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第二章
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馬車がぐるりと高い壁に囲まれた場所へ辿り着いた。磨き上げられた立派な錬鉄の門扉が開かれる。門番が帽子を脱ぎ、頭を下げた。
その先には子供たちの姿が見られた。まるでヒーローが現れたかのように「エドガー様!」と飛び跳ねながらにこやかに手を振る子供たちにエドガーはぶっきら棒に手を挙げて応えた。
サンドリッチ領は広大だった。美しい並木にはさまれた平らな道を馬車は進む。左右の草原にいた鹿はのんびりと牧草を食んでいた。
道が緩やかに折れた先にサンドリッチの屋敷が見えてきた。アイリーンはあまりの驚きに息を飲んだ。屋敷に埋め込まれた数百もの窓は夕日を浴びて宝石のようにキラキラと輝いている。アイリーンの想像を超えるぐらいの大豪邸だった。屋敷の前に辿り着き、エドガーが先に馬車を降りた。
エドガーがアイリーンの前に手を差し出す。どちらかといえば度胸のある性格のアイリーンだが、自然と緊張で膝が震えていた。左目の傷に触れる。
エドガーは目を覆わなくてもいいと言ってくれたけれど、この屋敷の人々はこの傷ごとアイリーンを受け入れてくれるのだろうか。急に不安に駆られて、自信がなくなっていく。
「アイリーン」
エドガーは優しく彼女の名前を呼んだ。
「大丈夫だ。俺を信じてくれ」
翡翠色の澄んだ瞳がアイリーンに向けられる。力強い彼の言葉に背中を押された。
(エドガー様を信じてみよう)
アイリーンはエドガーの手を借りて馬車を降りた。
屋敷の前には、大勢の使用人が待ち構えていた。若い女性から年老いた男性まで年齢性別はバラバラだ。アイリーンはエドガーに連れられて、使用人たちの前まで歩み寄った。
「エドガー様、おかえりなさいませ」
「ああ、帰った。皆に紹介する。彼女は私の婚約者でクルムド子爵家のアイリーン嬢だ」
使用人の視線が一斉にアイリーンに向けられる。
「よろしくお願いいたします」
エドガーからの紹介を受け、アイリーンは深々と頭を下げた。ゆっくりと顔を持ち上げて、使用人たちの反応を伺う。
一瞬の静寂に包まれた後、場内はアイリーンを歓迎する盛大な拍手に包まれた。使用人たちは皆一様に笑顔を浮かべて好意的な眼差しをアイリーンに向けている。使用人たちからもアイリーンの目の傷は明らかなはずだったが、誰一人としてそれを気にしている様子はなかった。
驚いてエドガーに目を向ける。アイリーンと目が合うと、彼は「ほらな?」と言うように口の端を持ち上げた。
その先には子供たちの姿が見られた。まるでヒーローが現れたかのように「エドガー様!」と飛び跳ねながらにこやかに手を振る子供たちにエドガーはぶっきら棒に手を挙げて応えた。
サンドリッチ領は広大だった。美しい並木にはさまれた平らな道を馬車は進む。左右の草原にいた鹿はのんびりと牧草を食んでいた。
道が緩やかに折れた先にサンドリッチの屋敷が見えてきた。アイリーンはあまりの驚きに息を飲んだ。屋敷に埋め込まれた数百もの窓は夕日を浴びて宝石のようにキラキラと輝いている。アイリーンの想像を超えるぐらいの大豪邸だった。屋敷の前に辿り着き、エドガーが先に馬車を降りた。
エドガーがアイリーンの前に手を差し出す。どちらかといえば度胸のある性格のアイリーンだが、自然と緊張で膝が震えていた。左目の傷に触れる。
エドガーは目を覆わなくてもいいと言ってくれたけれど、この屋敷の人々はこの傷ごとアイリーンを受け入れてくれるのだろうか。急に不安に駆られて、自信がなくなっていく。
「アイリーン」
エドガーは優しく彼女の名前を呼んだ。
「大丈夫だ。俺を信じてくれ」
翡翠色の澄んだ瞳がアイリーンに向けられる。力強い彼の言葉に背中を押された。
(エドガー様を信じてみよう)
アイリーンはエドガーの手を借りて馬車を降りた。
屋敷の前には、大勢の使用人が待ち構えていた。若い女性から年老いた男性まで年齢性別はバラバラだ。アイリーンはエドガーに連れられて、使用人たちの前まで歩み寄った。
「エドガー様、おかえりなさいませ」
「ああ、帰った。皆に紹介する。彼女は私の婚約者でクルムド子爵家のアイリーン嬢だ」
使用人の視線が一斉にアイリーンに向けられる。
「よろしくお願いいたします」
エドガーからの紹介を受け、アイリーンは深々と頭を下げた。ゆっくりと顔を持ち上げて、使用人たちの反応を伺う。
一瞬の静寂に包まれた後、場内はアイリーンを歓迎する盛大な拍手に包まれた。使用人たちは皆一様に笑顔を浮かべて好意的な眼差しをアイリーンに向けている。使用人たちからもアイリーンの目の傷は明らかなはずだったが、誰一人としてそれを気にしている様子はなかった。
驚いてエドガーに目を向ける。アイリーンと目が合うと、彼は「ほらな?」と言うように口の端を持ち上げた。
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