元チート大賢者の転生幼女物語

こずえ

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現代の常識学

獣耳、弱音を吐く。

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あの後、しばらく元大賢者の家を探索して記録を取ってギルドに戻り、シェラがエールに報告をしている時だった。

ちなみに拾った龍人は何故か気絶していたので、メイリーンが家から見つけて以来ずっと抱っこしていた。

「実はカクカクシカジカがあって、勇者さんも連れて来ちゃったんですけど…」

「う~ん…まずはどっから突っ込めばいいんだ?」

シェラの言葉に思わず頭を抱えるエールの表情は険しいものだった。

「何より一番は…」

エールがボクの後ろに立っている白い髪のルビーのように紅い目をした女性を見て、怖い表情をするとそのまま突き刺すんじゃないかと言うほどの勢いでビシッと指を指す。

「アンタだよ!なんでこんなところに神が居るんだよ!」

その女性の名は

いや、正しくはと呼ぶべきだね。


オリオンはオルトティアーデの力を分けた分身体だ。

分身体とは言え、最高位の神なのでその辺の生物では到底敵うはずもない相手だ。

神の分身体は必ず自分と同性でなければならないこと以外は自由に姿を変えられ、分身体は自分の役割から外す事が出来るのだそう。

それ故にオルトティアーデはオリオンと言う分身体を創って地上でやりたかった事をしたいらしく、それがなんとメイドだった事には驚きを隠せなかった。

ちなみに姿は元より胸部にかなりデバフがかかっているが、大胸のは現状の私たちの中で最大サイズののシャタルアよりも大きく凄まじいモノだった。


オリオンは着ているメイド服が張り裂けそうな程の胸を張って言う。

「殿方が細かい事を気にしてはいけませんわよ?」

「いや、そういう問題ではなくてだなっ!」

エールが言うとオリオンは優しく諭すような目で言う。

「言いたい事はだいたいわかりますが、私は私のやりたい事…メイドになってみたかったのです。シェラちゃんに仕えるのも偶然の出会いを利用しただけですわ。」


オリオンがシェラと出会ったのは、シェラの魂を輪廻の輪に戻すためだったので、正確には偶然の出会いでは無いことは黙っておこう。


「はぁ…まあ、余計なトラブルだけは起こさんといてくれよな…」

エールは頭を抱えながら言う。


エールさんの反応がシャタルアさんの時とは、かなり違う反応である事にほんの少しだけ戸惑う。

本来なら、オリオンさんはエールさんの好きなタイプの女性であるんだとシャタルアさんが言っていた。

そして、シェラさんが言うにはシャタルアさんよりも胸も背も大きくほどよく痩せていてプリケツの安産型であるとのことだった。

『ウッヒョー!このプリケツ具合が堪んねぇな~!とか言ってたのは、マジでイカレてるのじゃ。ありゃ、女の皮を被った酔っぱらいのおっさんじゃ。』

(ボクも早く大きくなりたいな…)

『逆転メイリーンみたいなことになってるのじゃが…って、逆転メイリーンってなんやねん!変態の逆は違う変態ってかぁ!?』

(シャタルアさんがなんか荒ぶってる…)


「それについては問題ないですわ。私は現世のことには詳しいのです。」


オリオンの「エッヘン」と言いながら胸を張る様子はまるで子供のようであったが、事前にシェラさんからは神の世界で見ればたった数百歳程度の赤ちゃんであることは聞いていた。

数百歳で赤ちゃんなんだ…と思っていたが、神の世界である神界では億単位で生きて初めて大人として認識される世界であるため、神としては産まれて間も無い赤子同然だとシャタルアさんが補足してくれたっけ?


(あれ?これって…シェラさんは赤ちゃん相手にプリケツの安産型だ~って喜んでたってこと?ボクは赤ちゃんに負けたの?!)

『一応、神も13年までは人間と同じような成長をするので、かなり語弊がある解釈をしているのじゃ…まあ、間違っては無いのじゃが…』

(思わぬところから追い討ちをかけられたけど、ボクは元気です。)

『…思ってたよりダメージがでかかったみたいじゃな。』

(死体蹴り辞めてください。殴るぞテメェ!)

『キレ過ぎてキャラ壊れとるがな!?』

シャタルアとそんなやり取りをしている間にも話は進んでいるわけで…

「一応言っとくが、俺の故郷はお前ら神の気まぐれに故郷を滅ぼされてるんだ。もちろんそれは俺の問題だから、仕事上の付き合いに出すつもりはねぇが、俺にとっては神ってだけで信用出来ねぇ事は覚えとけよ。」

オリオンは優しく微笑みながら頭を下げる。

「それは…申し訳ありませんわ…私が謝ったところで何も変わらないかもしれませんが、私に出来る事があれば、力を貸しますわ。神として…いえ、ヒトとして、現世で生活していくにあたってもそうですけど、なによりこれから仕えるご主人と関係の深い方といざこざは起こしたくないですからね。」

「そうだな。お前が俺に謝った所で俺の故郷が神の気まぐれで滅んだ過去は変わんねぇ。だが、お前が活躍すれば、俺は平等に評価するつもりだ。それが俺の仕事だからな。」

「はい!シェラ様のメイドとして精一杯頑張りますわ!」

オリオンのキラキラとした瞳にエールはほんの少しだけ表情が柔らかくなったような気がした。

(それでも怖い顔をしてるのは変わらないけど…)

「あ、エールさん、ちょっと頼みがあるんですけど…」

シェラが思い出したように「ポン」と手を叩いて言う。

「なんだ?俺に出来る事なら手伝うぜ。」

「冒険者学校に通いたいのですけど、どうすればいいか教えてくれませんか?」

シェラがそう言うとエールは目をパチパチと瞬きさせて固まる。

「えっと…聞き間違えたかな…」

「冒険者学校に通いたいです。」

「おう。聞き間違えじゃねぇな。」

エールが動き始める前にメイリーンが書類を取りに行く。

そして、書類や参考書などを持って戻ってくる。

「はい。これが入学試験を受けるための書類ね。この書類に必要事項を書いてくれたら良いよ。こっちはカリヤちゃんとディアちゃんの参考書よ。」

メイリーンが笑顔で山のような参考書をボク達に手渡す。

「重たいんだけど…」

「このくらい少ない方ですよ。本来であればこれの何倍もありますから…」

メイリーンが笑顔で言う。

シェラに助けを求めて横目で視線を送る。

「あれ?そんだけで良いの?」

「フッフッフッ…私、こう見えても学園の教員ですからね!」

『嘘でしょ?!このド変態、そんなに頭が良いんですか!?』

シェラとメイリーンの会話にティアラが声(?)を荒らげる。

「ふむふむ…記憶インストール完了…これで完璧です。」

ディアは早速自身の機構を活かしていた。

「お?ディアには便利な機能があるんだね!」

シェラが嬉しそうに言う。

「あうぅ…ボク、お勉強やだよぅ…」

「アハハ!大丈夫だよ!メイリーンさんもいるし、私も教えてあげられるからね。」

シェラがカリヤの頭を撫でて慰める。

「わ、私もお手伝いしますよ!」

オリオンも胸の前で両腕をギュッとしながら言う。

『ふわぁ…ま、我も協力してやるから、落ち込むなよ。記憶力なら自信があるからな。』

ボクの中にいるシャタルアも大きな欠伸をしながら言う。

「うぅ…頑張る…」

そんなやり取りを終えて、3人分の書類がメイリーンに提出される。

「はい。確かに受け取りましたよ。では、これを学園に持って行きますね。」

メイリーンはそう言うと足早にギルドを出る。

家に帰り、檻に龍人を入れるまで龍人は起きなかった。

龍人が気がついたのは、オリオンが晩御飯を作り始めて良い匂いが部屋中に溜まってからだった。

そして、その日の夜、ギルドに呼び出されたシェラさんが入学試験の日程表を持って帰ってくる。

「シェラ、お帰りなさい!」

ティアラが笑顔でシェラを出迎える。

「ただいま。これティアラの分ね。」

ティアラはシェラから書類を受け取ってニコニコしていた。

「これがディアの分で…」

ディアにも書類を渡す。

「はい。カリヤちゃんの分。無くすと試験が受けられなくなるから無くさないようにしてね。」

「はーい」

ボクはシェラから書類を受け取る。

「えっと…なになに…」


『受験番号:135896
氏名:カリヤ・アルフェルン(女性)
受験日:3日後、午前
補足:実技試験も行うので、訓練を怠らないこと。
指定訓練所:レヴィル訓練所
以上。                       学園長:エルフレッド・アルフェノーツ』


「…早くない?」

ボクがそんなことをぽつりと呟くとシェラが言う。

「本来なら当日とか数時間後が普通なんだけど、今回は倍率も高いから、ちょっと遅めみたいよ。明日からは朝早くからカリヤの苦手な学科試験もちゃんと受かるようにしっかり教えていくから気合い入れてね!そして、午後はしっかり実技試験に向けたトレーニングもやるよ!」

「私も精一杯サポートさせていただきますよ。」

オリオンが手作りのフルーツドリンクを持ってきて言う。

「私も学科はともかく、実技試験へ向けた訓練を行わないといけないですね。私が機巧少女である事はバレない方がいいと聞いていますし、機巧に頼らない戦い方を学ぶ必要がありますよね。」

ディアは見た目も触った感触も本人が機巧少女だと言わなければ、普通のその辺の少女と変わらなかった。

もしディアが機巧少女であることがバレれば、大規模な混乱を引き起こすか、国王によって国王の所有物として押収される恐れがある。

その為、ディアはヒトである必要があるのだとメイリーンが言っていた。

ただし、多少の機巧なら変身魔法だと言って誤魔化すことは出来ると思うとティアラが言っていた。

本来、魔族を含めないでヒトに分類される生物には完全な「変身魔法」は使えないのだそう。

シェラは中身が大賢者なのでありとあらゆる魔法を完全に使いこなすが、本来のヒトが扱える変身魔法は熟練の魔法使いでも身体の一部を変化させるくらいしか出来ないのだ。

ちなみに自身を変化させるのが「変身魔法」で、他者を変化させるのが「変化魔法」と定義されており、変化魔法の場合は魔力の波長が合えば合うほどに性能は高くなるとの事だった。

現代の事はシェラ以上によく知っているティアラが言うのだから、間違いは無いのだろう。

シェラは古代から現代でも変わらない程度の一般常識は知っているが、現代の魔法学に関しては全くの無知であり、本人の性格的にも世間一般の考え方とは言えない考え方の持ち主だ。

「私の時代だと、誰でも普通に完全な変身魔法?を使ってたから気をつけないといけないわね。」

シェラが懐かしそうに言う。

「シェラ様の時代では今よりも全員が強かったんですね。」

ティアラが呆れたような感心しているような不思議な声音で言う。

「そう言えば…お母様からも言われたことがありましたね。今の世界は弱過ぎるって…」

ティアラが言うとオリオンが思い出したように言う。

「そうね。あの頃はドラゴンが今のゴブリンと戦うくらいの気軽さで戦えてたからね。またドラゴンステーキとか食べたいなぁ…」

『…まあ、だからと言って龍人を非常食にしようなんて言い出すとは思ってもいなかったが…』

シャタルアは玄関に置かれた檻の中で眠る龍人を意識しているのだろうか…

龍人も初めはわけのわからない状況に暴れていたが、シェラが怒ると大人しくなったのを覚えている。

何故かこの龍人はシェラとボクには近寄っても怒らないが、他の人が近寄ると眠っていても唸り声をあげて威嚇していた。

シェラに対しては恐怖だろうけど、カリヤに対するものはなんなのだろうか…とシャタルアが言っていた。

ただし、シェラが「黙れ」と命令した時は若干嫌そうな顔をしながらも大人しく従っていたので、危険なことはなかった。

「さてと…」

シェラが大きめのテーブルの真ん中の席に座って言う。

「全員、3日後の午前が試験日だったよね。」

カリヤ、ティアラ、ディアの3人が頷く。

「それまでにしっかりと鍛えるから覚悟しといてよね!」

こうして、ボクたちの地獄の3日間が始まるのであった。

まあ、そんな事なんて今のボクたちには知る由もないんだけどね。
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