息抜きにいつも一役買ってくれる。ヒロインと仲がよくなるにつれて段々と服装が整っていき、イケメン度がアップする。これはサークルの部長だった相ちゃんこと相川という男がモデルだ。
そして最後は会社の同期。体育会系のノリで明るい笑顔が絶えない。不器用で自分の気持ちにも無自覚だが、ヒロインには大甘。ヒロインのことを茶化しながらもいつも味方になって応援してくれる。これは今日から海外旅行に行くと連絡があった幸弘がモデル。
そんなキャラクターに囲まれて、恋も仕事も諦めないまま上手く行っちゃうハッピーエンド、ハーレムありの御都合主義上等!もちろんR18指定でしょ。それ以外ないでしょ。
ねえその憐憫の目やめてくれる。泣きたくなるから。分かってるの私分かってるのよ。ここで冷静になったら負けだって。ここで賢者モードになったらきっともう立っていられない。
こんなんばれたらマジで殺されそう。ざっきーに。結構ブラコンなんだよねあの人。俺はともかく兄さんモデルにしたの?とかっていい笑顔で黒いオーラ纏いそう。でもマサトさんは困りながら苦笑してきっとこう言うんだろう、仕方ねぇなぁって。いやん萌え!それに頭ポンとかついたら私きっと萌えすぎて立ってられない。そんな幸せなオマケないけどね!そんな女子に勘違いさせるような振る舞いは進んでしないマサトさんなのである。そこもまたイイ。
そんな現実逃避のような妄想を繰り広げている内にプレゼンも質疑応答もすべて終わり、さながら全力を出し切ったランナーのような気分でやれやれと会議室を出ようとしたとき、佐々マネの声に我に返った。
「じゃ、吉田さんの案を中心にして揉んでいこう」
ーーえ?
やばいこれ何フラグ?終わった。なんかよくわかんないけど終わった。とりあえずざっきーに殴られに行った方がいいかな。それとも幸弘に笑われに行った方がいいかな。きっとあいつなら腹を抱えて大ウケするに違いない。さらに相ちゃんの妻、えみりんに鼻先で笑われたら、きっともう怖いものはない。そうだ、ざっきーに笑顔で殴られるのはその後でもいい。
脳内でさらなる現実逃避を繰り広げている私をそっちのけで、会議は終わったのだった。
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