君の恋人

risashy

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 茅野にとって、俺は初めての友達だ。
 ずっと親の転勤で引っ越し続きだった。友達を作っても、どうせ後でお別れになると思って誰にも深入りしなかったんだと、ぽつぽつと話してくれたのはいつだったか。
 初めて入学から卒業までいられそうな高校では、友達を作りたかった。でも、もうどうやったらいいか分からなかった、と。
 朝賀が初めてできた友達だ、お前がいて良かった。ありがとう。そう言って微笑む茅野の顔が脳裏に浮かぶ。


 部活から帰ろうと校門に向かう俺の背後から「朝賀!!」と聞きなれた声が響き渡った。
 お前、こんな大声が出せたのかよ。内心驚きながら俺は足を止めた。振り返り、久しぶりに茅野と目があう。俺の大好きな瞳が、俺だけを映している。茅野の表情は、真剣そのものだった。
 
「朝賀、俺と付き合おう!」

 茅野が発した思いもよらない言葉に、俺はしばし固まった。
 突然学校で何を言い出すのか、こいつは。他のどの感情より驚きが先行し、次は戸惑ってしまう。

「ま、待て、茅野」
「お前と話せないのは辛い。目が合わないのが嫌だ。一緒に話して、一緒に下校したい。この一週間、すごくつらかった。他人みたいにお前と接するのがいやだ。ずっと、この前朝賀が言ってたことを考えてた……。それで俺、お前の……彼氏? いや、恋人、になろう、なりたいと思った」

 茅野はどこか必死だ。これから恋仲になろうという話をしているはずなのに、この空間には甘い空気はない。

「いいか……?」

 俺を見上げる茅野の表情は、緊張でこわばっていた。

 なんでこいつが告白したみたいになってるんだ。好きだと言ったのは俺だろ。付き合おうだなんて、なんで茅野が言ってんだよ。俺が、言うべき言葉だ。結果、当たり前に玉砕するはずだった。

 でも、茅野が真剣に考えて出した結論は、俺の恋人になること。
 茅野が好きだ。茅野が俺の恋人になってくれるのなら、何をためらう必要がある?
 俺は頷いた。茅野はようやく、強張った表情を緩めた。

「嬉しい。俺、お前の良い恋人になる。よろしくな、朝賀」

——信じられないことに、俺、朝賀千尋と茅野怜は恋人同士になったらしい。

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