「呪いの子」と蔑まれてきた私と婚約者の幼馴染、一体何が違うの?

きんもくせい

文字の大きさ
9 / 11

第9話・涙

しおりを挟む
「な、に……してるの、ですか。2人とも」

絞り出した声は震えていた。
焦った表情で振り向いた2人も、グレースの震える体と声を見て、すぐに身体の強張りを解いた。

「なにって、見てわかんない?」

アマンダが、挑発するように微笑んで、リアムの首に抱きついた。それが答えであることを悟ったグレースの心臓が、にわかに嫌な音を刻む。

「いつから、こんなこと……」
「ずぅーーっとよ。ほんと鈍いのね、グレース様って」

途切れ途切れになるグレーズの声を遮り、アマンダが嘲笑まじりに答えた。

「そんなッ………」
「あーあ。バレたかあ。まあ、遅かれ早かれこうなっていただろうね」

悪びれもせず、むしろどこまでもグレースを見下す態度を取る2人に、自分の心が深い絶望の淵へと沈んでいくのがわかった。
人として、貴族として、尊重されたことなんて数えるくらいしか無かった。表面上は取り繕っていても、いつだって自分を見る無数の目には嫌悪が湧いていた。
2人だってそうだった。知っていた。抜き身の悪意はいつだってグレースを傷つけるだけで、幸せな思い出なんて一つもない。

この身に呪いがあると言うだけで。
醜い皮膚を持つと言うだけで。

こんなにも、残酷な仕打ちを受けなくてはならないのか。

気がつけば、瞳から涙が溢れていた。昔から、2人にどんな無神経なことを言われても流したことは無かったのに、制御できずにボロボロと溢れていく。

「え、泣いてる?やだ、汚い」
「もしかして、僕のこと好きだった?勘弁してくれ!」
「うふふ。可哀想ぉ」
「グレース、きみも知ってるだろ?僕は美しい者しか好きじゃ無いんだよ、残念ながらね」

好きなんかじゃ無かった。
むしろ嫌いだった。
それでも、結婚する相手だと思っていた。政略的でもなんでも、幼馴染ではあったのだ。望んでいなくても、ずっとそばにいた2人だった。

悔しくて、惨めで、情けなくて、グレースは体が崩れていくような憤慨の中、涙を流し続けた。

「いい機会だから、きみからもご両親に進言してくれ。私はリアム様との婚約を解消しますって。マッタク、君の領地が広いせいで、ウチは君の家の言いなりだ。うんざりだよ」
「そうよ、冤罪ふっかけられなかっただけでも感謝して?」
「君だってこれ以上惨めな思いはしたく無いだろ?まあ、僕の他に貰い手もいないだろうけど、そこは立派な魔法師にでもなってさ。とにかく、婚約解消は君から申し出てくれよ」
「お願いね、グレース様」

さめざめと泣くグレースに、一方的に2人は捲し立てた。どこまでも自分勝手な暴論に、もう怒る気力さえ湧かない。それどころか、自分をこれ以上傷つけないためには、グレースから両親に婚約解消を提案するのが1番の方法なのではないか、とまで考え始めていた。
言いなりになんてなりたく無いのに、頭は穏便な逃げ道を探そうと必死だった。

「あ!リアム、次の授業に遅れちゃう」
「おっと、もうそんな時間?君といると、時間を忘れてしまうな」
「もう、リアムったら!」

結局、謝罪の一言も、言い訳すらないまま、2人は空き教室を後にした。
残ったのは、ズタボロに傷つけられたグレース、ただ1人であった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】離縁されたので実家には戻らずに自由にさせて貰います!

山葵
恋愛
「キリア、俺と離縁してくれ。ライラの御腹には俺の子が居る。産まれてくる子を庶子としたくない。お前に子供が授からなかったのも悪いのだ。慰謝料は払うから、離婚届にサインをして出て行ってくれ!」 夫のカイロは、自分の横にライラさんを座らせ、向かいに座る私に離婚届を差し出した。

いつまでも甘くないから

朝山みどり
恋愛
エリザベスは王宮で働く文官だ。ある日侯爵位を持つ上司から甥を紹介される。 結婚を前提として紹介であることは明白だった。 しかし、指輪を注文しようと街を歩いている時に友人と出会った。お茶を一緒に誘う友人、自慢しちゃえと思い了承したエリザベス。 この日から彼の様子が変わった。真相に気づいたエリザベスは穏やかに微笑んで二人を祝福する。 目を輝かせて喜んだ二人だったが、エリザベスの次の言葉を聞いた時・・・ 二人は正反対の反応をした。

王族に婚約破棄させたらそりゃそうなるよね? ……って話

ノ木瀬 優
恋愛
ぽっと出のヒロインが王族に婚約破棄させたらこうなるんじゃないかなって話を書いてみました。 完全に勢いで書いた話ですので、お気軽に読んで頂けたらなと思います。

いつまでも変わらない愛情を与えてもらえるのだと思っていた

奏千歌
恋愛
 [ディエム家の双子姉妹]  どうして、こんな事になってしまったのか。  妻から向けられる愛情を、どうして疎ましいと思ってしまっていたのか。

【完結】婚約破棄?勘当?私を嘲笑う人達は私が不幸になる事を望んでいましたが、残念ながら不幸になるのは貴方達ですよ♪

山葵
恋愛
「シンシア、君との婚約は破棄させてもらう。君の代わりにマリアーナと婚約する。これはジラルダ侯爵も了承している。姉妹での婚約者の交代、慰謝料は無しだ。」 「マリアーナとランバルド殿下が婚約するのだ。お前は不要、勘当とする。」 「国王陛下は承諾されているのですか?本当に良いのですか?」 「別に姉から妹に婚約者が変わっただけでジラルダ侯爵家との縁が切れたわけではない。父上も承諾するさっ。」 「お前がジラルダ侯爵家に居る事が、婿入りされるランバルド殿下を不快にするのだ。」 そう言うとお父様、いえジラルダ侯爵は、除籍届けと婚約解消届け、そしてマリアーナとランバルド殿下の婚約届けにサインした。 私を嘲笑って喜んでいる4人の声が可笑しくて笑いを堪えた。 さぁて貴方達はいつまで笑っていられるのかしらね♪

「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」と言われたので別れたのですが、呪われた上に子供まで出来てて一大事です!?

綾織季蝶
恋愛
「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」そう告げられたのは孤児から魔法省の自然管理科の大臣にまで上り詰めたカナリア・スタインベック。 相手はとある貴族のご令嬢。 確かに公爵の彼とは釣り合うだろう、そう諦めきった心で承諾してしまう。 別れる際に大臣も辞め、実家の誰も寄り付かない禁断の森に身を潜めたが…。 何故か呪われた上に子供まで出来てしまった事が発覚して…!?

貴方が要らないと言ったのです

藍田ひびき
恋愛
「アイリス、お前はもう必要ない」 ケヴィン・サージェント伯爵から一方的に離縁を告げられたアイリス。 彼女の実家の資金援助を目当てにした結婚だったため、財政が立て直された今では結婚を続ける意味がなくなったとケヴィンは語る。 屈辱に怒りを覚えながらも、アイリスは離縁に同意した。 しかしアイリスが去った後、伯爵家は次々と困難に見舞われていく――。 ※ 他サイトにも投稿しています。

王子を助けたのは妹だと勘違いされた令嬢は人魚姫の嘆きを知る

リオール
恋愛
子供の頃に溺れてる子を助けたのは姉のフィリア。 けれど助けたのは妹メリッサだと勘違いされ、妹はその助けた相手の婚約者となるのだった。 助けた相手──第一王子へ生まれかけた恋心に蓋をして、フィリアは二人の幸せを願う。 真実を隠し続けた人魚姫はこんなにも苦しかったの? 知って欲しい、知って欲しくない。 相反する思いを胸に、フィリアはその思いを秘め続ける。 ※最初の方は明るいですが、すぐにシリアスとなります。ギャグ無いです。 ※全24話+プロローグ,エピローグ(執筆済み。順次UP予定) ※当初の予定と少し違う展開に、ここの紹介文を慌てて修正しました。色々ツッコミどころ満載だと思いますが、海のように広い心でスルーしてください(汗

処理中です...