26 / 30
IF 針子の令嬢、モテ期がくる2
しおりを挟む
「君が悪いんだ」
なにがだよっ! と叫びたくてもモゴモゴ言うしかない。口を抑えられて自由ないし、なんか、よくわからないし!
今日も仕事疲れた……と歩いていたら、襲撃される理由はさっぱりわからなかった。
二人連れで私を引きずるように連れ居てこうとしている人と偉そうな人がいる。
「他の男とは遊び歩いて良くて、なんで僕は駄目なんだ」
……。
理由は判明したけど、誰かはわからなかった。というか、これはまずい。
ジタバタと暴れても男相手では分が悪く、そのまま引きずられ物陰へ……。運悪く日暮れ、人もあまりいない時間帯。残業して夕食の時間に間に合うかなと焦っていたのも悪かった。
一人で動くのやめなよ? という忠告が無意味にっ!
私はポケットの中を確認した。指ぬきがちゃんとある。中指に装着。ぐっと拳を握った。
「坊ちゃん、足の方持ってください。さっさと連れ帰りますよ」
「あ、ああ」
渾身の蹴りをお見舞いしてやればいい?
おーけー、女の靴の痛いとこみせてあげるわっ!
「おまえにもいい話だろう。
良家に嫁ぐなんてな」
「暴れるな、殴るぞ」
「いてっ」
「本当に、ご令嬢なんですか」
大人しくしたところでろくな目にあいそうにない。痛いの嫌だけど、その後のことを考えれば全力抵抗する。
こちとら田舎育ちの野生児でもあるしっ!
でも泣きそう。
「なにをしているんです?」
まずは後ろに頭突きと身をくの字にしたあたりで、声をかけられた。
助かったと頭をあげたら、ぐふっと……。意図せず頭突きがヒットしたらしい。
「……嫌がる御婦人になにをしているんです?」
一瞬の間を置いて、仕切り直された。私はと言えば緩んだ拘束を幸いと振り切って、声の主に向かおうとした。
……ちょっと足が止まった。
薄暗くなってきていてよくわからないが、なんか、ものすっごい、おおきい。うちの平均を極める家族からすれば1.5倍でかい。
ちょっとビビる何かがあったけど、よく見れば制服着用だ。この城で制服を着る職業なら安全だろう。たぶん。
「たすけてください。なんか急に襲われて!」
さっさと背後に隠れる。わぁい。大きい。隠れ放題。
「話し合いをするつもりだったのに、ついてこないから悪いんだ」
「どのような話を?」
「二人の将来についてだ」
「断絶です。私、誰ともまだ結婚したくない婚約しないって言っているのに、しつこいったら」
「他の男ならよくて僕がだめな理由はなんだ。家柄も将来性もあるだろう」
「王家を除いてうちより良い家柄ないですっ! 建国より血をつないでますので!」
「弱小男爵家がいったところでな」
「クレア殿は、この男性との付き合いは望んでいない」
「はい」
あれ?なんで、私の名前知ってるの?
「あなたは、まず、家同士で話をつけてから本人と会うべきだし、それができないからこうやってつきまとうなら王弟殿下に報告します」
そこで私は気がついた。よく見えなかったけど、この人、騎士団の人だ。兄が所属していたからその制服も見覚えがある。
騎士団とは必ず、王族が団長を務めることになっている。さらに貴族の子息だけで構成されており、ないがしろにしてよいという相手ではない。
「どこの家のものだ」
「……騎士は慣例的に家名を名乗りませんが、サーライトのものです」
ほぼほぼ、名乗ってる。私は家名までは思い出せなかったけど、海の方だという記憶はある。海賊になると叔父が……いや、現実逃避だ。
「おー、なんかやってんのー?」
「おやおや、遅いなぁと思ったら」
ぞろぞろと誰かやってきた。視線を向ければ、やっぱり大きい人たちが……。
「招集に遅れるとは許しがたい」
最後にやってきた人は、明らかに雰囲気が違う。俺、偉い人ですという匂いがする。
「おまえ、名を名乗れ」
そういって私を捕まえた二人に聞いていた。
「ああ、私が名乗ったほうがいいか。
聞けば、事件にするが?」
「大変失礼いたしましたっ!」
なにかを察したのか、一人が坊ちゃんを引っ張って逃げていった。
「追っていけ。王弟殿下が処理する」
「はい」
二人ほど追いかけていったけど、静かで速い。
「さて、お嬢さん。事情をききたい、んだが……」
そう言って推定偉い人がものすっごい困った顔をした。そのまま、ぽりっと頭を掻く。
「アトス任せた」
「え? ちょ、副団長」
「泣いている女の子の慰め方は知らん!」
「そ、そんな、俺もしらないですっ!」
泣いてる女の子?
現場の女子、私一人。
おやおや?
知らずに零れていた涙を自覚した。
「あ、その」
戸惑ったような声は優しかった。
そのまま、しがみついて泣いてしまったのはほっとしたせいだろう。
ただ、そのせいで探しに来た同室の子に、あたしの友達になにしてんのよっ! と詰められる事件が発生したのは大変申し訳なかったと思う。
迷惑をかけたお詫びとして訪れた騎士団寮は、魔窟だったのだった。
なにがだよっ! と叫びたくてもモゴモゴ言うしかない。口を抑えられて自由ないし、なんか、よくわからないし!
今日も仕事疲れた……と歩いていたら、襲撃される理由はさっぱりわからなかった。
二人連れで私を引きずるように連れ居てこうとしている人と偉そうな人がいる。
「他の男とは遊び歩いて良くて、なんで僕は駄目なんだ」
……。
理由は判明したけど、誰かはわからなかった。というか、これはまずい。
ジタバタと暴れても男相手では分が悪く、そのまま引きずられ物陰へ……。運悪く日暮れ、人もあまりいない時間帯。残業して夕食の時間に間に合うかなと焦っていたのも悪かった。
一人で動くのやめなよ? という忠告が無意味にっ!
私はポケットの中を確認した。指ぬきがちゃんとある。中指に装着。ぐっと拳を握った。
「坊ちゃん、足の方持ってください。さっさと連れ帰りますよ」
「あ、ああ」
渾身の蹴りをお見舞いしてやればいい?
おーけー、女の靴の痛いとこみせてあげるわっ!
「おまえにもいい話だろう。
良家に嫁ぐなんてな」
「暴れるな、殴るぞ」
「いてっ」
「本当に、ご令嬢なんですか」
大人しくしたところでろくな目にあいそうにない。痛いの嫌だけど、その後のことを考えれば全力抵抗する。
こちとら田舎育ちの野生児でもあるしっ!
でも泣きそう。
「なにをしているんです?」
まずは後ろに頭突きと身をくの字にしたあたりで、声をかけられた。
助かったと頭をあげたら、ぐふっと……。意図せず頭突きがヒットしたらしい。
「……嫌がる御婦人になにをしているんです?」
一瞬の間を置いて、仕切り直された。私はと言えば緩んだ拘束を幸いと振り切って、声の主に向かおうとした。
……ちょっと足が止まった。
薄暗くなってきていてよくわからないが、なんか、ものすっごい、おおきい。うちの平均を極める家族からすれば1.5倍でかい。
ちょっとビビる何かがあったけど、よく見れば制服着用だ。この城で制服を着る職業なら安全だろう。たぶん。
「たすけてください。なんか急に襲われて!」
さっさと背後に隠れる。わぁい。大きい。隠れ放題。
「話し合いをするつもりだったのに、ついてこないから悪いんだ」
「どのような話を?」
「二人の将来についてだ」
「断絶です。私、誰ともまだ結婚したくない婚約しないって言っているのに、しつこいったら」
「他の男ならよくて僕がだめな理由はなんだ。家柄も将来性もあるだろう」
「王家を除いてうちより良い家柄ないですっ! 建国より血をつないでますので!」
「弱小男爵家がいったところでな」
「クレア殿は、この男性との付き合いは望んでいない」
「はい」
あれ?なんで、私の名前知ってるの?
「あなたは、まず、家同士で話をつけてから本人と会うべきだし、それができないからこうやってつきまとうなら王弟殿下に報告します」
そこで私は気がついた。よく見えなかったけど、この人、騎士団の人だ。兄が所属していたからその制服も見覚えがある。
騎士団とは必ず、王族が団長を務めることになっている。さらに貴族の子息だけで構成されており、ないがしろにしてよいという相手ではない。
「どこの家のものだ」
「……騎士は慣例的に家名を名乗りませんが、サーライトのものです」
ほぼほぼ、名乗ってる。私は家名までは思い出せなかったけど、海の方だという記憶はある。海賊になると叔父が……いや、現実逃避だ。
「おー、なんかやってんのー?」
「おやおや、遅いなぁと思ったら」
ぞろぞろと誰かやってきた。視線を向ければ、やっぱり大きい人たちが……。
「招集に遅れるとは許しがたい」
最後にやってきた人は、明らかに雰囲気が違う。俺、偉い人ですという匂いがする。
「おまえ、名を名乗れ」
そういって私を捕まえた二人に聞いていた。
「ああ、私が名乗ったほうがいいか。
聞けば、事件にするが?」
「大変失礼いたしましたっ!」
なにかを察したのか、一人が坊ちゃんを引っ張って逃げていった。
「追っていけ。王弟殿下が処理する」
「はい」
二人ほど追いかけていったけど、静かで速い。
「さて、お嬢さん。事情をききたい、んだが……」
そう言って推定偉い人がものすっごい困った顔をした。そのまま、ぽりっと頭を掻く。
「アトス任せた」
「え? ちょ、副団長」
「泣いている女の子の慰め方は知らん!」
「そ、そんな、俺もしらないですっ!」
泣いてる女の子?
現場の女子、私一人。
おやおや?
知らずに零れていた涙を自覚した。
「あ、その」
戸惑ったような声は優しかった。
そのまま、しがみついて泣いてしまったのはほっとしたせいだろう。
ただ、そのせいで探しに来た同室の子に、あたしの友達になにしてんのよっ! と詰められる事件が発生したのは大変申し訳なかったと思う。
迷惑をかけたお詫びとして訪れた騎士団寮は、魔窟だったのだった。
101
あなたにおすすめの小説
【完結】胃袋を掴んだら溺愛されました
成実
恋愛
前世の記憶を思い出し、お菓子が食べたいと自分のために作っていた伯爵令嬢。
天候の関係で国に、収める税を領地民のために肩代わりした伯爵家、そうしたら、弟の学費がなくなりました。
学費を稼ぐためにお菓子の販売始めた私に、私が作ったお菓子が大好き過ぎてお菓子に恋した公爵令息が、作ったのが私とバレては溺愛されました。
王様の恥かきっ娘
青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。
本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。
孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます
物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります
これもショートショートで書く予定です。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく
犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。
「絶対駄目ーー」
と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。
何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。
募集 婿入り希望者
対象外は、嫡男、後継者、王族
目指せハッピーエンド(?)!!
全23話で完結です。
この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。
巻き込まれて異世界召喚? よくわからないけど頑張ります。 〜JKヒロインにおばさん呼ばわりされたけど、28才はお姉さんです〜
トイダノリコ
ファンタジー
会社帰りにJKと一緒に異世界へ――!?
婚活のために「料理の基本」本を買った帰り道、28歳の篠原亜子は、通りすがりの女子高生・星野美咲とともに突然まぶしい光に包まれる。
気がつけばそこは、海と神殿の国〈アズーリア王国〉。
美咲は「聖乙女」として大歓迎される一方、亜子は「予定外に混ざった人」として放置されてしまう。
けれど世界意識(※神?)からのお詫びとして特殊能力を授かった。
食材や魔物の食用可否、毒の有無、調理法までわかるスキル――〈料理眼〉!
「よし、こうなったら食堂でも開いて生きていくしかない!」
港町の小さな店〈潮風亭〉を拠点に、亜子は料理修行と新生活をスタート。
気のいい夫婦、誠実な騎士、皮肉屋の魔法使い、王子様や留学生、眼帯の怪しい男……そして、彼女を慕う男爵令嬢など個性豊かな仲間たちに囲まれて、"聖乙女イベントの裏側”で、静かに、そしてたくましく人生を切り拓く異世界スローライフ開幕。
――はい。静かに、ひっそり生きていこうと思っていたんです。私も.....(アコ談)
*AIと一緒に書いています*
美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ
さら
恋愛
会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。
ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。
けれど、測定された“能力値”は最低。
「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。
そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。
優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。
彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。
人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。
やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。
不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。
【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる