元チート大賢者の転生幼女物語

こずえ

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現代の常識学

【番外】少女、異世界召喚される。

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その日、人類は知った。

この世界の支配者は誰であったかを…

眠れる深淵の王の夢は混沌と混ざりあった世界エッセンスによって形作られ、消滅は目覚めとともに訪れることを…

そして、そんな世界で生きるボクはとある王城の一室でこの王の眠りを深める者を召喚したつもりだった。


「頼りなさそうな少女が2人…こんなんで大丈夫なのか?」

1人は草木の様な薄い緑の短い髪、両眼とも青く、背丈はそこそこ高く、胸も大きな大人と比べてもとても巨大な少女だ。

仮にデカ乳と呼ぶことにしよう。

もう1人は右半分が白く、左半分が黒い、背丈と同じくらいの長さの長い髪で右眼は赤く、左眼は青い、胸が平らな少女(?)だ。

こいつはハンブン平野と呼ぶことにしよう。

「ここはどこだろ?」

興味津々な様子でデカ乳が周囲を見回す。

「えっ…なにここ…なんかめっちゃ知らん人居るし、超怖いんだけど…」

ハンブン平野は当たり前な反応をして…


いや、こいつは言ってる事とやってることが違いすぎるぞ…

怖いとか言いながら、何食わぬ顔で普通に髪の手入れをしてるし…

て言うか、どっちなんだろ…

声からするとどっちも女の子で間違いないと思うんだけど…


ボクは2人の少女に言う。

「えっと…君たちを召喚したのはボクで…君たちには、とあるモノの眠りを深めてほしいんだけど…」

デカ乳が元気に手を挙げて言う。

「はいはーい!先生!その眠りを深めてほしい相手って誰ですか~?」

「いや、どう考えても怪し過ぎだし、もっと慎重になれし!まずは相手の名前を聞くとかやる事あるだろ!」

ハンブン平野の方は冷静にツッコミを入れていた。

「すまない。ボクはエーデルフェルト。ボクの所属する国の守護者なんだ。」

デカ乳がピンと手を挙げて言う。

「はい!エーデルフェルト先生!私はシェラだよ!私に出来ないことはほとんどないから、ドーンと豪華客船に乗ったつもりでいてよね!」

シェラと名乗った少女は「ドヤァ」の文字が浮かんできそうなほど、胸を張って自慢げな表情をする。

その豊満な胸に服が引っ張られて、その綺麗な形と大きさが強調される。


背丈を見た感じは、ボクよりも3歳くらい歳下の15歳くらいのはずなのに胸はボクの双子の妹の倍以上はある…

人の上に人を造らずなんて言うけど、こんな格差は造っちゃうんだよね…

まあ、男のボクには関係の無い事だけれど…


ハンブン平野がそんなシェラの様子を見ながら言う。

「アンタ、ずいぶんと自信家なのね。ウチは霧嶋きりしま惠凛風えりか…ま、エリカって呼んでくれればいいわ。ん、くわぁ~…面倒事は嫌いだし、役に立てるかはわかんないけど、出来る事はやるわよ。」

惠凛風はどうでもよさそうに欠伸をしながら、自身の髪の毛を操って作った椅子に座っていた。

こちらはシェラと比べると…と言うか、誰がどう見ても断崖絶壁だが、背はシェラよりも少し高かった。

ボクはこの二人に任せても大丈夫なのか、とても不安だった。

少なくともシェラが役に立つことは無さそうだと思った。

「とにかく召喚呼んでしまったものはしょうがない…」

ボクは小さな声でそう呟いて覚悟を決める。

「単刀直入に言う。この世界を想像したとする神の目覚めを妨げてほしい。詳しいことはまだ調査中で話せないのだが、異なる者そとなるかみの王が目覚めるとこの世界は消えてしまうのだ。だから、頼む!この通りだ!」

ボクは頭を下げる。

「うん。いいよ。」

軽い口調で快い返事をしたのはシェラだった。

「アンタねぇ…何の情報もないのに、そんな簡単に返事して良いわけ?」

惠凛風が言うことはもっともだ。

しかし、シェラは当然の事のように言う。

「言ったでしょ?つもりでいてってね。私のに抜かりは無いよ。」

「自信家もここまで来ると考えものね…」

惠凛風は「はぁ…」とため息をつく。

「アンタ…エーデルフェルトって言ったっけ?シェラに任せてたら、一生帰れなさそうだし、ウチも協力するよ。めんどくさいけど、帰れなくなるよりはマシってことでよろ~」

惠凛風はそう言って気だるげに歩いてボクの前に移動すると握手を求めるように左手を差し出す。

「ああ、よろしく頼む!」

ボクは握手に応じる。

「そのんだけどなぁ…ま、いっか。」

シェラがなにか言っていたが、ボクも惠凛風も聞こえてはいなかった。

「ねぇねぇ、お腹すいちゃったから、美味しいところ教えてよ。ほら、腹が減っては戦ができぬって言うでしょ?」

シェラはそんなことを言いながら、扉を開けて部屋を出ようとする。

「待つんだ!その扉には魔法が…!」

シェラが触れた瞬間、魔法陣が起動して凄まじい吸引力の黒い渦を発生させてシェラを吸収しようとする。

「あ、これ闇魔法のブラックホールみたいだね。ふむふむ…」

シェラが全く動いていない事が少し気がかりだったが、惠凛風の操る髪に捕まってなんとか耐える。

惠凛風は床に髪の毛を突き刺してまるで木の根のように枝分かれさせることで吸引に抗っていた。

「吸引力がどこまで上がるのか気になるけど…」

シェラが黒い渦に右手の掌を向ける。

「ホワイトスクラッチ!」

シェラの掌から数cmほど離れた場所から小さな白い斬撃が発生し、黒い渦を跡形もなく崩壊させて無力化する。

不思議なことに魔法陣があった場所以外の場所には全く傷がついていなかった。

「あ…魔法陣壊しちゃった…せっかく研究出来ると思ったのに…」

シェラがガッカリした様子で言う。

「えっ…あのブラックボックスが…こんな簡単に…」

そう。魔法陣から発生した黒い渦はもしもの時のために作った封印魔法の一瞬のブラックボックスだ。

術者以外が触れるか、術者が起動させれば、とてつもない重力による吸引で術者以外の全てを取り込む魔法であり、召喚したモノが敵対した場合の緊急用に作成したものだったが…

本来なら破壊することは不可能なはずなんだけど…

「ごめん…跡形もなく壊しちゃった…」

シェラが頬を掻きながら申し訳なさそうに言う。

「あ、いえ…結構ヤバめの暴走状態になってたので助かってはいるんだけど…」

嘘は言っていない。

現に術者であるボク自身がブラックボックスの吸引力に吸われそうになっていたからだ。

ブラックボックスは膨大な魔力を感知すると無差別に吸引してしまうとんでもないデメリットがあるが、それほどの相手ではボク自身も生きてる可能性は低いと思っていたため、大したデメリットだとは考えていなかった。

「あ、そうなの?なら良かった~!もし直せとか言われたら、材料不足で無理ですって言わないといけないところだったよ~!改良版は作れるけど…」

シェラは笑いながら言うが、これに関しては解析したとしてもそれを再現する事は不可能なことには変わり無いはずだった。

なぜなら、これはボクがこの世界の魔王の血を引く者だから扱える魔法なのであって、その辺の少女が使えていいものじゃないのだ。

だから、例え材料があったとしても、シェラに使えるとは思えなかった。

「代わりといってはなんだけど、こんな感じの魔法陣を作ったんだけど…どうかな?」

シェラが書いた未知の魔法陣…いや、かなり見た事のある魔法陣はその効力がどう言ったものかは、想像に容易かった。

「これは…」

ブラックボックスの魔法陣によく似た魔法陣をボクが見るとシェラは言う。

「それはブラックホールを応用した亜空間収納型の封印魔法だよ。さっきのより早く封印出来るし、取り出す時も魔力や能力を扱えない状態にして出す事が出来るから無駄な抵抗を行えなくすることも出来るよ。ただし発動者が対象の魔力を感知しないと使えない弱点はあるけどね。」

シェラの魔法陣はボクのブラックボックスより強く、そして効率の良い魔法陣だった。

シェラが言うには、発動者が対象の魔力を感知しないと使えないとは言っていたが、機械ですら持っているとされる魔力を感知しないなど、わざと無視するくらいのことがなければありえないのだ。

この世界ではそれらは全ての感覚を通じて感じ取れるものなのだ。

聴覚、視覚、嗅覚、触覚…魔族やその血を引く者であれば魔力そのものが直感的に感じ取れる。

その能力のおかげで目を潰されても魔力感知で視覚を失わなかったり、その他の五感についても同じように魔力感知で代用出来るのだ。

ボクには魔王の血があるので、魔族のように感覚で魔力を感知出来るんだ。

しかし、シェラからはそこまで強い魔力は感じなかったし、むしろ最低級の魔力量のゴブリンよりも低いと思っていた。

惠凛風はこの世界でもっとも魔力のある種族の魔族と比較しても最上位の魔王クラスの魔力があると感じる事が出来ていた。

それ故に、惠凛風の言葉に驚く事になるのだ。

「アンタが本気を出したら、世界の一つや二つ軽く滅んじまいそうね。」

それを聞いたシェラがニヤリと不敵に笑う。

「そうね…貴方の2倍…かしら?」

シェラの目が優しい目に変わると同時に指先を合わせて引き伸ばすジェスチャーをする。

「いや、アンタはそれでも力を出してないね。」

惠凛風はハッキリと断言する。

「アハハ!随分と評価するのね?」

 シェラが惠凛風の右眼を見たような気がした。

「アタシ、魔眼持ちだからアンタみたいなのはよくわかんのよ。」

惠凛風が自身の右眼を指さして言う。

「うへぇ…厄介な能力だねぇ…」

シェラは気だるげに発した声とは違い優しい目をしたまま笑っていた。

「ま、おかげでアンタが何を企んでいるかはわかったわ。」

「企んでいるなんて人聞きが悪いなぁ~…私、悪い事はしないよ?ちょっとしか…」

「結局やるんじゃないか」

そんなやり取りをしてシェラがボクの方を向いて言う。

「さてと…先生、早く美味しいお店行こ!エリカさんもお腹すいたでしょ?」

惠凛風は一瞬ボクの顔を見て言う。

「そうね。アタシも先生に案内してもらおうかしら?」

惠凛風はそう言うとボクの左腕に抱きつきながら引っ張る。

「わ、わかったから、引っ張らないでくれよ…」

無いものでも意識をしてしまうのは、ボクが慣れていないからじゃなくて男だからだと信じたい。

シェラが一瞬ニヤリと悪い顔をして笑ったのを見てしまって、この先が心配になる。

ボクはクローゼットから黒色のローブを二着取り出す。

「はい。君たちの分だよ。一応、洗ってあるものだけど、臭かったりしたら言ってくれよ。別のを用意するからさ。」

「先生、これ臭いんだけど!」

「すまない!すぐに別のものに変えるよ!」

シェラはしかめっ面をしながらローブを返す。

…あれ?臭ってないぞ…?

それとも女の子だからわかる臭いってことかな…?

「…良い匂いね。アロマが効いてる感じがする。」

惠凛風はクンクンと満足そうな顔をして言う。

「あ~…私、アロマ系の臭いは嫌いなんだよね。もっと科学的な匂いが好きなんだ。分かりやすく言うと薬品臭がするのが好きなの。」

「薬品っぽい臭いがするローブか…それなら、ボクの手持ちには無いね。妹ので良ければあるとは思うけど…」

ボクがそう言うといつの間にか鼻を犬みたいに変化させていたシェラがクンクンと鼻を動かしながらクローゼットの中を探っていた。

「う~ん…これならまだ大丈夫かな。」

シェラはそう言って以前、ボクが妹の研究中の薬をこぼした事のあるローブを取り出す。

「凄いね…それ洗ってないとはいえ、数ヶ月前に実験中だった薬品を数滴こぼしただけなのに…」

シェラは元の姿に戻ると言う。

「それなら、時間があったら、私も研究に関わらせてよ。私、研究とかすっごく大好きだから役に立つと思うよ!」

そんなことを言いながら、幸せそうな表情でシェラはほのかに香る薬品の臭いにうっとりしていた。

「アタシは研究とか実験は苦手なんだよねぇ…それよりもダンジョンとか行きたいし…」

「良いね!なら、先生にご飯を食べさせてもらうついでにダンジョンにも連れて行ってもらおうよ!」

「ボクが奢る前提なのかい!?…って、そうか。ボクが召喚したから居るだけで本来は別世界の人だからお金は持ってないか…」

「そういうこと!さ、行くわよ!」

シェラは意気揚々と扉から廊下に出て行く。

「そういうことなら、アタシもうんと食べてやるわ!シェラには負けてられないからね!」

惠凛風はシェラの胸を見ながら言ってシェラを追いかける。

「ハハ…お手柔らかに…なんて聞いちゃいないか…」

ボクは2人の入る店が安い場所である事を祈りながら、2人を追いかける。





しばらくして、シェラが大通りから外れて静かな路地のこじんまりとしたお店の前で看板を眺めていた。

惠凛風はその後ろの壁にもたれかかってボクを待っていた。

「ねぇねぇ!先生、この文字ってなんて書いてあるの?この黒い液体?のやつなんだけど…」

「あぁ、これはコーヒーだね。君にはちょっと早いと思うけど、飲んでみるかい?」

「コーヒーなのね!美味しそうな響きだし、飲んでみるよ!」

シェラは嬉しそうに言うと元気よく「たのもー!」とか言いながら扉を開ける。

店内にいたメイド風の衣装を着た少女がビクッと身体を震わせていた。

「い、いらっしゃいませ…」

少女がほんの少しだけ恥ずかしそうに目を逸らす。

とは言っても、左眼は元々前髪で隠れていたので右眼の動きしか見えなかったが…

「ねぇねぇ!私、コーヒーが飲みたいんだけど、どうすれば良いかな?」

「あ、えっと…すぐにご案内しますので、少々お待ちください」

少女はそう言うと3人をテーブル席に案内する。

「お連れの方々もご注文がお決まりになられましたら、そちらのベルを鳴らしてお呼びくださいませ。」

少女がカウンターの奥に入るとシェラが内装を見ながら呟く。

「ふむふむ…落ち着いた感じの雰囲気だね。アレイアちゃんが好きそうな感じだ…敢えて、シンメトリーな配置で余計な装飾をつけない事で大人の空間を演出してるみたい…これだったら、そこそこ良いドレスとか用意しとけば雰囲気にもあったかもね。」

シェラは先程「たのもー!」と元気いっぱいに場違いな声を出した人間とは思えないほどに落ち着いた声で言う。

ボクはコロコロと変わる彼女の様子はまるでハリケーンのようだと感じる。

「これは…パンケーキかしら…とても美味しそうな薄茶色の焼き目がハート型で可愛いわね…」

シェラとは逆に惠凛風は子供っぽい雰囲気でじゅるりと涎をたらしながらメニューの写真を見ていた。

こっちの方が先程「たのもー!」って勢いよく扉を開けた人っぽく見えるが、入店前は真逆だったんだよね。

惠凛風はボクが思っているよりも子供なのかもしれない。

「すみませーん!」

シェラが大声で呼ぶ。

「シェラ、ベル!」

惠凛風がそう言ってシェラの前にあるベルを指さす。

「あ、そうだった!うっかりしてたよ」

シェラは「てへっ♡」と舌を出して頭にコツンと拳を当てる。

そして、シェラがベルを鳴らすとカウンターの奥からタキシード姿の人が出てくる。

髪色や髪の長さ、目の色を見るに先程のメイド風の衣装の少女だろう。

よく手入れされた腰ほどの長さの銀髪が黒いタキシードによく映えていた。

瞳は右が赤く、左は黒かった。

「ご注文はお決まりでしょうか?」

少女は先程の震えた声とは違い、落ち着いた声で丁寧に言う。

「あのね!コーヒーとこの…プリン?が食べたいの!」

シェラがそう言うと少女が「承知しました」と返す。

「ウチはこれとあれとそれと…」

数分後、シェラの前には一杯のブラックコーヒーと小さめのプリンが並べられる。

惠凛風の前には大きなチョコクリームパフェ、ハチミツとバターがたっぷりとかかった高く積み上がったパンケーキ、たくさんの色とりどりなフルーツが盛られたどデカいケーキ、そして…シェラのプリンの10倍くらいはありそうな大きさの山のようなクリームとチョコチップや色とりどりのマカロンで彩られたプリンが並べられる。

ボクの前にはミルク入りのコーヒーと惠凛風のよりは小さいが大きめのパフェが並べられる。

「見てるだけで胸焼けしそうだね…」

シェラがちょっと引き気味に惠凛風の目の前の見るだけで胸焼けがしそうなスイーツたちを見て言う。

「甘いものは無限に食べられるわ。さ、食べるわよ!」

そう言うとみるみるうちに惠凛風の胃袋にスイーツ達が吸い込まれていく。

そして、数十分後にシェラとボクが食べ終わった頃には満足気な惠凛風の姿があった。

(ボクと同じくらいの背丈のあの身体のどこにそんなに入る場所があるんだろ…)

もちろん、彼女たちはお金を持ってないので、ボクが払う事になるため、お会計が恐ろしいのだが、そんな事はどうでも良くなるくらいに惠凛風の食べっぷりは凄まじかった。

そんな惠凛風に少女が山のように大きなチョコクリームケーキを持ってくる。

「あれ?ウチ、これ頼んでないよ?」

惠凛風が言うと少女がニッと笑って言う。

「お客様の凄まじい食べっぷりを見て、こちらをサービスせずにはいられないと思ったんですよ。つまり、サービスと言う名の私からの挑戦状でございます。」

「アハハ!ウチにスイーツ絡みの勝負を仕掛けるなんて命知らずだね!その挑戦、受けて立つよ!」

惠凛風はそう言うと髪の毛を操りながら、ものすごい勢いでケーキを食べ進める。

見上げるほど高かったケーキの山も数分後には1/3ほどが食べられていた。

「うんうん!このとろけるような甘さが堪んないわ~♪甘味で身体が満たされる感じが堪らなく良いわ!」

そんな事を言いながら、数十分後には見上げるほど高々と積み上げられたケーキも残り1/8くらいまで小さくなっていた。

「う~ん…ちょっと味に飽きが来ちゃってるわね…」

惠凛風はそう言うとメニューの山のようなマカロンの写真を指さして言う。

「これを持ってきてもらっても良いかしら?」

「ふふっ…承知しました…」

少女はカウンターの奥に入って、とてつもなく甘い匂いのするマカロンを持ってきて言う。

「こちらも全て食べる事が出来れば、サービスしますよ。」

「ほんと?それはありがたいわ!」

そう言うと惠凛風は凄い勢いでマカロンを食べながら、ケーキも食べ進めて、山のようなマカロンもあと数個ほどになるとケーキを完食していた。

「これで最後の一つだ~」

惠凛風は最後の1つのマカロンを口に入れて飲み込む。

「素晴らしい食べっぷりでございました。私もこんなに食べていただけるとは思っていなかったので感激でございます。」

少女がとても嬉しそうに頬を緩ませて、目の前の膨れたお腹の惠凛風に言う。

「いやぁ…こんなに甘いものを食べれるなんて滅多なことでは経験出来ないよね~!マジ美味かったし、またこっちに来れたら来たいかも!」

惠凛風は満足そうにそう言うと一瞬で消化して食べる前と変わらない姿に戻る。

「…?!」

シェラがとても驚いた表情でその様子を見ていた。

ボクも驚きっぱなしで何にも言えないよ。

「そうおっしゃっていただけてとても嬉しく感じます。」

少女は嬉しそうに微笑むとカウンターから紙を2枚持ってくる。

1枚は伝票だと言うのはわかったが、もう1つの方には不思議な模様が描かれていた。

「あ、こっちにも転移紋があるんだね。」

シェラが興味ありげに言う。

「やはり、貴方はこの紋章をご存知なのですね。わたくしは子供の頃にこの紙とともにこの世界にやってまいりました。」

少女はどこか懐かしげに言うと惠凛風に転移紋の描かれた紙を渡してシェラを見る。

「貴方と同じ魔力の波長を持つ者がいたんです。シェテラエンデ…と言っても、通じるかはわかりませんが、その方の実験に参加していた私は気がつけば、この紙と共にここのマスターの自宅の前に居ました。マスターはどこの誰とも分からない私を拾って下さり、二代目喫茶ロジューラの見習いマスターとして育ててくださったのです。」

少女は懐かしむような表情をしながら言う。

シェラがどことなく申し訳なさそうな表情をして言う。

「そんなことがあったのですね…辛いことを聞いてごめんなさい。」

「良いんですよ。今はこうしてロジューラで楽しい日々を送ってますから…」

少女はシェラの頭を撫でて微笑む。

「これも何かの縁です。お名前をお伺いしてもよろしいですか?」

少女が優しい声で言うとシェラはドヤ顔で胸を張って言う。

「私はシェラ!自分で言うのもなんだけど、世界で一番賢くて強い魔法使いよ!」

シェラはそう言い終えると握手を求めて左手を伸ばす。

「シェラ様…ですね。素敵なお名前です。改めて、私は喫茶ロジューラの二代目マスターのルインです。」

ルインはそう言うとシェラの握手に応じて右手を重ね、お互いに手を握る。

そして、二人が手を離すとシェラがニヤリと笑う。

その瞬間、ルインの右手の甲に転移紋に似た…と言うか、ほとんど全く同じ紋章が現れて光を放っていた。

「この紋章は…」

ルインがシェラの顔を見る。

「そ、転移紋だよ。しかも、ルインさんが惠凛風さんに渡した紙の転移紋よりも高性能なものね。具体的には、5人までの多人数転移と平行無限収納パラレスインフィニーストレージ…つまり、何処でもどの世界でも使える無限収納だね。もちろん、やろうと思えば、惠凛風さんの分も描き足すだけで同じものが出来るよ。ただし世界線を超える場合は2人までしか転移が出来ないから注意してね。」

この時、3人はこう思っただろう。

こいつだけは敵に回してはいけないと…

(あれ?この少女…もしかして…)

シェラが一瞬だけボクを見て笑った気がした。

ボクは彼女を恐ろしい存在だと理解した。

「偽りなし…か…」

ボクが小さな声で呟くと惠凛風が不思議そうな表情でボクを見る。

それに気づいた様子でシェラがニヤリと笑ってタネ明かしをする。

「初めから必要の無い事だったのよ。神は目覚めないもの。例えどんな状況だろうとね。もし目覚めるなら、全てが白紙となるわ。文字通りに過去も今も未来もありとあらゆる世界も全てね。だから、私があの部屋を出る前にって言ったのよ。まあ、貴方たちには聞こえてなかったみたいだけどね。」

惠凛風がシェラの言葉を思い出したように言う。

「じゃあ、アンタが言ってたって…」

シェラはルインが持ってきたコーヒーを受け取って言う。

「異世界って、どんな世界だったとしても私たちの世界とは違うでしょ?そして、その世界に自分の知らない何かがあるかもしれないと思うとワクワクするよね!私の目的、それはこの世界で私の知らないものを見つけることなの!こんなに美味しいコーヒーも私の世界には無いものなのよ。」

シェラはそう言ってコーヒーを飲んで幸せそうに微笑む。

「香りもいいし、とっても美味しいわ~」

その後、日が暮れるまでルインを加えた4人でいろんな所へ行って遊んだ。

「あら?」

シェラの身体から光が出始める。

「この感覚は…」

惠凛風も同じように身体から光が出る。

「召喚魔法の魔力が無くなったみたいだね。」

ボクが説明するよりも先にシェラが言う。

「ここで見た事、聞いた事、それは私たちの世界では無いもの…」

シェラがちょっとだけ寂しそうに微笑んで続ける。

「元の世界に帰れば、わ。この魔法はそう言う魔法よ。」

ボクの召喚魔法の性質をシェラは理解していた。

「シェラ…やっぱり君は…!」

ボクが確信を持ってシェラに言葉を言う寸前に頬に柔らかい感触と優しい温もりを感じた。

驚いて振り向くと惠凛風がニコッと笑い言う。

「アタシはでアンタを一目見た時から好きだった。この気持ちは忘れないわ。」

惠凛風の光が強くなる。

「じゃあね。」

「エリカさん!」

眩しい光に包まれた惠凛風の姿が消える寸前にシェラが何かを投げ渡す。

惠凛風が受け取った瞬間、惠凛風の姿が消える。

その瞬間の惠凛風はとても嬉しそうな表情をしていた。

「惠凛風…ありがとう…」

ボクがそう呟くとシェラの光も強くなる。

「シェラさん!」

ルインが呼びかける。

「ルイン、君のおかげで私はもっと知らないといけないと思った。だから、またいつか…会いに来るよ!」

「…はい!約束です!」

ルインとシェラの小指が触れ合った瞬間、シェラも眩しい光に包まれて消える。

「…行ってしまいましたね。」

ルインがどことなく懐かしそうな表情で言う。

「そうだな。」

シェラは全て忘れると言っていたが、彼女は今日のことは忘れないだろう。

ボクはそんな確かな確信を胸にまた会える日を楽しみにしていた。













『全くもう!全くもう!貴方はいつもいつも無茶し過ぎです!』

聞きなれたお説教が頭の中に響く。

でも、今日の事はが全て覚えている。

「また会えると良いなぁ…」

『はぁ…人がお説教してる時くらい、真面目に聞いてくださいよ…』

そんな呆れた声が聞こえた。
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