36 / 37
エピローグ
しおりを挟む
フェリックスは挙式の準備が整うまで最低半年と言っていたが、結局フェリックスとマコトが結婚式を挙げるまでに一年が経った。
当日は早朝から忙しかった。
マコトは早起きすると、大急ぎで朝食を食べさせられた。王城の自室で、この一年間学んだテーブルマナーを実践しつつもできる限りの速さで完食した。
朝食が終わると風呂に入れられ、風呂から上がると侍従やメイドたちに着せ替えられる。顔には化粧水を塗りたくられ、髪を梳かされ、香水を吹きかけられる。みんな、マコトを少しでも立派な姿にしようとがんばってくれているのだ。
姿見の前に立つと、純白のタキシードに身を包んだ自分がそこにいた。胸には白い薔薇を挿してある。
「わあ……」
着飾った自分は、我ながら格好よく見えた。
マコトは顔を輝かせて、左右に角度を変えて鏡を見てみる。
「ご確認できましたね」
と言って、侍従の一人に眼鏡をスッと外されてしまった。
「本日はこちらは無しでお願いいたします」
「え、ええー!?」
眼鏡なしで結婚式に挑むだなんて、聞いていない。
眼鏡を取り戻す術はなかった。
その後もなんだかんだ忙しく、式本番までフェリックスと顔を合わせることはできなかった。
彼はどんな風に着飾ったのか、楽しみにしていたのに。
待合室でドギマギと待っていると、遂にマコトが入場する番になった。
扉が開き、楽器の演奏が鳴り響く中、マコトはバージンロードをゆっくりと踏みしめた。
両脇では、参列客たちがマコトにじっと視線を注いでいる。
眼鏡がないからぼやけてよく見えないが、最前列にはグラントリアスがいると聞いている。他にもギルドの職員たちが来ているとか。
「マコト、がんばれよ」
横合いからこそりと声がした。
ちらりと視線を向けると、ぼやけた視界でも赤と青のオッドアイが見て取れた。
(カインくんも来てくれたんだ……!)
心の中でありがとう、と感謝の念を送った。
マコトはさらに歩む。
バージンロードの先には、純白のタキシードに身を包んだ人物がいる。
眼鏡のない視界には顔ははっきりとは見えないが、彼――――フェリックスだ。
逸る気持ちを抑え、リハーサルで練習した通りの速度で歩む。
ぼやけていた彼の顔が一歩ごとにはっきりとしていき……
「……っ!」
ついに明瞭に見えたフェリックスの顔に、思わず息を呑んだ。
今日の彼は、一段と男前だった。髪を後ろに撫でつけ、整髪料で固めてある。垂れた翠緑色の瞳は、穏やかな眼差しでマコトを見つめていた。
時を忘れて彼に魅入った。
「マコト、綺麗だ」
フェリックスの小さな囁き声で、ハッと我に返った。
はにかみながら、彼の隣に並んで立った。
参列客たちに背を向け、前に立つ神官に向き合う。
この世界で信仰されている神に向かって、二人の愛を誓い合うのだ。
白髭の神官はまず、フェリックスに視線を向けた。
「汝、フェリックス・ロイ・グランオールブライトはマコト・ユキシタへの愛が永遠であると神に誓いますか」
「誓います」
堂々とした声が、チャペルに響いた。
迷いのなさに、彼からの愛を感じる。
神官は重々しく頷くと、今度はマコトに視線を向けた。
「汝、マコト・ユキシタはフェリックス・ロイ・グランオールブライトへの愛が永遠であると神に誓いますか」
マコトはこれまで生きてきた中で、一番自信に満ちた大きな声で答えた。
「――――誓います」
神が目の前にいたって言えるだろう。
彼への愛は永遠であると――――。
当日は早朝から忙しかった。
マコトは早起きすると、大急ぎで朝食を食べさせられた。王城の自室で、この一年間学んだテーブルマナーを実践しつつもできる限りの速さで完食した。
朝食が終わると風呂に入れられ、風呂から上がると侍従やメイドたちに着せ替えられる。顔には化粧水を塗りたくられ、髪を梳かされ、香水を吹きかけられる。みんな、マコトを少しでも立派な姿にしようとがんばってくれているのだ。
姿見の前に立つと、純白のタキシードに身を包んだ自分がそこにいた。胸には白い薔薇を挿してある。
「わあ……」
着飾った自分は、我ながら格好よく見えた。
マコトは顔を輝かせて、左右に角度を変えて鏡を見てみる。
「ご確認できましたね」
と言って、侍従の一人に眼鏡をスッと外されてしまった。
「本日はこちらは無しでお願いいたします」
「え、ええー!?」
眼鏡なしで結婚式に挑むだなんて、聞いていない。
眼鏡を取り戻す術はなかった。
その後もなんだかんだ忙しく、式本番までフェリックスと顔を合わせることはできなかった。
彼はどんな風に着飾ったのか、楽しみにしていたのに。
待合室でドギマギと待っていると、遂にマコトが入場する番になった。
扉が開き、楽器の演奏が鳴り響く中、マコトはバージンロードをゆっくりと踏みしめた。
両脇では、参列客たちがマコトにじっと視線を注いでいる。
眼鏡がないからぼやけてよく見えないが、最前列にはグラントリアスがいると聞いている。他にもギルドの職員たちが来ているとか。
「マコト、がんばれよ」
横合いからこそりと声がした。
ちらりと視線を向けると、ぼやけた視界でも赤と青のオッドアイが見て取れた。
(カインくんも来てくれたんだ……!)
心の中でありがとう、と感謝の念を送った。
マコトはさらに歩む。
バージンロードの先には、純白のタキシードに身を包んだ人物がいる。
眼鏡のない視界には顔ははっきりとは見えないが、彼――――フェリックスだ。
逸る気持ちを抑え、リハーサルで練習した通りの速度で歩む。
ぼやけていた彼の顔が一歩ごとにはっきりとしていき……
「……っ!」
ついに明瞭に見えたフェリックスの顔に、思わず息を呑んだ。
今日の彼は、一段と男前だった。髪を後ろに撫でつけ、整髪料で固めてある。垂れた翠緑色の瞳は、穏やかな眼差しでマコトを見つめていた。
時を忘れて彼に魅入った。
「マコト、綺麗だ」
フェリックスの小さな囁き声で、ハッと我に返った。
はにかみながら、彼の隣に並んで立った。
参列客たちに背を向け、前に立つ神官に向き合う。
この世界で信仰されている神に向かって、二人の愛を誓い合うのだ。
白髭の神官はまず、フェリックスに視線を向けた。
「汝、フェリックス・ロイ・グランオールブライトはマコト・ユキシタへの愛が永遠であると神に誓いますか」
「誓います」
堂々とした声が、チャペルに響いた。
迷いのなさに、彼からの愛を感じる。
神官は重々しく頷くと、今度はマコトに視線を向けた。
「汝、マコト・ユキシタはフェリックス・ロイ・グランオールブライトへの愛が永遠であると神に誓いますか」
マコトはこれまで生きてきた中で、一番自信に満ちた大きな声で答えた。
「――――誓います」
神が目の前にいたって言えるだろう。
彼への愛は永遠であると――――。
102
あなたにおすすめの小説
【完】心配性は異世界で番認定された狼獣人に甘やかされる
おはぎ
BL
起きるとそこは見覚えのない場所。死んだ瞬間を思い出して呆然としている優人に、騎士らしき人たちが声を掛けてくる。何で頭に獣耳…?とポカンとしていると、その中の狼獣人のカイラが何故か優しくて、ぴったり身体をくっつけてくる。何でそんなに気遣ってくれるの?と分からない優人は大きな身体に怯えながら何とかこの別世界で生きていこうとする話。
知らない世界に来てあれこれ考えては心配してしまう優人と、優人が可愛くて仕方ないカイラが溺愛しながら支えて甘やかしていきます。
《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。
かざみはら まなか
BL
24歳の英雄公爵✕29歳の日本に帰りたい異世界転移した青年
神様の手違いで死んだ俺、チート能力を授かり異世界転生してスローライフを送りたかったのに想像の斜め上をいく展開になりました。
篠崎笙
BL
保育園の調理師だった凛太郎は、ある日事故死する。しかしそれは神界のアクシデントだった。神様がお詫びに好きな加護を与えた上で異世界に転生させてくれるというので、定年後にやってみたいと憧れていたスローライフを送ることを願ったが……。
どうも、卵から生まれた魔人です。
べす
BL
卵から生まれる瞬間、人間に召喚されてしまった魔人のレヴィウス。
太った小鳥にしか見えないせいで用無しと始末されそうになった所を、優しげな神官に救われるのだが…
異世界転移して出会っためちゃくちゃ好きな男が全く手を出してこない
春野ひより
BL
前触れもなく異世界転移したトップアイドル、アオイ。
路頭に迷いかけたアオイを拾ったのは娼館のガメツイ女主人で、アオイは半ば強制的に男娼としてデビューすることに。しかし、絶対に抱かれたくないアオイは初めての客である美しい男に交渉する。
「――僕を見てほしいんです」
奇跡的に男に気に入られたアオイ。足繁く通う男。男はアオイに惜しみなく金を注ぎ、アオイは美しい男に恋をするが、男は「私は貴方のファンです」と言うばかりで頑としてアオイを抱かなくて――。
愛されるには理由が必要だと思っているし、理由が無くなれば捨てられて当然だと思っている受けが「それでも愛して欲しい」と手を伸ばせるようになるまでの話です。
金を使うことでしか愛を伝えられない不器用な人外×自分に付けられた値段でしか愛を実感できない不器用な青年
異世界転移しました。元天才魔術師との優雅なお茶会が仕事です。
渡辺 佐倉
BL
榊 俊哉はつまらないサラリーマンだった。
それがある日異世界に召喚されてしまった。
勇者を召喚するためのものだったらしいが榊はハズレだったらしい。
元の世界には帰れないと言われた榊が与えられた仕事が、事故で使い物にならなくなった元天才魔法使いの家庭教師という仕事だった。
家庭教師と言っても教えられることはなさそうだけれど、どうやら元天才に異世界の話をしてイマジネーションを復活させてほしいという事らしい。
知らない世界で、独りぼっち。他に仕事もなさそうな榊はその仕事をうけることにした。
(元)天才魔術師×転生者のお話です。
小説家になろうにも掲載しています
転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜
隍沸喰(隍沸かゆ)
BL
引き篭もりニートの俺は大人にも子供にも人気の話題のゲーム『WoRLD oF SHiSUTo』の次回作を遂に手に入れたが、その直後に死亡してしまった。
目覚めたらその世界で最も嫌われ、前世でも嫌われ続けていたあの落ちぶれた元王族《ヴァントリア・オルテイル》になっていた。
同じ檻に入っていた子供を看病したのに殺されかけ、王である兄には冷たくされ…………それでもめげずに頑張ります!
俺を襲ったことで連れて行かれた子供を助けるために、まずは脱獄からだ!
重複投稿:小説家になろう(ムーンライトノベルズ)
注意:
残酷な描写あり
表紙は力不足な自作イラスト
誤字脱字が多いです!
お気に入り・感想ありがとうございます。
皆さんありがとうございました!
BLランキング1位(2021/8/1 20:02)
HOTランキング15位(2021/8/1 20:02)
他サイト日間BLランキング2位(2019/2/21 20:00)
ツンデレ、執着キャラ、おバカ主人公、魔法、主人公嫌われ→愛されです。
いらないと思いますが感想・ファンアート?などのSNSタグは #嫌01 です。私も宣伝や時々描くイラストに使っています。利用していただいて構いません!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる