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6.おやすみ
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その日の夕飯も無事に済んだ。
岳の提案で同じテーブルで一緒に食べる。久しぶりに誰かと食べる食事に、どこか浮き立つ自分がいた。
ここ最近はずっと一人で食べてたからなぁ。
感慨深げに浸っていると。
「ごちそう様…」
その声に我に返った俺は、亜貴に目を向けた。
皿はすっかり空になっていて、食べ残しは無かった。それを見て思わず口元が緩む。
「おう。どう致しまして。そうだ、亜貴。食後になんか飲むか? コーヒー、紅茶、緑茶にカフェオレ、ミルク、ココア──。豆乳にも変えられるからな?」
「なんだ。色々あるんだな? 大和」
感心したように、テーブルに肘をついた岳が声をあげるが。
「ほらっ、岳、肘つかない! で、何にする?」
岳がちぇっと舌打ちしたのを耳にしつつ、亜貴を振り返る。すると蚊の鳴くような声小さな声で。
「ホットミルク…」
「お、いい選択だな。勉強終わった頃がいいだろ?何時くらいに持っていく?」
「…十時くらい」
「了解」
俺の返答を聞くか聞かないうちに、ヒラリと身を翻しリビングを出て行って仕舞った。
相変わらず視線は合わない。合っても直ぐにプイと顔を背けるか、視線だけ反らされる。
まあ、いい。
食べ残しがないだけで充分だ。
「嬉しそうだな?」
食べ終えた岳は、そのまま腕をついてこちらを見ている。
もう食べ終えているから、肘をつこうが、膝をつこうが一向に構わない。
「だって腕だって大した事ないのにさ。これだけ食べてくれると、そりゃ嬉しいだろ?」
食器を下げながら、鼻歌を口ずさむ。某銀河鉄道アニメの主題歌だ。
中学の頃、クラスメートに主人公の少年に似ていると言われた事がある。
どこにでもいそうな平凡な少年が、立派に主役をはっていたアニメに、その顔に親近感が湧いたのと同時、誰でも主人公になれるんだと思わせた。
「いや。美味しいよ。プロ顔負けとかじゃないが、ちゃんと相手を思って丁寧に作られてるのが分かる。…美味しい」
岳の心の籠もった『美味しい』に、ドキリとする。思わず頬が熱くなって、慌てて誤魔化す様に食器を片付け出した。
因みに食洗機があるのが有り難い。
「まだ序盤だからな? 失敗してもがっかりすんなよ?」
「その時も美味しいって言うよ」
「うへ。それじゃ、腕上がんないって」
弾ける様に互いに笑い出す。
その後も、岳は俺が淹れたコーヒーを飲みながら、他愛もない話を交わした。
+++
亜貴は思ったより素直だった。
その後、ホットミルクを運んで行った時も、別段、反抗的な態度を見せるでもなく、小さい声で『ありがとう』と、言ったくらい。
「亜貴は魚も大丈夫か?」
直ぐにさよならも寂しいかと、交友を深めるためにも声をかけた。
「あんま、食べた事ない…」
お、それは気をつけないと、下手すれば二度と食べたくないとなる可能性もある。
「わかった。頭に入れとく」
亜貴はカップを両手で包み込む様にして、飲んでいた。
それだけみると、どこぞのモデルか俳優かという風情だが、口を開けば小憎らしい。それに、生憎彼はヤクザの家系に連なるものだ。
こいつ、将来はどうすんのかな?
岳はまともな道へと思っている様だが。
本人にその気がなければ、岳の思い通り、ごく普通の青年として生きていくのだろうか。
「カップ、飲み終わったらキッチンのシンクに置いといてくれ」
これ以上は邪魔をしてもいけない。それだけ言うと、部屋を出ようとドアに手をかけた所で。
「おやすみ…」
カップを見つめたまま、亜貴が呟いた。その言葉に心の内側がぽわんと温かくなる。
「おう。おやすみな」
岳の提案で同じテーブルで一緒に食べる。久しぶりに誰かと食べる食事に、どこか浮き立つ自分がいた。
ここ最近はずっと一人で食べてたからなぁ。
感慨深げに浸っていると。
「ごちそう様…」
その声に我に返った俺は、亜貴に目を向けた。
皿はすっかり空になっていて、食べ残しは無かった。それを見て思わず口元が緩む。
「おう。どう致しまして。そうだ、亜貴。食後になんか飲むか? コーヒー、紅茶、緑茶にカフェオレ、ミルク、ココア──。豆乳にも変えられるからな?」
「なんだ。色々あるんだな? 大和」
感心したように、テーブルに肘をついた岳が声をあげるが。
「ほらっ、岳、肘つかない! で、何にする?」
岳がちぇっと舌打ちしたのを耳にしつつ、亜貴を振り返る。すると蚊の鳴くような声小さな声で。
「ホットミルク…」
「お、いい選択だな。勉強終わった頃がいいだろ?何時くらいに持っていく?」
「…十時くらい」
「了解」
俺の返答を聞くか聞かないうちに、ヒラリと身を翻しリビングを出て行って仕舞った。
相変わらず視線は合わない。合っても直ぐにプイと顔を背けるか、視線だけ反らされる。
まあ、いい。
食べ残しがないだけで充分だ。
「嬉しそうだな?」
食べ終えた岳は、そのまま腕をついてこちらを見ている。
もう食べ終えているから、肘をつこうが、膝をつこうが一向に構わない。
「だって腕だって大した事ないのにさ。これだけ食べてくれると、そりゃ嬉しいだろ?」
食器を下げながら、鼻歌を口ずさむ。某銀河鉄道アニメの主題歌だ。
中学の頃、クラスメートに主人公の少年に似ていると言われた事がある。
どこにでもいそうな平凡な少年が、立派に主役をはっていたアニメに、その顔に親近感が湧いたのと同時、誰でも主人公になれるんだと思わせた。
「いや。美味しいよ。プロ顔負けとかじゃないが、ちゃんと相手を思って丁寧に作られてるのが分かる。…美味しい」
岳の心の籠もった『美味しい』に、ドキリとする。思わず頬が熱くなって、慌てて誤魔化す様に食器を片付け出した。
因みに食洗機があるのが有り難い。
「まだ序盤だからな? 失敗してもがっかりすんなよ?」
「その時も美味しいって言うよ」
「うへ。それじゃ、腕上がんないって」
弾ける様に互いに笑い出す。
その後も、岳は俺が淹れたコーヒーを飲みながら、他愛もない話を交わした。
+++
亜貴は思ったより素直だった。
その後、ホットミルクを運んで行った時も、別段、反抗的な態度を見せるでもなく、小さい声で『ありがとう』と、言ったくらい。
「亜貴は魚も大丈夫か?」
直ぐにさよならも寂しいかと、交友を深めるためにも声をかけた。
「あんま、食べた事ない…」
お、それは気をつけないと、下手すれば二度と食べたくないとなる可能性もある。
「わかった。頭に入れとく」
亜貴はカップを両手で包み込む様にして、飲んでいた。
それだけみると、どこぞのモデルか俳優かという風情だが、口を開けば小憎らしい。それに、生憎彼はヤクザの家系に連なるものだ。
こいつ、将来はどうすんのかな?
岳はまともな道へと思っている様だが。
本人にその気がなければ、岳の思い通り、ごく普通の青年として生きていくのだろうか。
「カップ、飲み終わったらキッチンのシンクに置いといてくれ」
これ以上は邪魔をしてもいけない。それだけ言うと、部屋を出ようとドアに手をかけた所で。
「おやすみ…」
カップを見つめたまま、亜貴が呟いた。その言葉に心の内側がぽわんと温かくなる。
「おう。おやすみな」
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