生まれる前から好きでした。

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28.赤面。

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 そろそろ目的地に着く時間になっていた。
 相澤和真は手にしたままの携帯の画面をじっと見つめる。三峰汐音からの返事が気になってしかたがなかったのだ。
 だが、返事どころか既読にさえならない。

(落ち着けおれ。授業中なんだからメッセージに気付くわけがない……)

 頭では分かっているが、そわそわする気持ちを持て余していた。和真は気持ちを切り替えるために思い切って携帯をポケットに戻す。

「はあ」

 深いため息が零れた。

(何をおれは期待しているんだ? 汐音も自分と同じように会えない事を寂しいと感じてくれている事を確かめたかったのか?)

 流れゆく景色をぼんやりと眺めながら自問する。

「もうすぐ施設に到着するぞ! 寝ている奴をそろそろ起こしてくれ!」

 担任の声でバスの中は騒めき始めた。和真も隣で眠っている福井奏に声をかける。

「奏。もうすぐ着くらしいぞ」

 声を掛けるだけでは目を覚ます気配が感じられない。どうやら熟睡してしまっているようだ。和真の肩に頭を置いたまま身動みじろぎだにしない。

「おい、起きろ。奏」

 本当はもう少し眠らせてやりたい気持ちはある。可哀そうだなと思いながらも肩を揺らせば、奏が小さくうめき声を上げ、僅かに顔を歪めた。体の向きを変えた奏が和真の事をまるで抱き枕のように抱き締めてくる。一瞬だったが、奏の唇が口の端に触れた。

(え……?!)

 固まる和真をよそに目を覚ました奏が幸せそうな表情を浮かべて呑気な声を出す。

「……ふふ、和真……」

 寝ぼけているらしい奏の顔を思いっきり押して強引に体を離す。

「え? ええ? い、痛い痛いって、和真?!」

 グイグイと押され、意味が分からない奏は戸惑っているようだ。

(おまえの心情なんて知ったこっちゃないんだよ! おれは今の顔を見られたくないんだ!)

 心の中で叫ぶ。

(キスされたわけじゃない! 唇が口の端に当たっただけのただの事故だ。ちゃんと分かっている!)

 だが、顔が熱い。きっと赤くなっているはずだ。そんな顔を見られてなぜかと聞かれても上手うまく答えられない。背に奏の視線を感じながら落ち着くまで窓の外へ視線を向けたままでいた。
 一方、和真の後姿を見つめる奏はどこかぼんやりとした様子で自分の唇を親指でゆっくりとなぞる。その事を奏に背を向けている和真は知る由もなかった。
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