5 / 85
第一章 ギャップ萌えって、いい方向へのギャップじゃなきゃ萌えないよね。
05 眼鏡かけてるから仏頂面ですむと思ったら大間違いだぜ眼鏡男子よ。
しおりを挟む
「吉田さん、お疲れ」
もう頭の中が真っ白だ。とりあえず遺言とか書いといた方がいい気がする。ていうかざっきーのことだ、生命的抹殺では生温いと判断して社会的抹殺を図る可能性があり得る。彼が溺愛している妻である香子を一刻も早く味方につけた方が良さそうだ。くっそー、奴のことは大学時代散々いじってやったからな、ここぞとばかりに反撃の機会を与えてしまった。
「吉田さんお疲れ!」
自由に空気を吸えるのも今だけかもしれない。そうだ思う存分吸っておこう。空気って美味しいなオフィスの埃っぽさを気にしなければ。そういえばこれだけ人がいてもなくならない酸素ってすごくね?化学とかよくわかんないけど。高校でモルとか出てきた時点で私の化学終わったからね。早いって?いやだって意味わかんなかったんだもん。何モルってそれおいしいの?でも、なんか友達でベンゼン環?あのほら六角形に化学記号が生えてるあれ。あれ書くのが趣味とか言う奴いたけど全然わかんなかったよねその意味。テストで時間余ったらベンゼン環書くんだって暇だから。暇だからベンゼン環書くって何だよ暇だったら暇らしく寝てるとかすればいいじゃんね。
「よーしーだーさーん!」
「うあっ!」
耳元で名前を呼ばれて飛び跳ねた。そちらを見やると細身の眼鏡男子が立っている。胡散臭そうな表情で見つめられて大変居心地が悪い。何よあんたが声かけたんでしょ。どうして私が居心地悪くならなきゃいけないのよぐすん。
「……何でしょう」
眼鏡男子は無表情な顔のままふーんと言った。あ、もしかしてこの人あれか。この不機嫌そうな顔が素か。笑う筋肉が発達してないんだな。今からそれではいかんぞ若者よ。
「覚えてないんだ」
「は?」
「いや、いい」
眼鏡男子はやっぱり変わらない表情のまま私の前を去って行った。何となく置いてけぼりを食ったような気分になって大変寂しい。そんな私の寂しさを察したのか、佐々マネから声がかかった。はーいと間延びした返事をしながらゆるゆると近づくと、佐々マネは私の肩にポンと手を置いて言った。
「よかったね。今朝急に作り直すなんてなかなか思いきったことしたもんだけど、吹っ切れたのかな?」
まあ吹っ切れましたけど。いろいろと。おかげさまで社会的抹殺の心配をする程度には窮地に陥った自覚もありますけど。
「ええまあ」
曖昧な返事でへらりと引き攣った笑顔を返すと、
「佐々マネ、骨は拾ってくださいね」
小さな呟きに佐々マネは首を傾げた。
もう頭の中が真っ白だ。とりあえず遺言とか書いといた方がいい気がする。ていうかざっきーのことだ、生命的抹殺では生温いと判断して社会的抹殺を図る可能性があり得る。彼が溺愛している妻である香子を一刻も早く味方につけた方が良さそうだ。くっそー、奴のことは大学時代散々いじってやったからな、ここぞとばかりに反撃の機会を与えてしまった。
「吉田さんお疲れ!」
自由に空気を吸えるのも今だけかもしれない。そうだ思う存分吸っておこう。空気って美味しいなオフィスの埃っぽさを気にしなければ。そういえばこれだけ人がいてもなくならない酸素ってすごくね?化学とかよくわかんないけど。高校でモルとか出てきた時点で私の化学終わったからね。早いって?いやだって意味わかんなかったんだもん。何モルってそれおいしいの?でも、なんか友達でベンゼン環?あのほら六角形に化学記号が生えてるあれ。あれ書くのが趣味とか言う奴いたけど全然わかんなかったよねその意味。テストで時間余ったらベンゼン環書くんだって暇だから。暇だからベンゼン環書くって何だよ暇だったら暇らしく寝てるとかすればいいじゃんね。
「よーしーだーさーん!」
「うあっ!」
耳元で名前を呼ばれて飛び跳ねた。そちらを見やると細身の眼鏡男子が立っている。胡散臭そうな表情で見つめられて大変居心地が悪い。何よあんたが声かけたんでしょ。どうして私が居心地悪くならなきゃいけないのよぐすん。
「……何でしょう」
眼鏡男子は無表情な顔のままふーんと言った。あ、もしかしてこの人あれか。この不機嫌そうな顔が素か。笑う筋肉が発達してないんだな。今からそれではいかんぞ若者よ。
「覚えてないんだ」
「は?」
「いや、いい」
眼鏡男子はやっぱり変わらない表情のまま私の前を去って行った。何となく置いてけぼりを食ったような気分になって大変寂しい。そんな私の寂しさを察したのか、佐々マネから声がかかった。はーいと間延びした返事をしながらゆるゆると近づくと、佐々マネは私の肩にポンと手を置いて言った。
「よかったね。今朝急に作り直すなんてなかなか思いきったことしたもんだけど、吹っ切れたのかな?」
まあ吹っ切れましたけど。いろいろと。おかげさまで社会的抹殺の心配をする程度には窮地に陥った自覚もありますけど。
「ええまあ」
曖昧な返事でへらりと引き攣った笑顔を返すと、
「佐々マネ、骨は拾ってくださいね」
小さな呟きに佐々マネは首を傾げた。
1
あなたにおすすめの小説
花の精霊はいじわる皇帝に溺愛される
アルケミスト
恋愛
崔国の皇太子・龍仁に仕える女官の朱音は、人間と花仙との間に生まれた娘。
花仙が持つ〈伴侶の玉〉を龍仁に奪われたせいで彼の命令に逆らえなくなってしまった。
日々、龍仁のいじわるに耐えていた朱音は、龍仁が皇帝位を継いだ際に、妃候補の情報を探るために後宮に乗り込んだ。
だが、後宮に渦巻く、陰の気を感知した朱音は、龍仁と共に後宮の女性達をめぐる陰謀に巻き込まれて……
片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜
橘しづき
恋愛
姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。
私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。
だが当日、姉は結婚式に来なかった。 パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。
「私が……蒼一さんと結婚します」
姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。
俺と結婚してくれ〜若き御曹司の真実の愛
ラヴ KAZU
恋愛
村藤潤一郎
潤一郎は村藤コーポレーションの社長を就任したばかりの二十五歳。
大学卒業後、海外に留学した。
過去の恋愛にトラウマを抱えていた。
そんな時、気になる女性社員と巡り会う。
八神あやか
村藤コーポレーション社員の四十歳。
過去の恋愛にトラウマを抱えて、男性の言葉を信じられない。
恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。
そんな時、バッグを取られ、怪我をして潤一郎のマンションでお世話になる羽目に......
八神あやかは元恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。そんな矢先あやかの勤める村藤コーポレーション社長村藤潤一郎と巡り会う。ある日あやかはバッグを取られ、怪我をする。あやかを放っておけない潤一郎は自分のマンションへ誘った。あやかは優しい潤一郎に惹かれて行くが、会社が倒産の危機にあり、合併先のお嬢さんと婚約すると知る。潤一郎はあやかへの愛を貫こうとするが、あやかは潤一郎の前から姿を消すのであった。
俺に抱かれる覚悟をしろ〜俺様御曹司の溺愛
ラヴ KAZU
恋愛
みゆは付き合う度に騙されて男性不信になり
もう絶対に男性の言葉は信じないと決心した。
そんなある日会社の休憩室で一人の男性と出会う
これが桂木廉也との出会いである。
廉也はみゆに信じられない程の愛情を注ぐ。
みゆは一瞬にして廉也と恋に落ちたが同じ過ちを犯してはいけないと廉也と距離を取ろうとする。
以前愛した御曹司龍司との別れ、それは会社役員に結婚を反対された為だった。
二人の恋の行方は……
男に間違えられる私は女嫌いの冷徹若社長に溺愛される
山口三
恋愛
「俺と結婚してほしい」
出会ってまだ何時間も経っていない相手から沙耶(さや)は告白された・・・のでは無く契約結婚の提案だった。旅先で危ない所を助けられた沙耶は契約結婚を申し出られたのだ。相手は五瀬馨(いつせかおる)彼は国内でも有数の巨大企業、五瀬グループの若き社長だった。沙耶は自分の夢を追いかける資金を得る為、養女として窮屈な暮らしを強いられている今の家から脱出する為にもこの提案を受ける事にする。
冷酷で女嫌いの社長とお人好しの沙耶。二人の契約結婚の行方は?
幸せのありか
神室さち
恋愛
兄の解雇に伴って、本社に呼び戻された氷川哉(ひかわさい)は兄の仕事の後始末とも言える関係企業の整理合理化を進めていた。
決定を下した日、彼のもとに行野樹理(ゆきのじゅり)と名乗る高校生の少女がやってくる。父親の会社との取引を継続してくれるようにと。
哉は、人生というゲームの余興に、一年以内に哉の提示する再建計画をやり遂げれば、以降も取引を続行することを決める。
担保として、樹理を差し出すのならと。止める両親を振りきり、樹理は彼のもとへ行くことを決意した。
とかなんとか書きつつ、幸せのありかを探すお話。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
自サイトに掲載していた作品を、閉鎖により移行。
視点がちょいちょい変わるので、タイトルに記載。
キリのいいところで切るので各話の文字数は一定ではありません。
ものすごく短いページもあります。サクサク更新する予定。
本日何話目、とかの注意は特に入りません。しおりで対応していただけるとありがたいです。
別小説「やさしいキスの見つけ方」のスピンオフとして生まれた作品ですが、メインは単独でも読めます。
直接的な表現はないので全年齢で公開します。
わたしの愉快な旦那さん
川上桃園
恋愛
あまりの辛さにブラックすぎるバイトをやめた。最後塩まかれたけど気にしない。
あ、そういえばこの店入ったことなかったな、入ってみよう。
「何かお探しですか」
その店はなんでも取り扱うという。噂によると彼氏も紹介してくれるらしい。でもそんなのいらない。彼氏だったらすぐに離れてしまうかもしれないのだから。
店員のお兄さんを前にてんぱった私は。
「旦那さんが欲しいです……」
と、斜め上の回答をしてしまった。でもお兄さんは優しい。
「どんな旦那さんをお望みですか」
「え、えっと……愉快な、旦那さん?」
そしてお兄さんは自分を指差した。
「僕が、お客様のお探しの『愉快な旦那さん』ですよ」
そこから始まる恋のお話です。大学生女子と社会人男子(御曹司)。ほのぼのとした日常恋愛もの
溺愛のフリから2年後は。
橘しづき
恋愛
岡部愛理は、ぱっと見クールビューティーな女性だが、中身はビールと漫画、ゲームが大好き。恋愛は昔に何度か失敗してから、もうするつもりはない。
そんな愛理には幼馴染がいる。羽柴湊斗は小学校に上がる前から仲がよく、いまだに二人で飲んだりする仲だ。実は2年前から、湊斗と愛理は付き合っていることになっている。親からの圧力などに耐えられず、酔った勢いでついた嘘だった。
でも2年も経てば、今度は結婚を促される。さて、そろそろ偽装恋人も終わりにしなければ、と愛理は思っているのだが……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる