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第一章
第六話
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竜は賊が立ち去ったのを確認してから、マチルダをじっと見つめる。
マチルダからすれば、一難去ってまた一難。竜に何をされるのか分からず怯えているのだった。が、マチルダをじっと見る竜の様子が険しいものから優しいものへと変わるのだった。
竜は騒動のはずみのためかマチルダの襟元から見えている母の形見の紫の宝石を持つ竜をかたどったネックレスを見ているようだった。
『娘、お前はエリザの娘か?』
唐突に竜から母の名前を聞かれてとっさにマチルダは無言でうなずく。馬車の乗客たちは竜とマチルダの様子を見てホッとするのだった。
『やっとエリザの娘に会えたわ』
「お母様を知っているの?」
『ああ。エリザがこの国に来るまで一緒に過ごしておった』
そう言われて、マチルダは母親のエリザがドラガニア竜騎士だった時に一緒だった竜かもと考える。
「ひょっとしてお母様の竜?」
『そうだ。お前の付けているネックレスはエリザがドラガニアを離れる時、一緒に行けないわしを模して作らせたものだ。そして、わしはたまにエリザやお主の様子を感じにこの国に来ておったのだが、お前が国境に来そうな気配がしたのでやってきたのだ。危ない所であった』
竜はホッとしたような表情を見せる。
マチルダはその言葉で何かを思い出し、ハッとする。
「お礼を忘れていました。助けていただきありがとうございました」
マチルダはお礼をのべると共にお辞儀をするのだった。
『礼には及ばん。無事で何より。所でお前、名は?』
「マチルダ・スチュアートと申します」
そう言って、マチルダは竜に向かってお辞儀をする。
『マチルダ、こんなところまでどうしてやってきたのだ? 王太子の婚約者であるお前がなぜこの様なところにおるのだ?』
「よくご存知ですね。」
と言って、マチルダは困った顔をみせここにやってきた経緯の説明を始める。
「力及ばず、婚約破棄されてしまいまして、そして、国外退去も命じられまして……この国にいても疎まれる容姿ですので、疎まれなさそうなドラガニアに行ってみようかと思いましてこうして向かっております」
『そうか。だが、辻馬車だと時間がかかりすぎないか?』
マチルダを案ずる様に竜は尋ねるのだった。マチルダからすれば、それしか手段がないのでその質問を不思議に思う。
「でも、それしか方法がありませんので……」
ドラガニアに行きたがるマチルダにこれ幸いと竜は誘いをかける。
『わしがドラガニアに連れて言ってやろう。直ぐに着くわい』
マチルダはドラガニアに連れて行ってくれると言う竜の言葉に驚きを隠せない。
「連れて?私が竜様に乗せて頂くと言うことですか?」
『遠慮なく乗るが良い』
竜は歓迎せんとばかりに誘う。しかし、竜という偉大な生き物をそのように使うことにマチルダは恐縮する。
「いえいえ、恐れ多いですし、誰でも竜に乗ることができるわけではないと聞いております。無理ですわ」
マチルダは王妃教育をしていたこともあり、知識だけはある。
得ていた知識によれば、竜は選んだものにしか心を開かず、背に乗せることもしないと知っていた。
初対面の自分が選ばれたとも思えないので、そんな無理なことを……と思うのだった。
『お前はエリザの娘だ。竜騎士の素質を持っておるはずだ。乗れぬはずはあるまい』
竜が乗れないことがあるまいと確信をもってマチルダに話しかけていることに驚く。
「私が竜騎士の素質を持っているのですか?」
『そうだ。だから、送ってやろう。試しに乗ってみろ』
そう言われて、マチルダは竜に乗ってみようと思う。
恐る恐る乗ってみた。初めてのはずなのに、そのごつごつとした背中の上にあっさり落とされることもなく乗れたのだった。
竜に乗れると思っていなかったマチルダは驚きを隠せない。
「……竜様、乗れました」
『わしの言った通りだろう』
「ええ」
『取り敢えず、お前はわしが送っていくとして、辻馬車の者を出発させてやろう』
マチルダと竜の様子を見るために馬車で待つ乗客達の方へ竜はマチルダを乗せたまま顔を向ける。
『この娘はわしが連れていく。お前たちは気にせず国境に向かうがよい』
「わかりました!!」
従者は返事したかと思うとマチルダの荷物を降ろしてあわてて馬車を出発させたのだった。
マチルダからすれば、一難去ってまた一難。竜に何をされるのか分からず怯えているのだった。が、マチルダをじっと見る竜の様子が険しいものから優しいものへと変わるのだった。
竜は騒動のはずみのためかマチルダの襟元から見えている母の形見の紫の宝石を持つ竜をかたどったネックレスを見ているようだった。
『娘、お前はエリザの娘か?』
唐突に竜から母の名前を聞かれてとっさにマチルダは無言でうなずく。馬車の乗客たちは竜とマチルダの様子を見てホッとするのだった。
『やっとエリザの娘に会えたわ』
「お母様を知っているの?」
『ああ。エリザがこの国に来るまで一緒に過ごしておった』
そう言われて、マチルダは母親のエリザがドラガニア竜騎士だった時に一緒だった竜かもと考える。
「ひょっとしてお母様の竜?」
『そうだ。お前の付けているネックレスはエリザがドラガニアを離れる時、一緒に行けないわしを模して作らせたものだ。そして、わしはたまにエリザやお主の様子を感じにこの国に来ておったのだが、お前が国境に来そうな気配がしたのでやってきたのだ。危ない所であった』
竜はホッとしたような表情を見せる。
マチルダはその言葉で何かを思い出し、ハッとする。
「お礼を忘れていました。助けていただきありがとうございました」
マチルダはお礼をのべると共にお辞儀をするのだった。
『礼には及ばん。無事で何より。所でお前、名は?』
「マチルダ・スチュアートと申します」
そう言って、マチルダは竜に向かってお辞儀をする。
『マチルダ、こんなところまでどうしてやってきたのだ? 王太子の婚約者であるお前がなぜこの様なところにおるのだ?』
「よくご存知ですね。」
と言って、マチルダは困った顔をみせここにやってきた経緯の説明を始める。
「力及ばず、婚約破棄されてしまいまして、そして、国外退去も命じられまして……この国にいても疎まれる容姿ですので、疎まれなさそうなドラガニアに行ってみようかと思いましてこうして向かっております」
『そうか。だが、辻馬車だと時間がかかりすぎないか?』
マチルダを案ずる様に竜は尋ねるのだった。マチルダからすれば、それしか手段がないのでその質問を不思議に思う。
「でも、それしか方法がありませんので……」
ドラガニアに行きたがるマチルダにこれ幸いと竜は誘いをかける。
『わしがドラガニアに連れて言ってやろう。直ぐに着くわい』
マチルダはドラガニアに連れて行ってくれると言う竜の言葉に驚きを隠せない。
「連れて?私が竜様に乗せて頂くと言うことですか?」
『遠慮なく乗るが良い』
竜は歓迎せんとばかりに誘う。しかし、竜という偉大な生き物をそのように使うことにマチルダは恐縮する。
「いえいえ、恐れ多いですし、誰でも竜に乗ることができるわけではないと聞いております。無理ですわ」
マチルダは王妃教育をしていたこともあり、知識だけはある。
得ていた知識によれば、竜は選んだものにしか心を開かず、背に乗せることもしないと知っていた。
初対面の自分が選ばれたとも思えないので、そんな無理なことを……と思うのだった。
『お前はエリザの娘だ。竜騎士の素質を持っておるはずだ。乗れぬはずはあるまい』
竜が乗れないことがあるまいと確信をもってマチルダに話しかけていることに驚く。
「私が竜騎士の素質を持っているのですか?」
『そうだ。だから、送ってやろう。試しに乗ってみろ』
そう言われて、マチルダは竜に乗ってみようと思う。
恐る恐る乗ってみた。初めてのはずなのに、そのごつごつとした背中の上にあっさり落とされることもなく乗れたのだった。
竜に乗れると思っていなかったマチルダは驚きを隠せない。
「……竜様、乗れました」
『わしの言った通りだろう』
「ええ」
『取り敢えず、お前はわしが送っていくとして、辻馬車の者を出発させてやろう』
マチルダと竜の様子を見るために馬車で待つ乗客達の方へ竜はマチルダを乗せたまま顔を向ける。
『この娘はわしが連れていく。お前たちは気にせず国境に向かうがよい』
「わかりました!!」
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