27 / 77
27.寂しい。
しおりを挟む
相澤和真はバスの窓から見える景色を眺めていた。隣では、親友の福井奏が和真の肩に寄りかかって眠っている。
「わあ。福井君が寝てる~」
「珍しいね。寝顔が見れるって、なかなかないもんね」
「いつもかっこいいけど、寝てる姿は可愛いね~」
声の方へ顔を向ける。前の席に座っている前田さんと橋本さんがにこにこしながらこちらを覗いていた。
「ねえ、相澤君、席変わってくれない?」
橋本さんが茶目っ気のある笑みを浮かべて両手を合わせる。
「ははは。ごめん。こいつ相当疲れてるみたいなんだ。そっと眠らせてやってよ」
「だよね~」
そう言うと、二人は見納めるように福井の寝顔をじっと見てから座り直した。和真は熟睡しているらしい福井の姿に視線を向ける。
日焼けした精悍な顔、鍛えられた体躯、人望があって、いつも自信に満ちた奏の姿は、和真にとっては憧れるものがあった。その奏が安心した表情で眠る顔はどこか子供っぽく見える。
(本当だ。可愛い顔して寝てる)
目線を上げバスの中を見回せば、奏と同じサッカー部の連中は全員爆睡していた。今日からしばらくの間練習が出来ないからと、昨日はかなりハードな練習をしたらしい。
和真は再び車窓を流れる景色に視線を戻した。若葉の緑が太陽の光を受けキラキラと輝いている。
だが、今の和真には景色を楽しむ事は出来なかった。すぐに頭の中は三峰汐音の事でいっぱいになる。奏によって汐音から引き離された和真はそのまま引き摺られるように集合場所へと連行された。
(あいつ、大丈夫か? ……いや、きっと大丈夫じゃない……よな)
一人ポツンと取り残されるように立っていた汐音の姿が今も目に焼き付いている。
(かなり言動もおかしくなってたからな。……遠くに離れている今のおれでも、何かあいつにしてやれる事があればいいんだが──)
ふと思いつき、急いでポケットへ手を突っ込む。取り出したものは、コミュニケーションツールとしてはあまり使用していない携帯だ。
先日、和真は汐音とアドレスを交換している。
(合宿が始まったら携帯は回収されてしまう。でも、今なら……)
『大丈夫か?』
送信しかけて慌てて消す。
(大丈夫じゃない奴に『大丈夫か?』なんて……)
ふと脳裏に満面の笑みを浮かべた汐音の顔が浮かんできた。
『おまえとしばらく会えなくて寂しいよ』
思ったまま文字を打ち込む。
(寂しいって、何だ?!)
携帯を握り締めて見悶える。
「!」
突然、和真の胴が強い腕に拘束された。
「どうかしたのか?」
少し掠れた声が和真の耳をくすぐる。
福井奏が眠そうな目を擦りながら和真の顔を覗き込んできた。
「あ、ごめん! 起こしちゃったな。まだ着いてないからもう少し寝ていろよ」
「サンキュ、そうする」
奏は素直に応じると、再び和真の肩に頭を寄せて目を閉じた。やはりかなり疲れているのだろう。すぐに寝いいってしまった。
和真は奏の寝顔をしばらくの間眺めていたが、やおら携帯へ目を戻し唖然となった。
(……あれ? 送信しちゃった……?)
大きく息を吐き出し、顔を天井へ向け目を閉じた。
(送信してしまったものは仕方がない。……汐音はあの文を読んでどう思うかな? あいつはいつも本心をぶつけてくるんだ。おれも素直に自分の気持ちを見せたっていいよな)
汐音が現れるまで、和真の事をこれほど渇望してくれる者などいなかった。もちろん今も正直に言えば戸惑いはある。
だが、ずっと心のどこかで自分の存在価値の無さに怯えていた。
(おれは自分が孤独だと感じていることを知りたくなかったんだな)
だからこそ、どんな和真でも良いと、側にいてくれるだけで良いと、全身全霊で言ってくれ汐音の側は、いつのまにか和真にとって心から落ち着ける場所になっていた。
(汐音は笑うかな? 今はおまえがいないと心が落ち着かないって言ったら……)
まだ合宿は始まってもいない。なのに、もう和真は汐音に会える日を心待ちにしていた。
「わあ。福井君が寝てる~」
「珍しいね。寝顔が見れるって、なかなかないもんね」
「いつもかっこいいけど、寝てる姿は可愛いね~」
声の方へ顔を向ける。前の席に座っている前田さんと橋本さんがにこにこしながらこちらを覗いていた。
「ねえ、相澤君、席変わってくれない?」
橋本さんが茶目っ気のある笑みを浮かべて両手を合わせる。
「ははは。ごめん。こいつ相当疲れてるみたいなんだ。そっと眠らせてやってよ」
「だよね~」
そう言うと、二人は見納めるように福井の寝顔をじっと見てから座り直した。和真は熟睡しているらしい福井の姿に視線を向ける。
日焼けした精悍な顔、鍛えられた体躯、人望があって、いつも自信に満ちた奏の姿は、和真にとっては憧れるものがあった。その奏が安心した表情で眠る顔はどこか子供っぽく見える。
(本当だ。可愛い顔して寝てる)
目線を上げバスの中を見回せば、奏と同じサッカー部の連中は全員爆睡していた。今日からしばらくの間練習が出来ないからと、昨日はかなりハードな練習をしたらしい。
和真は再び車窓を流れる景色に視線を戻した。若葉の緑が太陽の光を受けキラキラと輝いている。
だが、今の和真には景色を楽しむ事は出来なかった。すぐに頭の中は三峰汐音の事でいっぱいになる。奏によって汐音から引き離された和真はそのまま引き摺られるように集合場所へと連行された。
(あいつ、大丈夫か? ……いや、きっと大丈夫じゃない……よな)
一人ポツンと取り残されるように立っていた汐音の姿が今も目に焼き付いている。
(かなり言動もおかしくなってたからな。……遠くに離れている今のおれでも、何かあいつにしてやれる事があればいいんだが──)
ふと思いつき、急いでポケットへ手を突っ込む。取り出したものは、コミュニケーションツールとしてはあまり使用していない携帯だ。
先日、和真は汐音とアドレスを交換している。
(合宿が始まったら携帯は回収されてしまう。でも、今なら……)
『大丈夫か?』
送信しかけて慌てて消す。
(大丈夫じゃない奴に『大丈夫か?』なんて……)
ふと脳裏に満面の笑みを浮かべた汐音の顔が浮かんできた。
『おまえとしばらく会えなくて寂しいよ』
思ったまま文字を打ち込む。
(寂しいって、何だ?!)
携帯を握り締めて見悶える。
「!」
突然、和真の胴が強い腕に拘束された。
「どうかしたのか?」
少し掠れた声が和真の耳をくすぐる。
福井奏が眠そうな目を擦りながら和真の顔を覗き込んできた。
「あ、ごめん! 起こしちゃったな。まだ着いてないからもう少し寝ていろよ」
「サンキュ、そうする」
奏は素直に応じると、再び和真の肩に頭を寄せて目を閉じた。やはりかなり疲れているのだろう。すぐに寝いいってしまった。
和真は奏の寝顔をしばらくの間眺めていたが、やおら携帯へ目を戻し唖然となった。
(……あれ? 送信しちゃった……?)
大きく息を吐き出し、顔を天井へ向け目を閉じた。
(送信してしまったものは仕方がない。……汐音はあの文を読んでどう思うかな? あいつはいつも本心をぶつけてくるんだ。おれも素直に自分の気持ちを見せたっていいよな)
汐音が現れるまで、和真の事をこれほど渇望してくれる者などいなかった。もちろん今も正直に言えば戸惑いはある。
だが、ずっと心のどこかで自分の存在価値の無さに怯えていた。
(おれは自分が孤独だと感じていることを知りたくなかったんだな)
だからこそ、どんな和真でも良いと、側にいてくれるだけで良いと、全身全霊で言ってくれ汐音の側は、いつのまにか和真にとって心から落ち着ける場所になっていた。
(汐音は笑うかな? 今はおまえがいないと心が落ち着かないって言ったら……)
まだ合宿は始まってもいない。なのに、もう和真は汐音に会える日を心待ちにしていた。
10
あなたにおすすめの小説
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
ビジネス婚は甘い、甘い、甘い!
ユーリ
BL
幼馴染のモデル兼俳優にビジネス婚を申し込まれた湊は承諾するけれど、結婚生活は思ったより甘くて…しかもなぜか同僚にも迫られて!?
「お前はいい加減俺に興味を持て」イケメン芸能人×ただの一般人「だって興味ないもん」ーー自分の旦那に全く興味のない湊に嫁としての自覚は芽生えるか??
ワケありくんの愛され転生
鬼塚ベジータ
BL
彼は”勇敢な魂"として、彼が望むままに男同士の恋愛が当たり前の世界に転生させてもらえることになった。しかし彼が宿った体は、婚活をバリバリにしていた平凡なベータの伯爵家の次男。さらにお見合いの直前に転生してしまい、やけに顔のいい執事に連れられて3人の男(イケメン)と顔合わせをさせられた。見合いは辞退してイケメン同士の恋愛を拝もうと思っていたのだが、なぜかそれが上手くいかず……。
アルファ4人とオメガ1人に愛される、かなり変わった世界から来た彼のお話。
※オメガバース設定です。
うまく笑えない君へと捧ぐ
西友
BL
本編+おまけ話、完結です。
ありがとうございました!
中学二年の夏、彰太(しょうた)は恋愛を諦めた。でも、一人でも恋は出来るから。そんな想いを秘めたまま、彰太は一翔(かずと)に片想いをする。やがて、ハグから始まった二人の恋愛は、三年で幕を閉じることになる。
一翔の左手の薬指には、微かに光る指輪がある。綺麗な奥さんと、一歳になる娘がいるという一翔。あの三年間は、幻だった。一翔はそんな風に思っているかもしれない。
──でも。おれにとっては、確かに現実だったよ。
もう二度と交差することのない想いを秘め、彰太は遠い場所で笑う一翔に背を向けた。
ノエルの結婚
仁茂田もに
BL
オメガのノエルは顔も知らないアルファと結婚することになった。
お相手のヴィンセントは旦那さまの部下で、階級は中尉。東方司令部に勤めているらしい。
生まれ育った帝都を離れ、ノエルはヴィンセントとふたり東部の街で新婚生活を送ることになる。
無表情だが穏やかで優しい帝国軍人(アルファ)×明るいがトラウマ持ちのオメガ
過去につらい経験をしたオメガのノエルが、ヴィンセントと結婚して幸せになる話です。
J.GARDEN58にて本編+書き下ろしで頒布する予定です。
詳しくは後日、活動報告またはXにてご告知します。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
あなたのいちばんすきなひと
名衛 澄
BL
亜食有誠(あじきゆうせい)は幼なじみの与木実晴(よぎみはる)に好意を寄せている。
ある日、有誠が冗談のつもりで実晴に付き合おうかと提案したところ、まさかのOKをもらってしまった。
有誠が混乱している間にお付き合いが始まってしまうが、実晴の態度はいつもと変わらない。
俺のことを好きでもないくせに、なぜ付き合う気になったんだ。
実晴の考えていることがわからず、不安に苛まれる有誠。
そんなとき、実晴の元カノから実晴との復縁に協力してほしいと相談を受ける。
また友人に、幼なじみに戻ったとしても、実晴のとなりにいたい。
自分の気持ちを隠して実晴との"恋人ごっこ"の関係を続ける有誠は――
隠れ執着攻め×不器用一生懸命受けの、学園青春ストーリー。
サンタからの贈り物
未瑠
BL
ずっと片思いをしていた冴木光流(さえきひかる)に想いを告げた橘唯人(たちばなゆいと)。でも、彼は出来るビジネスエリートで仕事第一。なかなか会うこともできない日々に、唯人は不安が募る。付き合って初めてのクリスマスも冴木は出張でいない。一人寂しくイブを過ごしていると、玄関チャイムが鳴る。
※別小説のセルフリメイクです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる