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1章
第8話:帝国の目と届かぬ矢文
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帝国・中央魔導宮。
その最上階の作戦室では、宰相ゼノ=ヴァルトハイムが報告書に目を通していた。
「……北辺境より、異常魔力反応。規模、Sランク相当。継続時間は約三日……ふむ」
報告を読み上げているのは、若き情報将校だ。額には冷や汗、声には緊張が滲む。
「調査部の予測では、何者かが“大規模結界”を張った可能性が……ですが、現地は既に地図から除外された地域で……」
「そうか」
ゼノは静かに報告書を閉じた。
「反応があった場所の座標を示せ」
「はっ、こちらに——」
示された地図を、ゼノは一瞥し、口元だけで笑う。
「……フェンリース村。かつて“災いの森”の拠点となった村か」
「ご存知でしたか?」
「ああ。十年前、魔物の群れに壊滅させられ、以来廃村扱い。住民は全滅したとされていたが……なるほど」
ゼノは長く息を吐いた。
「監視をつけろ。探索班は送るな。……不用意に動かすと、彼は気づく」
「彼、とは……?」
その問いに、ゼノは答えない。ただ、指先で机を軽く叩いた。
「……今なお生きていれば、奴は必ず“火種”になる。まだ燃えていなくとも、だ」
一方その頃、フェンリース村では——
ユリウスが、かすかな“視線”に気づいていた。
「……帝国が動き出したな」
焚き火を前に、彼は呟く。
「結界を張り直しておくか。少なくとも、しばらくはこちらに手を出す気はないだろうが……」
フレアが低く唸る。セラが不思議そうに顔を上げた。
「どうかした?」
「いや、少しばかり……鳥の羽音がうるさくなってきただけだ」
「鳥?」
「“帝国”という名のやつだ」
皮肉まじりに言うその声は、どこか懐かしさすら含んでいた。
その夜遅く。
ユリウスの張った結界の外に、一枚の矢文が突き立った。
紙には短い文字がひとつだけ、魔力で記されていた。
その最上階の作戦室では、宰相ゼノ=ヴァルトハイムが報告書に目を通していた。
「……北辺境より、異常魔力反応。規模、Sランク相当。継続時間は約三日……ふむ」
報告を読み上げているのは、若き情報将校だ。額には冷や汗、声には緊張が滲む。
「調査部の予測では、何者かが“大規模結界”を張った可能性が……ですが、現地は既に地図から除外された地域で……」
「そうか」
ゼノは静かに報告書を閉じた。
「反応があった場所の座標を示せ」
「はっ、こちらに——」
示された地図を、ゼノは一瞥し、口元だけで笑う。
「……フェンリース村。かつて“災いの森”の拠点となった村か」
「ご存知でしたか?」
「ああ。十年前、魔物の群れに壊滅させられ、以来廃村扱い。住民は全滅したとされていたが……なるほど」
ゼノは長く息を吐いた。
「監視をつけろ。探索班は送るな。……不用意に動かすと、彼は気づく」
「彼、とは……?」
その問いに、ゼノは答えない。ただ、指先で机を軽く叩いた。
「……今なお生きていれば、奴は必ず“火種”になる。まだ燃えていなくとも、だ」
一方その頃、フェンリース村では——
ユリウスが、かすかな“視線”に気づいていた。
「……帝国が動き出したな」
焚き火を前に、彼は呟く。
「結界を張り直しておくか。少なくとも、しばらくはこちらに手を出す気はないだろうが……」
フレアが低く唸る。セラが不思議そうに顔を上げた。
「どうかした?」
「いや、少しばかり……鳥の羽音がうるさくなってきただけだ」
「鳥?」
「“帝国”という名のやつだ」
皮肉まじりに言うその声は、どこか懐かしさすら含んでいた。
その夜遅く。
ユリウスの張った結界の外に、一枚の矢文が突き立った。
紙には短い文字がひとつだけ、魔力で記されていた。
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