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おくりもの
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王都の冬は、秋だ。
と故郷の誰かが言っていた。雪が降らないなら冬じゃねぇと。
アトスが言うには、冬の強風がないから、秋だ、ということらしい。地域性が出るなぁとのんびり聞きながら、やらかいふわふわしたものを編んでいる。一年後に使う予定なので、大き目である。
一年限りの予定だった王都暮らしも、延長することになった。産後すぐに移動というのも難しいだろうと二年目突入で予定である。生まれる前に領地帰ることも考えたんだけど、義姉の止められた。いい医者紹介するからここにいなさいと。
なんか、帰らなきゃいけない気がしたんだけど好意に甘えることにした。
「王都は底冷えしますね」
そういいながら、追加されそうな羽織りを断る。すでにもこもこだ。
暖炉は暖かく、揺り椅子は快適、妊婦用の服もゆったりとして着心地がいい。眠くなってくる。こくりこくりと船をこぐその姿はまるで……。
「おばあちゃんみたい」
まあ、私の祖母は私が物心つく前に亡くなっているけど。
アトスは私をまじまじと見るとうつむいて肩を震わせている。
「笑うなら、ちゃんと笑ってほしいんですけどぉ」
「い、いえ、か、かわいい、なと思っ」
私をこうした当人にいわれると腹が立つ。不穏な気配を感じて、あ、用事がと逃げていくのもなんかっ!
「全く……」
後で覚えておきなさいよ、と思いつつ、店が静かだなと思う。お客さんが多いと表からの声も聞こえたりする。
例年、冬は開店休業だ。貴族の皆様は、領地に帰り、王都民の皆様は華やかなものを求める時期ではない。
さらに王都では冬の間は皆で集まるような祭りもないし、静かなもの。地元では最強雪だるま大会が開かれている。雪が降りすぎてブチ切れた領民の皆様のための娯楽。もはや雪像というレベルに極めてる猛者もいる。
あれ面白いから見せたかった。
まあ、今後も機会あるからいいか……。
それにしても、眠い。
ねむ……。ゆるゆると眠りにいざなわれた。
それからしばらくして、目が覚める。
手に持っていたはずの編み物がなくなっている。アトスが片付けてくれたのだろう。無意識に体が動くというのもないし。
あったら怖いし。
その隣に、どんぐりが置いてあった。
きれいなやつだ。帽子も欠けもなく、完璧。幼児がお宝だと崇めるような美しさがある。
その隣には、貝殻が一つ。巻貝というのはとても種類があるらしいが、これは小さいほうだろう。耳に当てると海の音がするとかいうらしい。
ありふれたものだが、いきなり出現するものでもない。
なんだろ。懐かしい匂いとちょっと塩っぽい感じ。
「海の匂い?」
なんで? と思ったが、嫌な感じでもない。
うむ。
うちの精霊様、遊びに来たのかもしれない。もしかしたら、お友達を連れて。
「落ち着いたら、ちゃんと顔見せにいきますからね」
どんぐりと貝は小さな袋を作って入れて、お守りにした。
風はどこにもいて見守ってくれるだろう。
良き隣人、友として。
姿が見えずとも、声も聞かずとも、そこにいる。それだけで、心強いこともあるから。
その日からしばらくして、王都でも雪が降った。名実とも冬である。
静かな日々だった。
ふわふわを編むのに飽きた私は白い布の薔薇を山ほど制作することになった。
冬のドレス用である。
花のない時期だけど、雪の花のドレスにしたらしい。花に埋もれるような意匠は色があると確かにうるさい。なんでもうちの故郷の雪だるま祭りの話を聞いて思いついたそうだ。雪で作られたような、ドレス。
色は冷たい印象があるのに、冬の間に残る赤い実や緑の葉をあしらって印象を柔らかくしているのはさすがというか。
「このドレスってなんでふわってしているの? 腰のあたりきゅっとしたほうが可愛い気もするけど」
「……これなら、今でも着れるでしょう?」
照れたように言われて、いまさら気がついた。
今までのドレス、標準体型だから、私にぴったりなんじゃない。
私のためのドレスだった!
「あ、ありがとう」
消え入りそうな声になったのは、ちょっと恥ずかしかったからだ。鈍くてごめん。いつも作る側で、作ってもらうことなかったからとてもうれしくて。
大事にしよう。
改めて心に誓った。
と故郷の誰かが言っていた。雪が降らないなら冬じゃねぇと。
アトスが言うには、冬の強風がないから、秋だ、ということらしい。地域性が出るなぁとのんびり聞きながら、やらかいふわふわしたものを編んでいる。一年後に使う予定なので、大き目である。
一年限りの予定だった王都暮らしも、延長することになった。産後すぐに移動というのも難しいだろうと二年目突入で予定である。生まれる前に領地帰ることも考えたんだけど、義姉の止められた。いい医者紹介するからここにいなさいと。
なんか、帰らなきゃいけない気がしたんだけど好意に甘えることにした。
「王都は底冷えしますね」
そういいながら、追加されそうな羽織りを断る。すでにもこもこだ。
暖炉は暖かく、揺り椅子は快適、妊婦用の服もゆったりとして着心地がいい。眠くなってくる。こくりこくりと船をこぐその姿はまるで……。
「おばあちゃんみたい」
まあ、私の祖母は私が物心つく前に亡くなっているけど。
アトスは私をまじまじと見るとうつむいて肩を震わせている。
「笑うなら、ちゃんと笑ってほしいんですけどぉ」
「い、いえ、か、かわいい、なと思っ」
私をこうした当人にいわれると腹が立つ。不穏な気配を感じて、あ、用事がと逃げていくのもなんかっ!
「全く……」
後で覚えておきなさいよ、と思いつつ、店が静かだなと思う。お客さんが多いと表からの声も聞こえたりする。
例年、冬は開店休業だ。貴族の皆様は、領地に帰り、王都民の皆様は華やかなものを求める時期ではない。
さらに王都では冬の間は皆で集まるような祭りもないし、静かなもの。地元では最強雪だるま大会が開かれている。雪が降りすぎてブチ切れた領民の皆様のための娯楽。もはや雪像というレベルに極めてる猛者もいる。
あれ面白いから見せたかった。
まあ、今後も機会あるからいいか……。
それにしても、眠い。
ねむ……。ゆるゆると眠りにいざなわれた。
それからしばらくして、目が覚める。
手に持っていたはずの編み物がなくなっている。アトスが片付けてくれたのだろう。無意識に体が動くというのもないし。
あったら怖いし。
その隣に、どんぐりが置いてあった。
きれいなやつだ。帽子も欠けもなく、完璧。幼児がお宝だと崇めるような美しさがある。
その隣には、貝殻が一つ。巻貝というのはとても種類があるらしいが、これは小さいほうだろう。耳に当てると海の音がするとかいうらしい。
ありふれたものだが、いきなり出現するものでもない。
なんだろ。懐かしい匂いとちょっと塩っぽい感じ。
「海の匂い?」
なんで? と思ったが、嫌な感じでもない。
うむ。
うちの精霊様、遊びに来たのかもしれない。もしかしたら、お友達を連れて。
「落ち着いたら、ちゃんと顔見せにいきますからね」
どんぐりと貝は小さな袋を作って入れて、お守りにした。
風はどこにもいて見守ってくれるだろう。
良き隣人、友として。
姿が見えずとも、声も聞かずとも、そこにいる。それだけで、心強いこともあるから。
その日からしばらくして、王都でも雪が降った。名実とも冬である。
静かな日々だった。
ふわふわを編むのに飽きた私は白い布の薔薇を山ほど制作することになった。
冬のドレス用である。
花のない時期だけど、雪の花のドレスにしたらしい。花に埋もれるような意匠は色があると確かにうるさい。なんでもうちの故郷の雪だるま祭りの話を聞いて思いついたそうだ。雪で作られたような、ドレス。
色は冷たい印象があるのに、冬の間に残る赤い実や緑の葉をあしらって印象を柔らかくしているのはさすがというか。
「このドレスってなんでふわってしているの? 腰のあたりきゅっとしたほうが可愛い気もするけど」
「……これなら、今でも着れるでしょう?」
照れたように言われて、いまさら気がついた。
今までのドレス、標準体型だから、私にぴったりなんじゃない。
私のためのドレスだった!
「あ、ありがとう」
消え入りそうな声になったのは、ちょっと恥ずかしかったからだ。鈍くてごめん。いつも作る側で、作ってもらうことなかったからとてもうれしくて。
大事にしよう。
改めて心に誓った。
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