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エピローグ
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それから一年後――。
ヴァンベール領は見違えるほど発展していた。魔石の採掘事業は大成功を収め、王国有数の商業都市へと変貌を遂げた。
城の謁見の間で、私は各地から集まった商人たちと交渉している。
「では、次の契約は……」
「セラフィーナ様、休憩のお時間です」
ベルナールが紅茶を運んできた。
「ありがとう。でも、まだ午後の会議が……」
「無理をされてはいけません」
「そうですよ、セラフィーナ」
エドワード王子が書類を持って入ってきた。彼は今や領地の共同経営者として、月に一度は訪れるようになっていた。
「あなたが倒れたら、この領地はどうなる?」
「大丈夫よ。それより、ワイバーンの件は?」
「ああ、それなら――」
ドアが勢いよく開いて、レオンハルトが入ってきた。その顔には、珍しく興奮の色があった。
「報告します! ワイバーンの駆逐に成功しました!」
「本当!?」
「はい。騎士団総出で三日三晩かかりましたが、ついに」
一年間、私たちを悩ませ続けた最大の脅威が、ついに去ったのだ。
「よくやったわ、レオンハルト騎士団長!」
私は思わず駆け寄って、彼の手を握った。
「これで、北の森も安全に開発できるわね!」
「はい……」
レオンハルトは少し照れたように目を逸らした。
その様子を見て、エドワード王子が意味深に笑う。
「さて、邪魔者はそろそろ王都に戻るよ。セラフィーナ、次の商談は来月で」
「ええ、よろしくお願いします」
エドワードが去った後、私とレオンハルトだけが残った。
「あの……セラフィーナ様」
「なに?」
「お話したいことが……」
その時、リリィが元気よく飛び込んできた。すっかり大きくなって、今では城で見習い侍女として働いている。
「セラフィーナ様! 村の広場で収穫祭の準備ができましたよ!」
「もうそんな時期なのね」
「今年は特別豪華なんです! セラフィーナ様のおかげで、みんなこんなに幸せになれたから!」
窓の外を見ると、色とりどりの飾り付けがされた広場が見える。笑顔の領民たちが、楽しそうに準備をしている。
一年前の荒れ果てた風景が、嘘のようだ。
「行きましょう、レオンハルト騎士団長。お話は祭りの後でゆっくりしましょう」
「……そうですね、参りましょう」
収穫祭の広場では、音楽が鳴り響き、人々が踊っていた。
「セラフィーナ様!」
「領主様、万歳!」
たくさんの人が声をかけてくれる。
マリアの姿もあった。刑期を終えて領地に来た彼女は、今では財務担当として優秀に働いている。
「セラフィーナ様、今年度の収支報告です。予想を上回る黒字です!」
「ありがとう、マリア。あなたのおかげよ」
「いえ、全ては……」
マリアは嬉しそうに微笑んだ。
夜になり、満天の星空の下、たき火を囲んで宴は続く。
私は少し離れた場所で、静かに星を見上げていた。
「セラフィーナ様」
レオンハルトが隣に来た。
「さっき、話したいことがあるって言ってたわね」
「はい……その」
彼は珍しく言葉に詰まっている。
「実は、私……あなたのことを……」
「レオンハルト騎士団長」
私は彼の言葉を遮った。
「私も、あなたのことを大切に思っています」
「え……」
「でも、今はまだこの領地のことで精一杯。恋愛をする余裕はないの」
「そうですか……」
レオンハルトは少し寂しそうに笑った。
「でも、いつか。いつか必ず、ゆっくり向き合える日が来ると思う。その時まで、待っていてくれる?」
「もちろんです。たとえ百年でも」
私たちは並んで、星空を見上げた。
悪役令嬢として生まれ変わって、婚約破棄されて、辺境に追いやられて――。
でも今、私は誰よりも幸せだ。
大切な領地、信頼できる仲間たち、そして守るべき人々。
これが、私が望んだ人生。
そして、これからも続いていく、私の物語。
星空に、また流れ星が輝いた。
私は心の中で願う。
この幸せが、ずっと続きますように。
この領地のみんなが、笑顔でいられますように。
そして――
いつか、本当の恋を知ることができますように。
ヴァンベール領は見違えるほど発展していた。魔石の採掘事業は大成功を収め、王国有数の商業都市へと変貌を遂げた。
城の謁見の間で、私は各地から集まった商人たちと交渉している。
「では、次の契約は……」
「セラフィーナ様、休憩のお時間です」
ベルナールが紅茶を運んできた。
「ありがとう。でも、まだ午後の会議が……」
「無理をされてはいけません」
「そうですよ、セラフィーナ」
エドワード王子が書類を持って入ってきた。彼は今や領地の共同経営者として、月に一度は訪れるようになっていた。
「あなたが倒れたら、この領地はどうなる?」
「大丈夫よ。それより、ワイバーンの件は?」
「ああ、それなら――」
ドアが勢いよく開いて、レオンハルトが入ってきた。その顔には、珍しく興奮の色があった。
「報告します! ワイバーンの駆逐に成功しました!」
「本当!?」
「はい。騎士団総出で三日三晩かかりましたが、ついに」
一年間、私たちを悩ませ続けた最大の脅威が、ついに去ったのだ。
「よくやったわ、レオンハルト騎士団長!」
私は思わず駆け寄って、彼の手を握った。
「これで、北の森も安全に開発できるわね!」
「はい……」
レオンハルトは少し照れたように目を逸らした。
その様子を見て、エドワード王子が意味深に笑う。
「さて、邪魔者はそろそろ王都に戻るよ。セラフィーナ、次の商談は来月で」
「ええ、よろしくお願いします」
エドワードが去った後、私とレオンハルトだけが残った。
「あの……セラフィーナ様」
「なに?」
「お話したいことが……」
その時、リリィが元気よく飛び込んできた。すっかり大きくなって、今では城で見習い侍女として働いている。
「セラフィーナ様! 村の広場で収穫祭の準備ができましたよ!」
「もうそんな時期なのね」
「今年は特別豪華なんです! セラフィーナ様のおかげで、みんなこんなに幸せになれたから!」
窓の外を見ると、色とりどりの飾り付けがされた広場が見える。笑顔の領民たちが、楽しそうに準備をしている。
一年前の荒れ果てた風景が、嘘のようだ。
「行きましょう、レオンハルト騎士団長。お話は祭りの後でゆっくりしましょう」
「……そうですね、参りましょう」
収穫祭の広場では、音楽が鳴り響き、人々が踊っていた。
「セラフィーナ様!」
「領主様、万歳!」
たくさんの人が声をかけてくれる。
マリアの姿もあった。刑期を終えて領地に来た彼女は、今では財務担当として優秀に働いている。
「セラフィーナ様、今年度の収支報告です。予想を上回る黒字です!」
「ありがとう、マリア。あなたのおかげよ」
「いえ、全ては……」
マリアは嬉しそうに微笑んだ。
夜になり、満天の星空の下、たき火を囲んで宴は続く。
私は少し離れた場所で、静かに星を見上げていた。
「セラフィーナ様」
レオンハルトが隣に来た。
「さっき、話したいことがあるって言ってたわね」
「はい……その」
彼は珍しく言葉に詰まっている。
「実は、私……あなたのことを……」
「レオンハルト騎士団長」
私は彼の言葉を遮った。
「私も、あなたのことを大切に思っています」
「え……」
「でも、今はまだこの領地のことで精一杯。恋愛をする余裕はないの」
「そうですか……」
レオンハルトは少し寂しそうに笑った。
「でも、いつか。いつか必ず、ゆっくり向き合える日が来ると思う。その時まで、待っていてくれる?」
「もちろんです。たとえ百年でも」
私たちは並んで、星空を見上げた。
悪役令嬢として生まれ変わって、婚約破棄されて、辺境に追いやられて――。
でも今、私は誰よりも幸せだ。
大切な領地、信頼できる仲間たち、そして守るべき人々。
これが、私が望んだ人生。
そして、これからも続いていく、私の物語。
星空に、また流れ星が輝いた。
私は心の中で願う。
この幸せが、ずっと続きますように。
この領地のみんなが、笑顔でいられますように。
そして――
いつか、本当の恋を知ることができますように。
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