7 / 70
1章
第7話:開拓と訓練と、雨の日
しおりを挟む
朝。木々の隙間から差し込む光が、村の広場を柔らかく照らす。
セラは目をこすりながら、あくびを一つ。焚き火の近くでは、ユリウスが既に鍋に湯を沸かし、簡素な朝食を準備していた。
「おはよ……もう起きてるのか」
「とっくにな。訓練を始めると言っただろう。まずは基礎体力からだ。走るぞ」
「……朝飯食べる前に!?」
その叫びもむなしく、セラの“ユリウス式朝練”が始まった。
森の周囲を一周、腕立て、体幹、素振り。容赦のないメニューに、セラはすでに何度も倒れそうになっていた。
「うう……殺す気か……」
「これでも甘い方だ。帝国の新兵訓練なら、初日で三人は倒れる」
「それ、ぜったいブラック……」
そんなやり取りを横目に、フレアは広場の端でひなたぼっこをしていた。どこか誇らしげに尻尾を振っている。なぜか自分が教官面だ。
午前中いっぱい訓練を続けたあと、ユリウスはセラを呼び、村の“仕事”を教え始めた。
「この土地はまだ痩せてる。だからまず、魔法で土壌を整える。手伝えるか?」
「魔法はちょっとだけできる……回復魔法の、ほんの触りだけ。でも、やるよ。教えて」
「いい返事だ」
ふたりで畑の土を耕し、水路の整備を進める。
魔法を使っての農業——帝都では軽んじられていた技術だが、ユリウスは密かに研究していた。
「……なんで、こんな技術知ってるの?」
「戦地では、水と食料が命を左右するからな。……命を繋ぐ魔法を知らずして、最強など名乗れん」
その言葉に、セラは少しだけユリウスを見る目を変えた。
午後、空に暗雲が広がり始めた。
「雨、降りそうだな」
ユリウスが呟いた直後、ぽつ、ぽつ、と冷たい雫が降り始める。
ふたりは急いで作業を切り上げ、屋根の下へ。
フレアは嫌そうに羽を震わせながら木の陰に避難している。
雷鳴とともに、どしゃぶりの雨が村を洗い流す。
雨の音を聞きながら、ユリウスは火を焚き直し、あたたかいスープを差し出した。
「お前、雨は嫌いか?」
「……ちょっと怖い。でも、嫌いじゃない。雨の音って、なんか……静かで、落ち着く」
セラはそう言って、スープをひとくち飲む。
雨は止まない。だが、火と匂いと、居場所があった。
「なあ、ユリウス。ここって……その、住んでもいい?」
「すでに住んでるだろ」
「……うん。でも、ちゃんと住むって、今決めたからさ」
小さな決意が、雨の音に溶けていく。
こうして、この村に“もう一人の住人”が、本当の意味で根を下ろした。
セラは目をこすりながら、あくびを一つ。焚き火の近くでは、ユリウスが既に鍋に湯を沸かし、簡素な朝食を準備していた。
「おはよ……もう起きてるのか」
「とっくにな。訓練を始めると言っただろう。まずは基礎体力からだ。走るぞ」
「……朝飯食べる前に!?」
その叫びもむなしく、セラの“ユリウス式朝練”が始まった。
森の周囲を一周、腕立て、体幹、素振り。容赦のないメニューに、セラはすでに何度も倒れそうになっていた。
「うう……殺す気か……」
「これでも甘い方だ。帝国の新兵訓練なら、初日で三人は倒れる」
「それ、ぜったいブラック……」
そんなやり取りを横目に、フレアは広場の端でひなたぼっこをしていた。どこか誇らしげに尻尾を振っている。なぜか自分が教官面だ。
午前中いっぱい訓練を続けたあと、ユリウスはセラを呼び、村の“仕事”を教え始めた。
「この土地はまだ痩せてる。だからまず、魔法で土壌を整える。手伝えるか?」
「魔法はちょっとだけできる……回復魔法の、ほんの触りだけ。でも、やるよ。教えて」
「いい返事だ」
ふたりで畑の土を耕し、水路の整備を進める。
魔法を使っての農業——帝都では軽んじられていた技術だが、ユリウスは密かに研究していた。
「……なんで、こんな技術知ってるの?」
「戦地では、水と食料が命を左右するからな。……命を繋ぐ魔法を知らずして、最強など名乗れん」
その言葉に、セラは少しだけユリウスを見る目を変えた。
午後、空に暗雲が広がり始めた。
「雨、降りそうだな」
ユリウスが呟いた直後、ぽつ、ぽつ、と冷たい雫が降り始める。
ふたりは急いで作業を切り上げ、屋根の下へ。
フレアは嫌そうに羽を震わせながら木の陰に避難している。
雷鳴とともに、どしゃぶりの雨が村を洗い流す。
雨の音を聞きながら、ユリウスは火を焚き直し、あたたかいスープを差し出した。
「お前、雨は嫌いか?」
「……ちょっと怖い。でも、嫌いじゃない。雨の音って、なんか……静かで、落ち着く」
セラはそう言って、スープをひとくち飲む。
雨は止まない。だが、火と匂いと、居場所があった。
「なあ、ユリウス。ここって……その、住んでもいい?」
「すでに住んでるだろ」
「……うん。でも、ちゃんと住むって、今決めたからさ」
小さな決意が、雨の音に溶けていく。
こうして、この村に“もう一人の住人”が、本当の意味で根を下ろした。
64
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る
夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる