追放された元・最強魔導士、辺境でスローライフを始めたらなぜか国ができました

黒川ねこ

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1章

第7話:開拓と訓練と、雨の日

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 朝。木々の隙間から差し込む光が、村の広場を柔らかく照らす。
 セラは目をこすりながら、あくびを一つ。焚き火の近くでは、ユリウスが既に鍋に湯を沸かし、簡素な朝食を準備していた。

「おはよ……もう起きてるのか」

「とっくにな。訓練を始めると言っただろう。まずは基礎体力からだ。走るぞ」

「……朝飯食べる前に!?」

 その叫びもむなしく、セラの“ユリウス式朝練”が始まった。
 森の周囲を一周、腕立て、体幹、素振り。容赦のないメニューに、セラはすでに何度も倒れそうになっていた。

「うう……殺す気か……」

「これでも甘い方だ。帝国の新兵訓練なら、初日で三人は倒れる」

「それ、ぜったいブラック……」

 そんなやり取りを横目に、フレアは広場の端でひなたぼっこをしていた。どこか誇らしげに尻尾を振っている。なぜか自分が教官面だ。

 午前中いっぱい訓練を続けたあと、ユリウスはセラを呼び、村の“仕事”を教え始めた。

「この土地はまだ痩せてる。だからまず、魔法で土壌を整える。手伝えるか?」

「魔法はちょっとだけできる……回復魔法の、ほんの触りだけ。でも、やるよ。教えて」

「いい返事だ」

 ふたりで畑の土を耕し、水路の整備を進める。
 魔法を使っての農業——帝都では軽んじられていた技術だが、ユリウスは密かに研究していた。

「……なんで、こんな技術知ってるの?」

「戦地では、水と食料が命を左右するからな。……命を繋ぐ魔法を知らずして、最強など名乗れん」

 その言葉に、セラは少しだけユリウスを見る目を変えた。
 午後、空に暗雲が広がり始めた。

「雨、降りそうだな」
 ユリウスが呟いた直後、ぽつ、ぽつ、と冷たい雫が降り始める。

 ふたりは急いで作業を切り上げ、屋根の下へ。
 フレアは嫌そうに羽を震わせながら木の陰に避難している。

 雷鳴とともに、どしゃぶりの雨が村を洗い流す。

 雨の音を聞きながら、ユリウスは火を焚き直し、あたたかいスープを差し出した。

「お前、雨は嫌いか?」

「……ちょっと怖い。でも、嫌いじゃない。雨の音って、なんか……静かで、落ち着く」

 セラはそう言って、スープをひとくち飲む。

 雨は止まない。だが、火と匂いと、居場所があった。

「なあ、ユリウス。ここって……その、住んでもいい?」

「すでに住んでるだろ」

「……うん。でも、ちゃんと住むって、今決めたからさ」

 小さな決意が、雨の音に溶けていく。
 こうして、この村に“もう一人の住人”が、本当の意味で根を下ろした。
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