一途な令嬢は悪役になり王子の幸福を望む

紫月

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職業・悪役令嬢

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悪役令嬢というのは、なかなか難しい商売だ。
所詮付け焼き刃の悪役だ。
歌劇のような華麗な悪役を目指しているのだが、素材が私なので高が知れている。
今日も今日とて城に出没したサラ様を転ばせて虐めてやろう足を伸ばしたのだが、サラ様は僅かな段差に躓き、私の目の前で転んでしまったのだ。
クッ!私の見せ場が無くなるじゃないか!
「さっさと立ち上がられてはいかが?
見苦しいですわよ?」
せめてもと嫌味ったらしく言ってやったが、悪役としては薄味すぎる。

またとある夜会での出来事。
ド定番であるドレスに飲み物を零す嫌がらせに挑戦しようとしたのだ。
が、例によってサラ様はご自分で
ドレスに飲み物を零してしまう。
まさかドジっ娘なのか?
やはり仕方がないので、嫌味を言っておく。
「まあ、なんてみすぼらしい。
さっさとお帰りになったほうがよろしいのではなくて?」
語彙ボキャブラリーが貧困すぎて、強烈な嫌味が言えない自分が恨めしい……。
で、でも少しくらいは悪役令嬢ができたのではないだろうか?



とある侍女の証言

私はアリアお嬢様のお付きの侍女だ。
お嬢様はとてもお優しい方だ。
この前王城でサラ伯爵令嬢に会った時のことだ。
お嬢様の目の前で転ばれたサラ様を助け起こして、ドレスの埃を払ってさしあげていた。
手にできた擦り傷に気づき、公爵家特製の軟膏まで塗ってあげていた。
口では「見苦しい」などと言っていたが、口と行動がまるでチグハグなのだ。
また別の日の夜会での出来事。
サラ様が飲み物を零してしまい狼狽えているところを、お嬢様が手ずからハンカチーフで染み抜きをして応急処置をしていた。
黄色のドレスに真っ赤な赤ワインを零してしまったので、早くお帰りになられることをお勧めし、尚且つ帰りの馬車まで手配されていたことには驚きを隠せなかった。
サラ様はなんとかセフィル殿下にお近づきになろうとしている、いわば恋敵ですのに…。

お優しいアリアお嬢様。
貴女様が王妃になられるまで、いえ、王妃になられても、誠心誠意お仕えさせていただきますわ!
私、セフィル殿下との恋を全力で応援いたします!


それぞれの思惑は明後日の方向を向いており、各々全力で噛み合わない努力をしているのだった。
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